慰めて・・・
ギルドに戻って来た。
中では所々で宴会をやっていてミーナは黒髪で1部が白く、口元をマフラーで隠したジト目の男性とテーブルで食事を摂っていた。
「・・・ども」
「ん?っ!?え!?あれっ!?帰ったんじゃないの!?」
男性は帰るらしく「・・・帰る」とミーナに短く挨拶してギルドを出ていった。
俺はミーナの横に座り、依頼主の父親に置いてかれたと説明すると「あ~・・・」と同情の目をされた。
その横で腹が減ってたので料理を注文した。
だが置いてかれたのは変わらない事実な為、テーブルに顔を突っ伏してしまう。
「だ・・・大丈夫?」
「まぁお金は持ってきたから大丈夫・・・それと近くに安い宿があったら聞きたいんだけど・・・」
再びミーナが考え込む仕草をした。
でも良さそうなのは全部満員でキャンセル待ち。
空いていてもサービスが微妙だったり、ボッタクリだったりするらしい・・・
え~どうしよう・・・流石に野宿は避けたいよ・・・
料理が来て食べ始める。
美味ぇ。
「なら私の部屋に来る?」
「いい宿が無いならその方が・・・・・・はぁ!?」
ミーナの突然な提案に素っ頓狂な声が出てしまった。
「?何か変な事言った?」
「もろ言ってるだろうが!?」
何でキョトンとした顔してんのさ!?
男女だよ!?
俺だって年齢は18いってんだぞ!?
「あぁ、私そこん所は気にしてないから大丈夫だよ?」
「そっちが気にしなくてもこっちが気にすんだよ!」
ならどうするの?と言われてしまった・・・
え?マジで・・・?マジで泊まるの?
「言っておくけど襲おうとしても無理だよ?」
「は?」
ミーナが立ち上がって「殴ってみて?」と言われる。
一瞬
何か魔法で相手の動きを封じるのだろうか?なら相手が悪いな。
何せ俺は魔法の全てを相殺する【人間失格】や魔法を跳ね返す【
俺は魔法を使われたら即相殺してやろうと思って拳を突き出し・・・・・・
ドサッ!
・・・・・・気が付けば俺はギルドの床に仰向けになっていた。
ミーナはどうだ!と言わんばかりに仁王立ちしている。
ちょっと待て・・・・・・?
これってまさか・・・
「合気道・・・?」
「へぇ・・・まさか知ってるとはね・・・」
知ってるも何も結晟さんの得意技の一つだ。
合気道は昔からこの世界にもあるようで年配の師匠から教わったらしい・・・
まぁ・・・うん・・・結局の所・・・泊めさせて頂くことになりました・・・
その際だが、この王都に関しての面白い事を聞いていた。
「あ~でもあれは1番面白かったな」
「ん?あれって?」
「うん。前にここにアクセルの街から貴族が来た事があったんだけど道中でバナナを食べててポイ捨てした事があったらしいの。その先に王都の貴族がいてそれに気付いたから転移魔法でアクセルの街の貴族の足元にバナナの皮を転移させてすっ転ばせたんだって」
ナニソレ笑えるw
「そしたら『誰だ!バナナの皮をポイ捨てした奴は!』って顔を赤くして喚いてたらしいよ」
ポイ捨てした本人なのに本当に笑えるよね~とミーナは腹を抱えて笑っていた。
「父親がそんな感じなのに息子さんがちゃんとしてるから養子なんじゃないか?って噂もあるけどね」
へぇ、父親はダメで息子が・・・しっかり・・・して・・・る・・・?
ん?なんか引っ掛かるな・・・
「なぁ、その貴族の名前って分かる?」
「確か・・・ある・・・ある・・・・・・アレクセイ・バーネス・なんとか・・・って人だったかな?」
よし、パーティメンバーにも教えて情報をバラ撒いてやろう。
◇◆◇◆◇◆
「ん?あれ!?ミーナちゃん!その子彼氏かい!?」
宿の管理人のオバサンがミーナと俺を見た途端にそんな事を言った。
「まぁ遠からずかな?今日初めて王都に来たみたいで案内とかしてたの。で泊まる場所が無かったから1日だけ私の部屋に泊めさせてほしいんだけど・・・」
オバサンは即OKを出して寝具や夕飯はこっちで任せて!と言っていたので俺はミーナの部屋に案内された。
オバサンの横を通り過ぎようとした際に「頑張んな」と俺にしか聞こえない声で言われたけどオバサン・・・誤解だからな・・・?
