The year-end and New Year holidays
「よし・・・これで発酵を待つだけだな・・・」
「ん?竜弥、何してんだ?」
後ろから和真に声を掛けられる。
「和真か、ちょっと・・・年越し蕎麦に似たものをな」
「あぁ・・・もう年末か・・・って蕎麦なんてこの世界にあったっけ?」
「言ったろ?蕎麦に似たヤツだって・・・だから・・・まぁ小麦粉があるんだからうどんでもいいかな~って」
「年越し蕎麦ならぬ年越しうどんか・・・まぁ風変わりで面白そうだな」
そう、俺は今、年明けに向けて年越し蕎麦ならぬ年越しうどんを作ってる。
蕎麦の原料が無いからな・・・そこら辺は仕方ない・・・
それともう一つ問題がな・・・
「てかお前、うどんを作ったとして汁とかはどうするんだよ?」
「・・・俺もそれに引っ掛かってる・・・」
そう・・・もう一つの問題がそれ・・・この世界にはつゆに使う醤油が無い・・・だからどうするか・・・絶賛考え中だ。
鰹節とかは代用品がある。
けど醤油は別だ・・・あれをどうやって代用するかが問題だ・・・
「店行って代わりになるヤツ探してみるか?」
「頼む・・・俺、別の下拵えあるから・・・」
和真は金を渡すとすぐに店に歩いた。
さぁて・・・やりますか・・・
キノコに・・・鶏肉・・・あ、ジャイアントトードの肉も入れとくか・・・
・・・多分何も知らない奴に「ジャイアントトードの肉入れる」って言ったら100%ドン引きされるんだろうな・・・なんだかんだ言って俺もこの世界に染まってきてる・・・
野菜は人参に・・・長ネギ・・・後はどうするかな・・・
「あれ?リュウヤ・・・何をしてるんですか?」
後ろからめぐみんに声を掛けられる。
「めぐみんか、今年越しうどんの準備をしてる」
「トシコシウドン?」
・・・あぁ・・・こっちにはそういうのは無いのか・・・
「まぁ簡単に言うと来年も元気に行きましょうっていうげんかつぎみたいなものだ」
実際はどうだったか覚えてねぇけど・・・
「へぇ~リュウヤの住んでた所では年末にはトシコシウドンっていうのを食べる風習があるんですね?」
「う~ん・・・本来は蕎麦っていうのを使って食べるんだけど・・・こっちでは蕎麦が無いからうどんになるだけなんだけどな」
「なるほど・・・代用品というわけですか」
「正解、まぁ全員分あるから出来たら夕飯に食べよう」
「分かりました!楽しみにしてますね!」
女の子に明るい笑顔で言われたらこっちもレベルを上げなきゃいけないな・・・
まぁやってやるさ・・・
・・・どうなるかは分からんけど・・・
さて、具材を切るとしますか・・・
鶏肉は一口サイズに切って・・・キノコは・・・そのまんまとスライスで分けるか・・・
カエルの肉も一口サイズでいいかな・・・
人参は・・・・・・桜っぽく飾り切りをしたいけど、生憎俺にそんなレベルの技は出来ない・・・彩香は出来たけど・・・
・・・あれ?年下が出来て年上が出来ないって・・・俺・・・ダメ人間・・・?
そんなマイナス思考は捨てて俺は野菜は全て、斜めに切るだけにしておいた・・・
こう見ると野菜類が少ないな・・・まぁ和真が何かしら買ってくるだろ・・・
・・・・・・無駄遣いしなければの話だが・・・
「珍しいですねぇ?竜弥さんがキッチンに立ってるなんて」
次はシノアが声を掛ける。
「ちょっと年越しうどん作ってる」
「年越しうどんって・・・あぁそういえばこの世界に蕎麦なんてありませんからね・・・なら同じ麺類のパスタでも良かったんじゃないんですか?」
「年越し蕎麦・・・まぁこれはうどんだけど・・・これは日本での風習だ。
外国の麺を使うのは気が引ける」
「・・・それもそうですね」
シノアは楽しみにしてますねぇ~と言って自室に戻った。
ん~具材は決まりつつあるが難関はつゆだな・・・
う~・・・どうする・・・?
白だしになりそうなのでもあったか・・・?
確か白だしって・・・
・昆布
・鰹節
・みりん
・白醤油
・ほんだし
・塩
を使ってたな・・・
・・・仕方ない・・・今回は昆布とあるのであれば鰹節・・・塩だけでやってみるか・・・
あっ・・・冬場は寒いからな・・・なんか暖まるものでも・・・
「竜弥~買ってきたぞ~」
和真、グッドタイミング!
