放送に従い、冒険者がギルドに集まる。
「皆さん、お越し頂き有難うございます。
現在、機動要塞デストロイヤーは街の北西方面からこちらに向けて真っ直ぐ進行中です。
到着まで、あと1時間となっています」
ギルド役員の持つ水晶には蜘蛛型のロボット、通称【機動要塞デストロイヤー】が8本の足で歩行しているのが映っている。
大きめの鳥がデストロイヤーに近付くとセンサーが感知したのか、鳥は無惨に撃ち落とされた。
そこで映像は途切れてしまう。
「あの・・・デストロイヤーって古代の魔法王国が作ったんですよね・・・?作った人達は何か対抗策は用意してなかったのですか?」
1人の女性の魔法使いが挙手し、ギルド役員に質問する。
確かにそうだ・・・作る側としては異常があった場合にはすぐに止められるように何かしらの停止方法がある筈・・・
・・・いや・・・ダメかもな・・・もし暴走しているのなら、その国が一番先に滅んでいる筈だ・・・
「デストロイヤーの暴走で真っ先に滅ぼされました・・・」
・・・やはりか・・・
ダクネスの横にいるクリスが早く逃げた方がいいと言うもダクネスにそれだと街の皆の帰る場所が無くなってしまうという理由で却下されてしまう。
上空からは狙撃でアウト・・・地上から行けば踏み潰される・・・魔法は結界で打ち消される・・・
ダメだ・・・打つ手が無い・・・
「なぁアクア、お前なら結界を破れるんじゃないか?」
「う~ん・・・やってみないと分からないわよ・・・?」
「破れるんですか!?デストロイヤーの結界を!?」
受付嬢が希望が見えたような目でアクアを見る。
確かにアクアは元女神だ・・・行けるか・・・?
和真が可能性の話だと言っても受付嬢がやるだけやって欲しいとの事でアクアが結界を破ることになった。
「後はダメージを与えられる魔法さえあれば・・・」
「いるだろ・・・火力持ちなら1人・・・」
受付嬢の心配に男性の冒険者が答える。
・・・待て・・・まさか・・・
「カズマ、あのめぐみんって子どうした?今いないみたいだけど?」
キースが近付いて和真に聞いてくる・・・
・・・やっぱな・・・
「あぁ・・・いや・・・ちょっとな・・・」
その時だった。
キィ・・・とギルドの出入口のドアが開く。
そこには──────杖を持っためぐみんがいた。
「「「「「「「めぐみん!!!!」」」」」」」
全員で駆け寄る。
「家に帰っても誰もいないと思ったらギルドにいたんですね?・・・それで・・・この騒ぎは?」
めぐみんが状況を飲み込めずに戸惑っている。
俺を見てあっ・・・という顔をして俺から視線を反らす・・・
「めぐみん!今デストロイヤーが来てるの!貴女の爆裂魔法でどうにか出来ない!?」
「デストロイヤーが来てるんですか!?・・・えっと・・・分かりません・・・もう1人いれば多分どうにか出来るかと・・・」
ゆんゆんの問いにめぐみんが答えるも、もう1人必要らしい。
「すみません!遅くなりました!ウィズ魔法具店の店主です。一応冒険者の資格を持ってるのでお手伝いに・・・」
またギルドの出入口で声がした。
そこにはウィズが立っていた。
てかウィズって魔王軍幹部なのに冒険者の資格持ってたんだ・・・
大丈夫かよギルドの管理・・・
ウィズの登場でギルド内が盛り上がる。
話によるとウィズは昔、凄腕アークウィザードとして名を馳せていたらしい・・・
正体はアンデッドのリッチーだけど・・・
俺はウィズに近付き、ある物をめぐみんに渡しておいてほしいと言って、その品物を渡しておいた。
こうして緊急クエストとしてデストロイヤーから街を守ることになった。
◇◆◇◆◇◆
街の門近くに気休め程度の簡易的な柵が設置される。
ウィズ、アクア、めぐみんは高台で出番待ちだ。
少し離れた所にダクネスが仁王立ちをしている・・・お前何する気だ・・・?
