「ん・・・・・・・・・あれ・・・・・・・・・?」
気が付くと私は医務室に寝ていた。
「気が付いたかい?」
横から声がしてその方を見る。
「バルター殿・・・っ!」
私は上半身を起き上がらせるが身体の至る所が痛む。
「あまり無理をしない方がいい、かなり彼にやられていたからね」
「そう・・・ですね・・・あの・・・分かってはいるのですが結果は・・・」
「・・・君の負けだ」
敗北────
その二文字が私の心を締め付ける。
「彼に感謝した方がいい、彼の手刀で気絶した君をここまで抱えてきたんだからね」
「彼が・・・」
フゥ・・・と溜息が出てしまう。
「騎士団長として・・・みっともないですね・・・」
「ははっ・・・あまり言わない方がいいよ。僕も彼にはまだ引き分けのままだから」
バルターが私にそう言って苦笑する。
「はぁ・・・魔法はあまり使いたくない・・・か・・・」
「なぜ魔法を使わせようとしたんだい?」
使わせようとした理由?
それは・・・
「認めてもらいたかったんです・・・」
「認めてもらう?彼に?」
「いえ・・・私の父は剣術に長けていて私はその父に憧れて騎士を目指したんです・・・でも・・・」
冒険者にさえ負けるとなると私は・・・
「彼は流派を習っていたようだよ」
「流派を?」
「うん。以前模擬戦をする機会があってね。彼と剣を交えたんだよ。かなりトリッキーな流派みたいでね、恐らく彼はその流派を磨いて自分なりに鍛えているんじゃないかな」
イチジョウリュウヤの使う流派・・・か・・・
もしも彼の流派を超える事が出来たなら私は─────
ならイチジョウリュウヤを目標にして彼を越えよう─────
私は今度会ったら彼の流派を学んでみようと考えた。
それ以外で私の中で、ある考えが思い浮かんでバルターに相談を持ち掛ける。
「バルター殿、彼を「駄目だったよ」・・・まだ何も言ってませんよ・・・」
私の言葉を遮られて口を尖らせ、拗ねてしまう。
「僕も彼に進言したんだ。『騎士団に入ってみないか』って」
バルターと私の考えは同じだった。
「すぐに断られたよ」
「そう・・・ですか」
沈黙が流れる。
「バルター殿、以前そちらの騎士団長が仰っていた男騎士団と女騎士団の合同稽古をいずれ行いたいのですが・・・」
「いいのかい?なら団長に進言して予定を組んでおこう」
「お願いします」
不意にバルターが立った。
「では僕は失礼するよ」
そう言ってバルターは出ていった。
それと同時に男性が入ってくる。
私は目を疑った。
見間違う訳がない・・・
「父上・・・」
入って来たのは私の父、ケイン・アルカードだった。
◇◆◇◆◇◆
「・・・」
「・・・」
何分経っただろうか。
お互いにまだ一言も話していない。
「父う「冒険者に負けたらしいな」・・・」
父上の言葉が心に突き刺さる。
怖くなって私は身体に掛かっていた毛布をキュッと握り締めてしまう。
ジワ・・・と涙も滲み出る。
「はい・・・負けました・・・でも・・・」
「?」
私は思った事を吐き出そう────
そう考えて今思ってる事を父上にぶつける。
「でも・・・目標は出来ました。今後はそれに向かって精進するつもりです」
「・・・」
父上の表情は変わらない。
また叱責されるのだろうか・・・
だが違った。
父上は私の肩に手を乗せる。
「シェイン」
そして父上は私が言ってほしかった言葉を発した。
「立派になったな────────」
思わず涙が溢れ出て父上に泣きついてしまった。
やっとだ────────
やっと言ってくれた────────
私の今迄の全てが報われた気がした。
そして私達はその溝を埋めるように話し込んでいた────────
◇◆◇◆◇◆
「では・・・私はこれで失礼するよ」
「はい・・・あっ父上!」
