ISなんかどうでも良いから女の子とキャッキャウフフしたい。 作:大塚ガキ男
『良かった。光也も進学先は藍越学園なんだな。光也がいてくれれば安心だ』
『こうして、俺達二人がISを動かせるようになったのも、何だか運命みたいだよな』
『光也、お前がIS学園にいてくれて本当に良かった……!』
『箒が、最近何だか可愛く見えるんだよな』
『い、いやいや!……そりゃあ、好き、だけどさ。光也に話すのって何だか気恥ずかしいな』
『光也、部屋の戸締まりにはマジで気を付けろよ。あと、腹出して寝るなよ。パジャマはしっかり着ろよ。じゃないと危ないからな』
『光也、訓練しようぜ!え、またやらないのか?』
『光也、危ないッ!──』
「──一夏ちゃんッ!!」
叫んでから、我に帰った。知らぬ間に伸ばしていた右手は何も掴んではおらず、ただの握り拳となっていた。一夏ちゃんとの遣り取りは、どうやら夢だったらしい。
息が切れている。
汗もかいている。
オレは、オレ等は、銀の福音と戦っていた筈なのだが、今居る場所は敷かれた布団の上だ。何故だと周りを見渡せば、暗い表情の皆が居た。
「……どういう事なんだよ、コレは」
女の子に問い掛けるには荒々し過ぎるようなソレ。だからこそ呟きのつもりだったのだが、セシリアちゃんが応えてくれた。その応えは
「一夏ちゃんは、どうして居ないんだよ」
「み、光也。アンタちょっと落ち着いて──」
「どうして、一夏ちゃんの
「そ、それは……」
「っ……」
「セシリアちゃん!」
「……」
「鈴ちゃん!」
「うぅ……」
「シャルちゃん!」
「……」
「ラウラちゃん!」
「……申し訳ありません」
「何だよ!何で答えてくれないんだよ!それじゃ、まるで一夏ちゃんが!」
もうどこにもいないみたいじゃないか。
そう続けようとして、横っ面をぶん殴られた。襖が倒れる程の勢いで吹き飛ぶ。殴られた頬を押さえて顔を上げると、そこには怖い顔をした千冬ちゃんが立っていた。
「安心しろ、一夏は死んでない」
「な、ならどうして!」
「死んではいないが、助けられなかったのだ」
吐き捨てるように、忌々しげにそう言った千冬ちゃん。
「一夏は、銀の福音に囚われている」
*
「光也の目が覚めないなら、俺達でやるしかないだろ」
熱中症で倒れた光也を除いた一年生の専用機持ちが一堂に会するこの場で、俺はそう発言した。そうするしかないのだが、ラウラは認めたくないらしく、ムッとした顔で俺を睨んだ。どうしようもないだろうと目で返して、箒が口を開いた。
「し、しかしだな、一夏。光也が言っていた『ルリ』とやらの力は、この戦いに必要ではないのか」
「あぁ、必要だ。光也がいてくれた方が心強いに決まってる」
「なら」
「でも、駄目なんだ。光也に頼り切りじゃ、駄目なんだよ」
「っ……」
光也が目覚めないのなら、俺達で何とかしなくちゃいけないんだ。
思えば、無人機が乱入してきた時も、ラウラが暴走した時も、皆を救ったのはいつも光也だった。
だからこそ。
今回ばかりは。
熱中症で苦しんでいる光也の為にも、俺達だけで解決しなければならないんだ。
俺の言いたい事を察したのか、集まったメンバーは重たく頷いた。
「意思は定まったようだな。光也にはこちらから伝えておくから、安心して戦ってくれ。無論──」
それからは、千冬姉による現状と作戦についての説明が行われ、光也は終ぞ目覚めないまま、俺達は銀の福音と
2日目の訓練の時に束さんから専用機を貰った箒を新メンバーに加え、6人での戦闘となる。勿論、授業ではこんな大人数で協力して戦うことなんてなかったものだから、当然緊張はする。もしかしたら、俺と箒がやってないだけで、代表候補生は母国で訓練済みだったりするのだろうかと要らん気を回す。
「各人、準備は良いか」
6人の揃った返事。
「最悪の場合は撤退しろ。間違っても深追いはするなよ」
銀の福音は、臨海学校の宿泊施設目掛けて真っ直ぐ進んでいる。
もしも、俺がしくじったら。
「こうしている今も、各国にISによる新たな支援を要請している。こちらに到着次第、お前達を助けてくれるだろう。だから……まぁ、無理だとは思うが、必要以上のプレッシャーは背負うんじゃないぞ」
風が吹く。大した風ではない筈なのに、砂埃と共に意識が飛んで行ってしまいそうな気がして、必死に足に力を入れる。
「……皆、行こう」
怖い。怖くて仕方がない。
不安になってもネガティブになるな。
誰かが言っていた言葉が、過ぎる。
大丈夫なのか。
勝てるのか。
負けないのか。
生きて帰れるのか。
死なないのか。
それから。
それから、銀の福音と対面して。
「────おらァッ!」
どこからともなく、光也が現れて。
また、光也が駆け付けてくれて。
格好良く、この現状を救ってくれそうな気がして。
だけど、そんな光也に銀の福音が牙を剥こうとしていて。
無我夢中で飛び出して、後は憶えてない。身体中が痛い気がするし、痛くない気もする。誰かに呼ばれている気もするし、誰もいない気もする。
あれ、俺って今、どうなっているんだ?
