この素晴らしい世界にイレギュラーを!   作:JAIL

37 / 82
昨日は出せなくてすんません・・・
更新の際は毎回、21:00を予定しております


おかしな情報屋 後編

「君は転生者かい?」

 

レイシャが退出した後にリルムさんが発した一言だった。

はいそうですとも言う訳にはいかない。

 

「・・・違うと言ったら?」

 

俺は目を背けて答えてしまう。

 

「答えるのに間があった。そして目も泳いでいる・・・もしも私の聞いたことに関して関係ないのなら私の目を見て答えるか、すぐに否定するよね?」

 

・・・はぁ・・・やられた・・・

レイシャを追い出したのはこれが聞きたかったからか・・・

 

「俺が転生者だということに証拠でも?」

「証拠なら既に見ているさ。先程の【魔法生成機】あれが証拠だ。

理由なら簡単・・・この時代にあんな高性能な装置はないからね。あんなのが世間に出回ったら誰もが即死魔法を作って魔王軍を倒しに行っている。そして魔法を作れるということは、この世界の理すらも無視する事が可能だ。火を氷に変えることは出来ない。だが君のその【魔法生成機】ならそれすらも可能になる。

それとデュラハンの討伐。最弱職の冒険者がデュラハンに勝てる可能性はほぼゼロだ。だが君は最弱職の冒険者にも関わらずデュラハンを撃退、討伐した。

更に君はスキルポイントがかなり高い爆裂魔法の【エクスプロージョン】もデストロイヤー戦で使っているという情報もある。

冒険者が【エクスプロージョン】を使うとなると何年も掛けてレベルを上げ、更にその時までスキルポイントを全く使わない状態じゃないと習得は出来ない筈だ。

そして極めつけは・・・」

 

リルムさんが立ち上がり、本棚から1冊の本を取り出してページを捲り、俺の近くに置いた。

 

〔勇者候補に関して〕

 

忘れる筈が無い。

俺もこれを読んだからだ。

 

「今言った全てが確信を得た理由だ」

 

・・・はぁ・・・全てお見通しって訳ですね・・・情報屋・・・怖いっす・・・

 

「聞かせてくれ・・・君は転生者なのかを・・・」

 

俺は折れるしかないと思って話すことにした。

勿論、他言無用という条件を付けて・・・

 

「アンタの言う通り、俺は転生者だ・・・まぁ勇者候補はどうかは分かんないけど・・・」

「それは前世で死んだ・・・という事かい?」

「・・・兄に殺された」

「・・・!済まない・・・我ながら配慮が無さすぎた」

 

リルムさんは焦って謝罪する。

 

「別にいいよ・・・もう済んだことだし・・・まぁあの【魔法生成機】もこの本に書いてある通り転生した際の特典だ」

「やはり・・・となるとこれを使えるのは君だけ・・・と」

「多分・・・」

「・・・」

「・・・」

 

沈黙が2人の包み込む。

だがその沈黙をリルムが切った。

 

「・・・まさか・・・レイモンドの言う通りになるとはね・・・」

「疑ってたのか?」

「はっきり言うと・・・まぁ疑ったね・・・空想が過ぎる・・・でも証拠が無い以上、そういった考えにもならざるを得ない」

「そっか・・・」

 

神妙な面持ちだったリルムさんが笑顔に戻る。

 

「なら私も秘密を教えて進ぜよう!」

「は?」

 

アンタの秘密?

 

「君は知りたくないのかい?先程の【データ】について」

 

リルムさんの言ってる事は間違ってない・・・本当の事を言うと【データ】とはどういったものなのか、個人的に知りたい・・・でもあえて言わないのは何かしらの理由があるからだと思う・・・だから・・・

 

「言わなくていい・・・」

「なぜ?」

「アンタが隠す理由は俺は分からない・・・でもそれをする必要があったんだろ?なら俺は聞かない・・・いつかアンタの方から言ってくれるまで待つよ」

 

リルムさんは目を見開き、また笑顔に戻った。

 

「いいね・・・君は本当に面白い」

「そりゃどうも」

「・・・ねぇリュウヤ」

 

君からリュウヤに変わった事に違和感を感じたが気にせずに次の言葉を待った。

 

「個人的に私を雇ってみないかい?」

「は?アンタを?でも・・・」

「君の心配は分かっている。報酬等の心配だろう?そこは無くていい。代わりに君の持ってる面白い情報を貰えれば十分だ。そして私も君が望む情報をいつでも提供しよう・・・どうだい?悪くないだろ?」

 

確かに・・・専属の情報屋が獲得できるのはこっちも有難い事だ。

いちいち調べに行かなくてもそこに情報が集まるのだからこちらも楽に、安全に行動できる。

 

「悪くは無いけど・・・何で?」

「理由なら簡単だ・・・君の持つ情報の質さ」

「質?」

「そう、私は今まで様々な人と情報を交換してきたが、君程の持っている情報の良さはなかった」

「つまりは俺の前世での情報が欲しいと・・・?」

 

いや・・・いいんだけどさ・・・役立つのか?

