この素晴らしい世界にイレギュラーを!   作:JAIL

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かなり長くなって3部にまで分かれました。


この素晴らしい世界に不穏な影を! 前編

アルカンレティア2日目。

レイシャと一緒に歩いていた。

 

「観光客多いよな~」

「そうね。はぐれないようにしないとね♪」

 

そう言いながら俺の手を握る。

 

「唐突だな」

「いいじゃない。もう付き合ってるんだから」

「・・・まぁな。今日はどうするんだ?」

「散策ね。お土産屋も見たいけど・・・」

 

周りでは観光客にアクシズ教団入団を迫るアクシズ教徒達がいる。

 

「これは落ち着いて買えないわね・・・」

「湯治で身体を休めに来たのにこれじゃあな・・・」

 

はぁ・・・次はもっとマシな観光地に行こう・・・

 

「そういえばリュウヤ」

「ん?・・・っ!」

 

あの・・・レイシャさん?笑顔なのに目が笑ってないのは気のせいですか?

 

「貴方、昨日ウィズと混浴したのよね?」

「は・・・はい・・・」

 

怖くて目ぇ合わせらんないんですけど・・・

 

「普通そういうのって彼女にしかやらないと思うの」

「さ・・・さようで・・・」

 

いやでも「入りません」って言って目を潤ませられたらどうしようもなくない!?

え!?俺が一方的に悪くなってる!?

 

「つまりリュウヤは彼女が3人じゃ物足りないと・・・」

「違うから!単に誘われたんだよ!俺だって1人でゆっくり入りたかったよ!」

「『1人で』の所は『彼女と』が入らないと彼氏としてダメね」

 

うるせぇ!こっちだって色々あるんだよ!

他愛もない会話(?)もそのへんにしておいて、昼食を済ませることにした。

・・・その時にも執拗にアクシズ教団の入団を迫られた・・・

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

昼食を終えて外に出る。

 

「なんというか入信させるのに必死だな・・・どこぞのカルト教団かっての・・・」

「やっぱり元の世界にもそういうのはあったの?」

「まぁな・・・向こうではそういった怪しい教団に限ってテロとか無差別殺人を企てたりして多くの犠牲者が出たから死者を出してないアクシズ教団はまだマシな方だな・・・」

「か・・・過激過ぎない・・・?」

 

レイシャが頬を引き攣らせてるよ・・・

まぁそういった奴らの大半は「自分の考えた世界のあり方が1番正しい」とか「自分の考えに従っていれば必ず幸せになれる」とかの自意識過剰者が暴走してんじゃないかって個人的には思ってるけどね・・・

向こうに和真達の姿が見えた。

 

「お~い和真~!」

「おう!昨日自分だけ美味しいところを持ってった奴が俺に何の用だ~?」

 

あの・・・言葉に凄い棘があるような気がするんですが・・・気のせいでしょうか?

 

「だから戻った時に説明したろ・・・単に誘われたんだって・・・」

「いいとこ取り出来た奴の余裕かコラ」

 

違うって言ってるじゃん・・・

後、女性3人からの視線が痛い・・・

 

「あれ?フィーリィは?」

「フィーリィなら小鳥とどっか出かけたぞ?」

「え?大丈夫?フィーリィって迫られたら弱そうな感じがするんだけど・・・初日だってそうだったんだろ?」

「・・・竜弥・・・見付けたら宿に返してやって・・・」

 

俺に押し付けやがったよ・・・

その後、俺達はアクシズ教団に絡まれながらも観光を楽しんだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

夕方になって宿に戻る。

ウィズとフィーリィがタオルで髪を拭いていた。

 

「皆さんお帰りなさい!お風呂先に頂きました。あっリュウヤさん!昨日の混浴、楽しかったですね!」

「ソ・・・ソウデスネ~・・・」

 

あぁ・・・4人からの視線が痛い・・・

和真は風呂に行くらしいから着いて行くことにした。

 

「俺は風呂に入ってくる・・・」

 

そう言ってドアノブに手を掛けて止まった。

ん?そこのドアノブって固いっけ?

