今日は3本
残りの2つは21:00、22:00にお送りします!
「和真~チョイ俺、クエスト行ってくるわ」
「ん~分かった~」
ギルドで食事を共にしていた和真にそう伝え、俺はレッドウルフ討伐のクエストに行く事にした───今思うと、もう少しその場にいたら俺はこの後起こる事態に後悔しなかったのだろう・・・
《緊急!緊急!冒険者各位は至急、正門前に集まって下さい!特にサトウカズマ御一行は必ず集まる事をお願いします!》
その警報は竜弥がクエストに行って約30分後に鳴った。
何事だと思い、冒険者達と一緒に俺達も正門前に行くと、そこには見覚えのあるやつがいた。
「デュラハン・・・」
恐らく・・・いや確実にこれはリベンジを果たしに来たのだろう・・・
『俺がイチジョウリュウヤと引き分けた日の数日後から、また性懲りもなく爆裂魔法を撃ちおって・・・学習能力が無いのか貴様アアアァァァアア!!!!』
・・・はい?
俺の視線に気付いたのか、めぐみんが顔を逸らす。
「何やってんだお前はぁぁぁあああ!?!?」
「いひゃい!いひゃいれひゅ!ほっぺ引っ張りゃらいれくらひゃい!」
俺はめぐみんの両頬を引っ張るも、めぐみんの言い分を聞く為に一旦俺は両手を離す。
「アクアから誘われて最初は止めた方がいいとは思ったんですが・・・あの・・・爆裂魔法を撃てるという誘惑に負けまして・・・」
「頬を赤らめてモジモジして言うなぁ!」
竜弥の事で少しは大人しくなると思ったんだが・・・浅はかだった・・・てかアクアって言った?
俺がその御本人を見ると『言っちゃダメ!』と言わんばかりにジェスチャーを送ってる。
「何やってんだお前もぉぉぉおおお!!!!」
「だってだって!あいつが帰ってからクエストの内容が軽くなったのはいいけどその報酬が少なくてイライラしてたのよー!ちょっとは憂さ晴らししてもいいじゃないー!」
お前ら・・・
『聞け!我が名はベルディア!今回来たのはその頭の悪い奴の事もあるが最も重要なのはイチジョウリュウヤとの再』
ベルディアと名乗ったデュラハンがチラチラと冒険者全員を見渡す。
『リュウヤとの・・・』
本人は見渡すがその肝心のリュウヤがいない・・・あ~あいつ、30分前にクエスト行ったからなぁ~。
『・・・あ・・・あれ?き・・・貴様・・・イチジョウリュウヤの仲間だろ?イチジョウリュウヤは何処だ?』
「本人なら30分前にクエストに行きましたよ?」
ベルディアの問にめぐみんが答え、本人は硬直する。
『・・・嘘ォォォォオオオオ!!!!????』
◇◆◇◆◇◆
「ん?何だ?何か聴こえたような・・・?」
辺りを見渡すがそこにいるのは討伐対象のレッドウルフのみ。
「気のせいか・・・よし気を取り直して・・・死にたい奴から掛かって来いやぁ!」
竜弥はベルディアの叫びに気付かず、テンションMAXで【銃剣製】で生成され、軽量化したガンブレード・リボルバーを両手に持ち、目の前のレッドウルフ達を次々と屠っていた。
◇◆◇◆◇◆
「ぷーくすくす!リュウヤを倒しに来たのにその本人がいないってウケるんですけどww」
この駄目神、煽ってる・・・
よく見るとベルディアは相当頭に来てるのか、プルプルと震えている。
『貴様ら・・・丁度いい・・・リュウヤイチジョウリュウヤがいないのであればここに居る奴等を全員始末すれば奴との対戦もゆっくり出来るだろう・・・』
ベルディアは馬から降りてこちらに歩いて来る。
「イチジョウリュウヤがいなくても関係無ェ!」
「そうだ!俺達が束になればお前なんか!」
「行くぞ!全員で仕留めるんだ!」
ウオオオォォォォオオオ!!!!
