誤字脱字報告してくれた読者様・・・マジですみません・・・
「猛毒を持ってて、大男の魔王軍幹部・・・ですか?」
「あぁ・・・ウィズなら知ってるんじゃないかと思ってな・・・」
俺とレイシャは今、湖の近くにいたアクアとダクネス、フィーリィを除いたパーティメンバーとウィズに合流していた。
ウィズはう~ん・・・と顎に手を当てながら首を傾け、思い出そうとしている。
「何だかんだ言って、リュウヤはリュウヤなりに調べてたんですね」
「・・・別にそんなんじゃねぇし・・・」
和真が俺をジーッと見てる・・・なんすか?
「ツン条デレ弥」
「お前ちょっと裏に来い、ゆっくり話でも聞いてやるから」
「冗談冗談・・・んで、どうすんだよ?探すっつっても情報が少な過ぎねぇか?大男なんざここにはゴロゴロいたしな」
「まぁ・・・な・・・」
う~ん・・・このアルカンレティア内をくまなく調べるってなると骨が折れる・・・
どうすっかなぁ~・・・
俺が対策を考えてると噴水の方でアクアの声がした。
気になって皆で行ってみる。
◇◆◇◆◇◆
「我が親愛なるアクシズ教徒達よ!この街では現在、魔王軍による破壊活動が行われています!」
「「・・・ます・・・」」
「何が行われているかと言うとこの街の温泉に毒が混ぜられています!既に多くの温泉で破壊活動が行われている事が判明しました!」
「「・・・しました・・・」」
・・・なんかアクアが噴水の淵に立って高らかに演説、ダクネスとフィーリィは座って小さな声で何かを言っていた。
・・・何やってんだ・・・?
傍聴者の1人がさっき温泉に入ったけど何も無かったと告げる。
アクアはそれらを次々と浄化して回っていたらしい・・・
「でもまだ安心は出来ません!そこで皆さんにお願いがあります!この問題が解決するまでは温泉に入らないでほしいのです!」
傍聴者数人が「温泉の街なのに温泉に入るなって言われてもな・・・」、「大体何の目的で魔王軍が?」と疑問や文句をアクアに突きつける。
「それは・・・アクシズ教徒の収入源を潰す為です!そう!魔王軍は貴方方アクシズ教徒を恐れているのです!」
どうすっかなぁ・・・一旦引き返して情報整理すっか・・・
俺が帰ろうとした時だった。
ウィズが俺を呼ぶ。
「どした?」
「リュウヤさん・・・1人だけ先程の条件が揃った魔王軍幹部がいます」
「!そいつはの名は!?」
「名前はハンス・・・デッドリーポイズンスライムで変異種の魔王軍幹部です」
ハンス・・・ね・・・ってデッドリーポイズンスライムの変異種?
スライムといえばモンスターの中では最下級モンスターじゃん。
「なんだよ・・・スライムならあまり危険視する必要はねぇな・・・」
「え?リュウヤさん、スライムが怖くないんですか?」
「?まぁ雑魚だしな?ウィズだってスライムくらい余裕だろ?」
「私は魔法でどうにか出来ますけどスライムは物理攻撃は殆ど効きません。まとわりつかれたら消化液で溶かされるか、呼吸器官を塞がれて窒息死するんです。しかもデッドリーポイズンスライムと言ったら猛毒の持ち主なので触れたら即死なんですよ?」
・・・・・・えっと・・・・・・・・・マジっすか・・・?
え!?待って!?スライムって雑魚モンスターじゃないの!?
『実を言うとスライムって結構強いと思うんですよ。スライムはほぼ100%が水分です。なら剣で斬っても元に戻るでしょうし、絡まれたら恐らく溶かされるか、呼吸器官は塞がれて呼吸出来なくなって窒息死するかもしれませんね。もしも猛毒の持つスライムでしたらなお厄介ですよ』
澄玲の言ってた通りになっちゃったよ!!!!
え!?どうしよう!?急に不安になったんだけど!?
「顔のイラストならありますけど・・・見ます?」
「・・・一応な」
ウィズが懐から1枚のイラストをみ・・・・・・せ・・・・・・・・・え?
「この人・・・俺会ってるぞ・・・!?」
え!?あの人が魔王軍幹部・・・!?
