この素晴らしい世界にイレギュラーを!   作:JAIL

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気付いたら既に原作(アニメ)後半に差し掛かってるというね・・・
本当に異世界行ったらどう行動しようかなぁ?


この素晴らしい世界に面倒臭い旅路を!

ビーカーに水が入り、金網の下の蝋燭(ろうそく)がその水を熱している。

1人の女性が紅茶の葉をスプーンで掬ってポットに入れ、紅茶を淹れていた。

その光景を俺とめぐみんが見ている。

 

「最高級の紅茶が入りましたわよ。カズマさん」

「うむ」

 

和真がティーカップに入った紅茶を一口飲む。

 

「お湯なんだけど?」

「あら、私とした事がうっかりしていたわ」

「もしかして紅茶を浄化したのかな?」

「ゴメンなさいね。カズマさん」

「淹れ直せばいいだけさ。ありがとうアクア。これはこれで頂くよ」

 

そしてこのやり取りはお互いに屈託のない笑顔で進んでいる。

 

「うん。お湯♪」

 

あまり言いたくは無いが敢えて言おう・・・

 

「「気持ち悪っ!!!!」」

 

あっ・・・めぐみんと意見が合った。

てか俺が朝から騎士団の訓練所に行ってる間に何があったんだよ?

めぐみんは和真の前に行って「早くいつものカズマに戻って下さい!今のカズマは凄く気持ちが悪いです!」とさり気なくディスりながら頭を下げてる。

和真はそれでも尚、「何を言ってるんだめぐみん。俺は普段からこうだったじゃないか」と爽やかな笑顔のままだ。

ダクネスが理由を知ってるらしく俺達を呼ぶ。

なんでも俺と和真が作った日本製品をバニルが知的財産権ごと買い取ろうと言い、金額して3億エリスだったらしい。

いや止めとかない?

知的財産権ごと取られたら他の人も作れて収入無くなるじゃん。

ならせめて特許とかにしてよ。

どうせ転生者が増えてもその人がもの作り好きじゃなきゃ日本製品とか作れないだろうし。

もし知的財産権ごと売らなくても毎月100万エリスが約束される。

そして和真はその知的財産権ごと売ろうかどうかを迷っているらしい。

よし止めよう。

だがダクネスが話してくれたからこの状況になったのも頷けた。

お金に余裕が出来たから心にも余裕が出来てるってことね。

 

「まぁお金がある事はいい事です。さぁこれからクエストに行きましょう」

「え?嫌だよ」

 

めぐみんの提案を和真は5秒も経たずに両断した。

いつもなら凄い嫌そうに言う和真でも今は満面の笑みで言った。

和真はこれからは商人としてやっていくらしい。

竜弥、共に商人のトップを目指そう!と言われたが俺を巻き込むんじゃねぇよ・・・

アクアは魔王を倒してくれないと帰れないからクエストに行きましょうと満面の笑みで和真に言う。

 

「ならもっと大金を稼いで凄腕の冒険者を沢山雇って魔王に立ち向かおう!どうだ!現実味が出たんじゃないか!」

「そうね!さすがカズマさん!冒険者達の頬をお札で叩いて魔王が弱った所で最後の止めは持ってくわけね!」

「そういう訳だ!伊達に1番長い付き合いじゃないなぁ!」

 

そう言って2人で笑いあっていた。

こいつら・・・

ガチャ!と玄関のドアが開く音がした。

 

「ただいま帰りました~」

「ただいまです~」

 

帰ってきたのはシノア、フィーリィ、レイシャ、ゆんゆんだった。

そしてシノアの手にはお菓子の入った籠があった。

 

「お前らどこ行ってたんだよ?」

「ウィズさんのお店です」

 

え?なんで?

理由としては最近ウィズの店で女子会をしているらしい。

とは言っても作ったお菓子を食べたり紅茶を飲んだりするだけなんだとか・・・

普段はめぐみんとダクネスも一緒らしい。

・・・アクアハブられてね?

