ISなんかどうでも良いから女の子とキャッキャウフフしたい。   作:大塚ガキ男

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本当にお久しぶりです。
一ヶ月以上更新出来なくてすみませんでした!


16話

「・・・・・・なァ、アレって——」

 

 空から猛スピードで降下してくる、訓練機ラファール・リヴァイブ(ルリちゃんではない)。

 恐ろしく速い。

 もしかして、乗ってるの真耶ちゃんか?と一夏ちゃんに問いながら隣を向いた瞬間。

 

「——ぁぁぁぁあああああ!退いて下さあああい!!」

 

 一夏ちゃんが消えた。キョロキョロと辺りを見渡すと、数メートル後ろに一夏ちゃんが居た。

 真耶ちゃんを押し倒しているような姿勢で。

 押し倒しているような姿勢で!?

 

「ふぅ・・・。白式の展開がギリギリ間に合ったな」

「間に合ったな(キラーン)。じゃねェよ一夏ちゃん!そこ代われやゴルァッ!!何お前だけ真耶ちゃんのおっぱい揉みしだいてんだよ!!」

「代われって——うおっ」

「あ、あのぉ、織斑君・・・?」

 

 オレ&真耶ちゃんの声で今の自身の体勢に気付いたらしい一夏ちゃん。真耶ちゃんのたわわなパイオツを鷲掴みにしていた両手をバッと離した。クソ、真耶ちゃんも満更でも無さそうなのが更にオレの心を抉るゥ・・・!

 

「クッ、この!離せ光也!」

「箒ちゃん、どうどう」

 

 今にも列から飛び出して一夏ちゃんに斬り掛かりにいきそうな箒ちゃんをさり気無く止める。本当、ISスーツ(スケベスーツ)のどこからそんな刀出したんだよ。

 一夏ちゃんも箒ちゃんからの視線に勘付き、慌てて真耶ちゃんから離れて謝罪。内心「ヤベー!箒の前でなんて事してるんだ俺!嫌われたんじゃないか!?」と焦っているに違いねェ。

 

 ガチーン。

 

「あ?」

 

 背後から聞こえた、何かの連結音。

 

「光也・・・。アンタって奴は本当にどうしようも無いわね!!」

 

 鈴ちゃんの声。振り返ると、そこには怒り心頭といった感じの鈴ちゃんがこちらを睨んでいた。ツインテールがゆらゆらと重力に逆らっているように見えるのは、目の錯覚か何かだと信じたい。

 

「い、一夏ちゃんの間違いじゃなくてか?オレは何もしてないだろ」

「その五月蝿い口を閉じなさい!」

「何故だァ!」

 

 二組の列から《双天牙月》が飛んできた。縦回転で迫るそれは他の女の子には掠りもせず、器用に列の間をすり抜けてオレへと迫る!

 オレが避けると他の女の子が危ない。

 そう思い、回避を諦めて(当たれば大怪我じゃすまないレベルの)痛みを、ルリちゃんを展開してどうにかこうにか受け止めようと——受け止めてもらおうとしたその時。二発の銃声と共に《双天牙月》が何かに弾かれた。

 

「・・・・・・あれ、無事だ」

 

 遅れて、ズドンと重たい音がする。見ると、オレに当たる筈だった《双天牙月》が地面に転がっていた。

 

「鳳さん。幾ら唐澤君でも、流石に《双天牙月》での攻撃はいけませんよっ?」

 

 事も無げに、構えていた銃を下ろしながら鈴ちゃんに注意する真耶ちゃん。

 う、嘘だろ・・・?

 一夏ちゃんに意識を傾けていたあの状態から、高速で飛来する《双天牙月》の軌道を銃弾で変えさせたってのか?

 その技術もとても凄いが、何よりオレが驚いたのが、あの状態からの気持ちの切り替えの速さ。いつもの、周りにマスコット的可愛さを振りまく真耶ちゃんではなく、そこにいるのはIS学園の教師としての真耶ちゃん。表情が『可愛い』から『美しい』に変化していた。

 もっとも。

 もう既に、表情はいつもの真耶ちゃんに戻っているのだが。

 

「うっ・・・。す、すみません」

 

 それでも、あの鮮烈な光景がまだ脳裏に焼き付いているのだろう。真耶ちゃんに注意された鈴ちゃんは、素直に引き下がった。

 

「——と、いう事だ。これからは山田先生にも敬意を持って接するように」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・それで、これはどういう事なのだ」

「どういう事・・・って。見ての通りだ」

 

 昼休み。

 一夏ちゃんから「箒が弁当を作ってくれたらしいんだ。一緒に行こうぜ!」という訳の分からん誘いを受けた。聞くからに箒ちゃんの健気なアタックだと分かったのだが、肝心な受け取り手はコイツ。意中の相手からの手作り弁当に心を躍らせてはいるが、二人きりで食べるという展開には至らなかったらしい。