私は思わず父上を呼び止め、父上に告げた。
「次は────負けませんから」
父上はフッ・・・と口角を上げて出ていった。
◇◆◇◆◇◆
「不器用なんだな?」
私が医務室を出た途端に廊下にいた彼にそう言われた。
イチジョウリュウヤ────────
今回、シェインを負かした冒険者であることは分かっていた。
「本人に直接言えば良かったんじゃないのか?『褒められる為ではなく自分の成長の為に目標を作って目指してほしい』って」
「私は・・・シェインには気付いてほしかったんだ」
「そうですかい・・・」
私は彼の横を通り過ぎる。
「言っておこう」
私は彼に背を向けたまま、彼に言う。
「シェインは私の自慢の娘だ。せいぜい追い抜かれぬようにするんだな」
「・・・」
彼の表情は見えていなかったが私は言いたい事を言えたので満足して帰った。
◇◆◇◆◇◆
再び横になってイチジョウリュウヤとの戦闘を思い出す。
「イチジョウリュウヤ・・・」
私に出来た超えるべき相手。
「次に戦うことになったら絶対に負けない・・・!」
シェインはどう彼を越えようか考えていた。
だがその表情は怒り等は全く無く、嬉しさの表情が現れていた────────
◇◆◇◆◇◆
翌日
「おらっ!」
「ちいっ!」
今日も俺は稽古場に足を運んでいる。
「あっリュウヤ殿!」
後ろから声を掛けられる。
振り向いて見てみるとシェインがいた。
・・・また罵声を浴びるハメになるのか・・・?
シェインが俺の元まで近付いて頭を下げた・・・・・・って頭を下げた?
「昨日の不躾な発言・・・誠に申し訳なかった・・・この場を借りて詫びたい」
「えっと・・・どうも・・・」
シェインが頭を上げる。
「リュウヤ殿、迷惑でなければ貴方の剣を習わせては頂けませんか?」
「え?俺の?」
なんでも俺の流派を習った後、他の女性騎士達にも習わせて騎士団の流派として定着させたいのだとか・・・
っておい・・・マジですか・・・
やば・・・流派といっても全部覚えてねぇよ・・・
シェインは覚えている範囲でいいと言われ俺は教える事にした。
シェインが礼を言ってロイスに歩み寄った。
「ロイス・リエッセといったな?」
「は・・・はい・・・」
ロイス君の目が泳いでおられます。
まぁ無理もないよね・・・会って早々騎士としてみっともないと言われたから・・・
そのロイスに対してシェインが頭を下げた。
「昨日の軽はずみな発言・・・申し訳なかった・・・ロイス・リエッセ。自分のペースで剣の腕を磨くといい。私は君を応援するよ」
シェインがロイスに微笑み掛けた。
ってあれ?なんかロイスさん顔を赤くしておりますけど・・・?
まさか・・・ねぇ?
「魔性の女・・・か・・・」
「?何かおっしゃいました?」
「いえ・・・なんでも・・・」
うん。ロイスよ、君の成長を願おう。
俺は今日は帰ると言ってその場を後にした。
その後、神統志丞流が騎士団の流派となって定着したのは言うまでもない。
そして皆さん。
登録人数200人突破記念として明後日から後書きで「この素晴らしい世界にイレギュラーを!誕生秘話」という誰得な事と本編の完結後にとあるIFルートの小説を書きたいと思います。
この誕生秘話に関しては質問等は受け付けてはおりませんが皆さんが気になったことがあったら御自由にご質問下さい!
先に軽く言ってしまうと、この作品は元々魔法生成の予定はありませんでした。
そういった裏話を明後日の後書きから何回かに分けて行いたいと思います。
それともう1つ、魔法応募をしてきましたが予想以上に多くの応募があったので一旦締切とさせて頂きます。
魔法応募は再び行うかどうかは分かりませんがまた応募をした際は是非ご応募下さい!
感想、誤字脱字報告お待ちしております!