人が多かった・・・(ゴールデンウィークだから仕方ない)
室内射撃ではA-だった。
にしてもさ・・・リボルバーの方がオートマチックより使いやすいね。
オートマチックの方は撃った後の反動強過ぎる。
ワシは今、尋問室にいる。
横には大きなガラス窓があり、その奥ではアルダープの騎士と女騎士、その女騎士より背の低い赤髪の女性がワシを見ていた。
今回捕まったのは黒髪の冒険者から財布をスったのが理由だ。
まぁ理由はそれだけらしく、どうやら薬品の事はバレていないからそこだけは注意して今日ものらりくらりと嘘発見機の追求を逃れるとするか・・・
ガチャ!と音がしてドアが開く。
短い白髪で黒い目と眼鏡をした女性が目をキョロキョロとしながら入ってくる。
恐らくは新人なのだろう。
「えっと・・・尋問を始める前に2つ・・・宜しいでしょうか?」
「ん?よいぞ?」
「あ・・・ありがとう・・・ございます・・・えっとまず緊張を解したいので魔法を使わせて頂きたいのですが・・・」
なんだそんな事か、まぁ緊張し過ぎて尋問にならなくては話にならないと思い、ワシは承諾する。
「ありがとうございます・・・では【フィルターフィールド】」
ワシと白髪の女性を透明な空間が覆う。
「ふぅ・・・ありがとうございます・・・」
恐らくこの空間内では若干ながら緊張が消えるのだろう・・・その証拠に女性から少しだけたどたどしさが消えている。
「次にこのガラス板に5本の指を押し付けて頂きたいのですが・・・」
女性がガラス板をテーブルに置いた。
ワシは疑問に思ったがそのガラス板に指を押し付けた。
「ありがとうございます。えっと・・・今日の尋問を勤めさせて頂きます・・・いち・・・じゃなくてドラコ・ファストと申します・・・宜しくお願いします・・・」
女性が頭を下げ、尋問が始まった。
「では・・・尋問を始めたいと思います・・・まず・・・出身からお聞かせ下さい」
出身をバレてはここにいられなくなると思い、ワシはとある魔法を使いながら質問に答える。
「出身は町外れの集落じゃ」
チリーン・・・
「はぁっ!?」
バカな・・・!なぜワシが内密にしている【嘘八百】が通用しない!?
「えっと・・・出身地ねつ「ま・・・またんかい!!!!」は・・・はいっ!」
目の前の女性が記録を書こうとしているのを無理矢理止めさせる。
仕方なく本来の出身を言うことにする事にした。
「出身はここ・・・アクセルの街じゃ」
ベルはならない・・・
「では次に・・・スリを行った理由をお聞かせ下さい」
まぁ理由は薬品製作の資金に回す為だったが伏せておこうと思って魔法を使いながら答える。
「生活に困っていた」
チリーン・・・
「何でぇ!?」
さっきから何だ!?
何で【嘘八百】が通用しない!?
ワシは今迄と違った展開に戸惑っていた。
◇◆◇◆◇◆
今思ってる事・・・言っていい?
やってられっかああああぁぁぁぁあああ!!!!!!!!
何で俺が女装しなきゃならねぇんだよ!!!!
まぁ・・・うん・・・俺は今女装してるんスよね・・・
────尋問開始30分前────
「リュウヤ君」
「ん?どした?」
俺の予定では、ある魔法を展開した【フィルターフィールド】を使って嘘を暴こうと考えていた。
尋問をするのは俺。
まぁ【フィルターフィールド】を使えんのは俺しかいないから当然ちゃあ当然だ。
そして尋問が始まる30分前にリルムが声を掛けてきた。
「尋問は君がやる予定なんだよね?」
「?そうだけど?」
「私の主観で言わせてもらうと男性の尋問ってかなり威圧的な方法だと考えてるんだ」
あ~分からなくもないな・・・
俺も小さい頃、分かる筈もない刑事ドラマを見てて、その作品内でも刑事さんがテーブルをバン!と叩いて「お前がやったんだろ!」とか怒鳴ってる所を見た記憶があって、警察署を通る時、ビクビクしながら通り過ぎてた記憶がある・・・
「確かに分からなくもないな・・・」
「だろ?そこで・・・だ!」
リルム楽しそうに木製のバッグの様な物を持って・・・・・・ねぇ・・・待ってもらえません?
嫌な展開しか想像出来ないのですが・・・?
リルムが蓋を開ける・・・
「これに着替えるのなんかどうだろうか!」
リルムが見せたのはセナの様な人が着ている女性モノの服だった・・・
当たったよ!!!!
でも当たりたくなかったよ!!!!
どんな羞恥プレイですか!?
え!?何!?これからやる尋問にこれを着ろと!?
「えっと・・・一応新人の男性っていう設定でやるからこれは必要ない・・・かな・・・?」
「何を言ってるんだ君は・・・」
いやそのセリフ俺の方が言いてぇわ・・・
「相手は男性だ。なら異性の検察官なら多少たりとも心を許しやすいだろ?・・・・・・多分」
持ってきた割に自信ねぇのな!?