前世のは全体的に電気を使わないと動かない物が沢山だ。

そしてこの世界には電気が無い。

まぁモーターとかを作れればいいんだけど、そのレベルでさえ俺は行ってないからな・・・せいぜい梳いて作る和紙、手作業で作れる木製品とか?

・・・後はそうだな・・・乗り物では・・・スケボー・・・くらいか?あっ魔法があるなら車もいけそうだな・・・

 

「まぁ生活に役立つ物で構わない。君がこれは使えるといった情報を私に教えて欲しい。その際に君が情報を必要としてるなら最大限の情報を渡そう」

 

なるほどな・・・それは有難い・・・

 

「まぁ先に言っておくが君達が損をする情報は渡さないから安心してくれ」

 

・・・まぁこっちも情報は欲しいし・・・いいか

 

「分かった。ならこれからよろしく頼む」

「うん!いいね!決まりだ!」

「じゃあ早速だけど・・・」

「何だい!?ありとあらゆる情報を持ってるからね、どんな質問でも答えるよ」

「分かった、じゃあ・・・今回の国家転覆罪を掛けた本人について知ってる事を聞かせてくれ」

「よし!その位ならお安い御用さ!」

 

リルムさんは再び目を閉じて集中し【データ】と言うと、目を見開いた。

 

「『領主名:アレクセイ・バーネス・アルダープ』、『デブ』、『ピンハネは勿論、物資の横領』、『領主に似合わぬ贅沢三昧』、『何かにつけて領主の権力を使って横暴な命令』・・・とまぁまだまだあるけど今有力なのはこの位かな・・・」

 

うわぁ・・・典型的な極悪領主じゃないですかぁ~

 

「本当に笑ってしまう程の極悪領主だねぇ~」

 

さっきからリルムさんは笑顔のまま、人の考えてるのが筒抜けしてるかのように言葉を紡いでいる。

 

「・・・最後に一つだけ」

「?何だい?」

「【データ】の事なんだけど・・・」

 

先程の【データ】・・・あれは────

 

「レイシャも持ってるのか?」

 

俺が聞きたかったのは【データ】がどういったものなのかではなく、リルムさんの娘、レイシャも持っているのかという事。

もしも持っていたのならリルムさんは何が何でもレイシャを守ろうとする筈だ・・・自分の命を落としても────

なら皆で2人を守ればいい。

俺はそう思ってリルムさんに聞いた。

 

「レイシャは持っていない。私だけだ」

 

良かった・・・

もし【データ】というがレアなスキルなら命を狙われかねない。

俺の不安は杞憂に終わったみたいだ。

 

「分かった、まぁこれから宜しくな・・・お願いします」

「うむ!私こそ素晴らし過ぎる情報所持者を見つけることが出来て満足だ!私の事はリルムと呼んで構わんぞ!私もリュウヤと呼ぼう!後、慣れないと敬語は使わなくていいぞ?さっきからぎこちないのがバレバレだ」

「そうか、ならリ」

「いや待て、この際だ・・・リーちゃんって呼んでくれても構わない!その方が若く見え「お1人様、おかえりデース」ちょっ!?扱いが雑じゃないかい!?」

 

ほっとけ百合っ子が。

 

俺はリルムをギルドへ送る為、自室を出た。

リビングでは女性陣が談笑している。

横ではリルムがプルプルと震えてる・・・って震えてる?

 

「・・・・・・・・・ス」

「す?」

「ここは・・・・・・ここはパラダイスじゃあぁぁぁあああ!!!!!!!!」

 

先程の神妙な面持ちのリルムさんとは打って変わって初対面の時のリルムさんに変わってしまった・・・

リルムさんは女性陣のいるリビングにジャンプする。

ってちょっ!?ここ2階だから!?

