「この素晴らしい世界にイレギュラーを!」
をお読みに来て頂き、ありがとうございます。
本編に入る前に注意事項があります。
この作品は複数のアニメや漫画の魔法は勿論、能力も魔法として扱います。
なので嫌いなアニメ、漫画の技も出る可能性や、知らぬ間に他作者と技等が被ってしまう等がありますが予めご了承下さい。
一応ではありますが番外編としてオリジナルストーリーも考えておりますのでそちらもお楽しみ下さい。
前置きが長くなりましたがこれにて注意事項は終わりとなります。
それでは![JAIL]のお送りする「この素晴らしい世界にイレギュラーを!」を最後までお楽しみ下さい!
prologue
ガチャッとドアの開く音が鳴る。
「ただいま~」
青年の呟くように出した声は暗い廊下に吸収されたかのように消えてしまう。
「・・・」
それ以上は何も言わずに靴を脱ぎ、家に上がった。
「あれ?兄さん、今日のバイトは早かったんだ?」
奥のドアが開き、中から長い黒髪で制服を着た女の子がひょこっと部屋から顔を出す。
「あぁ・・・店長が今日は終わりでいいってさ、あ、これ売れ残ったコロッケ」
「やったぁ!じゃあご飯にしょっか!」
女の子は喜びながら戸棚から4人分の茶碗を出し、炊いた白米を盛り付ける。
男の名は一条竜弥(いちじょうりゅうや)
工業高校に通っていて、今は3年生。
受験シーズンだが彼は進学せずに就職を希望していた。
瞳の色は緑。
黒髪だが所々ハネている。
女の子の名は一条彩香(あやか)
中学2年生
家の事全般を担当していた(勿論竜弥も手伝う時はあった)。
瞳はペールブルー。
長い黒髪をしている。
先に言っておこう・・・
彼等の家庭はほぼ崩壊していた。
三人兄弟の1番上、一条秀(しゅう)は大学受験に失敗、そのまま2年経った今でも部屋に篭って遊んでばかりいる。
母親は浮気をしてそのまま蒸発、無論行方は不明。
それが引金になったのか、父親部屋に篭もり、朝晩関係無く酒を浴びる様に呑んでいた。
この家庭でまともなのは竜弥と彩香のみ。
彩香はご飯、コロッケ、味噌汁を2人分、盆に乗せ2階に上がると[秀]と書かれたドアを2回軽くノックする。
これが食事を持ってきたという合図らしい。
横の床に食事を置き、それと同時に空になった食器を盆に置く。
その向かいにまた2回ノックし先程の動作を行うと空になった2人分の食器を盆に乗せ、下に降りていった。
彩香は流しに食器を置いたまま俯く。
「・・・ハァ・・・」
正直彩香はこの生活に疲れていた。
そこに竜弥が歩み寄り、彩香の頭を手で撫でる。
「彩香・・・溜息を付いても仕方ないよ・・・」
「分かってるよ・・・けどさ・・・流石に堪えるよ・・・この生活・・・」
この生活が始まって2年経つ、彩香や竜弥もしたいことは沢山ある。
でも彼等は出来なかった。
以前竜弥が秀に文句を言った時があった。
その時はカッターナイフを取り出して────
『次同じ事言ってみろ・・・お前と彩香の喉を切り裂いて話せなくしてやる!!!!』
竜弥は何言っても聞かないなと感じ、それからは放置に近い扱いにしていた。
2人がテーブルに座り、食事を始める。
テレビは付けない。
上にいる2人が手に負えなくなるほど喚き散らすからだ。
「そういえば兄さん、あの、昨日話した事覚えてる?」
「ん~と・・・?あ、澄怜の家に厄介になるってやつか?」
彩香と竜弥の幼馴染みの1人、高野澄怜(たかのすみれ)は父親が警視監、母親が弁護士という家の娘だ。
彩香が澄怜に事情を話したところ、澄怜が両親に聞いて、こっちに来ていいと許可が出たらしくその時は彩香はホッとした様子で竜弥にその事を話してくれた。
「そうそれ!今日みーちゃんに聞いたらOK出たみたいで私、荷物纏めて明日、みーちゃんの家に行ってから学校行くんだけど・・・兄さんはどうするの?」
彩香は普段から澄玲をみーちゃんと呼んでる。
本人は子供っぽいって言ってたけど・・・
「ん~俺は明日、朝イチで新聞配達のバイトだからなぁ・・・学校が終わってから荷物纏めるよ」
「分かった、じゃあみーちゃんにはそう伝えとく」
「・・・にしてもよく澄玲の親父さんOK出したな・・・俺あそこの親父さん苦手なんだよなぁ・・・」