レイシャによるとアクアが来たら面倒事になりかねないとのこと。

まぁ・・・(あながち)間違いでは無いな・・・

そんな中、めぐみんは魔王がどういう存在か、凄腕の冒険者を雇うなどではなく・・・をアクアと和真に熱く語っている。

 

「ほらダクネスもなんとか言って・・・ってダクネス?」

 

めぐみんがダクネスも参加させようとしたがダクネスはコタツに入ってお茶を啜っていた。

 

「ん?あぁいや・・・日に日にダメ人間になっていくカズマを見ていく内に将来どんな屑人間になるのかと・・・」

 

ねぇ?心無しか興奮してません?

 

「それでこれはどんな状況ですか?」

 

シノアが聞いてきたから説明すると4人は「ああ~・・・」と言うような目をして和真を見た。

あ~!も~!どうしたら~!とめぐみんが嘆き始めた。

 

「そこの変態と一緒にするな。俺は今疲れてんだよ。少しは休む日くらいあってもいいだろ?竜弥だって最近は騎士団の稽古で動いてんだから少しは身体休ませた方がいいぞ?」

「いや・・・あの位じゃ問題ねぇけど・・・」

 

実の所を言うと最近は稽古に行ってその大半がシェインの流派会得に消費されてる・・・てかシェインの流派吸収力と応用力には驚いた。

前なんて【霞み突き】と【霞み斬り】を組み合わせた新しい技を開発し出す位だ・・・

勿論喰らったよ・・・まぁ有難く使わせてもらうけどさ・・・

 

「分かりました。ではカズマとリュウヤの身体を休ませる為にお出掛けしましょう!」

「いや、家でゴロゴロすれば休めるから・・・」

「湯治です!行きましょう!水と温泉の都・・・アルカンレティアに!」

「温泉?」

 

温泉かぁ~いいかもな。

皆も行きたいと言ってるしな。

特にアクアが。

こうして俺達はアルカンレティアに行くことになった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

翌日

準備が出来た為、家の前にいた。

 

「リュウヤ~!準備出来てる~?」

「こっちはな。俺はアルカンレティア行きの馬車探すからアクアは馬車に乗り遅れないように起きてねぇやつ起こしに行っとけ?」

「任せなさい!【セイクリッド・クリエイトウォーター】を1発かまして起こしてやるわ!」

「・・・家壊すなよ?」

 

アクアは意気揚揚として家に戻っていく。

同じタイミングで和真が家から出てきた。

 

「早いな」

「まぁ出る前にバニルの所にな」

「?なんか用でも?」

「知的財産権の奴だよ。取り敢えず帰ってから決めたいからさ」

「あぁ、それか」

 

和真に馬車頼むぞ~!と言われ、馬車停留場に向かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「多いな・・・」

 

馬車の停留所には馬車が所狭しと並んでいた。

っとアルカンレティア行き探さねぇと・・・ん?同じのがあるな・・・

内装や座席の量的に・・・こっちの方が広いな・・・

俺はそこで全員の到着を待つことにした。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

20分後。

全員が揃った・・・って・・・

 

「ウィズはなんで来てんの?」

 

ウィズがグッタリして和真におぶられていた。

話を聞くとウィズはまた必要の無いものを仕入れてバニルに殺人光線を喰らったのだとか・・・

そしてバニルにウィズもアルカンレティアに行かせてほしいと言われ和真が背負ってきたという・・・

バニルの野郎・・・

全員揃った所で馬車に乗り込む。

・・・ん?

座席の1つに籠に入れられた赤い竜がいるんですけど?

 

「あの~」

「?どうなさいました?」

「このドラゴン・・・退けてもらえません?」

「え?あぁ、すみません。その席はもう取っているんですよ」

 

は!?

ドラゴンでも席って取れるの!?

俺は相談する為に一旦降りて全員に話した。

まぁジャンケンになったんだけどね・・・

 

「んじゃ・・・ジャーンケーン・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでよおおおぉぉぉぉぉおおお!!!!!!!!!!!!」

 

アクアが吠えた。

結果はアクアの1人負け。

アクア弱っww

アクアもう1回!もう1回!と和真にしがみついて頼んでる。

和真は仕方なくもう1回やることにした。

 

「【ブレッシング】!」

 

あっ!汚ぇ!

アクアのやつ、幸運値を上げる魔法使いやがった!