 

「入って来るから・・・」

「聞こえましたよ?」

「どうぞごゆっくり」

 

誘うつもりだな・・・

 

「俺は・・・!!!!」

「「「早く行け(行くぞ)」」」

 

俺は和真の襟を掴んで風呂場に向かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

肩まである赤い髪のエルフの女性が風呂に浸かっている。

 

「はぁ~・・・♪いいお湯ね~・・・♪」

「昼間からいい御身分じゃねぇか・・・」

 

短い茶髪をオールバックにして顎髭をした男性が女性に悪態をつく。

 

「私は湯治に来ただけだから・・・貴方は大分疲れてるようね?」

「・・・ここは魔境だからな・・・」

「・・・色々大変みたいね?ところで・・・」

「んぁ?」

 

女性の声のトーンに違和感を感じ、女性の視線の先を見る。

湯気が段々晴れていく。

その先には・・・

 

俺達がいました・・・

なんで俺まで・・・

俺は1人で男性浴場に行こうとしたら「竜弥、こっちに行くぞ」と混浴の方を指差した。

断ったんだけど「竜弥の女装・・・うっかりばらしちまうかもな~」と遠回し(?)に脅されて半強制連行されました・・・

ねぇ・・・もう泣いていい?

 

「黒髪の人はそっぽ向いてるけど、もう1人の方がずっとこっちを見てるのよね・・・」

 

うちのリーダーがすみません・・・

 

「あ・・・あの・・・そんなにガン見されると恥ずかしいんだけど・・・」

「お構いなく・・・」

「そ・・・そうよね?混浴風呂だものね?」

「お構いなく・・・」

 

女性の顔が引き攣ってるよ・・・

女性は和真の視線に耐えきれなくなったのか風呂から上がってその場を後にした・・・和真は「ハッ・・・恥ずかしがり屋のお姉さんだ・・・」とか言ってる・・・

多分・・・というか絶対違うからね?

 

「さて・・・と・・・」

「?どうした?竜弥」

「ちょいと椅子に座る」

 

俺は湯船から出て、近くのベンチに座った。

あ~涼しい~・・・

向こうから先程の女性と一緒にいた男性も上がるのか、こちらに歩いてくる。

 

「全く、人が下手に出ていれば・・・やれ入信だ、やれ勧誘だなんだかんだなんだかんだ言いやがってクソおおおおぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!!!」

 

怒りが頂点に達したのか石鹸を床に投げ付けた。

その石鹸は跳ね返って俺の額にダイレクトヒットした。

 

「アデッ!?」

 

咄嗟のことで避けることが出来なかった。

 

「わ・・・悪ぃ兄ちゃん!大丈夫か!?」

「お・・・おう・・・なんとかな・・・」

 

額をさすったけどちょっと痛むだけだ。

男は少し安心したようだが再び顔を顰める。

 

「こんな所・・・すぐに終わらせてやる・・・」

「え・・・?」

 

男性は小さな声でそう言い残し、風呂場を後にした。

それを俺は眺めてしまう。

 

「向こうも散々やられたみたいだな・・・ってどうした?」

「いや・・・なんでもない・・・」

 

あいつは・・・一体・・・?

先程の言葉の意味を知る日はそれほど遠くではなかった・・・

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

俺と和真は洗い場で身体を洗ってもらっている。

さすがプロと言うべきか?

力の入れ方が絶妙だ。

 

「どうですかお客さん?」

「あぁ~いぃ~♪」

 

最高です。と従業員に言おうとして顔をそちらに向け・・・後悔した・・・

 

「どんなステータス異常だって治るし・・・しかもこれね・・・食べても大丈夫なの!!!!天然素材で身体にもいいから!入信したら貰えるから!タダだから!」

「いらねぇから!」

 

和真も必死に断っている。

向こうでも先程の男性が迫られていた・・・

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

風呂に戻ってきた。

 

「和真・・・」

「ん?」

「湯治ってこんなに疲れるものだっけ?」

「んなわけねぇだろ・・・」

 

バッシャァァァァアアアアアン!!!!!!!!と飛び込む音が聞こえた。

 

『お・・・おいめぐみん!泳ぐのはマナー違反だ!』

『まぁまぁ固いこと言わずにダクネスさんも!』

『ちょっ!?シノ・・・うわああぁぁぁあああ!?!?!?』

 

バッシャァァァァァァアアアアン!!!!!!!!と再び飛び込む(?)音が聞こえた。

 

『ちょっ!?皆さん静かに入りまs『ああっ!手が滑ったぁ!』ちょっレイシャさあああぁぁぁぁあああん!?!?』

 

三度聞こえた飛び込む(?)音とゆんゆんの悲鳴。

あいつら・・・もっと静かに入れよ・・・

ってあいつらも入りに来たのか・・・

和真が湯船から上がって仕切りに耳を当てる。

・・・盗み聞きする気だな・・・

 