俺は驚きを隠せなかった。
そして向こうでも騒ぎが酷くなってる。
どうやらアクアの無意識な浄化能力で温泉をただのお湯に変えてしまっていたのがバレたらしい。
「新手の詐欺ね!何企んでるの!?私達、こんなに世の中を良くしようとしてるのに!」
おい、世の中を良くしようとしてるならしつこ過ぎる勧誘はどうなんだ?
あれじゃあ洗礼と言うよりは洗脳だぞ?
「あ~もうっ!なら私の正体を明かします!お集まりの敬虔なるアクシズ教徒達よ!私の名はアクア。そう・・・貴方達の崇める存在・・・水の女神アクアよ!貴方達を助ける為に私自らここに来たの!」
アクアが神々しく日光に照らされる。
まぁ頭のおかしい奴が集まってるアクシズ教徒なら信じる────────
「ふざけんな!!!!」
「!?」
「青い瞳と髪だからってアクア様を語ると罰が当たるよ!!!!」
「!?!?」
訳はありませんでした・・・
「さてはお前、この街を破綻させる為に来た、魔王軍の手先だろ!」
あ・・・女神どころか魔王軍幹部にされましたね・・・
◇◆◇◆◇◆
宿に帰ってくるなりアクアは号泣してる・・・
ダクネスにペンダントはもう返した。
「一生懸命なのは分かりますが自分を神様と呼ぶのはさすがにどうかと・・・」
「でも・・・あんな汚染された温泉に入ったら病気になっちゃうじゃない」
和真に「あんな目に遭ってまで助ける必要なんかないだろ?」と言われるも「でもこのままだと私の可愛い信者達が・・・」と諦められないようだ・・・
俺個人でも何か引っ掛かりを感じてる・・・杞憂だといいんだが・・・ちょっと考えるか・・・
そう思って思考を巡らせる。
怪しいのは源泉だ。
でもここの管理施設にはギドーという管理人がいる。
ギドーという人物の言ってた事を思い出していた。
『私がここの管理人のギドーです』
『えぇ・・・温泉の管理をしている者から聞いたのですが貴方様の言う通り、効能が落ち始めているらしいのです・・・ですが・・・』
『まぁ温泉の管理は向こうで何とかしてくれるとは思っているのですがね・・・』
あそこの管理人・・・・・・・・・温泉の管理をしている者から聞いた・・・・・・・・・温泉の管理は向こうで何とかしてくれる・・・・・・・・・という事は温泉の管理をしてる人と場所は別々にある可能性が・・・た・・・・・・か・・・・・・・・・え?別々に・・・?
そういえばあの人は岩山を見上げてたな・・・
俺はふと、岩山を見た。
温泉が流れてる岩山は結構高い。
なら地上に管理施設を置かずに岩山に設置すれば・・・・・・・・・ん?
・・・・・・・・・まさか・・・・・・・・・!!!!!!!!
そうか!!!!しまった!!!!完全にやらかした!!!!
俺はある事に気付いてすぐに宿を出て岩山に向かって走り出した。
「ちょっ!?リュウヤ!?どうしたの!?」
後ろを見るとレイシャが走ってきていた。
「どうしたもこうしたもねぇ!完全に見落としてたんだよ!!!!」
「どういう事!?」
「馬鹿な勘違いだ!ここを管理してる施設があそこ1つでそこに温泉を管理してる人もそこにいると思い込んでたんだ!!!!」
くそっ!前世での知識が邪魔をした!
施設の中にそれぞれの窓口があってそこで全体的な管理をしてると思ってたが違う!!!!
管理施設としての名前は同じだが温泉を管理してる場所と人は地上からは離れてて岩山にあったんだ!!!!
つまり俺が行った所は無駄足だったんだ!!!!
最初から岩山の方で話を聞けば少しは対策が出来たはずなのに!!!!
「レイシャ!時間がねぇ!お前の事抱えるぞ!」
「えっ!?ちょっ・・・!?」
レイシャの返事を待たずにレイシャを抱えて【フライ】と【ソニック】を使う。
「そこのお前!!!!今すぐに止まれ!!!!」
門前には槍を構えた門番がいる。
マズイな・・・
「リュウヤ!私がやるから背中に乗せて!」
「お・・・おう!?」
レイシャが背中に跨って、持っていた弓を引く。
「───────!!!!」
何かを言ったのか、水色の魔力の矢が2本飛んでいく。
門番は槍で防ごうとしたが、その矢は門番2人に吸収された。
そして門番達は崩れるように倒れた。
「・・・何やった?」
「【スリープアロー】・・・まぁ眠らせたってわけ」
・・・意外とアンタも過激だな・・・?