と男達が武器を持って駆け出し、6人がベルディアを囲むと一斉に斬りかかった。
『よほど先に死にたいようだな?』
ベルディアはそう呟き、頭を上空に高く投げ上げる。
「止めろ!行くなぁぁぁあああ!!!!」
まずい!と判断して俺は叫ぶが男達とベルディアの距離は縮まっていく。
その頭の背後に赤い目の様な物が浮かび上がる。
その直後に1人の男性の剣がベルディアに近付くがいとも簡単に躱されてしまう。
また1人、また1人と斬りかかるも全ての斬撃をベルディアは避けてしまった。
そしてベルディアは大剣を両手で持ち横に一閃する。
一振り───ベルディアは斬りかかった6人をその一振りだけで葬った。
残った冒険者達が凍り付く。
『次は誰だ?』
頭が落ちてきてベルディアが受け止め、そう言った。
背中に嫌な汗が流れる。
無理だ───
6人で斬りかかったんだ、なら一撃ぐらい当たる。
そう思っていた───
だが違った・・・ベルディアはなんとも無い、ベルディアを撃退したリュウヤなら今のも凌げたのだろうか・・・
・・・今俺は何を考えた?『リュウヤなら凌げたのだろうか』?・・・また俺は竜弥に危険な事に巻き込むのか・・・?あの時、自分は何も出来なかった・・・言い方は悪いが竜弥に丸投げした。
どうする?今の俺に何が出来る?
この間にもベルディアは近付いている。
だが俺の目の前にダクネスが立った。
「カズマ達は下がっていろ・・・」
ダクネスが剣を構える。
俺はダクネスに任せ、退く事しか出来なかった。
『次はお前か・・・』
ベルディアが剣を構える。
「イチジョウリュウヤが帰ってる来るまで・・・」
ベルディアが剣を高々く振り上げ──
『持ち堪えられるか!』
────思い切り振り下げた。
「ハァァァァアアア!!!!」
ダクネスの剣とベルディアの剣がぶつかり合う。
ベルディアの剣の方が強いのか、ダクネスの足元が少し崩れ、ダクネスの足が滅り込む。
「よくも・・・よくも皆を・・・!!!!」
ガッ!と剣を鳴らしお互いに距離を取る。
「勝負だ・・・ベルディア!!!!」
『相手が聖騎士なら・・・是非もなし!』
ダクネスが斬りかかり突きを撃つ。
ベルディアを通り過ぎて両者が止まった。
ボコッ!と近くに隆起していた岩が砕けた。
『・・・ファッ?』
いや当てようよ・・・ダクネスさん・・・不器用にも程があるよ・・・
ベルディアの横から人型と炎の矢と雷撃が飛んで来てベルディアを襲うも躱される。
飛んできた方を見るとシノアとレイシャ、ゆんゆんが戦闘態勢になっていた。
「レイシャさんとゆんゆんさんは援護をお願いします!」
シノアがそう言って駆け出す。
『ほぅ・・・面白い・・・』
「泣いて謝っても許しませんからねぇ!」
シノアが【四鎌童子】を振り翳し、ベルディアを攻撃するもベルディアは大剣で応戦する。
『見かけによらずやや重いな・・・リュウヤ程ではないがな・・・』
「もっと重いのを御所望の様ですねぇ・・・」
シノアは竜弥と比較され、カチンと来たのか一旦距離を取り、黒い笑みを見せると、【四鎌童子】に魔力を込めそのまま斜めに斬り掛かる。
『甘いわ!』
ベルディアは勢い良く剣を振りシノアを弾き飛ばした。
「きゃぁぁあっ!!??」
シノアが地面を転がるもレイシャがそれを受け止めた。
「大丈夫?」
「えぇ・・・何とか・・・」
シノアが大丈夫な様に見せるが額からは血が滲む。
「あまり得意ではないけど・・・」
レイシャはそう言うとナイフを取り出しベルディアに斬り掛かる。
「フッ!」
ギィン!とナイフと鎧、金属同士がぶつかり合い、鈍い音を立てる。
ベルディアの鎧は当たったが目を凝らせば見える程の傷しか付いていない。
『その程度か?』
ベルディアは余裕なのか、レイシャに挑発気味に言う。
「ムカつくわね・・・その余裕・・・」
レイシャがまた弓を絞る。
「【無矢】」
レイシャがボソッと言い、矢を放つ
ベルディアは矢を無防備に受けようとするがその矢は当たらずにすり抜ける。
そして膝の裏から魔力の矢が突き刺さった。
『何っ!?』
さすがのベルディアも驚きを隠せない。
「驚いたでしょう?私の【無矢】。
当然だけど最初のは幻よ?そして別方向に魔力の矢を形成して相手の意表を付く。
