この素晴らしい世界にイレギュラーを!   作:JAIL

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今日も3本お届け!
残りは12:00といつもの21:00です。
全体の構成が決まったので1日の投稿数も多くなりそうです!


Each thought

ベルディアとの戦闘から3日が経った。

今回は俺とめぐみんがレイシャ、シノア、ダクネスをギルドのベッドで看病していた・・・名指しで・・・

いや・・・うん・・・指名は嬉しいよ?けどさ・・・

 

「火花散らしてんじゃねぇよ!!!!」

 

そう・・・2人、レイシャとシノアはなぜか火花を散らしていた・・・怖いよぉ・・・

こうなったのは・・・まぁ簡単だ。

レイシャが冗談交じりに「私、結構怪我が酷いから看病は念入りにね?」みたいな事を言った時だ。

その時シノアが「私の方が酷いですよ!ですよね!?竜弥さん!」のような事を言って2人で火花を散らした。

なんで火花を散らせているのか理由を聞こうにも「聞くな」という無言の圧力で聞いてはいけないと悟った・・・

うん、オンナノココワイ・・・

そしてめぐみんも何故か羨ましそうに2人を見る・・・加わるなよ・・・?

 

「イチジョウリュウヤさん・・・ちょっと宜しいですか?」

 

ギルドの係員から声を掛けられる。

話によるとデュラハン討伐の件で報酬が来ているのとギルド長からの呼び出しだそうだ。

 

「んじゃ俺行くわ」

「お土産待ってますねぇ~」

「いや真向かいだから、土産とか持ってこれねぇから」

 

シノアの気の抜けたからかいをあしらって医務室を出る。

 

 

今日は案内はいなかったので俺1人、1冊の本を持ってギルド長室前に来た。

とは言っても真向かいだけど・・・

コンコンとノックする。

 

『どうぞ』

「入りま~す」

 

気楽な感じで入る。

 

「おぉ君か、取り敢えず座ってくれ」

「ウイッス」

 

俺がソファーに座ると執事の男性が装飾された厚紙を持って来た。

どうやら飲み物を選んでほしいようだ。

 

・コーヒー

・ミルクティー

・アイスティー

・煎茶

・オレンジジュース

 

・・・煎茶があるのは驚きだけど、まぁ無難にコーヒーかなとコーヒーの欄を指差す。

男性は一礼して奥の部屋に入っていった。

向かいにレイモンドギルド長が腰掛ける。

 

「今回のデュラハン討伐、お見事だった・・・ギルドを代表して礼を言おう」

「ども・・・」

「全く・・・君には驚かされるよ・・・初心者の街に来て、デュラハンを討伐するのだから・・・本当に君は・・・」

 

俺は無言で、持っていた1冊の本をテーブルの上に置いた。

レイシャが置いていった本だ。

 

「・・・これを読んだのかい・・・?」

「まぁ・・・」

 

レイモンドギルド長は少し天を仰ぎ、俺を見る。

 

「単刀直入に聞こう・・・君は勇者こ「仮に勇者候補だとしたら貴方はどうするんすか?」・・・」

 

レイモンドギルド長が黙り込んでしまう・・・やはり面倒事を頼もうとしていたのか・・・?

 

「君は・・・王都に行こうと思っているか?」

「は?」

「いやね・・・君の実力は確かだ・・・なら王都に行って力を磨けばよりいい待遇に会うと思うんだ・・・」

「・・・」

 

2人に沈黙が生まれる。

その時奥の部屋の扉が開き、男性がコーヒーポットと2つのカップ、ミルクと砂糖が入った小皿が乗る台車を運んでくる。

俺とレイモンドギルド長の前にそれらを置き、一礼すると部屋から退出した。

沈黙に耐えられなくなり俺はコーヒーを1口飲む。

確に王都に行けば待遇も手に入る物の質も良くなる・・・だがあいつらを置いて行くとなると────

 

「今は・・・」

 

沈黙を破ったのは竜弥だった。

 

「今は王都に行く気はないっす・・・」

「・・・理由を聞かせてもらえるか?」

「・・・俺にはまだデュラハンと違って帰る場所と仲間がある・・・なら俺はそれを守り続けたい・・・」

「・・・それが王都に行かない理由かい?」

 

俺は黙って頷く

 

「そうか・・・」

 

レイモンドギルド長が1口コーヒーを飲んだ。

その顔は神妙な面影は無く、どこかホッとした感じだ。

 