現状が掴めない。
目が開けない。
身体が動かせない。
白式が、応えてくれない。
*
「捕まってる一夏ちゃん放ったらかして、オレ等は一体何してるんだ!早く助けに行かねェと!」
立ち上がり、同意を求めながら皆の顔を見る。しかし、表情は皆同じ、悲痛の一色。
「……なァ。何で皆して、悲しそうな顔するんだよ。笑ってくれよ。皆で一致団結して、一夏ちゃん助けてハッピーエンドで臨海学校終わらそうぜ。何してンだよ」
「まだ、行くのには早いの」
鈴ちゃんが、オレの手を引いて座らせようとする。そんな鈴ちゃんに、オレは突っかかった。
「どうしてだよ!」
「お願い、分かって」
「……怖気付いてンのか?もしかしたら勝てない戦だって匙投げちゃってんのかよ?」
最悪の可能性。震える声でそれを口から発すると、鈴ちゃんが反論。
「違うの。今飛び出せば良いってものじゃなくて、戦闘中に採取したデータを元にもう一度作戦を立て直して、万全の体制で一夏を取り戻さないといけないの。だから──」
「そんな時間は無ェんだって!」
「ッ!……あ、アンタねぇ!さっきから聞いてれば勝手な事ばっかり!アンタのそれは駄々こねてるだけだって気付かないの!?」
「悲しい顔して俯いたままよりはマシだろうが!オレは前を向いてるぞ!」
「向いてないわよ!光也が向いてるのはそっぽ!現実なんか全く見えちゃいないわ!」
今にも掴みかかりそうな雰囲気。四文字で表すならば一触即発。段々とヒートアップしているオレと鈴ちゃんの言い争いに、誰も仲裁出来ないと思ってた。行くところまで行こうとしていた。
しかし、一人の女の子が止めた。
おやめなさい、と。
「…………」
「…………」
二人して、いや。発言者以外の全員、その子を信じられないような目で見た。ともすれば、険悪な雰囲気が生んだ夢かと疑ってしまうくらいには現実味の無い発言。というか口調。オレ等が何かを言う前に、その子は続けた。
「お二人とも、それ以上はいけませんわ。熱くなるのでしたら、どうぞ。あちらに見える綺麗な海でその頭を今一度冷やして来て下さいな」
「せ、セシリアちゃん……!?」
驕りでも昂りでもなく、圧倒的な実力から来る己への自信から生まれるその態度。
目を合わせた物の背筋を正させるその瞳。
一文字に結ばれた唇。
違う。セシリアちゃんがいつもとどこかが違う。
いや、それさえも違う。
戻ったのだ。
「鈴さん」
「は、はい」
セシリアちゃんに名を呼ばれた鈴ちゃん。はい、と教師に接するような態度で返事をし、オレとの言い争いも一時中断。
「ISを部分展開させようとしましたわね」
「な、何でそれを」
「いけませんわ。感情のままに行動してしまっては、獣と何ら変わりはありませんわ」
「……はい」
「光也さん」
「は、はい!」
名を呼ばれ、慌てて姿勢を正す。合わせられた視線に、何を言われるのかと言葉を待っている。しかし、次に来たのは叱りの言葉では無く。
「この──恥を知りなさい!」
ありったけの力を込めた、張り手だった。
セシリアちゃんの掌とオレの頬が接して、破裂音の如く甲高い音が出る。あんまりにもあんまりなその音に、鈴ちゃんが思わず目を背けた。引っ叩かれたオレも、たたらを踏んで頬を押さえた。
「……痛ってェ」
「一夏さんの身を案じる気持ちも充分理解出来ますわ。しかし、だからと言ってその焦りを他の人に押し付けて良い道理などありませんことよ?鈴さん達だって、一夏さんに対して何も感じていない筈が無いではないですか。悲しんでいるからこそ、心配だからこそ、慎重に策を練って、救出する為に奮闘しているのです」
気付いたら、オレは正座していた。そんなオレにセシリアちゃんは何も言わず、人差し指をピンと立ててお説教を続ける。
「光也さんは、信頼する相手が少ない──いや、これは適切ではありませんわね。光也さんは、信頼すべき相手が足りませんわ。織斑先生や山田先生、教師陣の方々や日本政府、私達を信じて下さるのはとても喜ばしいことです」