鎧は確かに頑丈よ?でも部分的に隠せないところもあるの・・・そう肘や膝といった関節の裏・・・そこを覆ってしまうと動きがかなり制限されるからね・・・大半はそこは鎧が着いてない・・・私の【無矢】は私が念じれば無防備な所を死角から付くのよ」
『確かに厄介だな』
「ならさっさと引いてくれないかしら?次は属性付きでやるわよ?」
レイシャが殺気の篭った目でベルディアを見ながら弓を絞る。
『フッ・・・面白い・・・だが次は当たらんよ』
「・・・言ってくれるわね・・・ならやってみなさい!」
ベルディアの態度に苛ついたのか、レイシャがまた【無矢】を撃つ。
だがベルディアはレイシャの懐まで近寄り、腹に拳を叩き付ける。
「があっ!!!!」
ベルディアに腹を殴られレイシャは数メートル飛ばされる。
かなりの激痛にレイシャは腹を抱え、脂汗を滲ませ、吐血しながら咳き込む。
『貴様の【無矢】は確かに厄介だ・・・だがそれは貴様の意識がしっかりしていればの話だ・・・見た所、貴様の【無矢】は1回放つとコントロールする為に身動きが取れず、その上本人はその矢が当たらない限り無防備になる。
ならそこを叩けばいい・・・勉強になったな?・・・まぁ2度と使えもしないのだがなぁ!!!!』
ベルディアは剣をレイシャに振り翳し、止めを刺そうとするも第三者にその剣を止められる。
「女の子に容赦無しとは・・・流石魔王幹部、やる事が男性としては最低ですね?」
シノアが【四鎌童子】でレイシャに止めを刺そうとしていたベルディアの剣を受け止めていた。
『戦いの場に出た戦士であれば男女の関係なく倒すのみだ』
「なら倒されても文句は言えませんね!?」
シノアが力を込めてベルディアを遠ざけ、レイシャを抱え起こす。
「無事ですか?」
「し・・・のあ・・・・・・ごめ・・・・・・なさ・・・・・・」
先程の攻撃が未だに効いているのかレイシャの顔色は悪く、呼吸が安定しない。
「大丈夫です、私がシメときますから!」
私は近くの岩にレイシャさんを寄り掛からせ、軽く和真さんを見てからベルディアの前に立つ。
『次は貴様か・・・リュウヤくらい楽しませてくれるんだろうな?』
イラッとする・・・何故ここまで比べられるのか・・・
「アンデッドとはいえ死にたいようですね・・・ベルディアさん?」
『貴様程度で殺せるとでも?』
「・・・やってみますか?」
私は足に力を込め、加速しベルディアの背後に着いた。
「───終わりです」
魔力を込めて切れ味が上がった【四鎌童子】がベルディアの胴体を捉える。
やった!倒し───ギィン!
寸での所で【四鎌童子】がベルディアの剣によって止められる。
「なっ・・・!?」
『甘いと言っている!』
私は直ぐに下がるがベルディアの蹴りが軽く当たってしまい、岩にぶつかって痛みが全身に広がる。
「くっ・・・」
『残念だったな?』
残念ですか・・・確かに私1人で戦っていては残念だったと思いますね・・・けど・・・
「めぐみんさん!ゆんゆんさん!」
『なっ・・・!?』
私の声に気付き、ベルディアが振り向く、ふぅ・・・時間は稼げましたね・・・
2人は魔法を撃つ準備が万端になっていた。
和真さんに合図しといて正解でした・・・
「【エクスプロージョン】!」
「【フレイムストーム】!」
爆裂魔法と炎風がベルディアを包んだ。
さすがのベルディアでもこれには堪えるだろう・・・
私は2人に近寄る。
「いや~さすがお二人さん!息が合ってましたね!」
「いえ、シノアさんが時間を稼いでくれたのでベルディアに気付かれずに詠唱が出来たんですよ」
「はい助かりました・・・ですが・・・」
2人が私の身体を見て、表情を曇らせる。
所々服が破れ、傷もある。
まぁ確かに結構キツかったですけどね
「悪いな・・・お前に任せちまって・・・」
「いえ大丈夫ですよ。あのお2人があれなんで・・・」
その場にいる4人の視線がある1点に集中する。
そこには状況が読めなくてダラーンとしてるアクアとガタガタ震えてるフィーリィがいた。
あの2人が一番心配です・・・
『クククッ・・・クハハハハハ!!!!』
煙の中から笑い声が聞こえる・・・まだ起きられるのですか・・・
『一撃一撃がやけに軽いなと思ったがまさか時間稼ぎとはなぁ!!!!』
本当・・・この元騎士の挑発はムカつく・・・一撃が軽い?