◇◆◇◆◇◆
「ここが私が泊まってる部屋だよ」
意外とスッキリしていた。
女性の事だから沢山の服が散らばってると思っていた。(失礼)
「今、意外とスッキリしてるって思ったでしょ?」
ミーナがジト目で俺を見てきた。
察しがいいようで・・・
布団はこの後宿主が持ってくるからゆっくりしていようとのこと・・・いや・・・泊めさせて頂いてる時点で十分だけど・・・でも折角持ってきてもらうのでこの人達の好意に甘える事にした。
「私はこの後バーで友人と飲みに行くんだけど君はどうするの?」
なんなら一緒に行く?と言われたが俺は断っておいた。
じゃあねと言ってミーナは出ていった。
俺は窓を開けて星を眺める。
ふぅ・・・やっぱ星空は落ち着くな・・・
ガチャ!
ミーナが出ていった数分後にドアが開いた。
宿主が布団を持ってきてくれた。
なんだ・・・あの子はいないのかい・・・と言ってたが・・・まぁスルーしていいだろ・・・
俺は布団を敷いて早速寝る事にした。
◇◆◇◆◇◆
彼を部屋に置いてドアを閉める。
「まさかね・・・」
私は懐から、ある紙を取り出した。
とある人物から貰った新聞だ。
ページを捲ってある記事を見る。
【アクセルの街でデュラハンが出現!冒険者の青年が単独で撃退、2度目の襲撃では強力な魔法で討伐を果たす!その青年の名は────】
「イチジョウ・・・リュウヤ・・・」
自然と口角が上がる。
イチジョウリュウヤ・・・この青年の評判は王都では1部の物好きしか知っていない。
他は『どうでもいい』、『偶然だ』という考えだからだ。
だが私は違うと思った。
私の知り合いがアクセルの街にいて、私はその人に小さな絵画を送ってそれと引換にその者の情報を買っていたからだ。
もし・・・この記事の事が本当だったらその者はかなりの実力者だと思ってる。
そして今日会った青年・・・
同姓同名だ・・・
まだ確信は持てないがほぼ本人で決定だろう・・・
「面白くなってきた♪」
私は高揚して酒場へ足を運んだ。
◇◆◇◆◇◆
翌朝
「ん・・・・・・っ・・・・・・」
ゴロンと寝返りを打つ。
フニッ────
何かが顔に当たった。
なんだろう・・・暖かい・・・というか、人特有の暖かさだ・・・
ずっと感じていたい・・・そう思ってギュッ・・・と抱き締める。
「ん・・・・・・っ」
・・・?声が聞こえ薄らと目を開ける。
目の前にはミーナがいた。
すぅ・・・すぅ・・・・・・と寝息を立てている。
あ・・・・・・・・・ミーナか・・・・・・・・・・・・・・・帰って来てたんだな・・・・・・・・・
眠い・・・もう少し寝よう・・・
・・・・・・・・・・・・・・・ん?
待て・・・・・・?
ミーナはベッドで寝てる筈だよな?
俺の意識は一気に覚醒し・・・
「うおおおぉぉぉぉおおお!?!?!?」
物凄い速さで部屋の隅に下がった。
「ん~・・・・・・何~・・・?煩いな・・・」
ミーナも目を覚まし、目をゴシゴシと擦る。
「何でアンタが布団で寝てんだよ!?ベッドがあったじゃねぇか!?」
キョトンとした目で俺を見る。
「あ~ごめんね~昨日酔っちゃってそのまま近くにあった布団に入っちゃったのかも」
ミーナはそう言って誤ってるがどうも軽い・・・
てかレイシャとのデジャヴを感じるんだけど・・・
ゴォーンゴォーンと音が響く。
振り子時計の音で時計は8:00を指していた。
俺は立ち上がり、服装を整える。
「?どっか行くの?」
「朝食だ」
「ならちょい待って~私も行くから~」
俺が出ていくとミーナは着替え始め、数分経って出て来た。
◇◆◇◆◇◆
俺とミーナは今、ギルドで食事をしていた。
「今日で帰るの?」
「まぁパーティメンバーに土産を買ったらな」
「ならドリトン通りがいいかも、あそこは観光地でお土産屋とか沢山だし」
ミーナは「因みにその通りはあっちだよ」と言って指を差す。
俺は礼を言って朝食を食べ終え、その通りに向かった。
ミーナはパーティメンバーに会いに行くと言って俺達は別れた。
◇◆◇◆◇◆
「おぉスゲェな・・・」
ドリトン通りには数え切れない程の土産屋が並んでいた。
数十万エリスと高い物から数百エリスと安い物があったりと様々だ。
その1つの店に入る。
魔法具店だ。
「和真には防御力を上げる腕輪・・・女性陣は髪飾りだな・・・」
そう思いながら合いそうな物を選んでいく。
自分には時計。
和真には防御力の上がるモノトーンの腕輪
アクアには雫の形をした髪飾り
フィーリィには小鳥の髪飾り
シノアにはリボンの髪飾り
ゆんゆんには星の形の髪飾り
めぐみんには猫の髪飾り
ダクネスには盾の髪飾り
レイシャには髑髏の髪飾り
を買っていった。
圧倒的な髪飾りの多さは・・・うん・・・言わないで下さい・・・
あ、レイモンドとリルムのも買っておこう。
俺はそう思ってレイモンドにはガラスのペン
リルムには女性のイラストを買った。(店員からは生暖かい目で見られた)
合計で6200エリス。
これをウィズの店で買ったら何十万とするんだろうな~と苦笑して店を出た。
時計塔を見る。
10:40・・・
馬車が出るのは10:45だからそろそろか・・・
俺が馬車の止まる所に行こうとした時だった。
ドン!