そこに和真が近付いて何かを話している。
なんか和真が驚いてる。
あ・・・怒鳴られた。
和真が戻ってくる。
「和真、ダクネスと何話してたんだよ?」
「ん?いや何でもない」
「そうか・・・」
まぁ無理矢理聞き出す内容でも無いだろう・・・
暫くして山の向こうに煙が見え始める。
・・・来た・・・
俺達冒険者の目の先には8本の足に背中には狙撃する砲台と排熱菅、頭それぞれ独立して動く7個のセンサーが搭載された頭部の持つ蜘蛛型のロボット
【機動要塞デストロイヤー】
それが8本の足をそれぞれ動かして近付いていた。
高台に複数の色に輝く魔法陣が現れる。
アクアが結界を破壊しようとしていた。
「【セイクリッド・スペルブレイク】!!!!」
鮮やかな光が伸び、デストロイヤーの結界と衝突する。
せめぎ合いを続けていたがデストロイヤーの結界は破壊された。
それを合図に高台に赤い魔法陣が2つ出現する。
ウィズとめぐみんの爆裂魔法だ。
魔法が発動して2つの爆裂魔法がデストロイヤーの足の付け根を目掛けて飛んでいく。
爆裂魔法はデストロイヤーの足の付け根に直撃し、進行の手段を無くしたデストロイヤーはバランスを崩して地面を抉りながら止まった。
ウオオオオォォォォォォオオオ!!!!!!!!
冒険者達が歓声を上げる。
終わったか・・・俺の出る幕は無かった訳だ・・・まぁ出たら出たであいつらに心配させかねないんだけどな・・・
「やった・・・やったぞ・・・!!!!」
「俺、この闘いが終わったら結婚するんだ・・・」
おい、誰かお約束を言わなかったか?
それに反応するかのようにデストロイヤーから警告のアラームが流れる。
《警告、この機体は、起動を停止いたしました。被害甚大につき、自爆機能を作動します。搭乗員は速やかに、この機体から離れ、避難してください。繰り返します。この機体は────》
警告のアラームを聞いたのか、多くの冒険者が街の方に走る。
自爆機能か・・・恐らくあのデストロイヤーの操縦が他人に奪われるのを想定して作られたんだろうな・・・今となってはすっごい迷惑だけど・・・
よく見ると最前線にいたダクネスがデストロイヤーに走り出す。
おいおい・・・ドMクルセイダーよ・・・お前の防御力がいくら強いとはいえ流石に死ぬぞ?
後ろで声が響く。
見てみるとダクネスの行動にして後押しされたのか、逃げようとしていた冒険者達がデストロイヤーに乗り込もうと息巻いていた。
・・・まぁ本人は殺られ・・・もとい攻撃を受けたいから行ったようなものだけど・・・
・・・行くか・・・
俺は自作の加速魔法【ソニック】で加速しデストロイヤーに近付く。
うわぁ~こうして見ると本当にデカイ・・・
周りでは矢に縄を結んでデストロイヤー内に飛ばしていた。
レイシャは得意の連射で1度に5本の矢に貼り付ける効果を持たせる魔法【ペースト】を付与して矢をデストロイヤーに固定していた。
それを掴み、どんどんと冒険者が上っていく。
「【フライ】」
俺は自分で浮遊魔法を使ってデストロイヤー内に侵入した。
中ではゴーレムがデストロイヤー内の敵を倒す為にウロウロしていた。
だがそいつらを冒険者が次々と葬っていく。
途中で和真、アクア、ウィズと合流してそれぞれで警備しているゴーレムを倒していた。
俺も【剣製】でハンマーを作り、ゴーレムの頭を砕きながら最深部へ向かった。
◇◆◇◆◇◆
デストロイヤーの中枢に着く。
白骨化した死体が椅子に座っていた。
その奥には鉄格子に囲まれた赤く光る球体がある。
これがデストロイヤーの燃料みたいなものか・・・
そして恐らくこの人がこのデストロイヤーの製作の責任者だったのだろう・・・
そして横の小さなテーブルには本が1冊置いてあった。
どうやらデストロイヤーの製作を依頼されてからの日記のようだ。
手に取って読み進めてみる。
〔国のお偉いさんが無茶言い出した。
こんな低予算で機動要塞を作れと言う。
無茶だ。
動力源をどうこう言われたが知るか。
伝説のコロナタイトでも持ってこいと言ってやった。
恐らく見つけることは出来ないだろう。〕
なるほどな・・・不可能な要求をすれば諦めると思ったのか・・・
工業やIT関係ならよくあることだ・・・
工業では頼んだ製品が合わなかったり、ITでは急な企画変更があってそれに間に合わさなければいけなかったり・・・こんな昔から無茶な注文はあったんだな・・・
そんな事を考えながらページを捲った。
〔本当に持ってきちゃった・・・どうしよう・・・これで動かなかったら死刑じゃない!?動いてください!お願いします!〕
・・・・・・・・・・・・またページを捲る。
〔終わった・・・現在只今暴走中。
あ、国滅んじゃったやっべぇ~!