『はあぁ・・・気持ちいい・・・』

『カズマ達はもう上がったのでしょうか?』

『どうだろうな・・・しかし・・・カズマといいリュウヤといいあの2人はどんな男なのだ?身分の差を気にせずに貴族を相手にしても何の物怖じもしないし・・・そういえばシノア。シノアもリュウヤやカズマと同じ所から来たのだろう?』

『まぁ大まかに言えばそうですけど・・・同じ所でも細かく言うとかなり違いますよ?』

『・・・?どういうことだ?』

「私や和真さん、竜弥さんの故郷は島国でして、こちらで分かりやすく説明すると・・・そうですね・・・その島国の中に大きい国のようなのが47個ありま『ちょっ!待てシノア!一旦ストップ!』・・・ハイ?』

『1つの大陸に国が47個もあるのか!?普通戦争になるだろ!?』

『まぁ普通に考えればそうですね・・・でも基本は話し合いで解決をしてるんで武力行使はありませんね』

『す・・・凄い所から来ているのだな・・・なんにせよシノアもあの2人も変わっているな・・・』

『・・・さり気に私も含めるの止めてくれません?』

 

・・・なんか向こうでは難しい話してる・・・

というか盗み聞きしてる感じがして凄い罪悪感・・・

 

『カズマー!そこにいるのでしょう!壁に耳を当ててダクネスが何処から洗うのか想像してハァハァ言っているのでしょう!』

 

ありゃ!バレちゃってます!

ダクネスは何故私を引き合いにしたのか抗議してる。

 

『お・・・おい!カズマ!そこにいるんだろう!』

 

だが和真はだんまりだ。

まぁそりゃそうだな・・・バレたらこの後どうなるか分かったもんじゃない。

 

『さっきから気になってたんだけど』

 

あ・・・レイシャの声・・・・・・ってレイシャのやつ、絶対面倒な事言いそう・・・

 

『なんでリュウヤは混浴に入ってないように振舞ってるの?』

 

・・・もう止めて・・・?

俺に狙いを向けさせないで・・・

 

『そ・・・そうだな・・・リュウヤはなんというか・・・そういったセクハラはやらない感じがしてな』

 

ダクネスさんからの印象はいいようです。

 

『あ~確かに竜弥さんの場合はちゃんと段階を踏んでくれそうですよね』

 

シノアさん、すみません・・・段階の踏み方分かりません・・・というか高校で3年間、女子とは彩香と澄玲以外には接触がありませんでした・・・

 

『あら、昨日ウィズと混浴に入ったの忘れてない?』

 

このやろおおおぉぉぉぉぉおおお!!!!!!!!

そいつらに思い出させてんじゃねぇよ!!!!

向こうでは「「「あ、そういえば!」」」と言う言葉が聞こえた。

 

『り・・・リュウヤ!?いませんよね!?ちゃんと男湯に入ってますよね!?』

 

めぐみんからの言葉が突き刺さる・・・!

止めて!裏切ってるみたいで罪悪感すっごい感じるから!

 

『り・・・竜弥さんも・・・その・・・気になるんですか!?』

 

何がですか!?てかシノアも混浴に入ってる事前提に話進めるの止めて下さい!

・・・まぁ入ってるんだけどさぁ!!!!

ずっと黙ってたのか向こうは入ってないと思ったようだ。

 

『い・・・いないようだな?』

『わ・・・私とした事が・・・カズマはともかくリュウヤを疑ってしまいました・・・後でさり気なくジュースでも奢りますかね・・・』

『確かに・・・あの2人に失礼でしたね』

『何だかんだ言ってあの2人は結構頼りになるんですよね・・・』

『そうね・・・リュウヤは必ず仲間に背を向けるけどカズマも窮地に陥ったら必ず助けてくれるしね』

『そうだな・・・素直じゃないだけで根はいい奴だからな』

 

・・・結構俺達の評価高いんだな・・・

和真も罪悪感を感じたのか立ち上がって湯船に浸かり直そうとする。

 

『所でめぐみん、気になってたのだがそのお尻にある────』

 

ん?お尻・・・?

って待て待て!何想像してんだ俺のバカ!

 

『おっといくらダクネスとはいえそれ以上言うのならただじゃ済ましませんよ?』

『ちょっ!待て!やあ・・・っそんにゃとこ触っちゃあ・・・!』

 

ダクネスの声に惹かれて和真が再び仕切りに耳の当て・・・・・・って待て!?

