私の名前   作:たまてん

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グランドオーダー二次創作、ジャンヌのあのすごくかわいい新衣装ネタです。
だいぶふざけてます。思いつき&不透明な部分がある状態で書いてますので、色々間違うところがありますがどうかご容赦を。
それでもよろしければ、どうぞ読んでやってくださいませ。
あと新衣装のジャンヌ本当に可愛かったですね!
今日から新宿開幕。
みなさん精一杯がんばって、思う存分楽しみましょうっ!
私も楽しみます!


Go to the New World!

「ーーマスター、こちらを見なさいな」

 

廊下を歩いていると、後ろから声をかけられる。

 

透き通っていて、それでいて気の強そうな少女の声。

 

聞き間違えたりはしない。

 

「ーーちょうどよかった。周回に行くから君を呼びに行こうと……」

 

だが振り返ると、マスターは言葉は止まってしまう。

 

そこに見えたものが、彼の予想外の光景だったから。

 

ーー真っ黒に染まったチューブドレス。

 

股下から続いているファスナーを、彼女は自身の首元まで閉めている。

 

そしてそのうえには、いつも着ているマントを彷彿とさせる黒いジャンバー。

 

現代風の装束を身に纏った彼女ーージャンヌ・ダルクは、得意満面の笑みでマスターに語りける。

 

「……どうかしらマスター。感想を聞かせなさいな」

 

「ーーあ、うん、その……かっこいいと思う」

 

お世辞なしの、本心からの賞賛を、彼はジャンヌに送る。

 

しかしその返答を聞いたジャンヌはその綺麗に整った顔に青筋を立てる。

 

「……それだけ?」

 

「え?あー他には、その可愛いし、綺麗だし、COOLだし……」

 

言う度に、青筋の数が増えていく。

 

……そんなにまずかったのか、今の台詞。

 

すると痺れを切らしたジャンヌが「あーもうっ!」と苛立たしげに足踏みをする。

 

それからギロリと

 

「だ・か・らっ!なんでアンタは嫌がらないのよっ!」

 

「……ああ、そういう意味ですか」

 

真意を察すると、やれやれと彼は額に手を当てる。

 

その姿にまたジャンヌは怒りを示した。

 

「当たり前でしょう!この私が、こんな姿をしていたら、誰だって嫌がるわよ!現にジルは泣いてたのに!」

 

「あ、うん。それに関しては同意するよ」

 

たぶん君が思っているのとは違う意味だろうけど、と内心彼は呟く。

 

しかし、とマスターは今一度少女の姿を見る。

 

ドレスにより確かになる、その艶やかな曲線。

 

服装とは対称的に、真っ白に光る太もも。

 

僅かに見えるがゆえに目を引き寄せられる、彼女の鎖骨。

 

凛々しくもあり、扇情的でもあるそのバランス。

 

ーー誰かは検討がつかないが、グッジョブ!とサインを送りたい気持ちだった。

 

「……バレンタインもそうだけど、嫌がるなんて土台無理な話だよ」

 

にっこりと笑うマスター。

 

その反応に、ジャンヌは露骨に「気持ち悪い」と嫌悪の表情を示す。

 

「……理解不能だわ。むしろ嬉しそうにされるし。私は嫌々ながら来てやったって言うのに。こんなんだったら着替えるじゃなかったわ」

 

「……そうか。俺には随分と興が乗った様に見えるがな」

 

「っ!?」

 

ぎょっとして、ジャンヌは振り返る。

 

いつのまにか、彼女の背後には一人の男の姿。

 

ジャンヌと同じく、黒を貴重とした服装。

 

深々と被る帽子。

 

黄色がかったその瞳が、ジャンヌの姿を写していた。

 

「あ、エドモン。ごめん、待たせちゃった?」

 

あんまりにも軽やかな態度に、かの恩讐の化身も嘆息する。

 

「……呼び出しておいて当のお前が遅れてどうする。セイバーを含め、他は準備出来ている。ソレの遊びになど付き合ってないで、さっさとお前もこい」

 

「な、誰が遊びよ!?」

 

