目の前には服は破れ、所々血が滲み、痣が浮かび、目を閉じた2人の手首には鎖が繋がれ座っていた。
思わず駆け寄る。
『アスタリア!シェーラ!』
2人の脈をみた・・・
脈は────無かった。
『あ・・・あぁ・・・』
俺の中で何かが壊れた───
『あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!』
泣き叫んだ────
愛する者が弄ばれ、命を奪われた────
俺の中で何かが崩壊した────
同時にとてつもない怒りが湧き上がる。
あいつを・・・レーニンを・・・
『───殺す』
それしか頭に無かった。
待て・・・両親は・・・!?
俺はすぐ表に出て馬に跨り、家へと向かった
◇◆◇◆◇◆
『親父!お袋!』
バン!と勢いよく扉を開ける
遅かった────
目の前には家中が荒らされ、両親だったものが赤い液体を流して横たわる。
『親父・・・お袋・・・』
俺は両親を抱え、開いた目を閉じさせた。
同時に壁に何か書かれた紙がナイフで突き刺さってるのが見えた。
『止めて欲しければ騎士団を止めろ』
紙にはそう書いてあった。
もういい・・・あいつをレーニンを潰してやる・・・
俺は馬に跨り、また駆け出す。
館の前に着いたがその目の前には100人の遺体が転がっていた。
その中には勿論俺の部下も含まれていた。
恐らく殺しあったんだろう・・・
『ふぅ・・・なんで隠し扉が開いて・・・』
目の前に元凶が現れた。
『お前なんっ・・・』
全てを言わせる前に俺は首を掴み、地面に叩き付け、剣を突き付ける。
『ま・・・待て!俺は何もしていない!本当だ!』
『うるせぇ・・・』
『た・・・頼む・・・!命だけは・・・!』
『黙れ』
『ひっ・・・』
こんな奴に・・・俺の両親や部下、愛する者は奪われたのか・・・
『・・・だよ・・・』
『?』
『ムカつくんだよ!俺は貴族なのになんで俺に寄り付かない!?お前みたいな奴になんで皆は集まる!?目障りなんだよ!学園の時から!俺より目立ちやがって!あの2人だってそうだ!何でも好きな物を買ってやる!服も食い物も何でもだ!そう言ったのにあいつらは『必要ありません、私は一生を共にすると決めた方がいますので』だと!?ふざけるな!少し痛い目を見せようと遊んでみたがあいつらは首を縦に振らなかった!ならどちらかを殺せば俺が本気だと分かる!なのに『やれるものならやってみなさい!この偽貴族!!!!』ってほざきやがった!だから時間を掛けて殺したんだ!お前もあいつらも邪魔者だ!お前なんか親父からしたら昇格の邪魔でしガッ・・・!』
全てを言い切る前に俺は剣を首に突き刺した。
首と胴体が離れる。
壊された・・・全て壊された───
俺は騎士を夢見てた。
俺を選んでくれた2人がいた。
それらを身勝手な奴に壊された・・・
『ハハハ・・・』
どうでもよくなったのか笑いが込み上げる────
目の前に誰かが現れる。
男女の区別はつかない。
──憎いかい?──
──・・・。──
俺は何も答えない。
──私は思うんだ・・・こんな世界は必要か?とね──
──お前は・・・?──
──私かい?私は君とほぼ同じ運命を辿った者だ・・・来るといい・・・君の怒り、憎しみの全てを彼等にぶつけよう──
俺は不思議と頭を縦に振った。
──ならば──
一瞬だった──一瞬で俺の首は切り離された。
──さぁ彼等を・・・──
不思議と理解出来た。
俺は首を拾い、黒い円を足元に広げ、その中に亡くなった部下を沈める。
──その中に入れておけば無限に増える。そして君がしたいことが出来る・・・──
──俺が・・・したいこと・・・それは・・・──
裏切った奴らをこの世から消したい───
そう思った途端、白い甲冑が俺の意思を表わすように黒く染まる。
──そうか・・・では行こう・・・──
男性が歩き出す。
──それと君に名前が必要だね・・・そうだなぁ・・・【ベルディア】というのはどうだろう?──
──ベルディアか・・・悪くない・・・──
──気に入ったみたいだね──
こうして俺はアンデッド、【ベルディア】となった。
◇◆◇◆◇◆
───なぁリュウヤ・・・
───なんだ・・・?
俺は・・・間違っていたのだろうか・・・?
───・・・。
俺は全てを身勝手な奴に奪われた・・・その奪った奴からまた何かを奪う・・・───これは正しいのか?
───俺には分かんねぇよ・・・ただ・・・
───ただ・・・?───
───俺は・・・俺がもしお前だったら他に方法を探してたと思う・・・。────
───そうか・・・。───
───ベルディア・・・───
───・・・どうした・・・?───
───もう休め・・・お前は充分傷付いたよ・・・2人もそう言うと思う・・・休もうって・・・───
──そうだといいな・・・だが・・・だが俺は──
ザシュッ───
気が付けばボロボロになった俺の甲冑の中心をリュウヤの剣が貫いていた。
俺はその場に仰向けに倒れる。
それと同時にリュウヤの魔法が消えた。
『俺は騎士として生涯を全うしたかった・・・』
「・・・」
リュウヤが俺を哀しみの目で見る。
似たもの同士か・・・そうだな・・・そうに違いない・・・
『イチジョウリュウヤ・・・貴様と闘えたこと・・・感謝する・・・』
「そうか・・・っ!」
リュウヤが身構える。
何か来たのか・・・?
よく見ると俺の頭上が輝いて2つの人型になって・・・あぁ・・・迎えが来たんだな・・・
『アスタリア・・・シェーラ・・・』
「あいつらが・・・」
あぁ・・・久しぶりだ・・・
2人が俺に近付き手を差し伸べ・・・そして言った──
『『お疲れ様・・・行こう・・・』』
俺は自然と手が伸びた。
そして同時に黒い甲冑が白く輝く。
『イチジョウリュウヤ・・・貴様は俺のようになってくれるなよ・・・』
「貴族に追われる身の事か?」
『フッ、減らず口を・・・』
少しづつ3人の姿が透明になっていく──
『本当にありがとう・・・イチジョウリュウヤ・・・』
「あぁ・・・」
ベルディアは俺の目の前で自然浄化した───
「じゃあな・・・騎士団長ベルディア・・・」
俺はベルディアが言われたかったであろう言葉を天を見ながら言った。
恐らくこの時見せた3人の眩しい笑顔は俺以外見ていないだろう──
はい!てことでベルディア戦終了です!
明日から番外編が何話か続いてデストロイヤー編となります。
まぁこの小説の後半となります。
何話か投稿したら活動報告に書き込みをするのでそちらもご覧下さい