この素晴らしい世界にイレギュラーを!   作:JAIL

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ちょっとミステリーっぽいの書いてみたくなった。


枯れ草木の謎

「原因不明で草木が枯れてる?」

「そうなんだよ」

 

俺は今、ギルド長室でレイモンドギルド長と対面する形でソファーに座っている。

事の発端は数分前に遡る。

クエストボードには《薬品実験の被験者募集!》や《息子に剣術を教えて欲しい。尚、ソードマスターかルーンナイトに限る》等、どうでもよかったり、禄でもないクエストしかなく、諦めて自室で魔法を作ろうと考えていた俺にレイシャが「お父さんがリュウヤを呼んでる」と言ってギルド長室に来た。

そこで「原因不明で草木が枯れているので解明してほしい」とレイモンドギルド長から言われたのだ。

レイシャは先に帰っている。

 

「モンスターの仕業とかの可能性は?」

「それは無いな・・・そういったモンスターはもっと上の街にいる。ここ(アクセルの街)では確認はされていない」

 

そしてこういった現象は今迄にも何回かあるのだとか。

う~ん・・・広域的な被害であれば酸性雨とかを疑うけど、ここは自然の多い異世界。

元の世界の排気ガスのような科学的な自然破壊はないはずだ・・・という考えからその可能性が頭から消える。

雷による山火事も考えたが昨日は雷雨では無い。

後は・・・薬品・・・若しくは魔法による影響か・・・?

まぁ・・・調べてみるか・・・

レイモンドギルド長にやってみると言うと突き止めてくれたら報酬も弾むと言ってくれた。

 

「現場の状況は?」

「一応、二次被害防止の為に非常線は張っている。なんなら今からでも見に行けると思うぞ?」

 

おおぅ・・・異世界とはいえ非常線とかあんのかい・・・

俺は情報整理と薬品や魔法による影響防止の為にリルムとアクアを連れて行っていいかと聞くとレイモンドギルド長はすぐに了承してくれた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「想像以上だな・・・」

 

俺とフィーリィ、リルムの前には枯れてボロボロになった草や、葉が落ちて灰色になった木々が横倒しになっていたりと酷い有様だった。

そしてそこを囲むようにロープが巻かれた木の棒が立っている。

・・・簡易的だけどこれがこっちの非常線って訳ね・・・

そして俺はこの草木の枯れ方に違和感を感じた。

 

「酷い・・・何で・・・」

 

フィーリィが心を痛めて涙を浮かべる。

不味ったな・・・薬品や魔法の影響も考えて耐性の魔法を付けてくれるフィーリィを連れてきたんだが・・・予想以上の被害に心を痛めさせちまったな・・・

アクアを連れて行こうと帰ったらいなくって代わりにフィーリィ呼んだんだが・・・大丈夫だろうか・・・?

俺はフィーリィをあやして耐性魔法を付与してもらう。

 

「あれ?リュウヤ殿ではありませんか」

 

向こうからバルターと女騎士団長のシェインが駆け寄って来る。

 

「2人も頼まれて来たの?」

「あぁいえ、父上も原因不明で枯れている場所があると聞いてたんですが、興味無いと言っていたので代わりに僕とシェインが来たんです」

 

自分の立場が危うくないのならどうでもいいのな・・・

横のシェインが軽く会釈をする。

 

「所でリュウヤ殿は何故ここに?」

「ギルド長から頼まれてな・・・悪いけど先に調べさせてもらうぞ?」

 

バルターがどうぞと言いつつも非常線の近くまで様子を見に行く。

万が一を考えてリルムとフィーリィを下がらせ、非常線を潜って枯れた1本の木に近付く。

だがそこで違和感は確信に変わる。

枯れ方がおかしいのだ。

基本、草木は自然に枯れると葉も含めて茶色くなり、葉は落ちて最終的に枝だけが残り、木自体は短くて5年、長くて10年程で土に還り、跡形も無くなる。

塩化カルシウムで枯らす方法もあるらしいのだがそんなレベルではない・・・

幹が真っ白・・・いや灰色に近い白なのだ。

う~ん・・・簡単に説明するから艶の無い銀色のスプレーを表面に塗ったような感じの色だ。

完全に死んでいる。

これでは次に生えてくる草木の養分は出来ない。

そしてこの枯れた木が発する匂い。

薬品特有の鼻に刺すような匂いがする。

 

「【人間失格】」

 

木に触れながら魔法を発動する。

・・・反応は無い。

だとすると薬品の影響か?

