ベルテルミーニ王国軍二十万は領土の西側に存在する平原に入った。そして目の前にはアルテミラ皇国軍二十五万の姿が。
既に西側領土のほとんどを奪われておりこの平原は王城までの最後の防衛戦とよべる場所であった。
「将軍、何度も言うがここを抜かれるわけにはいかない。ここを通せば王城まで一直線だ」
「お任せください。ここは一歩も通しませんよ」
そしてアルテミラ皇国軍からの鉄砲の一斉射撃で戦いは始まった。
合計双方会わせて四十五万の軍勢は互いに槍を突き刺し屍の上を通って押したり押されたりを繰り返している。
しかし、やがてベルテルミーニ王国軍がアルテミラ皇国軍を押し始めた。
国の存亡がかかっているためベルテルミーニ王国軍の指揮は高く逆にここまで勝ち戦だったアルテミラ皇国軍の兵士は浮わついていた。そのため段々とベルテルミーニ王国軍が押し始めていたのだ。
「全軍油断はするな!戦場では油断したものから死んでいくと思え!」
将軍は声をあげて味方を鼓舞していく。
「将軍!アルテミラ皇国軍が撤退していきます!」
やがてアルテミラ皇国軍はベルテルミーニ王国軍に押されて撤退し始めたのである。
「…(妙だな…。戦いからまだ二時間とかかっていない。罠か?いや、見る限りそのようなことはなさそうだが…)…よし、追撃は前衛部隊のみ行う。後衛は何が起きていいように待機しろ!」
「はっ!」
将軍は何か考えていたが直ぐに追撃の指示を出した。
しかし、戦場で俺は使い物にならないな。戦闘系では無いし、どちらかと言うと発明家みたいな感じだからな。
このまま追い払えればいいが。
そのとき後方から何か慌てる声が聞こえてきた。
「報告します!」
後方から現れたのは泥だらけの兵士であった。
「白董様が謀叛!王城を占拠しました!」
…は?
「バカを言うな…。白董がそのようなことをするわけ無いだろう?」
「いえ!間違いありません!私は謁見の間を警備していました。そこへ白董様が多数の兵士と共に来て重臣達を切り殺していき『今日でベルテルミーニ王国は滅びる。アルテミラ皇国に忠誠を誓うなら命は助けてもよい』と言いました!しかし、重臣達はそれを断り陛下への伝言役として某を送りました。しかし、その時に既に半数以上は…」
兵士はそれ以上は言わなかったが恐らく重臣達は既に殺されているだろう。
…ちょっと待て。ミーナは?
「おい、ミーナはどうなった?」
「…申し訳ございません。某は城を出るので手一杯でして…」
「…陛下」
そこへ将軍が俺に声をかけた。
「申し上げにくいのですが…アルテミラ皇国では滅ぼした国の王族は皆殺されています」
俺はそれを聞いたとき本陣を駆けて馬のもとへ走った。
「陛下!?」
「将軍!お前はここの兵士を率いて直ぐに城に戻れ!俺は今すぐ向かう!」
「なりませぬ!ここで陛下にもしものことがあれば…」
「ならば直ぐに兵士を率いて戻ってこい!」
俺はそれだけ言って馬を走らせた。
「陛下!…くっ、ベル隊、陛下の護衛にあたれ!」
将軍のその声だけ聞こえていた。
「ミーナ…っ!」
『御武運をお祈りしています』
ミーナと最後にあったあのときの記憶が映像のように流れていく。
自分の鼓動が早くなっているのを感じる。焦っている。手綱を握る手は汗で濡れている。
「無事でいてくれ!」
心からミーナの無事を祈り城に走らせた。
そして、
アルテミラ皇国の旗が掲げられたベルテルミーニ王国の王城と
全身を何本もの槍で貫かれた変わり果てたミーナの姿を見て俺は頭が真っ白になった。