そして・・・

 

「なんでよおおおぉぉぉぉぉおおお!!!!!!!!」

 

再びアクアの悲鳴が木霊した。

【ブレッシング】使ったのに負けるとか・・・

和真の幸運値高過ぎじゃね?

なんでも子どもの頃から不思議とジャンケンは負けた事が無いらしい。

何それ狡い狡い!とアクアは子供のように泣きじゃくる。

 

「テメェ!俺の特殊能力が【必ずジャンケンに勝てる】っていう能力とでも言いてぇのか!馬鹿か!?こんなんでどうやってモンスターと渡り合えってんだ!」

「だってだって!」

「俺が1番ムカつくのはお前自身が授かった恩恵だって自分で言ってるとこだ!」

「うわあああぁぁぁぁぁああん!!!!カズマが言っちゃいけない事言ったああぁぁ!!!!」

 

あぁまた始まったよ・・・アクアと和真の口喧嘩・・・

 

「ってそういえば後1人除外しないと行けねぇぞ?どうすんだ?」

「心配すんな。それに関してはもう対策は考えてる」

 

そう言って和真は悪戯を企んでる子供のような笑みを浮かべた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「アルカンレティア行き、発車しまーす!」

 

馬が動き出し、それに引かれて馬車も動き出す。

クリスが屋根の上にいたので手を振ると笑顔で振り返してくれた。

開閉する門をくぐり抜ける。

なんだろう・・・平和な壁外調査をする調査兵団になった気分だ。

 

ソワソワ・・・

 

ガラガラと木製の車輪が音を鳴らして身体が揺れる。

普段見ない景色。

貴族のダクネスも楽しそうな表情で外を眺める。

 

モゾモゾ・・・

 

んで・・・

 

「俺の上でモゾモゾ動くの止めてくんない?」

「だってぇ~・・・」

 

はい・・・めぐみんは今、俺の上に座っております・・・

その真正面から和真はニヤニヤして俺とめぐみんを見る。

 

「ロリ条竜弥、再び」

「テメェ次行ったらシバくぞ」

「冗談だ・・・っとちょっと竜弥に聞きたいことあってさ」

「ん?」

「竜弥って工業高校出身だろ?なら知的財産とかどうすればいい?」

「あ~それか・・・言っちまうと売らねぇ方がいいと思う。逆に取るなら特許だな」

「あ~そっちの方が「でも」・・・なんか問題か?」

「まぁ・・・こっちの特許申請がどうなってるのかが分からねぇからな・・・まぁ帰ってきてからにしようや」

 

そっか・・・ならそうするかと和真は決めて外を眺めた。

 

「ねぇ~和真さ~ん!お尻痛いんですけど~早く変わってほしいんですけど~!」

「はぁ・・・休憩になったら代わってやるからそれまで我慢しろよ~」

「そんなぁ~!」

 

今日も空は快晴です。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

草原を抜けて荒野のような所を通っている。

ふと外を見た。

・・・ん?なんだ?

【千里眼】を使って確かめると何かがこちらに走ってくる。

あれは・・・ダチョウ・・・?

 

「和真、あれ何か分かる?」

「?ちょっと見てみる」

 

そう言って和真も【千里眼】を使う。

 

「何あれ?」

 

和真も疑問に思って運転手に尋ねると【走り鷹鳶(たかとび)】というモンスターなのだとか・・・

この走り鷹鳶というモンスター、雌の気を惹く為に硬いものに走ってきてギリギリで真上を飛んで度胸を競うらしい。

・・・何?駄洒落?

 

「まぁ硬いものは載せていませんので大丈夫でしょう」

 

と運転手は馬の操縦に専念し始める。

いや・・・こっちにまっすぐ向かって来てません?

 

「・・・こっち来てるよな?」

「だよな?」

「まぁどこかの岩とかに行ってるんでしょう。幸いこの馬車にはアダマンタイトとかの凄まじく硬いものとかは積んでませんのでご安心下さい」

 

まぁ確かに積んで・・・ん?

アダマンタイト・・・?