そしてシノアに抱き付いた。

 

「あ~柔肌が癒されるぅ~」

「ちょっ!?離れて下さい!」

「ヤダ!もっと堪能するんだ!君は黙って抱かれていればいいのだ!」

 

あ~さっさとお帰り願おう・・・

横にいたレイシャがハリセンを出してリルムに振り下げる。

 

「いい加減にしなさい!!!!」

 

スパァン!と鮮やかな音がリビングに鳴り響く。

 

「くぅ~~~~~!!!!!!!!レイシャ!何で邪魔をする!?」

「レイシャ、もう遅いからその人送るよ・・・」

「1人で帰らせても大丈夫よ、それよりリュウヤはこの後の事を考えておいて」

 

レイシャが近付き、リルムの襟を掴んでドアの外へ消えていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「離してってば!分かった!もう帰るってば!」

 

私は娘の手を振りほどいて服装を整える。

 

「はぁ・・・情報を渡してくれたのは感謝するけど、初対面の女性に抱き着くのは止めてって昔から言ってるじゃない・・・」

「しょうがないでしょ!?冒険者達は殆どが男性で女っ気が少なかったんだよ!?こうなるのも普通でしょ!?」

「普通じゃないから・・・あ・・・それとあの・・・」

「それなら心配ない、アレ(・・)に関しては私しか持ってない事にしておいた」

「・・・リュウヤを信頼したんじゃ無かったの・・・?」

 

確かにイチジョウリュウヤは信頼に置ける人物だ・・・でも・・・家族絡みとなるとそうは言っていられなくなってしまう・・・

 

「信頼はしているさ・・・でもそれとこれとは別だ・・・」

「そう・・・」

「じゃ!私は帰るよ!ではレイシャ!実家に帰ったらそのふくよかなおむ」

 

スパァン!と私が言い切る前にレイシャのハリセンによって黙らせられる。

 

「酷いよぉ~冗談に決まってるじゃないかぁ~」

「はぁ・・・私もこの後やる事あるからもういい?」

 

私はレイシャに別れを告げてリュウヤの家を後にした。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

嘘を付いてしまった。

レイシャは【データ】を持ってない?

そんなのは嘘だ。

レイシャが10歳で【データ】を使えるようになったのはさすがに驚いた。

私はレイシャが利用されないように人前では使ってはいけないと言い聞かせた。

【データ】というのは、簡単に言えば脳内のメモ帳みたいなもの。

自分が重要だ、面白そう、興味深い、そう思った時に自動で発動して【データ】に保存される。

井戸端会議やギルドでは特に重宝した。

使い方的には、【データ】を起動する。

必要なデータと思ったらそのままにしてフォルダを作り、そこに保存する。

どうでもいいかな?と思ったのは消去する。

でもこの消去も二段階に分かれていて、一段階目の消去は【デリートデータ】と口上、若しくは頭の中で唱えれば要らないデータが密集されているフォルダに行ける。

そこで再び消去をすれば完全に消えるわけだ。

脳に負担は掛からないのか?と思う筈だ。

答えは掛からない。

ただそれは制限時間内に作業を行えばの話。

それを過ぎれば頭に激痛が走る。

私の【データ】を使える時間はせいぜい15分。

レイシャは恐らくその半分以下。

レイシャは私やレイモンドと似て、観察力があるから少し少ないと思う。

この【データ】。

スキルではなく、私が受け継いだ能力・・・恩恵(ギフト)と言った方が分かりやすいか?

そしてこれは隠密行動が得意な祖母から遺伝して私が受け継いだもの。

母も受け継いではいたが相性が合わなく、使う事が出来なかった。

祖母から先は持ってはいなくて恐らく祖母は何かしらの理由があってこの【データ】を持ったんだと思う。

恐らく・・・いや・・・確実に国のお偉いさんに知られれば危険な場所に行かされて、ありとあらゆる情報を吐かせ、使い古されるまで私の自由は無い。

それが嫌でこの恩恵(ギフト)を隠して冒険者なった。

実はこの【データ】。

理由は分からないが登録の際にもその表示がされないのだ。

冒険者になって少しした頃にレイモンドに会い、仲良くなった。

ある日、私が【データ】を使ってるのを見られてしまった。

あぁ・・・バレてしまった・・・と思った。

でも彼はこう言った────

 

『君がそれを隠すのには理由がある筈だ・・・なら俺は君から言ってくれるまでずっと待とう・・・』

 

レイモンドとリュウヤが重なる感じがした。

その時に私は彼に惹かれ、結婚し、レイシャを産んだ。

 

