飛竜を討伐した翌日、俺は自室で休んでいた・・・・・・監視付きで・・・
和真が「竜弥は昨日無理し過ぎだから今日はゆっくり休んでもらうぞ。また何かしかねないからめぐみんとシノア、ゆんゆんで竜弥の事、見といて」と言って俺を自室で休ませた。
レイシャは調べ物があるらしくギルドにいるらしい。
さすがにこんな傷じゃ動けないと言ったんだがスルーされました・・・信用ないんね・・・俺・・・
めぐみんは小説を、ゆんゆんは相変わらず編み物を、シノアは髪を梳かしてる。
・・・はっ!シノアが髪を結んでない・・・!?貴重な場面じゃないか!くっ!カメラでもあれば撮っていたものを・・・!というのは冗談です。
ということで俺は今ベッドの上、そしてベッドの周りに3人の女の子に囲まれ休息中です・・・
おい!そこで羨ましいと思った奴!
出てこいよ!現実を見せてやるから!
・・・うん・・・怖いんですよ・・・・・・
まぁ気遣ってくれてるのはいいんだよ・・・?有難いんだけどさ・・・
俺が軽くでも動こうとする度にキッ!と視線を向けてくる。
何をするにしても「何がしたいんですか?」とか「やりますのでじっとしていてください」って笑顔で言ってくれるんだよ・・・後ろに般若浮かべてさ・・・
なんだろう・・・休息というより監禁された罪人と看守としか思えない・・・
何にもすることないから昨日の飛竜戦でも振り返ってみるか・・・
◇◆◇◆◇◆
俺は昨日の飛竜戦で瀕死になった。
その時だ。
エリスから貰った【魔法生成機】の隠しシステム[パンドラ]・・・通称【終わりのセラフ】が発動したのは・・・
俺は意識が無くて分からなかったから皆に聞いたけど、目玉は赤く染まり、左肩から羽のない枝分かれした翼の様な物が生えたという。
武器に関してだが黒と緑の刀なんざ俺は知らない。
・・・だとしたらなぜそんな刀が生成されたのだろうか・・・?
そして俺が腹を貫かれた時、フィーリィは回復魔法をしたが弾かれたらしい・・・
なんでも回復魔法を封じる魔法があの尾には付与されているんだとか・・・
俺はゆんゆんにモンスターの載ってる本を持って来てもらった。
俺は右腕でページを捲り、飛竜のページを探す。
・・・・・・・・・・・・あった!
昨日の赤い二足歩行の飛竜はワイバーンという種類で炎属性のブレスを吐くという。
刺又の尾があるのとないのがあり、ある方はない方より若干強いという・・・若干って・・・比較しづらいなぁ・・・
・・・・・・・・・・・・ん?〈尾について〉?
俺は気になり、ページを捲る。
〈尾について
竜の尾は普段は飛行の時にバランスを保つ役割を果たす。
だが中には攻撃や防御等に特化した尾も存在するがその7割は攻撃に特化している。
攻撃に特化したワイバーンの尾に当たり、傷を負うと大半が回復魔法が効きづらいと言われているがそれは誤認となる。
正確にはワイバーンの尾は止血をしづらくさせる液を分泌していてそれが体内に入ると止血を促す血漿の働きを鈍らせ、血が止まりにくくなる。
これが理由で回復魔法が効きづらくなり、結果的に回復魔法が効かないといった錯覚が起きてしまう。
対処法としては現在では鎧を着けるか、もしくは防御魔法で防御力を高めてから挑むといった方法が適している。〉
・・・・・・・・・・・・は?
じゃあなんでフィーリィの回復魔法は弾かれた?
和真は言ってた・・・「フィーリィの回復魔法が弾かれた」って・・・
でもこれには止血しづらくするって書いてある。
ならなぜ・・・?
誰かが阻害したのか・・・?
・・・まさか・・・グリフォンの時と同一犯・・・?
いや、偶然にしては出来すぎてる・・・
もしもあの場にいて、見えない所や遠距離で回復魔法を阻害出来るのならかなりの魔法の使い手だ・・・
アクアやダクネス、めぐみんやゆんゆん、和真はまずありえない・・・つか出来ない・・・
残るは・・・フィーリィ本人とレイシャだ・・・
・・・いやあまり仲間は疑いたくは無い・・・もしも疑って違っていたら俺はそいつを信用していないことになる・・・そういうのは避けたい・・・
・・・でも・・・・・・いや、待てよ・・・?
なんでレイシャはあの時、〈勇者候補〉なんて項目が書かれてる本を置いて行ったんだ?
それに勇者候補に関しても詳しい・・・
・・・何かを狙っている・・・?
・・・・・・・・・・・・止めておこう・・・・・・下手な憶測で誤解を招いたらそれこそ厄介になる・・・
俺は推測するのを止め、本を閉じた。
「あっもうこんな時間ですか・・・私達は一旦昼食を摂ってきます」
「私は昼食を持って来ます・・・粥でいいですよね?」
「あぁいいよ」
3人は会話をしながら出ていった。
・・・にしても・・・本当にグリフォンの時と同一犯なのだろうか・・・
もし同一犯としたら狙いは何なんだ・・・?
誰かを狙ってる・・・としか思えない。
透明になって尾行でもされてるのか・・・?