俺は門を通り越して源泉が湧き出ている所へと向かった。
◇◆◇◆◇◆
コポコポ・・・と綺麗な温泉が毒々しい色に染まっていく。
「遅かったか・・・!!!!」
目の前にいるのは混浴で会った男性。
「ん?お前・・・混浴にいた・・・」
「まさか・・・アンタが魔王軍幹部だったとはな・・・」
「・・・あ?何言って────」
「『デッドリーポイズンスライム』・・・直訳すりゃ死毒のスライムだ・・・そんな奴が神聖な温泉に入るのは自殺行為に近い・・・だからお前はここを消したいが為にここの管理人を殺し、毒を下の温泉地に流す為に源泉が湧き出ているここを最後を狙った・・・違うか?魔王軍幹部でデッドリーポイズンスライムの・・・ハンスさんよ?」
ハンスがゆっくりと立ち上がる。
「おいおいよしてくれ。俺が魔王軍幹部?どこに証拠があるってんだ?」
「いや・・・証拠も何もお前が今やってる事は何だよ?」
「え?・・・あ・・・」
頭隠して尻隠さず・・・ってか・・・?
それにまだ疑問はある。
「リュウヤ~!レイシャ~!」
後ろから声を掛けられる。
あいつらも来たのか・・・
まぁアクアなら浄化出来るし人数は多いに越したことは無い。
「ってあれっ!?ハンスさんですか!?」
ウィズがハンスを見つけた途端に「ヤバッ!」と言うような反応を本人が示す。
「あれ?あの人って・・・」
「あぁ・・・混浴にいたあの人が今回の騒動の元凶だ・・・」
アクアは殺る気満々で手の関節を鳴らしている。
まぁとばっちりを受けた身だから分からなく無いな・・・
「少し急用を思い出したので俺はここでしつれ────」
ハンスがその場から去ろうとするが俺達が立ち塞がる。
「どこへ行こうというのだハンス!」
「あ、はい」
「ここは通さないわよハンス!」
「あ、はい」
「そんな言い訳が通じると思うのですかハンス!」
「あ、はい」
「皆の憩いの場を汚すなど許されることではありませんよハンスさん!」
「あ、はい」
「お・・・大人しく投降してくださいハンスさん!」
「あ、はい」
「では皆でやっちゃいましょうか、ハンスさんを」
「あ、はい」
「貴方が必死に許しを乞う所を見てみたいわねハンス」
「あ、はい」
「悪足掻きはその辺にしてそろそろ正体を現せよハンス!」
・・・立ち塞がるのはいいけど名前を一々呼ぶ必要ありますか?
「チクショォォオオオ!!!!ハンスハンスと気安く呼ぶんじゃねぇ!てかハンスハンスうっせぇわ!!!!ウィズ・・・お前店出すとか言ってたよな!?温泉街を彷徨いてないで働きやがれ!」
その文句、今回の原因のバニルに言ってもらえません?
ウィズもウィズで「私だって頑張ってるんです!なぜか働く程に貧乏になっていくのですが・・・」と力無き反論をする・・・というかもうバニルが店長やれば売上が上がると思うのは気のせいでしょうか?
そしてハンスは今迄の行動は隠密にしていたらしい。
「ウィズ・・・確かお前結界の維持以外では魔王軍に協力しない・・・その代わりに俺達に敵対をしないっていう互いの不干渉だったはずだが?それなのにどうして俺の邪魔をする?」
ウィズは結界の維持以外では協力しない代わりに敵対をしない事を条件に不干渉だったのか・・・初めて聞いたな・・・
ウィズとしては恐らく久し振りに会ったから話しかけたつもりなのだろうが向こうからしてみればそれ自体が邪魔っていう感じだったんだな・・・
「それでどうするんだウィズ?俺と殺り合う気か?」
「待って下さい!この人達は私の友人なんです!話し合いでどうにか出来ませんか!?」
「相変わらずリッチーになってからは腑抜けてるんだな?お前がアークウィザードとして俺らと殺り合ってた時は話し合いなんて言葉一言も出なかったがな!」
・・・ウィズってリッチーになる前はヤンチャしてたんだ?