「な、なら」
何がいけないんだ。オレらしくもなく、セシリアちゃんの言葉を遮っての発言。それぐらいオレは平常ではないようだ。しかし、その発言もセシリアちゃんによって止められる。
「ですが。少なくとも、もう一人。信じなければならない人がいるでしょう」
「信じなければならない、人……」
「一夏さんですわ」
「ッ」
「光也さんが一夏さんを信じなくてどうするのです。親友なのではないのですか?一夏さんなら大丈夫、きっと無事。光也さんがそう信じないでどうするのですか?」
「い、一夏ちゃんを……信じる」
そうだ。
そうだった。
目の前で一夏ちゃんの身体に穴が空いたのを見てしまったので、どうやら心が参ってしまっていたようだ。ネガティブが過ぎて、大事な事を忘れてしまっていたようだ。
身体に穴が空いたぐらいでなんだ。あの一夏ちゃんなら、きっと。他ならぬオレがそう信じないでどうするんだって話だ。
「セシリアちゃん、ありがとう」
「私は何もしていませんわ。御礼なら、一夏さんが無事に帰ってきた時に言ってあげてくださいな」
「……あぁ、そうだな。セシリアちゃ──」
「光也さん!」
最後に一体オレは何を伝えようとしたのか。突如としてオレに飛び付いてきたセシリアちゃんの所為で忘れてしまった。
「セシリアちゃん!?」
「嗚呼、頬がこんなに真っ赤に……!なんて痛々しい!一体、誰がこんな真似を!」
「……セシリアちゃん、憶えてないのか?」
「何がですの?」
決して嘘を吐いているとは思えない、セシリアちゃんの悲しみと困惑が入り混じった顔。オレは頭の中で浮かび上がった仮説に納得してしまい、思わず膝から崩れ落ちてしまった。
*
「落ち着いたようなので、これより作戦会議に移る」
鈴ちゃんやセシリアちゃん。皆に色々的外れな発言をしてしまった事への謝罪が済んだ所で、千冬ちゃんが空気を再び引き締めさせた。皆、千冬ちゃんの隣に浮かぶ空間ディスプレイに視線を移す。
「山田先生が行った計算の結果、他国に要請したISが到着するよりも、銀の福音がこの旅館に到着する方が早いことが分かった。よって、前回と同じように、この場に居る専用機持ちが出来る限り銀の福音の足を鈍らせ、他国のISが到着した所で銀の福音を打倒する──こう言った結論になった」
「はい、千冬ちゃん」
「どうした、唐澤」
「助っ人が来るまで、あと何分?」
「……全速力でこちらに向かっているが、海域や手続き等の関係で早くても10分以上掛かる。銀の福音との本格的な戦闘も視野に入れざるを得ないだろうな」
「そっかァ」
「しかし、銀の福音は織斑を片手にこちらに向かっている」
「?」
「つまり、通常よりも動きが鈍いという事だ。これを幸と取るか不幸と取るかは各人に任せる。他に質問が無いのなら、今すぐ作戦決行に取り掛かるぞ」
はい。
一同声を揃えて立ち上がる。銀の福音に囚われている操縦者、そして、一夏ちゃんを助ける為に。
様々な思惑を胸に、海岸へと向かった。
「準備は出来てるな」
海岸に、6人が並ぶ。ハイパーセンサーを使っても見えないくらいには遠い海の向こうに、一夏ちゃんはいる。今も苦しんでいるのか。それとも、気絶してしまって銀の福音のされるがままに移動しているのか。
分からない。分からないが故の不安が心を蝕む。一夏ちゃんの無事をこの目で確認するまでは、この不安は治らないのだろう。
対、銀の福音戦でいきなり新しい機体を使うのは危なっかしいとの千冬ちゃんの判断。箒ちゃんは剣道やってたから筋が良い云々言っていたが、オレは馬鹿だからやめておけと大変不本意ながらそう言われてしまったので、大人しくルリちゃんを使わせてもらう。ルリちゃんを使う事によってチームワークにどのような影響を及ぼすのかは分からないが、オレからは、悪い方向に進まないように祈るばかりだ。
ごくり。
喉が鳴る。