そういえば・・・

俺はめぐみんを膝から下ろし、斜め前で寝ていたダクネスを起こす。

 

「ん・・・?なんだリュウヤか・・・どうした?」

 

俺は聞かれないようにダクネスに耳を貸してもらう。

 

『お前のその装備の素材の1部って何?』

『?アダマンタイトだが?それがどうした?』

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

こいつかああああぁぁぁぁああああ!!!!!!!!!!!!

 

ダクネスも走り鷹鳶に気付いたようでテンションが上がり始める。

馬車が止まった。

うちのクルセイダーが御迷惑をお掛けして申し訳ありません・・・

 

「和真・・・尻拭いしよう・・・」

「そうするしかねぇだろ・・・」

 

全員で外に出る。

ウィズも出ようとしたが万が一を考えて和真は馬車には残した。

 

「お客さん!アンタらはお金払ってくれてんだから他の冒険者に任せて乗ってて下さい!」

「・・・悪ぃけどこんだけはなぁ・・・」

 

俺のメンバーが理由なんですもん・・・

他の馬車から冒険者達が出て来て、走り鷹鳶に立ち向かう。

和真はめぐみんに爆裂魔法の準備をさせ、レイシャとフィーリィは後衛で俺、和真、ダクネスだけで前に出た。

 

「おいっ!そこのクルセイダー!アンタは護衛じゃないんだから下がってろ!」

 

他の冒険者の言うことを無視してダクネスが走り鷹鳶に近付いていく。

 

「!あれはデコイか!あのクルセイダー、護衛でも無いのにモンスターを引きつけてるのか!」

 

そんな事を言ってる冒険者の横を和真と通り過ぎる。

違うんです・・・あの馬鹿を狙ってるんです・・・

 

「あれだけの敵を前にして引かないなんて・・・なんて勇敢なの!」

 

誤解です・・・攻撃を受けたがってるんです・・・

 

「護衛じゃない冒険者を危険な目に合わせられるか!【バインド】!」

 

冒険者の放った魔法の縄がダクネスの横を通り過ぎる。

 

「はあっ!」

 

・・・ねぇ・・・何で自分からその【バインド】を受けに行ってんの?

 

「まさか俺の【バインド】であいつらがターゲットを俺に変えるのに身を案じて身代わりになったのか!・・・済まない!援護の代わりが逆に邪魔しちまった!許してくれえぇぇぇええ!!!!」

 

・・・なんか変な罪悪感に囚われて叫んでるのが1人・・・

そして和真は「うちの変態がすみません!」と言わんばかりに土下座した・・・

・・・落ち着いたらダクネスに1発かましてやろうかな・・・

っとその前に!

 

「和真!【転移】!」

 

とばっちりを避ける為に転移で馬車の元へ戻る。

 

「キタキタキタキターーー!!!!!!!!」

 

ダクネスなんかもう興奮しっぱなしッス・・・

ぶつかる寸前で走り鷹鳶はダクネスの真上を飛び上がった。

そしてダクネスは「焦らしプレイだ・・・」と頬を赤らめて言ってる始末・・・

もう黙ってくんね・・・?

アクアが万が一を思って幸運値を上げる【ブレッシング】をダクネスに使う。

 

「ああっ!お構いなく!」

 

いやお構いなくじゃねぇよ・・・

でもまぁこれで問題はねぇだろ・・・

 

「【ライトニング】!」

「【ブレードウインド】!」

「【ファイヤーボール】!」

 

冒険者達の魔法が次々に走り鷹鳶に直撃する。

だがそれらを通り抜けた走り鷹鳶達は冒険者に直撃したり、そのまま通り抜けたりと中々危なっかしい。

全ての走り鷹鳶が去って漸く終わったか・・・と思ったら第2陣が走ってきた。

まだいるのかよ!

俺は駆け出してダクネスの横に立ち、自作魔法を使う準備をする。

ギリギリまで近付けて・・・今だ!

