創真「アンタは料理を何だと思ってんだ」
司「言ったはずだ。料理は芸術だと、紅にはその才が無かった」
創真「だから、料理人の価値が無いと?」
司「自殺しようとしたのはあいつのしたことさ。まあ、そうだねあんな小粒に負けたことが僕は我慢できなかったってことだよ。庶民的な物で喜ばすあいつの低レベルな品にね」
創真「だったら証明してやりますよ。大衆・・・いや、人に愛される料理の強さを」
司「そうそれは楽しみだ。なら、僕も仕上げと行こうか」
司は、クリーミーなソースをフライパンの肉に流し込んだ。ふわっと包容力のような匂いが創真や会場のみなを襲う。
司「これが僕の帝王の羽衣だ」
葉山「また、匂いの爆弾かよ」
和希「まともに嗅ぐと精神が持たないねこれ」
司「完成、熊肉のロースト・ホワイトグラッセです」
司の作品は熊肉のローストビーフのような品にソースを西洋料理を基にしているように思える。審査員たちはソースも肉も絶賛したが、なにより評価が高かったのは、別の点にあった。
司「葉山、お前はホーリーバジルの弱点を知ってるよな。食してみろよ」
葉山(なんだと!)
葉山は、司の皿の料理に手を付けた。
葉山(これ! 全然ホーリーバジルと喧嘩してない。臭みはおろかくどさも全くない)
司「分かったか? 葉山」
葉山「ホーリーバジルに味噌と蜂蜜・・・そして果実類の何かをブレンドしたのが肉に塗った物の正体だな」
和希「味噌と果実ってことはまさか・・・使用した果実は」
司「リンゴを燻製にしてチップにしたもの混ぜたのさ。リンゴの酸味と甘みが臭みを消すため使った味噌と味の深みを出すためのワインのくどさをやわらげてくれたのさ」
創真「ぐっ」
司「さらに言うと、この組み合わせは匂いの爆弾を強化している。幸平、そこからでも感じるだろ?」
創真(司先輩、やっぱりさすがだ。俺の料理じゃ・・・)
創真は、再びその場に膝をつき崩れかける。しかし、そんなとき・・・
「立ちなさい幸平君」
創真(この声は?)
その声は、顔を真っ赤に紅潮させて眼を麗して戦況を見つめるえりなの姿だった。
アリス「えりな!」
えりな「あなた、私と戦いたいんでしょ。 こんなところで負けていいの?」
創真「な、薙切」
えりな「無様な姿を見せずちゃんと勝ちなさいよ。私の期待に応えなさいよ」
えりなは涙ながらに叫んだ。
創真(そうだ、俺はこんなところで立ち止まっちゃいけないんだ)
和希「えりなさんの言う通りだぞ創真。勝て、勝って学園をみんなの夢を守るんだ」
葉山「そうだぞ。幸平、お前との再戦が俺には残ってんだ」
アリス「私だってそうよ幸平君」
黒木場「根性見せろ幸平」
創真(そうだ。俺は一人じゃないんだ)
薊「何をいまさら」
城一朗「まだ気付かないの中村。創真の眼が変わったことに」
創真「目さめたぜ」
次回、創真のスペシャリテ登場