念の為、俺は自分に自作の浄化魔法を掛けてフィーリィとリルムの元に戻る。

 

「どうだった?」

「薬品だな・・・でもどういった種類かは分からない」

「ふむ・・・」

 

リルムが顎に手を寄せて思考を巡らせている。

 

「何か分かりましたか?」

 

シェインが近付いてきて俺に問いかけた。

 

「まず、薬品なのは確かだけど、さすがにその詳しい成分は分からねぇな・・・」

「・・・リュウヤ君、ちょっとアレ(【データ】)を使いたいから何か遮蔽物のある所まで付いてきてもらえるかい?」

「それなら・・・フィーリィとシェイン。ちょっと離れてもらえるか?」

 

2人は了承して俺とリルムから離れる。

 

「【フィルターフィールド:視界遮断モード】」

 

俺は視界遮断の機能を付けた【フィルターフィールド】を展開する。

中にいるリルムはさすがに驚いていた。

 

「感謝しよう・・・では【データ】」

 

リルムの【データ】が発動する。

 

「ふむ・・・やはりか・・・」

「やはりって?」

「あぁ・・・ここ以外でも原因不明で枯れている場所が2箇所ある・・・距離はそれぞれ少しながら離れているようだ」

 

って事は何者かによるタチの悪い悪戯って訳か。

リルムが【データ】を解除した後に【フィルターフィールド】を解く。

 

「この件に関しては君しか適任はいないみたいだね」

「は?何でよ?」

 

リルムがフゥ・・・溜息をする。

 

「この件の犯人はこういった行為を何度も繰り返している。普通なら厳重注意される筈だ。それでも尚、続けているのなら拘束や尋問をされても文句は言えない。なのに捕まってすらもいないんだ・・・おかしいと思わないかい?」

 

なるほど・・・何かしらの方法で嘘発見機での追求を免れているって訳ね・・・

 

「リュウヤ殿、こんな物が・・・」

「?」

 

バルターが綺麗な白い布に包まれた罅のある瓶を俺に見せる。

どうやら近くに落ちていたらしい。

瓶を包み直して懐に入れたバルターが俺に相談を持ち掛けた。

何でもこういった輩を一刻でも早く捕らえたいらしく、俺に協力してほしいと頼んできた。

勿論協力してくれるからには情報は勿論、騎士団からも礼金は出すとのこと。

まぁ俺は冒険者(無権者)

向こうは騎士団長(有権者)

深い部分を調べるには有権者がいた方が幾分マシだなと思い、承諾した。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

場所は変わって俺の家。

 

「それではまず枯れた原因から突き止めたいと思います」

 

バルターが進行役を買って出て、俺の部屋で会議が始まった。

メンバーは

 

・俺

・リルム

・バルター

・シェイン

 

の4人。

フィーリィは自ら辞退した。

 

「では確認の為にリュウヤ殿、あの枯れた草木は自然に枯れたものではなく、薬品による影響ですね?」

「その判断でいいと思う。俺の魔法【人間失格】には反応しなかったからな」

「・・・ちょっとよろしいですか?」

 

シェインが挙手をして俺を見る。

 

「その・・・あまり関係無いとは思うのですが・・・【人間失格】とはどういった魔法なのですか?魔法の名前的に人である事を否定しているような名前にしか感じないのですが・・・」

 

あ・・・説明するの忘れてた・・・

俺は2人に【人間失格】の効果を改めて説明する。

まぁベースは元の世界で翔に借りて読んでた漫画なんだけど、「異世界の漫画がベースです」とは言えないのでそこはさすがに伏せた。

まぁ驚かれましたよ。

 

「全部の魔法を相殺する!?そんな魔法があるわけが!」

「いや・・・疑ってる所悪いんだけど、事実だから・・・」

 

バルターとシェインはありえないと言いたそうな目で俺を見る。

まぁ作り物ですけど!

 

「話を戻すけど、その【人間失格】に反応が無いから魔法は含まれていない・・・けどその薬品がどういったものなのか・・・さすがにそこまでは分からないな」

「そうですか・・・」

 

時間的にここまでだなとバルターが締め括って今日はお開きとなった。

明日はバルターとシェインは合同訓練がある為、お休みさせてもらいたいと言われ、俺も明日はクエストにでも行くかと思い、その事を言って別れた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

ギルドに向かってレイシャと歩いている。

時間的に昼頃。

ぐっすり眠って体調はいい。

うん、街は変わりなく活気づいていた。

四方八方から売り込み文句や自分の仕入れた商品の良さを謳う声が飛び交う。

 

「かなり人が多いな」

「1番魔王軍のいる場所から離れてるからね。安全な地を求めて人々はここに来るのよ」

 

ドンッ!