澄怜の父親、高野結晟(ゆうせい)は身長が190cmもあり、日頃から鍛えているのかガタイもいい、右眼には過去に対峙した凶悪犯に刃物で切られた跡があり、普段は眼帯で隠している。
そして本人の左眼もやや近視の為、眉間に皺を寄せ、物を見たりしている。
竜弥が初対面の時、彼は眼帯をしていなかった為、体格も合わさって普通に怖がられてしまった。
それ以来、竜弥は結晟と距離を置いてしまっていた。
「アハハ・・・まぁ、あの見た目じゃあ初対面の人は怖がるけどね・・・」
彩香は竜弥の言ったことに苦笑しながら食べ終わった食器を流しに置いた。
「さてお風呂に入って寝ま「おい!何でもいいからつまみを買ってこい!」「うるせぇジジイ!黙って酒だけ呑んでろ!」「黙れ糞ガキ!」・・・ハァ・・・」
上から2人の怒鳴り声が響く。
竜弥は立ち上がり財布を通学バッグから取り出す。
「・・・俺行って来るよ、彩香は風呂に入ってて」
「ありがと・・・兄さん・・・」
竜弥はその後は何も言わずに玄関を出て近くのコンビニに行くことにした。
◇◆◇◆◇◆
20分後、竜弥はコンビニから帰ってきて2階に上がると父親の部屋のドアを2回ノックし、横の床につまみの入った袋を置いた。
「兄さん・・・兄さんはお風呂どうするの?」
下から彩香が小さい声で竜弥に聞いた。
「今日はシャワーだけでいいや・・・彩香は先に寝てていいよ」
「分かった、おやすみ兄さん」
彩香はそれだけ言うと下に降りて行った。
『ハァ・・・』
竜弥は何回目かも忘れた溜息をつき、シャワーを浴びに下に降りていった。
そして浴び終わるとストレス発散である星座鑑賞を数分やって、眠りについた。
◇◆◇◆◇◆
翌日
新聞配達を終えた竜弥は直ぐに学校に向い、自分の席に着くと顔を机に突っ伏す。
「お~い生きてるか~?」
竜弥は声のした方にぐりんと頭を回す。
そこには坊主頭の男子が立っていた。
「翔・・・」
彼の名前は古谷翔(ふるやしょう)、竜弥の小学校からの幼馴染みでよく竜弥に漫画を貸している。
「しっかしお前も大変だよなぁ~あんな碌でもない父親と兄貴持って・・・」
翔はそう言いながら竜弥の席の前にある自分の椅子に座る。
「代わるか?」
「ごめん被りたい」
即答ですか・・・と竜弥はジト目で翔を見る。
学校は俺と彩香にとって唯一落ち着ける場所となっていた。
「まぁ明日からは違うけどな」
「?何かあんの?」
竜弥は昨日、彩香と話した事をそのまま翔に話す。
翔も澄礼の事は知っていて、幼い頃は4人でよく遊んだものだ。
「へぇ~澄怜の家にねぇ・・・」
「まぁな、こっちもただ住まわせて貰うのも気が引けるから何かしらの恩返しはしようとは思ってるけど・・・んで何でニヤついてんだお前は?」
翔は竜弥の話を頬杖を付き、ニヤニヤしながら聞いている、だが急に真剣な顔付きになり、俺の両肩に両手を乗せてくる。
「竜弥」
「・・・何だよ?」
「襲うなよ?」
「揺らぎねぇなぁ!お前は!」
警戒したのを損したとでも言いたげに竜弥は溜息をつく。
昔っからこいつはそうだ。
翔は小学校の時からこんな調子だ。
翔はよく女の子を追い掛けていた。
それを竜弥が止める、そんな事を繰り返している内に2人は一緒にいることが多くなって今に至る。
「ま!お前は俺とは違ってそんなことする訳ないしな!」
「褒めてんのか貶してんのかどっちかにしろやテメェ・・・」
そう軽口を叩いている内に担任が来てHRが始まった。
◇◆◇◆◇◆
放課後
授業が終わり、帰り支度をする。
「竜弥~今日お前、そのまま帰るんか?」
「ん?まぁそうだけど?翔はどっか行くのか?」
「ちょっとゲーセンにな、お前も一緒に来れば新生活祝いでなんか買ってやるぞ?」
正直行きたいが家で荷物を纏め、高野家に早く行こうとも思っていた。
「俺はいいや帰ってやることあるし」
「そっか、分かった・・・んじゃこれ」
竜弥の机の上にドンと音を立てて袋を置く。
中を見ると沢山の漫画が入っていた。
「やるよ」
「いいのかよ・・・?」
「ま、新生活頑張れって事で!」
「そか・・・んじゃまた明日!」
竜弥はそう言って帰っていった。
重い・・・
「ただいま~・・・」
竜弥はそう呟き靴を脱ぐ。
だが何故か背中に寒気が走った。
(何だ・・・?)