「粥持ってきましたよ~ってどうしたんですか?怖い顔して・・・?」
おっとめぐみんが粥を持ってきたようだ。
う~んどうやら考え事に集中してて怖い顔になってたらしいな・・・
その後俺は粥を食べさせてもらい、のんびりと休日を過ごした。
◇◆◇◆◇◆
竜弥が看病(?)されている頃・・・
コンコン!とアクアの部屋のドアがノックされる。
「は~い」
『アクア・・・俺だ』
カズマか・・・まぁ聞きたいことはあれでしょうね・・・
「入って来て・・・」
和真が部屋に入って来る。
「聞きたいんでしょ?【終わりのセラフ】の事・・・」
「まぁそれもある・・・それと・・・」
「えぇ分かってるわ・・・それを組み込んだ神の事でしょ?いいわ・・・知ってる事・・・全て話すから・・・でも今から話す事は竜弥は言わないでおいて・・・彼、多分これを聞いても【魔法生成機】を使わないっていう判断はしないと思うから・・・」
俺は頷き、アクアと対面するように椅子に座り、話を聞くことにした。
☆★☆★☆★
事の発端は佐藤和真を転生する数年前に起こった。
とある神が【魔法生成機】にふざけて、ある隠しシステムを組み込んだ。
その名は[パンドラ]
通称【スサノオ】
発動する方法は簡単で、本来は所持者のレベルが65以上・・・そして、魔力も90%以上あれば発動は可能。
はっきり言ってその性能は馬鹿げていた。
魔法や斬撃を与えても壊れない黒い甲冑を全身に纏って、腕はシールドや銃器、ブレード等に好きに変えられる。
背中には飛行する為の4つブラスターが付いている他に、分裂して全方位から攻撃できる飛行ユニットが8本付いている。
そしてそれのフルパワーを出せば国一つを簡単に消滅出来るほどだからだ・・・
そしてその神は【魔法生成機】を放置してしまった。
その時に邪神と思われる神がとある別の隠しシステムを加えた。
それこそが
通称【終わりのセラフ】
発動条件は【魔法生成機】の所持者の瀕死、若しくは所持者の詠唱で起動可能。
これが発動すると【魔法生成機】の所持者は理性を失い、命が尽きるまでただ敵を殺す為の道具となる。
これが【魔法生成機】に非正規に追加され、正規の神器と混ざってしまった。
アクアは気付き、修理しようとしたがその時に佐藤和真の転生をすることになった。
自分なら直せるとその時は思って楽観視して、転生をさせたら直そうと思っていた・・・
でも、もしもに備えて後輩に『選ばせないように』と手紙を書いた。
自分の後輩であるエリスに冗談を書けるほどに・・・
だが状況は一変した。
和真が特典にアクアを選んだからだ。
エリスは勿論【魔法生成機】にそれ程の異常があるのは知らされていない。
そして竜弥がこれを選び、転生したのだった。
☆★☆★☆★
「これが私の知ってる【魔法生成機】の異常・・・」
「・・・」
「大丈夫って思ってたの・・・でもエリスはそれを忘れてしまってた・・・本当に最悪・・・」
「それで・・・?」
「?」
「その【終わりのセラフ】ってのは今説明してくれた性能で間違い無いんだな?」
「えぇ・・・間違いないわ・・・」
俺はとんでもない事を知ってしまったようだ・・・
「それと・・・もう一つ・・・」
「・・・まだあるのか・・・?」
「・・・飛竜戦で【終わりのセラフ】は見たわよね・・・?」
「あぁ・・・」
「これは私の推測だけど・・・あれはまだ未完成よ・・・」
「・・・・・・は?」
「恐らくあれはほんの1部・・・もし完全に【終わりのセラフ】が発動したら・・・」
目の前のアクアが目に涙を浮かべ声も身体も震えていた。
「どうしよう・・・私がすぐに直してれば・・・!こんな事には・・・」
「アクア・・・」
俺も正直言ってあんな竜弥はもう見たくない・・・
「なぁ・・・アクア・・・それは、瀕死にならなければいいんだよな・・・?」
「えぇそう・・・今の所はね・・・」
「あいつに・・・お前の加護・・・付けられるか?」
「多分無理・・・現世に来て、結構力が制限されてるから・・・今出来るのは防御とかの付与魔法をかけるくらいだと思う・・・」
「そうか・・・」
「・・・」
「・・・」
2人の間に沈黙が流れる。
「思うんだけどさ・・・」
「・・・?」
「竜弥ならそれを活かそうとするんじゃないか・・・?」
「・・・え?」
「聞いたんだよ・・・竜弥から・・・あいつの前世の事・・・はっきり言って俺なら耐えられなかったと思う・・・でもあいつは乗り越えた・・・だから思うんだ・・・あいつならその【終わりのセラフ】を有効につか」
「ふざけないで!!!!」
アクアの大声に言葉を失う。
「本気で言ってるの!?邪神が作ったシステムなのよ!?神器を持っただけの一般人が扱える訳ないじゃ」
「そんなのは分かってる!!!!」
カズマの真剣な顔に黙ってしまう・・・
「でも思うんだよ・・・!あいつは・・・いや・・・あいつならそれを使いこなす・・・恐らく・・・アクアやその神の考えを凌駕する程に・・・」
「どうしてそこまで断言出来るの・・・?」
「分からない・・・でも・・・俺はあいつならそれが出来るって思うんだ・・・」
カズマの目は本気だ・・・
・・・参ったわね・・・ただのニートにそこまで言われたら・・・こっちもそうするしかないじゃない・・・
「いいわ・・・私は自分なりに彼の【魔法生成機】をどうにかしてみる・・・けど・・・上手くいく保証はほぼ0だから・・・」
「分かった・・・」
カズマは立ち上がり、部屋から出ていった。
さてと・・・どうしましょうかねぇ・・・
アクアは1人、あの【終わりのセラフ】を【魔法生成機】から消すかを自室で考えることにした。
正規の隠しシステムに丁度良さそうな名前が思い付かなくって一旦【スサノオ】にしておきます。
なので後々変わるかもしれません・・・
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