「イチジョウリュウヤ・・・もし君がそんな奴らと違うのを証明してくれたならレイシャを任せても良さそうだ・・・」

 

私の口角は自然と上に上がりギルドへ、レイモンドのいるギルド長室に向かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「あ~疲れた・・・」

 

ドカッ!とリビングのソファーに座る。

 

「うう~・・・汚された・・・」

 

俺の真ん前ではシノアとめぐみんが涙目になって震えていた。

 

「さてと!それじゃ私、行ってくるわ!めぐみん!ダクネス!貴女達は私の指示通りにお願い!」

 

そう言ってアクアとめぐみん、ダクネスが立ち上がる。

 

「?何処か行くのか?」

「カズマの所よ、渡す物があるからね」

 

あ~差し入れって訳。

 

「じゃ、俺も行くか」

 

こうして俺とアクア、めぐみんとダクネスで行く事になった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「それでは私達はアクアの指示通り、こっちに行きます」

 

めぐみんが少し歩いた所でそんな事を言った。

 

「ん?4人で行くんじゃないのか?」

「行くのは私とリュウヤよ、2人には別の事を頼んだの」

 

・・・なんか禄でもねぇ事を考えてる気がするが・・・まぁいいか・・・

俺はアクアに従って2人と分かれた。

でもアクアの奴、手ぶらで何を渡す気なんだ?

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

牢獄に着いた。

アクアが鉄格子の近くに木箱を積む。

 

「そろそろね」

 

アクアがそう言った直後だった。

 

ドゴオオォォォォオオオン!!!!!!!!

 

遠くで巨大な爆発が起きる。

って何だ!?

 

「フッフッフッ・・・さすがの看守もあれには驚いたでしょうね・・・その隙に・・・!」

 

・・・まさか・・・今のめぐみんの爆裂魔法か・・・?

アクアがカズマを呼んで細長い物を懐から出した・・・ってちょっと待て!?

俺は咄嗟にアクアを引きずり下ろした。

 

「ちょっ!何すんのよ!?脱獄の計画を台無しにする気!?」

「馬鹿か!?状況が悪化するだけだわ!!!!」

 

俺は付き合ってらんないと思って、木箱に乗る。

 

「和真、いるか?」

「竜弥か!?助かった・・・てかアクアの奴・・・何をしようとした?」

「・・・・・・・・・脱獄」

「状況が悪化するだけだな!?」

 

俺は和真から何か欲しい物はあるか?と聞いて、暖かい毛布と言われ、明日、朝イチに持ってくると約束した。

 

「それでさ・・・竜弥・・・」

「ん?」

「俺・・・どうなるんだ・・・?」

 

まぁ和真の不安も分からない訳では無い・・・

 

「分からん・・・一応3日後に尋問があるらしい。そこで疑いが晴れれば無事釈放だ・・・」

「てことはミスったら裁判になりかねないのか・・・」

 

俺はそれに関しては「心配ない、情報屋と知り合いになって有利に進める鍵を貰った」とだけ言っておいた。

 

「んじゃ俺達は一旦帰る・・・和真少しの辛抱だ・・・耐えてくれ」

「分かった」

 

俺はそう言って牢獄を後にした。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「何で脱獄の邪魔をしたのよ!?」

 

アクアが家に帰ってきてから発した一言だった。

 

「お前な・・・そんな事も分かんねぇのかよ・・・」

 

アクアがキョトンとした顔になる。

 

「いいか?和真は今、国家転覆罪を掛けられてる。そんな状況下で脱獄したらどうなるよ?」

 

アクアが思考を巡らせて漸く答えが見つかったのか、ハッ!とする。

 

「国家転覆罪と脱獄で二重でヤバいって事ね!?」

「微妙に合ってるけど他に重要なのがあるだろ!?脱獄したらますます2つの罪が怪しまれるだろうが!!!!」

 

こいつもう1人にしておけない・・・

 

「でもどうするんですか?カズマの国家転覆罪と魔王軍関係者の疑いが濃厚になったら死罪も免れませんよ?」

 

めぐみんの言う事も確かだ・・・でも和真は結構頭の回転がいい・・・恐らく尋問も軽くスルー出来るだろう・・・

 

「まぁそこは問題ないだろ。和真が下手しない限り裁判沙汰にもならないと思う。それにもし裁判沙汰になっても国家転覆罪じゃないのは明白なんだ」

 