隙間から覗こうとしてる!?

 

『今です!』

『はあっ!』

 

壁越しに殴られたのか和真は吹き飛んで湯船にダイブした。

・・・嵌められたな・・・

 

『ほら見たことか!やっぱりいましたよ!』

『やはりな!日頃から感じるあのエロい視線がしたからな!』

 

プカ~・・・と和真が水面に浮かび上がる。

イラッとしたのか【クリエイト・ウォーター】を女湯目掛けて撃った。

向こうからは悲鳴と石鹸、タライの嵐と猫。

・・・猫?

その猫は俺の目の前で水しぶきを上げた。

 

「おい!危ねぇだろ!大人しく入ってろや!」

『『『『え!?』』』』

 

え?・・・・・・って何・・・が・・・・・・ってしまったあああぁぁぁぁあああ!!!!!!!!

咄嗟に大声出しちまった!!!!

 

『り・・・リュウヤ!?リュウヤも入ってるんですか!?』

『ちょっ!?竜弥さん!?私達で想像してナニをしてるんですか!?』

「何もしてねぇよ!和真に無理矢理連れ込まれたんだよ!!!!」

『あらリュウヤ、なんならそっちに行って背中でもなが────』

「レイシャはちょっと黙れええぇぇぇえええ!!!!!!!!」

 

この後俺達は上がったのだが和真と俺の着替えを入れていた籠に石鹸と入団書が入っていた。

俺はすぐに捨てたが和真は、あーー!!!!と発狂しながら石鹸を床に叩き付けていた・・・

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「あんまりよおおおぉぉぉおおお!!!!!!!!温泉に入ってただけなのにいいぃぃぃいいい!!!!!!!!」

 

アクアがうるさい・・・

なんでもアクアの入った秘湯がただのお湯になったらしく、追い出されたのだとか・・・

浄化するのは知ってるが見境無いんだな・・・

それでも1番腹が立ったのは管理人の人のようでアクアが自ら「私こそが水の女神アクアなのよ」と名乗ると「ハッw」と鼻で笑われたらしい・・・

アクア・・・強く生きろよ・・・

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「この街の危険が危ないみたいなの!」

「あぁ、訳分からない日本語になっててお前の頭がより危なくなってるのはよく分かった」

 

うわぁ~呼吸するように和真がアクアの事ディスったよ・・・

 

「んで・・・何なんだよ?」

「なんか・・・管理人の人が言ってたんだけど、最近温泉の質が下がってるみたいなの・・・これは、我が教団を危険視した魔王軍が温泉という財源を奪いに来たのよ!」

「そーなんですねー」

「信じてよぉ!!!!」

 

皆、アクシズ教徒にやられて塩対応だな・・・

けどそんなに回りくどい事をやるだろうか・・・?

水に弱い魔王軍幹部・・・火属性を持った奴か?

アクアはやる気らしくパーティメンバーに協力を求めてきた。

う~・・・正直言ってもうアクシズ教徒には関わりたくねぇ・・・

まぁ他の奴らがやるならやろうかな・・・

さて・・・皆の反応は・・・?

 

「俺は街の散歩だとか・・・色々と忙しいから」

 

和真、アウト。

 

「私もアクシズ教徒の恐ろしさを嫌という程実感したのでもう関わりたくありません」

 

めぐみん、アウト。

 

「私もですね~・・・ひっきりなしに勧誘されてはさすがに疲れます・・・」

 

シノア、アウト。

 

「私もアクアさんには失礼ですけど、もうアクシズ教徒と関わるのはご遠慮願いたいですね・・・」

 

ゆんゆん、アウト。

 

「私はお風呂に浸かりに行くからパスね」

 

レイシャ、アウト。

 

「何でよぉ!散歩とかどうでもいいじゃない!めぐみんもうちの子達を嫌わないでよぉ!・・・!そうだわ!フィーリィ!貴女なら手伝ってくれるわよね!?」

「えっ!?いや・・・!私は・・・」

 

フィーリィには悪いけど涙目でこっち見ないでもらえます?