コントロール出来ねぇやっべぇ~!
もういいや!なんかスカッとした。
よし決めた。
もうここで余生を暮らそう。
だって降りられないしな。
これ作った奴、絶対馬鹿だろw〕
・・・・・・・・・・・・・・・。
無言で本を閉じた。
何だろう・・・「あっ、これ作ったのワシでした」と言うような姿が頭に浮かぶ。
横の和真が【スティール】を使ってコロナタイトを鉄格子から奪い取って・・・待て!?今それやったら・・・!!!!
「あちゃぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!!」
案の定和真が火傷した。
だろうなぁ!こんな巨体の動力源なんだからそれ相応に熱いって!
アクアとウィズが二人がかりで回復とコロナタイトの一時的な凍結をしていた。
でもどうするんだ?
そのコロナタイト、そのままにしておくわけにはいかない・・・
「1つ方法があります」
ウィズに何か手があるようだ。
何でも【ランダムテレポート】という魔法があり、それでこのコロナタイトを人のいない所に飛ばすという。
それをやろうにも魔力が足りないらしい。
ウィズが和真に向き直り、和真の顔に両手を添わせ・・・・・・え・・・?
「吸わせてください」
「喜んで」
待て和真・・・お前はどんだけ欲望に忠実なんだ・・・
少しづつ2人が近付き・・・・・・
「【ドレインタッチ】!!!!」
「あああああああああああ!!!!!!!!」
・・・そのまま手を添わせた状態で魔力を吸われ・・・って!!!!
「待てウィズ!和真が干からびる!」
ウィズはハッ!として和真から離れた。
和真は痩せこけたミイラの様になった・・・
・・・多分死んでないよな・・・?
ウィズが【ランダムテレポート】を使い、コロナタイトはテレポートされた。
「戻るか・・・」
俺は和真に肩を貸してデストロイヤー内を後にした。
◇◆◇◆◇◆
外は夕方になっていた。
「終わったな・・・」
「いや・・・まだだ・・・まだ何かある」
ねぇダクネス・・・折角の余韻を壊さないで頂けます?
だがダクネスの言葉を合図にデストロイヤーの全体が赤くなっていき、頭部のセンサー全てが割れ、中から蒸気が吹き荒れる。
・・・何で・・・ってそうか!・・・コロナタイトを取り出したから全部の機能が停止して排熱機関も止まったんだ!
・・・どうする・・・!?
このままでは街が・・・!!!!・・・やってみるか・・・!!!!
俺は以前に作っていた魔法【グラビティ】と今回も使った【フライ】でデストロイヤーを軽くして自身と飛び、デストロイヤーを安全な場所に動かそうと考えた。
・・・まぁそこで爆発したら俺も命の危機だが・・・やるしかない!!!!
俺は覚悟を決めてそれを和真に言おうとしたが、ある言葉が俺の頭を過ぎる。
『少し位は頼ってみなさい・・・貴方だって出来ない事がある・・・もしかしたらあの子達はそれが出来るかもしれないわ・・・それを無下にしたら解決出来ることも出来なくなるだろうしね・・・』
・・・そう言われたっけ・・・
・・・また俺は1人でどうにかしようとしたな・・・よし・・・!