 

奥から走ってきた紫色のフード付きローブを深々と着た老人が俺とぶつかってしまう。

 

「すまんな兄ちゃん。急いでるもんでね」

「いいよ。気をつけ・・・な」

 

老人はそそくさと去ってしまった。

 

「ぶつかる位ならフードを取ればいいのに・・・」

「・・・」

 

俺はある事に違和感を感じるも、歩き始めた。

だが気になってしまい、レイシャに聴くことにした。

 

「なぁ・・・レイシャ」

「ん?」

「ローブを来てる奴らって皆、男女関係無く香水を付けてんのか?」

 

はぁ?と言うような目で俺を見る。

 

「女性はするとしてもさすがに男性はやらないわよ?」

「・・・だよな・・・」

 

そう・・・老人からしたのは甘い香水の香り。

かなり強めの・・・

まぁ嗜好もそれぞれだよなと俺はそこまで重要視していなかった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「昼食を済ませてからクエストに行くのよね」

「まぁな・・・んじゃ、ジャイアントトードの唐揚げ定食一つ・・・レイシャは?」

「私はサンドイッチセットを一つ」

 

ギルドに着いた俺達はテーブルに座って昼食を食べてから行くことにしていた。

ウェイトレスを呼んで品物を頼む。

トイレに行こうとして立ち上がり、何気なくポケットに手を入れた時に気付いた。

・・・やられた・・・

 

「?どうしたの?」

「財布・・・スられた」

「・・・ここは払うから後で返してね・・・」

「ウィッス・・・」

 

俺は払う事を約束してトイレに行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「さてと・・・クエストに行こう・・・と言いたいが先に財布をどうにかさせてくれ」

「構わないけど・・・どうするの?」

「まぁ見てな」

 

昼食を終えて外に出た俺はレイシャの手を持って【転移】でギルドの建物のてっぺんに立つ。

 

「ここから探す」

「・・・」

 

レイシャがジト目で俺を見る・・・ってなんすか?

 

「貴方には常識が通用しない事が改めて分かったわ」

「ねぇ止めてくんない?それだと俺が非常識人間って言われてるもんだぞ?」

 

俺はまぁいいかと思って集中し、範囲を決めて魔法を唱えた。

 

「【サテライト(広域読心)】!!!!」

 

俺から溢れ出る青白い光が天に伸びて天空に魔法陣が現れる。

因みにこの光と魔法陣はパーティメンバー以外には見えていない。

この【サテライト(広域読心)】。

俺の自作魔法で魔法陣内の人々の声や見ている景色を見る魔法。

魔法陣の大きさで魔力消費は格段に変わる。

今回のこの範囲では98%前後・・・ギリギリだ。

俺の脳内に様々な声や映像が入ってくる。

 

 

《『今日はどうする?』『おっしゃー俺の勝ちぃ!』『お前それ温めすぎだ!また打ち直しじゃねぇか!』『お兄ちゃーん待ってー!』『今日はこの魚が安いぞー!』『チェックメイト』『ZZZ・・・』『これもう少し安くならない?』『えーまた行くのー?』『いらっしゃいませ~!』『むしゃくしゃしてやった。反省も後悔もしていない』『次はどのクエストにするかな~?』『ったく仕方ねぇなぁ・・・』『ふぁ~あ・・・眠い・・・』『頼む!お金貸してくれ!』『なぁ・・・俺達、やり直せないか?』『早く来いよー!』『お前それセコいぞ!?』『これと・・・これ・・・あ!これも必要か』『げっ!?また変な色になった!?』『闇の炎に抱かれて消えろ!・・・もうちょい足開くか・・・』『頼んだやつ出来てる?』『まいどありー!』『ちっ・・・こんだけしか入ってねぇのかよ・・・』『ふぃ~食った食った~』『あ・・・今日、宿の支払いだ』『ちょっとリリ!待ちなさい!』『おかーさーん!どこー!』『てめぇやんのかコラ!!!!』『準備出来たかー?』『よっしゃ釣れた!』『うえっ・・・飲み過ぎた・・・』『俺のターン!』『やっぱガントレットの方が合ってんのかな・・・』『あーもー!また逃げられた・・・』『この装備重いな・・・』『オギャー!オギャー!』『先に行ってるぞ?』『やっと出来た・・・』『この武器?新しく作ってもらった・・・え~っと名前が・・・【名状しがたいバールの様なもの】』『これ要らなくね?』『ヤバッ!家に忘れてきた!』『これとこれは習得するかな・・・』『あいつ・・・また忘れて行きやがった・・・』》

 

 

見付けた!