「聞いておいてなんだが、この街は初心者が多い・・・だからこの街を守る為に君をここに留めておきたくてね・・・だが私にそれを選ぶ権利はない・・・だから君自身に・・・君の言葉で王都に行くかどうか聞きたかったんだ」

「そうっすか・・・んじゃ俺、一旦家に戻るんで」

「あぁちょっと待ってくれ、報酬の件なんだが・・・」

 

俺が立ち上がろうとする寸前でレイモンドギルド長に止められる。

おっと報酬の事忘れてた。

 

「今回のデュラハン討伐の報酬は3億エリスでね・・・全て君の銀行に振り込んでおくかい?」

 

うおぅ!?3億エリス!?1人につき3750万・・・

 

「いえ今回はパーティメンバーに山分けということでそれぞれの口座に頼みます」

「そうか分かった。手配しておこう」

 

俺はコーヒーを飲み干してギルド長室を後にした。

・・・なんか騒いでる

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「シノアにめぐみん・・・単刀直入に聞きたいんだけど」

「「?」」

 

リュウヤが退室したのを見計らって2人に質問し出す。

シノアとめぐみんはレイシャの話を聞く前に竜弥が淹れておいた紅茶を飲む。

 

「二人とも・・・・・・リュウヤの事好きでしょ?」

「「ブフゥーーーーーーッ!!!!!!!!」」

 

2人が勢いよく紅茶を吹き出す。

 

「な・・・なななな何言ってるんですかレイシャさん!?わわわ私がリュウヤの事を!?」

「そそそそそうですよ!?何を根拠に!?第一私なんて彼の事、よく知らないんですよ!?」

 

2人とも否定しようにも顔が耳まで真っ赤になっている。

 

「いや・・・うん・・・なんかゴメンナサイね?そこまで焦って否定するとは思ってなかったから・・・」

 

そう言いながらもレイシャはクスクス笑っている。

 

「シノアはまず、私が彼に『私が1番重傷だから手厚く看病してね』ってからかい半分で言ったら貴女・・・『わ・・・私の方が重傷ですよ!?ですよね!?竜弥さん!』って名指しで言ってたじゃない」

「うぐっ・・・」

「めぐみんも私とシノアがリュウヤに看病されてる所、羨ましそうに見てたじゃない」

「えっ!?いやっ!その~・・・え~と・・・そう!同性の方が看病しやすいんじゃないかなぁ~なんて・・・」

 

しどろもどろでめぐみんも答える。

 

「でも見た感じ、シノアは好きなのかどうか自分でも分かってなくてモヤモヤしてるんだけど、いざ他の子と仲良くしてると余計にモヤモヤするって感じね・・・で、めぐみんは2人でいた時間が長かったから少しづつ好きになった・・・と・・・」

「「・・・」」

 

両者は顔をほんのり赤くして視線を反らす。

これは的中かしら・・・?

 

「で・・・結局の所・・・リュウヤの何処がいいの?」

「「だから違います!!!!」」

 

ガチャッとドアが開く。

 

「お前らうるせぇよ・・・傷口開いたらどうすんだ・・・」

「「ひゃあぁぁぁあっ!!??」」

 

シノアとめぐみんの反応に竜弥もビクッとする。

 

「うおっ!?どうした!?」

「なっなななな何でもないです!ですよね!?シノアさん!?」

「へっ!?あっ・・・!は・・・はい!!!!」

「?」

 

俺が疑問符を浮かべてる所でレイシャが手招きをする。

耳を貸せとの事だ。

 

「なぁ・・・あいつらどうした?顔赤いけど・・・」

「フフッ・・・貴方は知らなくていいの・・・ちょっと熱が出たっぽいだけよ」

「・・・先に言えそれ・・・」

 

俺がレイシャをジト目で見た後、シノアとめぐみんの額を触ったが確かに熱かった・・・

しまったな・・・めぐみんにも無理させちまったか・・・

けどさ・・・2人して俺の顔面をグーパンって・・・

顔が赤いけど他に理由は分からない。

取り敢えずめぐみんも寝かせることにした・・・両頬痛い・・・

 

「それでギルド長とは何を話してたの?」

 

レイシャが聞いてきたので俺は勇者候補の事は話さず、報酬の件のみを話した。

 