後は訴えたアルダープという奴が禄でもないことを考えていなければの話だが・・・

翌日、俺は朝イチに和真に毛布を届けに行き、クエストに出掛けた。

その夜、また爆発音が聞こえたのは気のせいだと思いたい・・・

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

和真が捕えられて3日が経つ。

今日がその尋問の日だ。

俺は個人的に尋問を盗み聞こうと牢獄で尋問が行われている所まで来ていた。

 

「【共有:聴覚

対象:佐藤和真】」

 

魔法名【共有】

俺が作った魔法で五感を共有出来る魔法。

共有する感覚、対象を選べばその内容の通りに出来る。

共有出来るとは言っても一方的にも可能で盗聴や盗撮なんかも出来てしまう。

・・・まぁやらないけど・・・

今回は和真の聴覚を一方的に共有して尋問を聞く感じだ。

っと尋問が始まるみたいだ。

 

『ではこれより尋問を始める。これが何だか分かるか?この魔法具は嘘を付くと反応しベルがなる仕組みだ。ではまず出身地から聞こう』

『・・・出身は日本で学生をしてました』

 

チリーン

 

ベルが鳴った・・・って待て!?

和真の発言は正しい筈だ!

壊れてんじゃねぇのか!?

セナという女性が「出身地偽造」と言って、和真の後方にいる男性に書類を書かせる・・・てかその男性の持つペン先があられもない方向に行ってるんですが・・・あれでちゃんと書けてんのか?

和真が何かを思い出したらしく、言い換えた。

 

『出身は日本です。学校には行かず、部屋で体たらくな生活をしてました・・・』

 

・・・ベルは鳴らない・・・

そういえば初対面のアクアも『ヒキニート』とか言ってたっけ・・・

 

『・・・なぜ学生と見栄を・・・?』

『別に見栄なんか・・・』

『・・・まぁこの話は置いておいて・・・冒険者になった理由は?』

『魔王に怯えている人々を助け』

 

チリーン

 

和真の発言の途中でベルが鳴る。

ほぼ公開処刑だな・・・これは・・・

 

『冒険者って簡単そうだし、女の子からチヤホヤされたいし・・・』

 

・・・ベルは鳴らなかった・・・

和真の発言した事が次々に書かれていく度に和真の頬を透明な水が伝っていく・・・うん・・・和真の気持ちがわからなくもない・・・

 

『では次に・・・『あの・・・』?』

 

和真が勝負に出た。

 

『さっきからまどろっこしいですって・・・何度も言ってるじゃないですか!俺は魔王軍の幹部でも何でもないって!』

 

和真の発言にベルが鳴ることは無かった。

ふぅ・・・一応疑惑は晴れたな・・・

 

『どうやら違っていたみたいですね・・・』

 

突然セナという女性の声がしおらしくなる。

あれが素か・・・?

 

『本当に勘弁して欲しいですよ!魔王軍でも何でもないのに!それにアクセルの街を救った英雄にお茶の1杯も出ないなんてねぇ!?』

『す・・・すみません・・・!今お持ちします!』

 

あの馬鹿・・・調子に乗りやがった・・・

暫くしてセナがコップにお茶を淹れて持ってくる。

 

『ぬるい!こんなぬるいもんが飲めるか!どうせアンタもそんな性格だから男作れなくて婚期を逃してんでしょ?えぇ?言ってみなさいよ?今ここで!』

『ええいませんよ』

 

セナの声は氷のように凍てついていた・・・

和真の評判は酷いらしく、「カスマ」や「クズマ」等のあだ名があるのだとか・・・うん・・・リルムの情報通りだな・・・

そしてあまり調子に乗るなとセナから叱責され、和真は縮こまった・・・

ふぅ・・・とセナがため息をつく。

 

『もう一度聞きますけど、貴方は魔王軍でもないし、その知り合いもいないんですね?』

『違いますよ。だいたい俺みたいな冒険者に魔王軍の知り合いなんている訳・・・』

 

チリーン・・・

 

ないじゃないですかと言おうとした所でベルが鳴ってしまう・・・

待て・・・あぁ・・・思い出した・・・ウィズがそれ(魔王軍幹部)じゃねえか・・・

こうして明日、和真の生死が決まる裁判が行われることになった・・・




今日はこの話ともう一つ、第1期終了時点までのオリキャラの登場人物説明を載せようと思います。
登場人物説明は22:00を予定。
ご感想、誤字脱字、魔法応募等、お待ちしております!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。