一夏ちゃんではないが、手をぐっぱぐっぱさせて出撃に備える。
「では──健闘を祈る」
その数秒後、二人分の命運。更に言えば、旅館に居る皆の命まで背負った6人が空へと旅立った。
*
「……行ったな」
「……行ったねぇ」
姿が見えなくなっても、一年生が飛んで行った空を見詰める二人。
織斑千冬。
篠ノ之束。
一人は緊張を孕んだ面持ちで。
一人は
「……どこまでが想定内なんだ」
「さぁ?でも、少ないようで多いのかも知れないね」
「何の話だ」
「みっくんが被る害の話」
「……束、お前」
「勘違いしないでよね。束さんは、みっくんの事が大好きだから、みっくんが更なる成長を遂げる為には努力を惜しまないのだ〜」
「何を言う。はっきり言わせてもらうが、今回ばかりは、お前は間違ってるぞ。一夏は怪我をし、篠ノ之は傷付き、鳳は胸を痛め、オルコットは戸惑い、デュノアは
「そうだよね。普通だったら駄目になっちゃうよね。でも、みっくんも箒ちゃんもいっくんも、前に進もう、良い方向に進めるようにって頑張ってる。束さんは、そういう成長が見たかったんだよね」
「アイツ等はまだ高校生だぞ。お前の勝手な思惑に振り回されて良い訳が無いだろう」
「
「……すまない。失言だった」
「気にしてないよ。ただ揚げ足を取っただけだし」
夏の空気と潮風を一身に受けながら、旅館へ戻る事もなく、ただ、じっと空を見詰め続けていた。
*
「&vxd"lwr〈*1」
また、灰色の世界へと誘われていた。気が付けば俺は固まった海の上に両足を立たせていて、上を見上げればISに乗った皆が宙で固まっていた。
「氷魚ちゃん」
待機状態の傘は、旅館に置いてきた筈なのだが。そう思ったが、口には出さないでおく。目の前には、レーシーアイマスクに瞳を隠した氷魚ちゃんが立っていた。その表情は悲しんでいるようにも見えるし、怒っているようにも見える。
「をqdf&bzwejr *2」
「相変わらず、意思疎通は出来ねェか。どうしたものかね」
首元をぽりぽりと掻く。灰色の空を見上げてから、どうにかして意思疎通を図り、今すぐにでもこの世界から脱出しなければならないのだ。
その為に踏み出した一歩目。視界が真っ暗になった。
「だーれだ」
「……その声って──」
「正解、ルリちゃんでした」
「言わせてよ」
真っ暗だった視界(背後から両手で塞がれていたらしい)が元通りになってから振り返れば、そこにはルリちゃんが真顔で手をヒラヒラとさせていた。
「氷魚と会話が出来なくて困ってるみたいね」
「そうなんだよ。オレに問題があるのか分かンねェんだけど、向こうはオレの言葉が理解出来ててオレは氷魚ちゃんの言葉が理解出来てないんだよな」
一方通行のコミュニケーション。オレは氷魚ちゃんの言葉を理解したいのに、耳に入るのは謎の文字列。読唇しようとも、氷魚ちゃんの口元がポリゴン状に混ざってよく分からなくなる。
「
「そうなん?」
「うん。氷魚がわざとやってる」
えええええええ?てっきり、設定が終わってないとかそんな理由だと思っていたものだから、衝撃の事実に口をぽかんと空けてしまう。
「何でさ」
「アンタが、氷魚の操縦者に足る人物だと思われていないから」
「……」
確かに。
そう納得してしまうくらいには、オレの実力が足りていない。誰よりも練習をサボり、誰よりもISに関する知識が足りなければ、ISを操縦する意欲も無い。
氷魚ちゃんを見る。氷魚ちゃんはレーシーアイマスクによって、オレと視線を交わらせる事は無い。
オレには何もかもが足りない。言われてみれば、氷魚ちゃんがオレを乗せる理由が無いのだ。先程までは乗れていたが、思い返せばオレは、氷魚ちゃんの特性も何も理解出来ていない。氷魚ちゃんが何に優れていて、何を苦手としているのか分かっちゃいないのだ。
「そういう事だったのか」
「このままじゃ、アンタと氷魚は一生このままね」
「それは……悲しいな」