 

「【ブラッククラック・デストロイア】!!!!」

 

黒いエネルギーが前方の地面へと亀裂状にとなり、走っていく。

その上を走り鷹鳶達が踏んでいく。

 

バーカ。

 

亀裂を走らせた範囲が地割れを起こす。

そこから岩塊が上がってきて走り鷹鳶達に直撃する。

起き上がってくるが瓦礫で埋もれる為、走り鷹鳶は動けない。

ふぅ・・・間に合った・・・

 

「竜弥!ナイス!」

「おう!んじゃダクネス・・・さっさと────」

 

戻るぞ・・・と言おうとしたら、またドドドド・・・!!!!!!!!と足音が聞こえた。

くそっ!まだくんのかよ!

和真に馬車に乗れ!と言われてダクネスと共に【転移】で馬車に乗った。

 

「何する気だ!?」

「洞窟にあいつらを入れてめぐみんの爆裂魔法で一掃すんだ!」

 

なるほど・・・そういう事か!

馬車が走り出す。

だが走り鷹鳶の方が速い為か少しづつ距離が縮んていく・・・

 

「【ボトムレス・スワップ】!!!!」

 

ウィズの魔法で地面の1部が沼になり、その中に走り鷹鳶が落ちる。

少しは数を減らせたが洞窟がまだ見えてこない。

和真は少しでも数を減らそうとレイシャ共々、アクアに支援魔法を掛けさせて馬車の屋根に登って狙撃する。

少しづつ減ってはいる・・・でも数が多い・・・

 

「竜弥!まだ魔力は残ってるか!」

「一応な!」

「このままじゃこっちが持たない!飛行魔法と加速魔法があったら使ってくれ!」

「分かった!」

 

俺はめぐみんとダクネスを持ち上げて【フライ】を使い、浮遊しながら外に出る。

くっ・・・!バランスが取りづれぇ!

 

「リュウヤ!私はリュウヤの背中に行きます!」

「分かった」

 

めぐみんが俺の身体をよじ登って背中に乗る。

よし・・・バランスは保てた・・・けど・・・

距離は縮まる一方だ。

仕方ねぇ・・・なら!

 

「めぐみん!しっかり捕まっとけ!」

「はいっ!」

 

めぐみんが俺にギュッ!としがみついたのを確認して魔法を使う。

 

「【ソニック】!!!!」

 

バン!と一気に加速する。

よし!洞窟の近くまで来た!

走り鷹鳶は対象を飛び越える・・・なら洞窟の前にダクネスを置けば必然的に走り鷹鳶は洞窟に入るはずだ!

俺は低空飛行をして洞窟に近付き、入口の前でダクネスを離すと慣性が残ってたのか少し地面を転がって、洞窟の前に止まった。

俺とめぐみんは被害を受けないように直線上を避けて地面に降りた。

ダクネスの真上を走り鷹鳶が飛んで洞窟に入っていく。

全ての走り鷹鳶が入った。

 

「めぐみん。オッケーです」

「【エクスプロージョン】!!!!」

 

爆裂魔法が炸裂して洞窟を巻き込んで走り鷹鳶は全滅した。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

夜になり馬車に囲まれて野営をしている。

そう!これだよ!こういう風に野営をやりたかったんだよ!

 

「さぁ!いいのが焼けたのでどうぞ!」

 

と商人が料理を俺達に勧めてくる。

そして爆裂魔法を使ったアークウィザードや、負傷者をいとも簡単に治療したアークプリースト、走り鷹鳶の群れを前に1歩も引かず、一身に引き受けた勇敢なクルセイダー、超級魔法による沼地を使っての足止め、洞窟を生かして走り鷹鳶の群れを一掃したその機転、凄まじい魔法で走り鷹鳶の群れを一掃した冒険者と俺達は褒め称えられてしまった・・・

そんなんじゃないんですよねぇ~・・・

心ばかりのお礼です。とお金の入った麻袋を差し出すも和真はそれを拒んだ。

走り鷹鳶を倒したのは貴方方ですよ?と商人も麻袋を渡そうとする。

 

「冒険者なんですから戦いに参加するのは当然ですよ!」

 

なんという方だ・・・!と商人に感動されてしまった・・・

 

「和真・・・金は貰わねぇが諦めよう・・・」

「・・・お前の言葉にデジャヴを感じるんだが?」

 