抗議するジャンヌに、エドモンは「遊び以外の何だと言うんだ」と呆れた表情を向ける。

 

 

「……服装の変化など我々には関係ない。特にお前は、マスターに見せたいがためだけに変えただけだろう?なら、なおさら無駄だ」

 

「べ、別にそれだけの意味じゃあないわよ。それに、こいつだって時々服を変えるじゃない。私だって変えるときがあってもいいじゃない」

 

「マスターの服装にはれっきとした意味がある。術式補佐という意味がな。対してお前のそれにはなんの意味がある?センスもなにもない」

 

「全身青タイツの槍使いとか、マスターの戦闘服に比べたら断然マシよ!あんなダッサイの着た奴の隣で戦うとか信じられないわっ!」

 

「……そっか。やっぱダサいか、これ」

 

ふと、こぼれた呟き。

 

はっ、となって振り返るとマスターは自らの服装をじっと見ていた。

 

すると、彼はジャンヌたちに背を向ける。

 

「……悪い。ちょっと部屋に戻る」

 

「あ、ちょっと待ちな……」

 

ジャンヌが声をかけるより、前に彼はスタスタと廊下の向こうに消えてしまった。

 

残されたのは、二人の復讐者。

 

「……怒った、のかしら?」

 

「まぁ、聞いていて喜ばれるような台詞ではなかったな」

 

エドモンが答えると、ジャンヌは深いため息をついた。

 

ーーいやおかしいだろう。

 

普段はあんなにへらへらしてるのに、こんなことで怒るなんて。

 

いったいどんな感性してるんだ、あいつは……。

 

「……何をしてる。さっさと連れてこい。時間がもったいない」

 

「何で私が行かなきゃならないのよ」

 

お前以外の誰が行くんだ、と煙草に火をつけながら、エドモンは答える。

 

彼は燻るそれを口につけ大きく吸う。

 

それからふぅ、と吸い込んだ煙を吐き出した。

 

吐き出した煙を溶けていく様を見つめながら、彼は言った。

 

「ーーお前の蒔いた種だ。ならお前に責があるのは条理。私は広間で待つ。早くしろよ」

 

「ーー面倒くさいわね、ほんと」

 

いうと少女は走り出す。

 

仕方がないと、嫌々そうに。

 

ーーそれでも、少女は少年のあとを追った。

 

その後ろ姿を、巌窟王はじっと見つめた。

 

それからぽつりと、最後に呟く。

 

「ーーつくづく、喚ばれる場所を間違えたな」

 

……ここは幸せ過ぎる。

 

生きにくい場所だ、と彼もまた広間へと歩きだす。

 

ーー歩いた世界を、白く染め上げながら。

 

■ ■ ■

 

 

ーー別に、本気で怒らせようとしたわけじゃない。

 

ただあいつの、嫌がる反応が見たかっただけだ。

 

なぜって、それはあの男が私を拒絶しないから。

 

嘘の塊の私を、悪性の根元みたいな私を、彼は否定しない。

 

……それが堪らなく不快だった。

 

だってそうでしょう?

 

私は疎まれるもの。

 

私は憎まれるもの。

 

嫌悪の対象でしかない私を、彼は少しも不快であるとは言わない。

 

……だから言わせてやりたかった。

 

そうじゃなきゃ、面白くない。

 

そうじゃなきゃ、私らしくない

 

ーーそうじゃなきゃ、私だけが。

 

ーー気がつけば、扉の前。

 

マスターの、部屋の前だった。

 

……何て話しかけようかしら。

 

ここにきてやっと、ジャンヌはそのことを考え出した。

 

……謝る気には、やはりなれない。

 

てゆうか、あの程度でふてくされるアイツが悪い。

 

けれど恐らく謝らなければ彼は出てこない。

 

だけどやはり頭を下げるのは気にくわないから……。

 

頭を悩ませ、唸る少女。

 

彼女が葛藤しているその時、開くことはないと思っていた扉が、カシャリと音を立てた。

 

 

「……え?」

 

驚きは、少女の声。

 