 

「ね!フィーリィ!貴女、争いとか嫌いよね!?目の前で争いがあったら止めたいわよね!?」

「えっと・・・その・・・!!!!」

 

あ・・・フィーリィもう泣きそう・・・

 

「私も遠ry」

「い・い・わ・よ・ね!?」

「・・・・・・・・・・・・ハイ・・・・・・・・・・・・」

 

あ・・・言わされた・・・

 

「ダクネスも来てくれるわよね!?」

「え!?いや・・・私はその・・・」

「お願いヨォ!ダクネスぅ!」

「分かった!分かったから私のジュースを浄化するのは止めてくれ!!!!」

「てかウィズはどうなんだよ?」

 

どうやらアクアがウィズに泣き付いていた事でウィズは消えかかって、今は寝込んでいるらしい・・・って!

 

「「先にウィズを助けろよ!!!!」」

 

和真の声と被った・・・

でも最近か・・・というか温泉の質なんて出処から悪くしないと・・・・・・・・・ん?

ちょっと待て?

出処つったら温泉が湧き出してる所だろ?

そしたらアクアが言ったように管理してる人がいるはずだ・・・

だとしたら・・・

 

「アクア、管理人はもうやられてるかもしれねぇぞ?」

「・・・え?やられてるってどういう事よ!?」

 

俺の言った事にパーティメンバー全員が俺を見る。

 

「一応聞きたいんだが、質が悪くなってるってのは一部の温泉か?」

「え?えっと・・・確か殆ど全ての温泉だったと思う・・・」

 

やはりか・・・なら・・・

 

「ダクネス、お前の持ってたペンダント・・・借りてもいいか?」

「・・・何に使う気だ?」

「まぁ、あんまりこんな事言いたくねぇけど、権力を使わして貰いたい」

 

ダクネスはハァ・・・とため息を付き、「あまり乱用はするな」と釘を刺され、裁判の時のペンダントを貸してくれた。

 

「えっ!?ちょっとリュウヤどこ行くの!?」

「ちょっとな・・・アクア、アクシズ教徒のネックレスあるなら借りられるか?」

 

アクアからネックレスを借りる。

ヘタすりゃ・・・もう管理人は・・・

俺は外に出て管理人のいる施設を目指す。

 

「全く・・・彼女置いて行くなんて彼氏としてどうなのよ?」

 

後ろから声がして振り向くとレイシャがいた。

 

「お前、風呂は行かねぇのかよ?」

「お風呂なんか、いつでも入れるでしょ?リュウヤと行動した方が面白そうだからね」

 

レイシャはそう言って俺の横に並んで歩く。

 

「管理人・・・消された?」

「まだ確定は出来ねぇけどな・・・でももし消してその人に擬態、記憶なんかも探って口調をその人に合わせる事が出来るのなら関係者以外が立ち入れない所に入れる。勿論他の奴らは誰も入れない。そうしたらもうやりたい放題だ」

「確かにそうね・・・でどうするの?見つけ次第倒すってわけ?」

「バカ言うな・・・それに言ったろ?確定はしてないんだって」

 

一応、ハッパをかけて探るつもりだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

管理施設に入った。

受付嬢に管理人に会いたいと言ってペンダントを見せると焦った表情でお待ち下さいと言われたのでソファーに座って待った。

 

「貴族の者じゃないってバレたら貴方どうするのよ・・・?」

「まぁ・・・そんときゃそん時だ」

 

目の前に眼鏡をした1人の老人が現れる。

この人が管理人か・・・?

 

「私がここの管理人のギドーです」

「ご挨拶をどうも、私はこういうものです」

 

俺はペンダントを見せる。

 

「あ、ダスティネス家の方でしたか・・・ん?おかしいですな・・・ダスティネス家は娘さんしかいなかったはず・・・」

 

やべ・・・どうすっか・・・

 

「実はその従兄弟でしてダスティネス家の代わりにここに来ました」

「そうでしたか!それは失礼致しました・・・ですが貴族も御用達になれば私の鼻も高いです。・・・それで今回はどのような件で?」

 

俺は最近、温泉の効能が落ちてるのを聞いて偶然ここに立ち寄ったからついでに調査しに来たと説明する。

向こうは黙って聞いていたが少しづつ表情が曇り始めた。

 

「えぇ・・・温泉の管理をしている者から聞いたのですが貴方様の言う通り、効能が落ち始めているらしいのです・・・ですが・・・」

 

その理由は不明・・・か・・・

恐らく普通に話しても情報は獲られねぇな・・・しゃーねぇ・・・気乗りはしねぇが・・・やるしかねぇな・・・

 

「実は・・・私はアクシズ教徒でして、それも相まって今回はこの地へ来たんです」

 

俺がアクシズ教徒のネックレスを見せると老人の目がキランと眩しく光った。

 

「まさか・・・!いや、これ程嬉しい事は御座いません!貴族の方にアクシズ教徒の方が居られるとは!!!!貴方はお目が高い!!!!是非語らいましょう!いいですか!そもそも水の女神アクア様はですね!」

 

老人が気を良くしてアクシズ教徒の事を話し始めた。

レイシャは証拠を探そうとその場を離れる・・・

あれ?俺、ヤバくね?

