皆の目の先には茶髪をオールバックにして眼鏡をしたバーテンダーのような格好の男性が屋根の上に立っている。
「ウェイルス・・・」
「なっ!?邪神ウェイルス!?」
アメルダが男性の名前を言って、アクアが驚いている・・・
・・・って邪神!?
「おや?アクア殿ではありませんか・・・まさか本当にこちらに来られているとは・・・」
アクアがウェイルスを睨んでいる。
「アンタ・・・自分がした事・・・分かってるの!?」
「した事・・・ですか・・・思い当たる点は・・・【魔法生成機】に【終わりのセラフ】を組み込んだ事ですかねぇ?」
・・・こいつが・・・終わりのセラフを!?
「まさか御本人に会うとはな・・・」
「?御本人・・・?」
俺はポケットから【魔法生成機】を取り出す。
「!まさか選んでいるお方が居られるとは・・・作った甲斐がありました・・・そうですね・・・アメルダ」
「何?」
「彼と闘ってみては如何でしょうか?」
「?」
「いえね・・・私の作った【終わりのセラフ】が搭載された【魔法生成機】を持つ彼と魔王軍幹部・・・どちらが上か見てみたいので」
「あぁそういう事・・・いいわよ?」
アメルダが俺を見据える。
「丁度私も・・・そうしたかったからね!」
アメルダが魔力で黒い剣を創り出し、俺に斬り掛かる。
俺も神機を振って応戦した。
金属同士のぶつかる音ではなく、バチバチといった音が閃光と共に響く。
くっ・・・!剣が重い!!!!
俺は距離を取って神機を銃モードに変え、アメルダを狙撃するもアメルダは全てを斬り落とした。
・・・流石に無理か・・・
「【イターム】」
魔力の線が現れ、俺の元に集結する。
それは徐々に塊となって俺を地面に叩き付けた。
「がっ・・・・・・!」
地面に落ちた拍子に砂埃が舞う。
「【スターライト・ブレイカー】」
アメルダの指に魔力が収束しレーザーとなって俺を襲う。
「ふぅ・・・ベルディアを倒したって聞いたけど・・・もうお終」
いか────と言おうとした時だった。
砂埃から先程のレーザーがアメルダを襲う。
「なっ!【ディスペル】!」
アメルダは即座に反応し、レーザーを打ち消した。
砂埃から額から血を流す竜弥が現れる。
「あっぶねぇ・・・もうちょっとで灰になるところだった・・・」
余裕をみせたいけど本当にさっきのはヤバかった・・・
さっき使ったのは飛竜戦でも使った【全反撃(フルカウンター)】だ。
実は飛竜戦前にゆんゆんから教わってたんだけどスキルポイントが足りなくて、仕方なく作ったんだよな・・・
・・・てかこっちの方が【人間失格】よりマシじゃないか?
だって【人間失格】は相殺だけで魔力も喰うし・・・今度から【全反撃】だけ使おうかな・・・?
上手くいったからいいものの・・・直撃してたらワイバーンと同じ結果になって皆の事心配させてたかもな・・・
アメルダは驚いた表情で俺を見て、ニヤッとする。
「フフフ・・・アハハハハハ!!!!まさか私の魔法を跳ね返すとはね!気に入ったわ!!!!」
「アメルダ・・・そろそろ行きますよ」
ウェイルスがアメルダを呼ぶ。
それに従い、アメルダはウェイルスに近付いた。
「面白くなってきそうね?でしょ?イチジョウリュウヤ・・・あぁそれと・・・」
アメルダは黒く太い槍を1本出して小鳥の胴体を貫いた。
その槍は小鳥に戻ったアージェストに吸収される。
これも【トゥモロー・ヒストリー】で見ていたがその速度に俺は対応出来なかった。
「なっ!?しまっ!」
「言ったでしょ?その道具はもう要らないの・・・でも安心して?アージェストの魂を抜いて、ただの小鳥にしただけだから・・・あぁ後言っておく事があるわ?」
・・・無駄にシャフトして俺見るの止めません?
