就職活動も早く終わらせたいな・・・
共同戦線の翌日、俺達全員は王都を見て回っていた。
さすがは王都と言うべきか?
先程、王都の地図を100エリスで配っている人に地図を買ったんだが全てを見て回るのに何日も必要に感じる。
個人的に博物館とか行きたいな~。
皆も何処に行こうかとワイワイ盛り上がっていた。
「おう!お前ら!王都観光か?」
ディー、ティリア、ミーナが歩いてくる。
他のメンバーはどうしたのか聞くとツバキは諜報活動に戻り、エニスとグランは酒屋に(エニスはグランの監視としてディーに頼まれて)いるようだ。
「オススメの場所ってある?」
「オススメねぇ・・・」
ディーがう~ん・・・と腕を組んで考え始める。
「あの~・・・」
フィーリィがおずおずと手を挙げた。
お、普段着いて来るだけだったのに珍しい。
どうもフィーリィはエリスを祀っている協会に行きたいらしい。
アクアはすぐに拒んだけど・・・
「ならギリアス博物館なんかどうだ?」
「ギリアス博物館?」
ギリアス博物館はどんな所か聞くとこの王都が出来てからの歴史を公開している博物館で、昔の彫刻や武器、人々の生活感等や有名な画家が描いた絵の見学や、食器作りが体験出来るといったものまであるという。
・・・個人的に食器作りをしてみたいな・・・
その他にもオススメが思い付いたようでここから数分は歩くが全国の料理が楽しめる、日本でいうB級グルメを揃えた店やちょっと値は張るが自分の思い描いたアクセサリーをそのままの形で作れる店等があるという。
ならその3つに行くか・・・
皆もそれに決めたらしくディー達が道案内をしてくれた。
◇◆◇◆◇◆
最初は博物館に来た。
入場料は1人2000エリス。
俺達はそれぞれで払って中に入った。
因みにディー達も同行してきた。
広い。
この博物館は4階建てで、1階は普通のロビーや休憩室、噴水等があり、展示物は2階からとなる。
それぞれの階へは階段のみ。
・・・まぁエレベーターとか無いしね・・・
俺はシノア、レイシャ、めぐみんと一緒に見て回る事となった。
久々のデートッスね。
2階では王都の歴史が紹介されていた。
こうして見ると技術はさすがに日本より劣っているが個人個人が持っている知識と知恵でここまで発展させたんだな・・・というのが鮮明に見える。
あ、リーリス王女が自慢してたガラスのチェスのレプリカがある。
作った人はもう亡くなってるのか・・・
にしても細かいな・・・
どうやったらこんな風に機械無しで作れるんだろう・・・
今時の日本では複合加工機といって、プログラムが組まれた機械で色んな方向から加工出来る機械に大半の金属製品は頼っている。
そんな人達にこれを手作業で作れと言ったら無理って言うんだろうな・・・
俺も工業高校に行ってたが、これ程の細かい細工は到底出来そうに無い。
本当、こういった技術を持つ人には感心する。
王族や貴族がしていた衣類なんかも展示されていた。
こうして見ると派手なのがよく分かる。
スカートは大きくて邪魔になりそうだし・・・ウエスト部分もかなり細い・・・確かコルセットって名前の筈だ。
そして帽子も。
白く輝いていて、縁が凄く広く、装飾の花も大きい。
中には宝石を服にあしらえたのもある。
武器を展示しているエリアでは重そうな鉄の甲冑が飾られていた。
今思うとこんなんでよく戦闘なんか出来たな・・・
身体全体を包んでいるからかなり動きづらそうだ。
けど近代につれてデザインは変わっていき、甲冑部分が少なくなっていた。
・・・これはこれで身を守る部分が減ったから安心出来ない・・・
人って我儘だな・・・とつくづく思う。
3階では絵画が飾られていた。
・・・なんかゲルニカっぽいやつもあるけどこれで1枚の数千万とか数億円するんでしょ?
う~ん・・・価値観が分からん・・・
中には適当に書いたような絵もあって『これ・・・俺でも描けそうじゃん』と声で出かかった・・・
絶対に絵画関係の人に聞かれればブチギレされんの間違い無しだな・・・
だが中には美しい風景画等が描かれている作品もあり、こちらは価値観の知らない俺でも凄いというのはよく分かった。
4階では絶滅した生き物の骨格や標本が飾られている他に、その階で体験教室はあるみたいだ。
4階に行くともう皆集まっていて俺達待ちだったようだ。
どうやら皆、既に食器作りの体験の代金は自分のは自分ので支払ったらしい。
・・・やる気満々だなおい。
まぁ俺もやりますけどね。
俺達も代金として1500エリスを支払い、体験教室の部屋に入った。
中には他の観光客が既にいて老人から幼児まで様々な年齢層の人達が椅子に座って待っていた。
体験教室の説明が始まり作り方を教わる。
・・・
まぁ使った事ねぇから使ったとしても失敗するのは目に見えてるけどな!
今回は板状にした粘土を丸く切り取り、木製の半球の上に乗せ、足を付けるといった作業のようだ。
なんだ・・・簡単じゃねぇか・・・
ならここは工業人らしく完璧に仕上げてやろうじゃねぇか。
・・・と思ってた時期が私にもありました・・・
粘土硬すぎだろ!!!!
全体的に均そうとしたら力込め過ぎて部分的にヘコむし、補正しようとして粘土継ぎ足そうとしたら乾燥してボロボロ崩れるし、専用の道具があるらしくそれを使ったら厚さがまた他の部分と変わっちまったし!
てか何でお前らそんな綺麗に出来てんの!?