「3億エリス・・・1人につき3750万エリスですか~雪精と同様、かなりいい値になりましたね~」

「まぁあんなに強いんだ、この位の額はいくだろ」

「まぁそれもそうね・・・所でリュウヤ、レイモンドギルド長は他には何か話してなかった?」

「あぁ報酬の事だけだ」

「本当に?」

「いや疑うなよ・・・」

 

本当は言ってました・・・マジすんません・・・

面会時間が過ぎた為、俺は一旦家に帰ることにした。

出る前にレイシャが聞こえるか聞こえないかの声で『ライバルは多そうね』と言ってたがパーティ内での血で血を洗いそうな争いは控えて欲しい・・・

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

帰路に着いている。

1人で家に帰るのなんて何時ぶりだろう・・・

思えばこの世界に来て1人で帰った事は殆ど無かった。

横にはよくめぐみんや和真、アクアやダクネス・・・それに最近ではレイシャ、ゆんゆん、フィーリィも一緒に家に帰っていた。

だとすれば恐らく前世以来だ・・・。

でももう前世でのあいつらは全員、俺の事は忘れてしまっている。

いや訂正するならば記憶に鍵が掛けられ、思い出したくても思い出せないとでも言った方が正しいのか?

 

「要らないこと・・・しちまったかな・・・」

 

今ではそう思ってしまう。

星が微妙に見え、黒みがかった橙色の空を立ち止まって見上げる。

 

あいつらはどうしているだろうか・・・

 

今思うと天国であいつらの様子を見れるのなら見ていればよかったのではないか?

そんな考えが頭に浮かぶ。

 

この世界に来たのは正しかったのだろうか・・・

 

今更自分のした選択に後悔しても遅いというのは分かってる。

だが思ってしまう。

あいつらの記憶に鍵を掛け、異世界に転生する。

本当にそれは俺がしたかったのだろうか・・・

・・・・・・ダメだ・・・考えたけど答えが出ない・・・

 

「おう!竜弥!」

 

不意に背後から声を掛けられる。

この声は和真だ。

和真が食品の入った麻袋を2つ持って立っていた。

 

「和真か」

「なんだ?俺以外のヤツがよかったか?」

「ンな事思っちゃいねぇよ」

「そか」

 

今思うと和真はちょっと翔に似てる所がある。

・・・いいものだな・・・仲間がいるって・・・

今になって仲間がいるという良さを再認識してしまう。

 

「あ!丁度いい!これ、片方持ってくれ!」

「おう」

 

和真が俺に片方の麻袋を渡す。

てか重っ!?

 

「ふぅ~サンキュな!」

 

そう言う和真は軽々と袋を抱えている。

 

「お前絶対重い方持たせたろ!?」

「ん~?何の事か分かんねぇなぁ~!」

 

そう言って和真は走り去る。

 

「ちょっテメ!待てやぁ!」

 

俺は和真を追い掛けるも麻袋が重く、中に入っている食品のバランスが悪いのか中身を落としそうになる。

 

「ほら~!悔しかったら追い付いてみろよ~!」

「絶対恨むからなあぁぁぁああ!!!!」

 

俺はそう言いつつも笑っていた。

 

今思うと、少しでいい、少しでいいから1人になりたかったのかもしれない・・・

1人でのんびりして誰にも邪魔されず、誰の視線を気にせずに好きな事をやりたかったのかもしれない・・・

でもそれと同じ位、俺の我儘に気付いてほしかったのかもしれない・・・

前世では好きな事をあまりやれなかった。

そんな色々な感情が隠れていて俺はあいつらの記憶を操作したのかもしれない。

 

『あいつらから俺といた記憶を消してくれ』

 

俺はあいつらに責任を感じて欲しくないからそう言った。

1人で人目を気にせずに好きな事をしたい・・・

そんな裏返しのような事を含んでいる気がした。

 

・・・ならもう間違わない・・・俺は、俺の居場所を・・・仲間を守っていこう・・・

俺の仲間を奪う?居場所を奪う?やれるものならやってみろ・・・

俺はそんな奴等には容赦しない、例え幼児であっても、老人であっても・・・王族であっても、魔族であってもだ・・・俺の仲間に、居場所に手を出すなら俺が相手をしてやろう・・・

そして死を覚悟して掛かってこい・・・

俺はそう決意して笑って逃げてる和真を追い掛けた───

 

あ、和真がコケたw




なんか竜弥が金木化してんのは気のせいか・・・?

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