「強くなりなさい?イチジョウリュウヤ・・・強くなって私を殺しに来なさい・・・そうしないとつまらないから・・・アハハハハハ!!!!」
そう言って邪神ウェイルスとアメルダは姿を消した。
「・・・【ケルベロスの番】」
俺は嗅覚や聴覚を上げる魔法を使ったが流石に後を追うことは出来なかった────
◇◆◇◆◇◆
翌日
フィーリィは鳥が血だらけになってるのを心配して包帯を巻いて看病していた。
「いいの?あの事言わないで?」
「フィーリィにとってあの鳥は大事な存在なんだ・・・水を指すのはよくない」
レイシャと俺はドアの隙間からフィーリィが小鳥を愛でている所を見ながら俺に昨日の事を言うのか言わないのかを聞いた。
「にしてもいきなり過ぎじゃねぇのか?あの本に紙挟んで『フィーリィの鳥が魔王軍の関係者の可能性が高いから来てくれ』って・・・」
「あらそう?まぁ・・・結構酷いことになりそうだけどね?」
「でもいつから怪しんでたんだよ?」
「確定づいたのは貴方が女の子とハーレム状態で看病されてた時よ?」
「・・・あれでハーレム言うか・・・?」
それは竜弥が女子3人に看病(?)されていた時まで遡る。
◇◆◇◆◇◆
竜弥が看病(?)されている頃・・・
コンコンとギルド長室のドアがノックされる。
「どうぞ」
『お父さん?私』
レイシャか・・・
私は入りなさいとだけ言ってお互いにソファーに座る。
「どうした?」
「ちょっとね・・・あれは調べてくれた?」
「あぁ・・・あれの事か・・・もう全て調べた・・・」
「・・・で結果は?」
「お前の言う通り・・・フィーリィという名前のアークプリーストは存在していたが数週間前に行方を晦ましていた」
「やっぱりね・・・」
「・・・しかし驚いたぞ?急に『フィーリィという人物のクエスト実績を調べてみて?多分、数週間前から途絶えてるから』って手紙を送ってきたんだからな・・・まぁこっちは10人体制で調べさせたから直ぐに分かったが・・・いつ気付いたんだ?」
「グリフォンの遭遇時ね・・・フィーリィはグリフォンを見ているようだけど、あれは多分・・・【再生回復のリング】を付ける為に行ったんだと思う・・・恐らく勇者候補のリュウヤを狙ってる・・・」
「やはりか・・・」
「けど・・・フィーリィはそれに気付いてない感じがあるの・・・」
「?フィーリィが気付いてない?」
「そう・・・なんというか・・・コントロールされているって感じ・・・だから誰かに何かをされたって気付いたの」
そこまで見たか・・・流石は私の娘・・・観察力は遺伝で引き継がれているな・・・
だがコントロールか・・・
・・・・・・恐らくは・・・
「レイシャ・・・フィーリィという子に動物は近くにいるか?」
「えぇ・・・黒い小鳥が1羽・・・肩にいつも乗ってる」
「恐らくその小鳥が魔王軍幹部の可能性が高い」
「どういうこと?」
「恐らく魔王軍幹部の誰かがフィーリィを襲い、記憶を襲われてから元の所に戻すまでの部分を抹消した。そして別の記憶を入れてから部下を召喚獣として動物に姿を変えさせ、フィーリィをコントロールしている・・・」
「・・・また〔勇者候補について〕の本みたいな空想?」
「なら他にどう説明出来る?」
「・・・そうね・・・それが今は1番近いかもね・・・」
「これからどうするつもりだ?」
「そうね・・・一応仕掛けてみるわ・・・リュウヤの事も心配だし」
「そうか・・・」
「・・・?どうしたの?ちょっと嬉しそうじゃない」
「ん?あぁいや・・・レイシャが私以外の男性そこまで気を許すとはな・・・と思ってな」
「ちょっ!今はそれ関係ないでしょ!?」
「そうやって赤くなりながら必死に隠そうとしてるのも母さんにそっくりだ」
「んもぅ・・・知らない!」
娘は顔を赤くしながら部屋を出ていった・・・
◇◆◇◆◇◆
そして今に至る訳だ。
「・・・・・・」
「どうしたの?」
「いや・・・レイシャって着眼点がレイモンドギルド長に似てるなって思って・・・」
「あら?お父さんに?」
「そう、おと・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「私のフルネーム、『レイシャ・ベルクタス』って言うのよ?でレイモンドギルド長は私の父親。
貴方の魔法に興味を持ってカズマのパーティに入ろうとしたの・・・ってあら?言ってなかったっけ?」
「いやいやいやいや初耳だから!?・・・って待て・・・って事は・・・あの医務室での『他に言ってなかった?』ってのは・・・」
「私もあれ?って思ったわよ・・・お父さんなら聞きそうなのに」
・・・・・・orz。
マジかぁ~・・・マジであの人の娘さんかよ・・・
何この転生もののテンプレ感・・・
「俺の魔法が目当てって事ね・・・んでどうだったんだ?」
「そうね・・・リュウヤの魔法も興味を持ったけど、もっと興味が湧くのを他に見付けたから、このパーティには居るつもりよ?」
「他にって・・・」
「それよりもめぐみんの方はどうするの?」
「・・・・・・」
そうだ・・・そっちも残っていた・・・・・・
『リュウヤなんか大ッ嫌いです!!!!!!!!』
正直あれを言われた後に顔を見せるとか・・・キツイ・・・
「・・・」
「まぁ時が来るのを待つしかないわよ」
「・・・そうなんだろうけどさぁ・・・って・・・その興味を持ったのって何?シノアの武器?」
「・・・」
レイシャが何も言わずに俺に近付いてくる。
・・・え・・・?何なんすか?
そしてレイシャは俺の耳元に口を寄せて囁いた────
「・・・貴方よ」
「・・・は?」
「じゃもう戻るわね!寝不足だから先に寝てるから!」
レイシャは早歩きで自室に戻って行った。
「・・・まさか・・・な・・・」
俺はそう呟いて自室に戻った。
はい、てことでオリジナル邪神出しちゃいました。
さて竜弥は邪神に勝てるのだろうか・・・
それと活動報告にお知らせを載せたので皆様、ご覧下さい。
感想、誤字脱字報告お待ちしております。