 

「・・・でかるからでして、私はその志を受け継ぎたくアクシズ教徒に入ったのです!そして・・・」

 

 

1時間後・・・

 

 

「アクア様のお言葉に私は感銘を受け、そして確信しました!あの方はどの神よりも我々を愛して下さると・・・!・・・ならば私もその愛を受け入れ、広める事を決意したのです!」

 

 

更に1時間後・・・

 

 

「観光客は分かって下さらないのです・・・!私は思いました・・・なぜこれ程気高きアクア様の信仰を拒否するのか・・・!愚かだ!!!!愚か過ぎるのです!!!!ならば後悔するがいい!いつかアクア様の素晴らしい考えは必ず全世界に広まり、貴方方の足元にも及ばない事を知るがいいと!」

 

 

更に更に1時間後・・・

 

 

「そして私は決意しアクア様に誓ったのです!必ずや私は貴女の素晴らしい考えを広めます・・・ですから私に力をお貸し下さいと!!!!そして私は今、ここの管理人を務めているのです!!!!」

 

約3時間に及ぶ口説きは終わった・・・

レイシャ・・・あいつ、俺の事生贄にして逃げやがったな・・・

まぁでもこれ程アクシズ教徒に関して語れるのならこの人は本物か・・・

 

「はぁ・・・これ程嬉しい事はありませんよ・・・あの・・・大変失礼なのですがお名前は?」

「えっと・・・リュウヤと言います」

「そうですか・・・!ではリュウヤ殿!お互いにアクシズ教徒の素晴らしさを広めましょう!!!!」

「は・・・はい・・・」

 

俺はてっきり貴族でその上アクシズ教徒だと知ったら情報を流してくれると思って出したんだけど・・・結局論点をズラしてしまった挙句に変な信頼を生ませてしまった・・・

 

「・・・これはあまり口外はしたくなかったのですが貴方を信じて言わせて頂きます・・・実はここアルカンレティアに不審人物が潜んでいる・・・と言うのを聞いたのです」

「・・・何?」

 

まさか変に信頼されて機密事項を聞けるとはな・・・

 

「この事に関しては口外せぬ様にお願い致します・・・広まってしまえば要らぬ不安を人々に抱かせてしまうに違いありません・・・」

「・・・分かりました・・・それでその不審人物とは・・・?」

「はい・・・その者は温泉をただのお湯に変えてしまうのです・・・特徴はお聞きしまして、水色の髪をしているようなのですよ・・・ですが水色の髪の方は多くて・・・昨日なんか自分の事を女神アクアと名乗った者もいるくらいですから・・・」

「・・・」

 

アクア・・・お前不審人物に認定されてるぞ?

 

「まぁ温泉の管理は向こうで何とかしてくれるとは思っているのですがね・・・」

 

ギドーさんは温泉が湧き出ている岩山を眺めた。

まぁこっちで温泉の管理もしてるだろうし・・・大丈夫だろ・・・

 

「・・・分かりました・・・では調査を続けさせて頂きます」

 

はぁ・・・結局なんもいい情報取れなかった・・・

 

「リュウヤ、ちょっと」

「あ?」

 

温泉付近にいたレイシャに呼ばれ、そちらに向かう。

 

「どうした?」

「これを見て」

 

レイシャが指差した地面を見ると少し腐っていた。

 

「何だこれ?」

 

俺は自作魔法【成分分析】を使って見てみた。

・・・なるほど・・・かなりの猛毒がある・・・

 

「リュウヤ殿!言い忘れていました!」

 

老人が駆け寄ってくる。

どうももう1人の不審人物がいるようで、その姿は大男らしい・・・

猛毒に・・・大男・・・魔王軍幹部・・・ならウィズに聞きゃ分かるか・・・

まぁ魔王軍幹部ってのは念の為だけど・・・

俺は礼を言ってその場を後にした。




感想、誤字脱字等、お待ちしております。
誕生秘話は次の投稿でお送りします。

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