結構以外。
「今ここにネイフィアの奴がいたら喜んでお前と戦────」
「その方の話は止めて下さいと言った筈です」
心做しかウィズが顔を顰めている。
「なんなら今から呼んでお前とネイフィアで殺りあ────」
「もう1度言います・・・あの人の話は止めて下さい」
さっきからウィズはネイフィアという人物に酷く反応している。
ウィズとそのネイフィアって人の間に何かあったのだろうか?
「ウィズ、コイツとは顔見知りなんだろ?闘いづらいだろうから下がっててくれ・・・」
和真が前に出て小太刀を構える。
「俺の名は佐藤和真。数多の強敵を屠りし者!」
・・・屠った事あったっけ?
少し不安になったので和真の横に立ち、【昴雀】を構える。
「一条竜弥、お前を倒す男の名だ」
スライムって聞いて余裕だとは思ったけどウィズの話だとメチャクチャ強いみたいだからな・・・色々と魔法を使うしかねぇな・・・
「行くぜ?相棒・・・」
「チュンチュン丸」
「違う!」
お前らコントやるならあっち行け・・・
「どうするよ和真、相手はデッドリーポイズンスライムとはいえ、魔王軍幹部だ・・・簡単には倒せねぇぞ?」
「あ?スライム?ならよゆ・・・・・・・・・・・・え?魔王軍幹部?」
「?あれ?ウィズかレイシャから聞いてなかった?」
俺は2人に目配せする。
「私・・・リュウヤさんから聞かれた後は誰にも言ってませんよ?」
「私も魔王軍幹部とは聞いてなかったわね」
和真を見ると汗をダラダラと垂らしている。
あ・・・この反応は素で聞いてねぇし、俺も言ってなかったわ・・・
「ほう・・・俺を知ってるとはな・・・その通り・・・俺の名はハンス・・・魔王軍幹部の1人でデッドリーポイズンスライムだ・・・!!!!さぁ!!!!掛かってくるがいい!!!!勇敢な冒険達よ!!!!この俺を────」
「すみませぇぇぇええん!!!!本当にすみませぇぇぇええん!!!!」
ダクネス、ウィズ、俺、レイシャ、シノアを除いたパーティメンバーが即刻離れていった・・・つか逃げた・・・
その場に残った俺達も和真達の後を追った。
◇◆◇◆◇◆
和真達は物凄い速度で下山していく。
「ちょっと!なんで逃げるの!?」
「魔王軍幹部だぞ!?準備も整ってないのに闘えるか!!!!」
和真が突然立ち止まる。
引き返すつもりになった・・・・・・んじゃないな・・・
視線の先には大勢の人と松明、そして「魔王倒すべし!悪魔シバくべし!」と皆が揃って言っている。
「・・・何あれ?」
「あ・・・いや、お前とレイシャが出ていった後に襲撃された・・・」
・・・てことは・・・?
・先程のルートを戻る。
→ハンスと戦う。
・このまま逃げる。
→奴等に襲撃される。
・・・詰んでね?
和真はもう「源泉は諦めよう」と言い出した。
アクアは未だに源泉をどうにかする気だ。
でも和真とめぐみんは乗り気じゃないようで・・・
「もういいわよ!」
アクアはそう言って1人で来た道を引き返した。
・・・はぁ・・・まぁ、でもやるしかねぇんだよな・・・
「どっちみち、やるしかねぇだろ・・・」
「・・・はぁ・・・しょうがねぇなぁ」
「素直じゃありませんね。お2人さん」
「るっせぇよ」
ま、向こうが殺る気ならかこっちもそれ相応で行かせてもらうがな・・・
俺達はハンスと戦ってアクアを連れ帰る為に、来た道を引き返した。
自分の名前でいじられる竜弥。
今の所
・ロリ条竜弥
・ツン条デレ弥
が存在してます。
増やしたい方はご自由に
個人的にツン条デレ弥が語呂の良さで笑った。
☆~第3回この素晴らしい世界にイレギュラーを!誕生秘話~☆
元々フィーリィは魔王軍幹部の手下の設定だった。
和真のパーティに入った1人、フィーリィは最初、黒い小鳥を乗せておらず、フィーリィ自身が姿を変えた魔王軍幹部の手下として扱う予定でした。
だが彩香と似ている所から殺すのはどうだろう?と思い、後から急遽、小鳥を追加してその小鳥を魔王軍幹部の手下として扱う事にしました。
(2016年12月の連載開始当時から読んでいた方は途中で「あれ?小鳥なんていたっけ?」と思った人もいるはず・・・)
感想、誤字脱字報告、お待ちしております。