開かれた扉の向こうに立っていたのは、一人の少年。

 

ジャンヌが頭を悩ませていたマスター。

 

けれど、それよりも驚くべきは彼の姿。

 

ーー彼が着ているのは、漆黒のスーツ。

 

シャツもズボンも上着もネクタイも、全てが黒一色。

 

ジャンヌと同じ、真っ黒だった。

 

彼は目の前にいる彼女を見て、「あれ?」と首を傾げる。

」と首を傾げる。

 

「どうしたの?もしかして迎えにきてくれた?」

 

「ち、違うわよ!?そんなんじゃ……てゆうか、それ…何?」

 

おずおずと指差すジャンヌ。

 

彼はああ、とうなずいて自らの体を改めて見回した。

 

「ーー確かに、君の言うとおり隣で戦うにはカッコ悪かったからね。似合う服装に変えてみた。変じゃないかな?」

 

「……それだけ、なの?」

 

うん、と頷く彼に、少女は目を見開いた。

 

ーー彼が部屋に戻ったのは怒ったからではない。

 

不機嫌になることも、拗ねることもなく。

 

ただ単に、服を変えに行っただけ。

 

ジャンヌの服装に合うように。

 

隣に立てるぐらいにはいさせてもらえるように。

 

本当に、ただそれだけだった。

 

……なんて、馬鹿げた理由。

 

貴方はマスター、私はサーヴァント。

 

私に合わせる必要なんて、これっぽっちもないのに。

 

私を気にかけることなんて、しなくていいのに。

 

ーーああ、でも。

 

貴方はそういう人だった、少女は思い返した。

 

……いつもそう。

 

そうやって、貴方は私を『嫌な』気持ちにさせる……。

 

「じゃあ、行こうかジャンヌ。またエドモンたちに怒られる前に」

 

言って、マスターはジャンヌの手を掴む。

 

彼女の手を引いて、二人は駆け出した。

 

「ちょ、貴方ねぇ……!」

 

文句を言おうとしたが、少年の楽しそうな笑顔を見て、彼女は言葉に詰まる。

 

……なんでよ。

 

どうして、貴方はそんなことが出来るの?

 

私は嫌なのに。

 

貴方が私にすることは、全部嫌。

 

優しくすること、プレゼントをくれること、探してもらうこと、笑いかけてくれること。

 

全部全部、本当に嫌。

 

だって、貴方がそんなことをする度に、私の胸が熱くなる。

 

心臓は早鐘を打って、呼吸は苦しくなる。

 

貴方の笑顔を見るたびに、私はいつも、ぐるぐると目眩に襲われるんだ。

 

……はじめての、感情。

 

こんな不快なものを、『嫌』にならないわけがない。

 

もどかしく思わないわけがない。

 

……なんて言葉を返せばいいか、わかんない。

 

だから、貴方にも味あわせてやる。

 

困らせて、悩ませて。

 

貴方と同じことをして、私と同じように、『嫌』な気持ちしてやらなくちゃ。

 

でなければ、私ばかりで不公平だ。

 

……なのに、貴方は笑うだけ。

 

ありがとうと、笑うだけ。

 

貴方は何度も笑って、私は何度も空振る。

 

悔しいのに、ムカつくのに。

 

そのたびに、貴方は私を『■ ■ ■ ■(いや)』な気持ちにさせる。

 

……ああ。

 

私はこんなに想っているのに。

 

貴方はあんまりにも平然としてる。

 

……それが、やっぱり悔しい。

 

 

「……バカじゃないの」

 

そう呟くジャンヌ。

 

それは目の前を走る彼に向けてか、うっすらと頬に熱を感じる自身に向けてか。

 

どちらにせよ、悪くないと思える自分自身に、余計苛立ちを募らせる彼女であった。

 

 

■ ■ ■

 

ーーさて。

 

少女が真にその感情を理解する日はいつぞやか。

 

どうなろうと、時の流れは止まることはない。

 

ーーさぁ。

 

次の物語はもうすぐに。

 

黒々とした第二幕が、今宵始まりを告げるのであった。

 

 

 


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