気のせいですよ・・・

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

宴会の席でアクアが水芸を披露していた。

そしてウィズとフィーリィの頭から扇子が現れ、水が吹き出る。

少し離れた所でダクネスの傷付いた装備を和真と一緒に直していた。

でも工業系出身という理由で大半を任された・・・

まぁ鍛金とヤスリがけだけだから、この位なら余裕だ。

 

「竜弥、そっち終わった?」

 

和真は終わったらしく俺に話し掛ける。

 

「お前の方が少ねぇのに終わるわけねぇだろ・・・」

 

まぁ残りは腰当だけなんだけどね。

そっちの方もハンマーで表裏共に叩いて歪みを直している。

こっちは結構酷いな・・・

向こうが急に盛り上がり始めた。

フィーリィが芸を見せるようだ。

 

「【ハッピー・ヤッピー・クラッカー】!」

 

カラフルな花火が打ち上がる。

なんだか妙に気になるんだが?

まぁこの間もハンマーで装備を叩く作業は続いている訳で・・・

 

ゴチッ・・・!

 

「いってえぇぇぇぇえええ!!!!!!!!」

 

諸、親指に当たりました・・・

花火が止み、作業に戻る。

ヤスリがけして・・・っと・・・

 

「終わったぞ」

「ありがとうリュウヤ」

 

向こうは向こうで盛り上がってて冒険者達がもう1度!とアクアとフィーリィにせがんでいた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

夜になって星座鑑賞をし終わり、寝ようとした時だった。

・・・何かいる・・・!

俺は皆を起こそうとしたが既に和真は起きていた。

 

「竜弥、気付いたか?」

「まぁな・・・一応見とく。和真は他の連中を頼む」

「分かった」

 

『野営で1番注意したいのは夜に冒険者を襲う山賊とかですよね~。まぁでも転生者はお決まりでチート能力を使って山賊を一掃するんであまり危険とは思いませんね』

 

俺の脳裏に澄玲が言っていた事が再生された。

マジで山賊なのか?

俺は念の為、【千里眼】を使う。

人の形をしている。

マジか・・・!

 

「竜弥、何かいたか?」

「人っぽい・・・山賊の可能性が高いな・・・」

「山賊?そりゃあありえないですよ」

 

商人が言うにはそう言った連中は王都行きの馬車とかしか襲わないんだとか・・・ならなんだ?

1人の冒険者が松明を投げる。

そこにいたのはアンデッドだった。

 

「竜弥!俺はアクアを起こしてくるから、お前はあいつらの相手を頼む!」

「分かった!」

 

とは言ったものの、数が多い・・・両サイドには両手剣を持ったダクネスと【死鎌童子】を戦闘状態にしたシノアがいるが3人じゃ捌ききれねぇぞ!?

後ろから悲鳴が聞こえた。

しまった!反対からも来てたのか!

そっちを見てみる。

アクアがアンデッドに囲まれていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?

まさか・・・・・・アクアがいたからアンデッド達って近付いてきた・・・・・・?

 

「寝込みを襲うとはさすがアンデッドね!喰らいなさい!【ターンアンデッド】!!!!」

 

浄化魔法の魔法陣が、野営で冒険者を囲んでいた馬車ごと包み込む。

その中にいたアンデッド達はアクアの浄化魔法で一気に浄化された。

ウィズも含めて・・・・・・ってウィズウウウウゥゥゥゥゥウウウ!?!?逝くなああああぁぁぁぁあああ!!!!!!!!

皆はアクアを尊敬の眼差しで見ている。

もう・・・何も言うまい・・・

 

「和真・・・諦めよう・・・」

「もうツッコム気力も残ってねぇよ・・・」

 

和真・・・お疲れ様です・・・

 

その後、朝を迎えた俺達は馬車に乗って、再び移動を始めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

荒野を抜け、草原を馬車が通る。

 

「ねぇ!見てみて!」

 

アクアに言われ、外を見る。

どこかの洞窟に来たようだ。

入口の両サイドには女神を思わせる像が立っている。

どうやらこの洞窟はアルカンレティアの入口のようだ。

そしてこの洞窟を抜けた先に────

 

 

美しい、水と温泉の都【アルカンレティア】が現れた────────




こんな旅路なら俺は遠慮したいな・・・
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