見付けた方角は大体西の方。

 

「見付けたから先に良さそうなクエスト選んどいて?」

「分かったわ」

 

俺はポーションで魔力回復をしてからスリを取っちめる為に【転移】を使って向かうのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「くそっ・・・あのガキ、たった5000エリスしか持ってなかったのかよ・・・スっといて損し「スっといて何だ?」・・・!?」

 

紫色のローブを着た老人が驚いた表情で振り向く。

ってあれ?さっきの爺さんか。

 

「なっ・・・!?どうやって・・・!?」

「まぁ、ちょっとした魔法でね・・・っとそれよりも・・・」

 

俺は老人と距離を縮めていく。

 

「ま・・・待て!?金なら返す!だから薬品だけは!」

「は?薬品?」

 

老人はヤバッ!と言うような表情を浮かべる。

 

「まさか・・・アンタが草木を枯らしてる犯人か?」

「い・・・いやそれは知らん!」

 

それは(・・・)・・・ねぇ・・・

俺は【銃製】でハンドガンを作り、麻痺弾を浴びせた後に守衛を呼んで牢獄に連れて行ってもらい、レイシャとクエストに行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

帰りに俺達が現場検証をした場所の近くを通った。

 

「また草木が枯れてる・・・」

「やっぱ気になるのか?」

 

レイシャも気になるようで色々と俺に話してくれた。

元に戻してそこの土地に耐性を付けさせることは出来るがかなり上の街からアークプリーストを雇わなければいけないらしく、その金額も破格な為、普段は数十人のアークプリーストを使って浄化のみを行なうらしい。

 

「耐性は付けられないんだな・・・」

 

俺はある事を思い付いて【魔法生成機】起動する。

 

【魔法名:リコールフィールド

発動内容:範囲を決め、その範囲内で起こったことを脳内で巻き戻す

巻き戻して見られる範囲は今日から1週間以内

発動条件:発動する範囲をロープ付きの木の棒で囲んで、手を木の棒に触りながら魔法名を唱える】

 

この作った魔法ならこんな状態にした本人も分かると思う。

多分これでいけるんじゃないか・・・?

俺はレイシャに現場検証をしたいと言って被害現場に近付き、木の棒に触れ、魔法を唱えた。

 

「【リコールフィールド】」

 

俺の脳内に生い茂っていた頃から今この時までの様子が逆再生される。

 

非常線が取り払われ、少しづつ木々が生き生きとし始める。

地面も灰色が取れて青々としている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?

誰かが現場に来て瓶がその者に飛んでいく・・・ってこれは普通に見ると投げ捨てたのか・・・

その人・・・・・・・・・・・・って・・・・・・俺がとっちめたヤツじゃねぇか!

え?何!?スリもしてるし、迷惑な行為もしてんの!?

俺は【リコール・フィールド】を解いた。

 

「何か分かったの?」

「逆に分かり過ぎた・・・」

 

俺はさっきの事を明日の会議で伝えようと決め、道具屋にある物を作ってもらう為、寄り道をしてから家に帰った。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「つまりその魔法で犯人が分かったということですね!?」

「まぁな」

「では早速それを証拠にして「いや無理だろう」リルム殿!?」

 

シェインの提案をリルムが即効でぶった斬る。

 

「確かに彼の見た映像が確かでもその老人は何かしらの方法でくぐり抜ける筈だ・・・ならばそれすらも出来なくさせる証拠が必須となる・・・」

 

リルムの言う事も確かだ。

俺が見た映像、もしもその老人が魔法で姿を変えていたらアウトとなる。

でもそう言うのは想定済み。

ってそういえばバルターに頼んだやつって持ってきてんのかな?

俺はバルターに「あれは持ってきてる?」と聞くと彼はすぐに例の物を出してきた。

テーブルに置かれたのはバルターが見付けた瓶。

 

「持っては来ましたがこれが証拠になるとは到底思えません・・・何か手掛かりが?」

「まぁ・・・言うと“指紋“だ」

「「「指紋?」」」

 

3人が俺に声を揃えて聞いてくる。

まぁこの時代に指紋鑑定がないのは想定済みだ。

俺はこれに付いている指紋がその老人の指紋と一致すればそれが動かぬ証拠になると説明する。

昔、ふざけ半分で結晟さんに「指紋鑑定をやってみたい」と言ったら簡易的な方法だけどやらせてくれた経験が役に立つとはね・・・まぁ元はネットのだけど。

 

「なるほど・・・その指紋さえ手に入れられればこちらの勝利は約束されたも同じなのですね!」

「そういうこと」

 

俺はそれに必要な物を取ってくると言って部屋を出て、道具屋に行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「ちわーっす!」

「おお!兄ちゃんか!例のやつ、出来てるぜ!」

 

おっ!いいねぇ!では早速!