「使えそうなもの、色々買ってみた」
和真がそう言ってテーブル買ってきた食材を出す。
ん~と・・・
小エビ、魚、ソーセージ、卵、生姜・・・
「生姜なんてよく見つけたな?」
「おう、なんか売ってたから買った」
ふむ・・・小エビは最後に彩りに使って・・・魚はぶつ切りでいいか・・・ソーセージは斜めに半分に切って・・・卵は綴じるか・・・生姜があるのならすりおろして汁を出し、それをつゆに加えるか・・・よし・・・
「んじゃ夕飯で俺作ってるから待っといて」
「分かった」
さぁ始めますか!
先ずは生姜をすりおろして布で包み、生姜の汁を出す。
鍋に水を張ってソーセージ、切ったカエルの肉、スライスしたキノコとそのままのキノコを入れ、塩を軽く入れて茹でておく。
その横にもう一つ、水を張った鍋を用意して切った鶏肉、昆布、塩を入れる。
別に入れた理由は簡単。
鶏肉を出せば鍋の湯は鶏ガラになるからだ。
ある程度茹だったら鶏肉、昆布を出してそこに酒、生姜汁を入れて掻き混ぜてっと・・・
まぁ・・・つゆもどきの完成だ。
ふとうどんの元を見る。
おっ!こっちもOKですかい!
もう一つの肉やキノコが入ってる鍋を弱火にして、うどんを切りますか・・・
テーブルに打ち粉を撒いてその上にうどんの元を乗せ、綿棒で伸ばす。
おぉ!結構伸びるね~
伸ばし棒で伸ばしてっと・・・
うし・・・切るか・・・
ジュワァ~~・・・・・・
・・・ん?
何か蒸発してる音が聞こえ・・・・・・って・・・・・・・・・
「ぎゃあああぁぁぁぁぁあああ!?!?!?」
鍋が吹きこぼしてるぅー!?!?!?
慌てて火を止めた・・・
「あ・・・・・・危ねぇ・・・・・・」
大事にはならなかった・・・・・・
気を取り直してうどんを切る。
う~・・・慣れてないせいか、太さが若干まばらだ・・・
「何してんの?リュウヤ」
次に声を掛けたのはレイシャだ。
「ちょっとうどん作ってる」
「ウドン・・・?へぇこれがウドンっていうの・・・って太さバラバラじゃない・・・ちょっと貸して」
レイシャに包丁を渡した。
トントントントントン・・・
太さが揃ったうどんが次々に出来ていく・・・
・・・上手すぎない・・・?
「ほら、出来たわよ」
「お・・・おう・・・」
・・・なんだろう・・・凄い敗北感を味わった・・・
ええい!こうなったら飾り切りに挑戦して名誉挽回してやらァ!
こうして俺と人参VS包丁が始まったのだった・・・
数分後・・・
飾り切りを終えた俺はうどんを茹でる準備に入った。
鍋に水を張り、温める。
沸騰したらうどんを入れ、数分煮てから柔らかさを食べて確かめる。
・・・うん、丁度いい・・・
出来たうどんに作った具材を入れてから溶き卵を入れて・・・人数分の器に分け、最後に小エビを入れて・・・完成!
「お前らー!夕飯だぞー!」
俺の声で皆が食卓に集まった。
「リュウヤ・・・この白いのは何なのだ?」
「そいつはうどんっていう麺だ・・・んで今日は年越しうどんっていう料理を作った。これは俺のいた国に昔からある食べ物でな・・・まぁ本来は蕎麦ってのを食べるんだけど・・・まぁ年越しに食べるものなんだ。んじゃ揃った所で・・・」
「「「「「「「「いただきまーす」」」」」」」」
皆が一斉に食べ始める。
うん・・・塩が効いてる。
我ながら上出来だな。
皆からも絶賛されている。
「あの・・・リュウヤさん?」
「ん?どした?」
「この人参・・・どうしたんですか・・・?」
ゆんゆんの箸に挟まってるのは、歪な星の人参・・・
えぇ・・・そうですよ・・・飾り切り・・・失敗したんですよ・・・なんか文句あるかぁ!!!!
ガン!と俺がテーブルに頭を打ち付け人知れず泣いてると何かを察してくれたのか、すぐにパクッと食べてくれた・・・ありがとう・・・ゆんゆん・・・
ポーン!ポーン!ポーン!
おっ!午前になった・・・
ってことはもう2017年か・・・
去年は驚きの連続だった・・・
兄に殺され転生し、仲間にあって危険な目にあって・・・でもその1日1日が楽しかった・・・
「皆、ちょっといいか?」
皆が食べ終えた所で視線を集める。
「俺の国では年が明けたら『明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』っていう習慣があってな・・・皆で向き合ってやってみないか?」
皆が面白そうに頷く。
「んじゃ・・・行くぞ?せーのっ!」
「「「「「「「「明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」」」」」」」」
皆様!
明けましておめでとうございます!
今年も
【この素晴らしい世界にイレギュラーを!】
よろしくお願いします!