こんな美女と言葉を交わせないなんて、悲し過ぎる。悲し過ぎるから、何とかして氷魚ちゃんに、オレを操縦者として認めてもらわねばならない。
「氷魚ちゃん。オレは、何をすれば良い?こんな事、本人に直接聞くのは間違ってるって分かってる。分かってるけど、オレは聞くしかないんだ」
問う。
それから、氷魚ちゃんは数秒程固まった。その間ルリちゃんは波間を飛んだり跳ねたりして遊んでいる。やがて、氷魚ちゃんがゆっくりと口を開いて。
「tkd)qaをqr*w♯*whqxe *3」
何を伝えたいのかは、未だに分からない。全くもって分からないのは確かなのだが、何故だか、オレは自信満々に「任せて」と応えていた。
「話は終わりみたいね。じゃあ、行きましょうか」
「お、おう。ルリちゃん。……氷魚ちゃんはどうすれば良いんだ?」
「このままで良いわよ。アンタが操縦者に相応しいかどうか、後ろから監視してると思うから」
「お化けみたいに?」
「……まぁ、良いわ。取り敢えず、行くわよ」
一々説明するのが疲れてしまったのか、ルリちゃんはプイッと視線を移して話を切り上げてしまう。
「良い?戦うのは基本的に光也、アンタがやるのよ」
「え、でも」
「何の為にこの世界で練習させたと思ってんの。男ならビシッと親友の一人や二人、救ってみせなさいよ」
大事な親友一人助けられないで、何が男よ。
後に続いたルリちゃんの言葉がオレの心に深々と刺さる、とても鋭利なナイフだ。何せ、オレは親友に助けられて、親友が身代わりになったことで、今こうして行動出来ているのだから。
「……そうだよな。尻拭いくらい自分でしなきゃいけねェよな」
元はと言えば、突然あの場に現れてチームワークを乱したオレが悪い。どうせ今回も何とかなる、そんな思いが心の何処かにあったのかも知れない。定かではないが、どこか慢心を持っていたのは確かだ。
拳を握り締める。
握り拳を、ルリちゃんの両手が包んだ。
「気持ちを上げるのは良いけど、間違っても我を忘れちゃ駄目よ。いざとなったらアタシもサポートしてあげるんだから、落ち着いて、正確に親友を救うこと。分かったわね」
「おう」
「……良い顔するじゃない。じゃあ、準備は良いわね。氷魚も、大丈夫?」
「qed)$"wr *4」
ルリちゃんが氷魚ちゃんに話を振ると、氷魚ちゃんは親指を立てて返した。時に氷魚ちゃん、ルリちゃんと話す時は楽しそうに見える。
「良し、じゃあ、行くわよ──」
恐らく、次回で銀の福音編は終わります。
どのキャラが好き?
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一夏ちゃん
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箒ちゃん
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セシリアちゃん
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鈴ちゃん
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シャルちゃん
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ラウラちゃん
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千冬ちゃん
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束ちゃん
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蘭ちゃん
-
弾ちゃん
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光也