・・・あ~そっか・・・こいつら工業関係じゃないから難しく考えずに直感でやって楽しんでんのか・・・
くそ・・・製造関連で一方リードしてたと思ったらその知識が逆にマイナスになった・・・
誰かさんに至っては『工業高校出身ww』と鼻で笑われながら言われた・・・誰かさんの名前は言いませんがね。
まぁ足に関しては上手く出来ました。
てか乾燥ってどうすんだ?
焼き物って乾燥させんのにも時間掛かるし・・・
と思ったら担当の方が魔法ですぐに乾燥させました・・・
魔法って便利デスネー・・・
次は色付けだがそれぞれで好きなマークを書いていた。
俺はGOD EATERのマークが好きだったから書こうとしたけど・・・細すぎるから止めた。
別に失敗を恐れてたからじゃ無いんだからな!?
という訳で結局俺は白と黒の勾玉が合わさって円になったマークを書いた。
完成した所で担当の方が作品を集め、それぞれの出身を書いて、そこで今回の体験は終了となった。
作品は後日焼いた物を書いた出身の所に馬車便で送るとのこと。
俺達は教室を後にすると昼時となった為、次はB級グルメの料理が集まる店に向かった。
◇◆◇◆◇◆
そのレストランに着いた。
こうして見ると・・・フードコートだな・・・
そして昼時の為か人が多い。
そして店の種類も豊富で料理に関しても一つ一つの値段で高いのは2千エリスを超え、安いものでは5百エリスと様々。
席を取り、今回はすぐに目に入った中華っぽい料理を提供している店にした。
オススメを1つと言って注文を取った後でなにやら紙と黒くて1辺3cm、厚さ5mm薄い正方形の板を渡された。
紙が何の意味を成すかは分からないけど、多分これ、日本でいう料理が完成した時に鳴らすブザーみたいなものかな?
席に戻ると料理を既に持って来ている奴もいた。
数分経った頃、突然黒い板が縦や横に綺麗に割れ始め、簡易的な1体の小さな人形が完成していた。
すげぇ!
その人形は紙に何かを書き始め、書き終えたのか俺に見せてきた。
《料理が出来ました》
紙にはそう書かれていた。
・・・そこは人形に話させても良くない?
何故わざわざ紙に書かせるようにしたん?
疑問もさておき紙と人形になった黒い板を持って先程の店に行く。
おう!海鮮風炒飯ですか!
海老やイカ、帆立、その他にも色んな具材が盛り沢山で乗ってる。
この店当たりだな。と心の中でガッツポーズした。
料理を持ってテーブルに戻り食べ始める。
・・・美味ぇ!
ひたすら食べていき、すぐに無くなってしまった。
美味かった・・・
因みにアクア、フィーリィ、ダクネス、ミーナはスパゲティ。
和真、シノア、ディーはハンバーガーセット。
めぐみん、ゆんゆん、レイシャ、ティリアはピザをそれぞれで食べていた。
食事を終えてレストランを後にし、ディー達ともここで別れ、最後のアクセサリーショップに行く事にした。
◇◆◇◆◇◆
カランカラン!
「いらっしゃいませ~!」
ドアに付いていたベルが鳴り、店員が挨拶する。
見た感じ、どうも既に作られているアクセサリーも販売しているみたいだ。
アクセサリーを作りたいと言うと使う物によって1人1人値段が変わっていくらしい。
1番安い装飾品は1つ100エリス、1番高いのは1万エリスもする。
使う紐はネックレス、ブレスレットの2つとその他にバッジがあり、順に1500エリス、750エリス、370エリスという。
俺はブレスレットは持ってるからバッジでいいかな。
今、外出用として日本の制服を着てるけど付けてるバッジは校章だから味気ないし。
どうやって作るのかを聞くと紙にイメージを書いて使いたい装飾品を選んでお金を払い、専用の機械に入れたらすぐに完成するのだとか。
早速皆、デザインを書いたり、使う装飾品を選んでいる。
少しカッコつけるか・・・
そう思ってめぐみん、シノア、レイシャを呼び、「俺が払うから好きなの選んでいいよ」と言うと嬉しがってそれぞれで選び始めた。
・・・カッコつけたのはいいけど財布の中身が心配です・・・
不安を他所に3人が選び終わった。
めぐみん、シノア、レイシャは同じ装飾品で共に2500エリスとなり、装飾品のみで計7500エリスとなった。
・・・良心的な彼女達で良かった・・・
3人は揃ってブレスレットにしていたから合計で9750エリスとなった。
俺も選ぼうとしたら3人がお揃いにしましょうと言ってきた。
あ~、だから選んだ装飾品と値段が同じだったのね。
ならここは乗っとこうと思って俺も同じのとバッジを作る事にした。
計12370エリス・・・
まぁ十分な金額だろ。
イメージの紙を黒い箱の上にある、薄い蓋がプリンターのスキャナー部分のように開きそこに入れる。
店員が黒い箱の側面にある取手を引くとドアのように開き、そこに装飾品と紐を入れる。
最後にスイッチを店員が押すとブウウゥゥゥゥウウン・・・と鳴る。
これって・・・まさか・・・
「竜弥さん・・・これって・・・」
「シノア、言うな・・・俺も思ってんだから・・・」
多分完成の時は・・・
丁度完成したようだ。
その証拠に・・・
チンッ!
と音が鳴った・・・
「これ・・・電子レンジ・・・」
「だから言わなくてよかったのに・・・」
確かに俺も思ったよ?けど言わない方が良かったんじゃないですかね?
完成品は綺麗に輝いていた。
俺の彼女達もお揃いを作れたのが嬉しいようだ。
にしてもまだまだ王都には行ってみたい所が沢山ある。
皆は宿に着いても地図を囲んでワイワイと話していた。
やはり王都はいいな・・・とつくづく思う1日でした。
やっぱほのぼの回は落ち着く・・・
感想、誤字脱字報告お待ちしております。