辺りを探すとウィズが例の物を渡してくれたのか若干魔力が回復して歩ける程のめぐみんが立っていた。
まぁ例の物ってのは魔力を少量回復するブレスレットだ。
俺はめぐみんに近付く。
「めぐみん」
「・・・何ですか・・・?」
めぐみんはまだ視線を背けたままだ・・・
そんなめぐみんの両肩を掴む。
「・・・へ?」
「めぐみん」
俺はめぐみんを見据える。
それに気付いたのか、めぐみんを俺を見た。
「あれを壊すには【エクスプロージョン】が必要だ!めぐみん・・・一緒にデストロイヤーを壊すぞ!!!!」
めぐみんが目を見開く。
「・・・はい!!!!」
時間が無い!
俺はめぐみんから爆裂魔法がどういった魔法か、発動するワードを全て聞きながら急いで【魔法生成機】に打ち込んでいく!
魔力も和真を経由してアクアから貰った。
「行くぞ!」
「はい!」
めぐみんが杖をデストロイヤーに翳す。
俺もその横で手を翳した。
「「「黒より黒く
闇より暗き漆黒に
我が深紅の金光を望みたもう
覚醒の時来たれり
無謬の境界に落ちし理
無業の歪みとなりて顕出せよ!
【エクスプロージョン】!」」
2つの爆裂魔法がデストロイヤーを包む。
キノコ雲が舞い上がる。
デストロイヤーは俺とめぐみんの爆裂魔法で跡形もなく砕け散った。
「さてと、帰ろうぜ」
和真の言葉に頷き、歩き出す。
「あっ・・・あのっ・・・」
私は咄嗟にリュウヤを呼び止めてしまった・・・
「ごめんなさい」そう言おうとしているがなかなか踏み出せない・・・
「・・・」
リュウヤは無言で私に歩み寄り、抱き寄せた。
「・・・!リュウ・・・ヤ・・・?」
「めぐみん・・・」
リュウヤは抱き寄せたまま・・・呟いた───
「───おかえり」
そう言われた途端に私の目から涙が溢れた。
「リュウヤ・・・リュウヤぁぁぁああ!!!!」
思わず抱き着いてしまった。
リュウヤは受け止めきれずに地面に転んでしまう。
でもそんな事は気にせずに泣き続ける私の頭を撫でてくれた。
「爆裂魔法は1発しか撃てない・・・それでも・・・リュウヤと一緒に闘いたかったんです・・・でもどうすればいいのか分からなくなって・・・」
「・・・そっか・・・」
今思えば簡単な事だった・・・
俺は・・・ただ単に皆を彩香のように見ていた。
でも違う。
俺達はパーティメンバーなんだ。
色んな事を分け合えばいい・・・
苦しいことも・・・悲しいことも・・・嬉しいことも・・・楽しいことも・・・
ただそれだけでよかった・・・
それを俺はただ失いたくない・・・ただそれだけの理由で1人で突っ走っていた・・・
本当・・・何やってんだか・・・
「ごめんな・・・めぐみん・・・」
「私こそ・・・ごめんなさい・・・勝手に出ていって・・・心配させてごめんなさい・・・」
俺はめぐみんと共に起き上がる。
「おーい!お前ら!帰るぞー!」
「おう!待ってろ!すぐに行くから!」
心なしかパーティメンバー全員に笑みが見えた気がした。
一件落着・・・かな?
俺は苦笑して街に歩き出した。
「リュウヤ!」
私はリュウヤを呼び止める。
────伝えよう。
私はそう決意しリュウヤの左腕に抱き着いて、そして耳元で、リュウヤにしか聞こえない・・・だがはっきり聞こえるように私は伝えた────
「リュウヤ・・・大好きです!!!!」
まぁ和解して竜弥が告られて終わりって訳ですわ。
う~ん無理矢理過ぎたかなぁ~・・・?
まぁどっちにしろくっつける予定ではあったから・・・まぁいいか・・・
さて、これで本編は一旦終わりですが、思い付いた番外編があるのでそれを明日投稿します。
・・・その番外編の時系列は無視して下さい・・・