普段とは違う感覚にと惑いながら1階にある自室に向かう。
俺の自室はリビングの右にあり、廊下、リビングと渡る必要があった。
リビングの壁にあるスイッチを付け、足を踏み入れた瞬間だった。
グニャリと柔らかいような固いような分からない感触がした。
「うわっ!?」
バランスを崩しそのまま転んでしまった。
「痛ってぇ~・・・何だよ・・・?」
家のリビングの電気が付くのにはある程度、時間が必要だった。
竜弥が足裏を触ると何か液体のような物が付く感覚がした。
電気が付いた。
───父親だ。
だがうつ伏せで赤い液体を流している
足裏に付いた液体が何なのか、直ぐに理解出来た。
「うっ・・・」
血だ───
父親だった者から流れ出た血液───
「オグエエェェェエエ!!!!!!!!」
吐いてしまった。
無理も無い。
見たことも無い光景。
死体を見た────
死体を踏んだ────
そんな嫌悪感から竜弥は吐いてしまった。
ゴトッ──
何処からか音がする。
竜弥は気を紛らわそうとそちらを向くとそこには兄がいた。
碌でもない兄
そんな兄が血が付き、やや曲がった金属バットとこれまた血の付いた包丁を持っている。
「お前・・・なん・・・で・・・」
秀は何も言わずに振り上げたバットを竜弥の頭目掛けて思い切り振り下ろした
ゴッ!と鈍い音が響く。
「て・・・・・・めぇ・・・」
秀は無言で竜弥を壁に寄り掛からせ腹に向かって包丁を突き刺す。
「やめっ・・・・・・おま・・・・・・・・・やめ・・・・・・」
秀は2~3回包丁を突き刺すと廊下に行った。
ガチャッと音がした為、外に出たのだろう。
竜弥は意識がある内に携帯電話を取り出し、とある人物に電話をした。
電話口から声がする。
『おう!どうした竜弥!俺は今クレーンゲームでフィーバー中でなぁ!』
受話器からは翔の声がした。
彩香に電話したかったが彩香は若干の機械音痴、高野家の連絡先は聞いたことが無い、此処で頼れる奴は翔しかいなかった。
「しょ・・・う・・・」
痛みで声が上手く出ない・・・
竜弥の声で只事じゃない事に翔が気付く。
『・・・どうした竜弥・・・?おい・・・竜弥!?』
「あ・・・・・・に・・・が・・・・・・・・・おや・・・・・・・・・こ・・・・・・・・・ろ・・・・・・・・・」
『おい!竜弥!!!!兄がどうしたって!?しっかりしろ!!!!おい!!!!竜弥!!!!』
腕に限界がきたのか床に腕が着いてしまう。
『竜弥!今からそっち行く!返事してくれ!!!!竜弥・・・?竜弥ぁ!!!!!!!!』
受話器から声が聞こえるが反応が出来ない・・・
・・・あぁ・・・そっか・・・・・・
竜弥はあることを実感した。
1人に対して1回しか訪れない事、即ち────死。
それが来てしまった。
竜弥は仕方なく受け入れる他なかった。
(やっちまったなぁ・・・)
余りにも唐突だ
彩香も泣くだろう・・・
翔もいち早く駆け付けられなかった事を責めてしまう筈だ・・・
ならもし神にでも会えるのならあることを頼もう・・・
俺のことで泣かないでほしい・・・自分を責めないでほしい・・・
少しづつ竜弥の瞼が閉じていく。
(ごめんな・・・皆・・・)
そう思いながら一条竜弥の生涯は終えることとなった。
という訳で始まりましたぁ!
処女作なので誤字、脱字が酷いかなと思います。
そういった場合は言葉をオブラートに包んで御指摘ください!
言葉をオブラートに包んで御指摘ください!
大事な事なので二回言いましたw