 

道具屋のおっさんが柄が黒く、毛先が真っ白なハケと手に収まる程の小さなガラス瓶に入った銀色の粉をカウンターに置く。

 

「これで全部だ」

「ちょっと見てみるぞ?」

 

実際に手に取って見てみる。

うん、ハケは問題ないな・・・でも・・・・・・

 

「これ以上は細かくならない?」

 

うん・・・ちょいと瓶の中に入ってる金属の粒が粗いんだよね・・・

まぁこの中世ヨーロッパの時代に電気で作るアルミが無いから鉄を細かく削ってもらっただけの粉じみたやつだからしょうがないはしょうがないんだろうけどさ・・・

 

「すまんな・・・これに関してはちぃと難しい・・・」

「そっか・・・まぁいいか、んじゃ代金の5000エリス」

「毎度ありー!」

 

俺はカウンターに金貨2枚を置いて店を出た。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「さてと・・・」

 

俺は今、リビングにいる。

事件のメンバーは自室で待たせて、他のメンバーはクエストに行ったり買い物をしに行ったり自室で休んでる。

リビングのテーブルに大きめの紙を敷いてその上に粗い鉄粉を出した。

その粗い鉄粉に手を翳し、魔法を唱える。

 

「【分解】」

 

魔法を唱えた途端に鉄粉は細かくなっていく。

俺の自作魔法【分解】は文字通り、対象をより細かくする魔法。

数秒間して魔法を掛けるのを止めると粒だった鉄粉がパウダー状になっていた。

・・・火気厳禁だなこりゃ・・・

当然クシャミもね?

俺は出来た鉄粉を瓶に戻して自室に戻った。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「・・・あっ!リュウヤ殿!それで例の物は!?」

「焦んなって・・・ほら」

 

俺はテーブルに瓶とハケを置く。

 

「これで証拠が手に入るのですね・・・」

「まぁ1回しかやった事ないけど・・・やってみるよ」

 

俺は早速準備に取り掛かった。

 

 

☆~すぐに出来る指紋鑑定講座~☆

 

さぁ唐突に始まりました!

猿でも分か・・・いや無理か・・・

素人でも分かる指紋鑑定講座!

実況は私、一条竜弥がお送りします!準備する物はこちら!

 

・指紋を採取する対象物(ガラスやプラスチック製のもの)

 

・鉄粉(本来はアルミパウダー)

※小麦粉でもよい。

 

・粉末をはけるための筆など

 

・黒い布(本来は黒い紙等)

 

をご用意下さい!

この位は皆でも用意出来るはず!

ではやっていきます!

 

・準備した対象物に自分の指紋が付かないように布で覆いながら持ちます!

 

・用意した筆に鉄粉を付着させ、余分に付いてしまった分は落としておきます!

 

・筆で対象物をなぞるように鉄粉を付着させ、最後に粉をはけましょう!

 

今回はセロハンテープ等といった便利アイテムは無いので黒い布を中に入れれば・・・あ~ら不思議!

指紋が浮き出て来ました!

 

ではこれにてすぐに出来る指紋鑑定講座、終了デース!

 

☆~すぐに出来る指紋鑑定講座~☆完

 

 

私の目の前には椅子に座ってぐったりしたリュウヤ君がいる。

 

「お・・・お~い・・・リュウヤ君~?」

「・・・」

「まぁ・・・うん・・・よく頑張ったよ・・・後は私達が引き受けよう・・・」

「お願い・・・」

 

俺は慣れない実況で疲れ果てましたよ・・・

 

「これでもし老人が同じ指紋なら・・・」

「あぁ・・・今回の原因不明の枯れた木の謎は一気に決着が付く」

 

俺の隣では犯人逮捕の話で盛り上がっていた。

そんな時、俺に面白い考えが浮かび、一気に復活する。

 

「なぁお前ら」

「「「?」」」

 

俺に呼ばれ、3人が俺を見る。

 

「ちょっと一芝居・・・打ってみるか?」

 

俺の考えを話した途端、3人に黒い笑みが浮かんだ。

そして明日、尋問が行われる。

 

「さぁ・・・尋問を始めよう────」




実を言うと【サテライト】を使いたかっただけというね。
指紋鑑定に関しては調べて書いてみましたが違っていたらご指摘お願いします。
それと作者は明日から海外旅行に行きます。
帰りは5日ですが小説投稿は8日からとなります。
感想は海外から帰ってきたらすぐに返しますので御安心を。
感想、誤字脱字報告お待ちしております!
さて明日は室内の射撃場に行きますか・・・

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