「リュウヤ殿」
「?」
近くにいたシェインが俺に頭を下げる。
「お願いします!それを着て下さい!リルム殿の言う事も一理あると思います!ですから!」
アンタも
どうもこの部屋から出ようにもこれを着なければ許されないらしい・・・
・・・・・・ハァ・・・・・・分かったよ・・・
俺は折れて着ることにした・・・
ただ条件付きで尋問の行われる所までは人の目に触れさせないようにすることを条件にした。
これを他人に見られたら生きていけない・・・
仕方なく衣装を確認する。
ん~と・・・短い白髪のウィッグに・・・なんだこの黒い眼鏡?
「ん?この眼鏡が気になるかい?」
「・・・まぁ・・・」
「これは【カモフラージュ眼鏡】と言って着けた人の声を変えることが出来るんだ。因みに命名者は私だ」
【カモフラージュ眼鏡】・・・ネーミングセンスが残念な人に会ったな・・・
全部を着て、鏡を見る。
膝まである紺色のスカートにこれまた膝まである靴下で、すね毛は見えない・・・
『足が太いのは違和感あるな・・・』とは絶対言うなよ?
ってこれ・・・澄玲に似てんな・・・
あいつ短い白髪だし・・・
あ、ウィッグの向き、逆だった。
俺が一旦外して付け直そうとした時だった。
「なぁ竜弥、ちょっと直してほしいも・・・の・・・・・・が・・・・・・・・・」
ガチャ!と音が鳴って和真が入って来た・・・・・・
「「・・・・・・」」
お互いを包む沈黙が俺の心にグサグサと突き刺さる。
「・・・・・・お邪魔しました・・・・・・」
「待て和真!!!!違うから!誤解だからあああぁぁぁああああ!!!!!!!!」
この後、和真に黙ってもらうのに1週間分の夕飯を奢る約束をしてしまったのは言うまでもない・・・
◇◆◇◆◇◆
目の前では老人が焦ってる。
だが疑問に思う者もいると思う。
────なぜスキルが通用していないのか
答えは簡単・・・【人間失格】を使っているからだ。
そしてダンジョン攻略の際に和真が言ってた事を【フィルターフィールド】に修正として加え、【フィルターフィールド】を展開した時に対象と発動する魔法、発動方法を選べば自動的に発動する仕組みにしておいた。
今回の尋問でそれらを設定すると────
【対象:尋問相手
発動魔法:人間失格
発動方法:相手の何らかの魔法が発動した際】
────となり、老人の何らかの魔法は無効になる。
だから嘘発見機も誤作動なく動いているのだ。
思惑通り焦っておりますよ?
そして窓の奥ではリルムが背を向けてプルプルと震えていた。
・・・絶対笑ってんなあいつ・・・
そして俺はある物を出す。
あの瓶だ。
「これは貴方の持ち物ですね?」
「そんな物は知らん」
チリーン
「この瓶は今問題になってる原因不明で草木が枯れている所にあったものです。貴方はこの瓶の中身を使って実験を行いましたね?」
「そんな事はしていない」
チリーン
「・・・」
老人の顔は真っ青としている。
「違う!!!!ワシは知らんぞ!!!!」
チリーン
「何でじゃ!?何で・・・!!!!」
「何でとは?」
老人に聞こうにも知らん顔している。
俺はフゥ・・・と溜息を吐いた。
これ以上やっても絶対終わらねぇぞ?
俺はそんな思いを込めてバルターとシェインを見る。
2人は首を縦に振った。
恐らく『種明かししていい』というのだろう。
んじゃ・・・遠慮なく・・・
「はぁ・・・そろそろ本当の事を言ったらどうだ?爺さん」
「!?」
口調が変わって驚いてる・・・まぁさすがに驚くか・・・
「言っておくが最初に指紋を取ったのは覚えてるな?」
「う・・・うむ・・・」
「アンタの指紋・・・今から鑑定させてもらう」
俺はそう言って鉄粉の入った瓶とハケを取り、テーブルに乗せ、指紋鑑定をした。
ガラスに指紋が浮かび上がる。
「これはアンタの指紋だ。そして・・・」
俺は現場に落ちていた罅のある瓶も同様に指紋鑑定を行う。
俺が【指紋鑑定】と唱えながら瓶とガラスに付いている指紋が重なった途端に淡く光り出す。
「これは指紋が一致した証拠だ」
目の前の爺さんは真っ青になっていた。
「それと・・・何で自分の魔法が発動しない?って顔してたよな?答えは簡単だ。この空間には魔法を無効化する魔法【人間失格】が付いてたんだよ。つまりアンタがこの空間に入った時点でアンタの魔法は使えなくなったって事だ・・・それを含めてもう1度聞く。原因不明で草木が枯れていたのはアンタが作った薬品が原因だな?」
俺が全てを言い切った所で老人はガックリと項垂れた。
◇◆◇◆◇◆
「いや~君に任せて正解だったな」
俺とリルム、バルターとシェインはギルド長で談笑していた。
あの後老人は白状して薬品を作ったのは自分だと認めた。
理由は実験。
クエストとして実験の被験者を募集していたのだが全く来ず、仕方なくアクセルから少し離れた所で薬品を使ったらあんな状態になったのだとか・・・