本気で斬ろうとしてたんですけどねぇ・・・
「皆さんちょっと待ってて下さい・・・本気で殺ってきますので・・・」
3人が止めに入るが無視して距離をやや離した所でベルディアの前に立つ。
私の横にはダクネスがいた。
「シノア・・・私が注意を引く・・・お前はその隙を突いて斬ってくれ・・・」
「はい」
ダクネスが駆け出しベルディアと剣を交える。
ダクネスはベルディアが私に背を向かせるように立ち回っている・・・完全に背中を向けた!今だ!
私は駆け出して思い切り【四鎌童子】を振り下げ───空を切った。
ベルディアは寸前に身体を軽く捻り、【四鎌童子】の攻撃範囲から外れたのだ。
ベルディアは剣を横に薙り、私達を弾き飛ばした。
ダクネスは受け身を取ったものの私は衝撃を殺し切れずに岩に背中から激突する。
メキメキッ───!!!!
全身の骨と肉が悲鳴を上げ、吐血する。
何本も骨は折れ、身動きが取れない・・・意識が朦朧とする・・・
「カ・・・ハッ・・・ゲホッ・・・ゴホッ・・・」
そんな・・・完全に後ろは取った・・・どうして・・・?
『確かに連携は良かった・・・だがあの聖騎士の攻撃が当たらない以上、仕掛けるのはお前しかいない・・・それなら奴は俺の背中をお前に向けさせようとする筈だ』
あははは・・・全部お見通しでしたか・・・
ベルディアが私に止めを刺そうとする。
だがその後ろでダクネスがベルディアを斬ろうとしていた。
『貴様には用はない』
ベルディアは冷たく言い放ち、振り向いてダクネスを両断した。
ダクネスの鎧は壊れ、倒れる。
「だく・・・・・・ね・・・・・・・・・さん・・・・・・」
声が上手く出せない・・・
ベルディアが近付いてくる。
「やめ・・・・・・て・・・・・・こな・・・・・・・・・で・・・・・・」
気付けば涙を流していた───
『貴様らと闘えたことは感謝しよう・・・さらばだ』
嫌だ・・・・・・誰か・・・・・・・・・助けて・・・
死にたくない・・・死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!!!!!!!
必死に目だけを使って助けを求めるが皆は動いていない・・・いや動けないんだ・・・
はは・・・そうだよね・・・皆も死にたくないよね・・・
けど和真さんは違った。
和真さんは走って来てる・・・けど距離的に無理だ・・・
ごめんなさい・・・皆────・・・
ベルディアが剣を振り下ろし、ドォン!!!!と衝撃が走り砂埃が舞う───
和真がその場に立ち尽くした。
「そんな・・・」
『フッ・・・他愛もない・・・』
周りには殴られ、蹲るレイシャ
斬られて倒れているダクネス
怯えて岩から出てこないフィーリィ
魔力を使い果たして倒れるめぐみん
なんか慌ててるアクア
目の前で斬られたシノア
残ったのは俺とゆんゆん・・・
俺のパーティはほぼ全滅していた。
『・・・?』
何か異変に気付いたのかベルディアが砂埃を見詰めている。
砂埃が晴れ、異変に気付く。
シノアがいなかった。
『なっ・・・そんな馬鹿な・・・!?』
だがその疑問は直ぐに晴れる。
ザッ!と誰かが地面に降り立つ音がベルディアの背後からする。
そこには───
────ボロボロのシノアを抱えた竜弥が立っていた。
ヒーローは遅れて登場!
そしてシノア・・・ボロボロにしてすまん・・・