誰かに後ろからぶつかられた。
振り向いて見てみると金髪で巻き髪と漫画に出てきそうな女性が転んでいた。
帽子を深々と被っている為、顔は見えていない。
「悪ぃ、大丈夫か?」
「えぇ何とか・・・って丁度いいですわ!貴方・・・私を匿って!」
「はぁ?」
なんでも悪い奴らに追いかけられているのだとか・・・
なら・・・
「【フィルターフィールド】」
透過魔法を搭載させた【フィルターフィールド】を展開する。
向こうからくるみ割り人形の服を着た男性2人が駆けてくる。
「どこ行った・・・!?」
「分からん・・・兎に角、手当り次第に探せ!」
2人はそう言ってこの場を離れ、姿を消した。
それを見計らって【フィルターフィールド】を解く。
「行ったぞ」
「助かりましたわ。それではこれで」
女性は一礼して足早に去っていった。
「何だったんだ・・・?まぁいいや、そろそろ・・・・・・・・・ん?」
足元に紐の付いた光る丸い物が落ちていた。
拾って見てみる。
金のペンダントのようで盾に2匹のライオンが2足で立っている絵が掘られていた。
返そうにも既に本人はいない・・・
どうするか・・・
誰かに預けようとしたその時だった。
「馬車がまもなく出発しま~す!乗車する方は至急お乗り下さ~い!」
ヤバッ!!!!
俺は仕方なくペンダントをポケットに入れ、馬車に乗り込んだ。
◇◆◇◆◇◆
5日ぶりにこの家に帰ってきた。
「ただいま~!」
「おぅおかえり!王都はどうだった?王族とかに会えたか?」
帰って早々に和真が聞いてくる。
そう簡単に王族には会えねぇよと言ったらやっぱりか・・・と残念そうな顔をした。
「っとこれ土産だ」
そう言って俺は和真に腕輪を渡す。
そして他のメンバーにも土産を渡していった。
◇◆◇◆◇◆
夕飯を終え、ペンダントを見ながらソファーで寛いでいる。
裏を見ると《アリア・ヘイン・オードス》と書かれている。
響きからして女性。
間違いなくぶつかったあの人の名前だろう。
先に風呂に入っていたダクネスが俺に入っていいと言ってくる。
さてと・・・んじゃ入るか・・・
そう思ってペンダントをポケットに入れようとした時だった。
「リュウヤ、そのペンダントはどうしたんだ?」
「ちょっとな・・・」
ダクネスがペンダントを指差して聞いてきたので渡してみた。
だがダクネスの雰囲気はそのペンダントを見た途端に変わる。
「リュウヤ・・・なぜお前がこれを持っている?」
ダクネスが目を細め、俺に聞いてくる。
「いや・・・金髪の女性とぶつかって、そん時にその人が落としたんだと思う・・・」
俺が説明するとダクネスがハァ・・・と溜息をして手で顔を覆う。
そして俺の両肩を掴んだ。
「リュウヤ、落ち着いてよく聞け」
「お・・・おう?」
ダクネスの発言に俺は驚愕する事になる。
「このペンダントはその国を収めているオードス家・・・つまり王族の物だ」
俺はとんでもない人からの落し物を拾ったようだ。
はい、ご都合主義アザーっす!○┓
この素晴らしい世界にイレギュラーを!誕生秘話は次回お送りします。
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