そして同僚にそれを話すと同僚は家に同じ薬品があるから疑われると判断して慌てて他の所にも薬品を使ったのだ。
因みにその同僚も既に捕まった。
香水を付けていた理由は、室内でその薬品の調合をしてたので服等に匂いが付いたからその匂いを誤魔化す為だったとか・・・
「てかそんな危険な薬品を人に使おうとしてたのか・・・受けた人は災難だな」
「まぁいいじゃないか。これで無事犯人は捕まったんだから」
リルムは愉快そうに紅茶を飲んでいた。
「リュウヤ殿。今回の件、本当に有難う御座いました」
バルターとシェインが俺に頭を下げる。
「全く・・・【人間失格】といい【フィルターフィールド】といい、規格外ですよ・・・」
シェインに至っては「本当・・・騎士団に入団して頂きたい位です」と褒める。
まぁ入りませんけどね・・・
「では私とシェインは事後処理があるのでこれで」
2人は立ち上がって俺達に一礼するとギルド長室を出ていった。
「騎士団からも信頼が置かれているとはな・・・さすがは勇者候補だ」
「勇者候補とかどうでもいいよ。それに・・・俺は事件を解決しただけだ・・・信頼はその結果に生まれたものだしな」
俺はそう言って紅茶を一口飲む。
うん、美味い。
「リュウヤ」
リルムに呼ばれる。
どうもレイモンドギルド長に
レイモンドギルド長も何の話かと思い、耳を傾けようとしている。
俺は他言無用にすることを約束させ、リルムと話した事をそのままレイモンドギルド長に話すと本人は驚いていた。
「つまり君は転生者でその魔法も特典の一つと・・・?」
「まぁ・・・そうなるな」
レイモンドギルド長は気が抜けたのかソファーの背もたれに体重を預ける。
「まさか・・・私の空想が現実になるとはな・・・」
「驚いたか?」
「いや・・・驚く以前に嬉しく思っている」
レイモンドギルド長はフッ・・・と笑みを浮かべる。
「これはとんでもない方を味方につけたようだな・・・」
レイモンドギルド長は俺に深々と頭を下げる。
「君を信じて頼みたい・・・どうか・・・魔王軍から我々人類を守ってくれ・・・」
「・・・」
はっきり言うとこの人に言うのは抵抗があった。
何せ初対面の時も相手がどんな人物か観察していたからだ・・・それも気付かれないように・・・極普通に接するかのように────
だからこそ素直に言うことにした。
「俺にそんな力はない」
魔法は俺の力じゃない。
俺はただ、女神から力を借りてる1人に過ぎない・・・
今迄の戦いもそうだ。
女神から授かった力を使わないと俺は弱い・・・
だからこそ俺は『俺にそんな力はない』と言ってしまった。
「・・・君は弱いと思ってるね?」
横にいるリルムから指摘が入った。
「確かに今の君は上の街の人から見れば弱い・・・でも確かな事がある」
リルムの目は聖母のように優しい目だった。
「君が今迄
リルムの目は強く優しい目をして俺に微笑み掛けた。
全く・・・この2人は本当に────
「厄介だな・・・」
そう言いつつも俺の心はその言葉に温かみを感じていた────
「さてと・・・私はもう帰るよ」
「おう・・・・・・って帰るってリルム、アンタどこで寝たりしてんだ?」
「ん?あぁ、この街に私の従姉妹がいてね、そこに住まわしてもらっているんだ」
あ~そうなんですね・・・
リルムは「んじゃ2人とも、また会えたら会おう!」と言って出ていった。
「俺も帰るか・・・じゃレイモンドギルド長、俺はこれで」
「あぁ・・・それと私の事もレイモンドで構わんぞ?レイシャやリルムでさえ名前で呼ばれているのに私だけギルド長とは・・・なんというか・・・距離を感じる」
「そうか?ならレイモンドで」
レイモンドは大層嬉しそうにしていた。
因みに今回の件の報酬金はギルドから50万エリス、騎士団からも50万エリス。
合計で100万エリスとなった。
・・・騎士団金持ち過ぎだろ・・・
竜弥の黒歴史を増やしたくて女装させましたw
☆~第2回この素晴らしい世界にイレギュラーを!誕生秘話~☆
主人公のモデルを金木研にするか百夜優一郎にするか迷った。
前世の主人公の暮らしをハートモードにするのはこの小説を書こうとした当初から決まっていて、それに合いそうなのは誰かな?と考え、作者が知ってるのが「百夜優一郎」と「金木研」でした。
最初は金木研にしようかと思いましたが、一人称が「僕」だったのを思い出して少し幼いな・・・と思い、最終的に百夜優一郎となりました。
因みに記憶に鍵を掛けるのも、1期分最終話で彩香が記憶を取り戻すのも小説を書き始めた時から既に決めていました。
感想、誤字脱字報告、お待ちしております。
それと英語のタイトルの点ですが、とある理由から2期分の方だけ日本語に変更したいと思います。
変更は9日00:00迄に一斉変更を予定です。