 オレは良いから、一夏ちゃん一人で行ってこいよ。

 最初はそう断ったのだが、何度も「箒が待ってるから」と粘られては断り切れず。箒ちゃんが怒ってるのが分かった瞬間に逃げ出そうという決意と共に向かった屋上。

 案の定、織斑一夏にwith(バカ)がくっ付いてきた事で、箒ちゃんは大変怒っていらっしゃる。

 こちらを睨む瞳の鋭さは、剣士のソレだ。

 ・・・まぁ、一夏ちゃんが誘ったのは(オレ)だけじゃないのだが。むしろ、(オレ)だけじゃないから、怒りがより一層激しくなっているのかも知れない。

 

「私は、一夏『を』誘った筈なのだが?」

「い、いやぁ。どうせなら皆で食べた方が良いんじゃないかって思ったんだが・・・」

 

 を、という部分を強調する箒ちゃんと、箒ちゃんの迫力に若干たじろぐ一夏ちゃん。

 箒ちゃんの台詞は、言外に『他の人は不要』と言っているようだ。

 自分が犯した失態に気付いたからか、それとも訳が分からないまま箒ちゃんに怒られているからか。一夏ちゃんは人差し指で頬を掻きながら苦笑い。

 やがて、箒ちゃんが折れた。

 

「はぁ・・・。まぁ、それが一夏の美点だ。これ以上は何も言うまい」

「おぉ、ありがとう!」

「何、私が下らん理由で怒ってしまっただけだからな——さて、昼にしよう」

 

 箒ちゃんが弁当を一夏ちゃんに手渡す。円テーブルで隣に座っている二人は、早くもイチャイチャムードを醸し出している。

 

「・・・えーっと」

 

 先程まで空気を読んで黙っていた(もしくは、箒ちゃんの迫力に言葉を失っていた)シャルルちゃんが、ようやく口を開いた。

 ちなみに、オレの正面に座っている。

 

「やっぱり僕はお邪魔だったのかな・・・?」

「安心してくれ、シャルルちゃん。オレも全く同じ事を考えてた」

「安心出来ないでしょ」

 

 オレの台詞にツッコミを入れたのは、同じくこの場に居たけど黙っていた鈴ちゃん。

 ちなみに、オレの左隣に座っている。

 

「鈴さん、それは違いますわ。光也さんの御言葉は、一言一句が人々に安らぎを与えるのですから」

 

 いつもの調子で、呼吸をするような感覚でオレへの賛辞を述べるセシリアちゃん。

 ちなみに、オレの右隣に座っている。

 

「・・・イギリス政府が今のセシリアを見たら、卒倒するでしょうね」

「止してくれよ、オレもビクビクしてんだから」

 

 セシリアちゃんのアレは、もう治らないのだろうか。最近はあの調子に慣れてきているが、偶にふと考える。

 どうしよう。

 もうこのまま結婚しちゃって良いのだろうか。

 いや、でも。

 あんな状態でプロポーズしても、なんな狡いっつうか、フェアじゃないっつうか。・・・オレ自身よく分かっていないのだが、プロポーズをするならセシリアちゃんが出会った当初の頃に戻ってからの方が、オレ的には良いと思っている。

 ・・・・・・あれ、どっちにしろセシリアちゃんルート確定じゃね。

 美男美女カップルの隣のテーブルで、四人でワイワイガヤガヤと雑談。

 この場に居ないもう一人の転校生、ラウラちゃんは、朝のHR以降から話せていない。先程も『一緒に屋上で昼飯食べねェか?』と誘ったのだが、効果は無し。ラウラちゃんの行動を一瞬止めるに終わってしまったのだ。

 兎にも角にも、昼だ。隣のお似合いさん方に倣って、オレ等も昼にするとしよう。

 

「じゃあ、オレ等も。いただき——」

 

 手に提げていたビニール袋から購買のパンを取り出した所で、鈴ちゃんに取り上げられる。

 

「どした?鈴ちゃんも食べるか?」

「パンは没取よ。光也のお昼はこっち」

 

 取り上げられたパンの代わりに、差し出されたタッパー。中には、オレの胃袋を掴んで止まない酢豚が入っていた。

 

「じ、実は、わたくしもお昼を作ってきたのですが・・・」

 

 思いも寄らないタイミングでの酢豚の登場に喜んでいると、セシリアちゃんがそう言ってどこからかバスケットを取り出して開いてみせた。中には、とても美味しそうなサンドウィッチがズラリと並んでいる。

『セシリアちゃん』『手料理』という二つの単語には少々嫌な思い出があったりするのだが、まぁ流石に前回よりかは腕は上がっているだろうと高をくくる。

 

「・・・何だか、幸せ過ぎて死にそうだ」

 

 美少女二人からの手料理を前にして、オレは思わずそう呟いていた。

 

 よく晴れた青空。

 白い雲。

 ほんのり潮の香りがする空気。

 最高だ。(建前)。

 

 右にも左にも美少女が居て、正面にも美少年(美少女)

 最高だ(本音)。

 

「ちょっと?何ボーッとしてんのよ。——ったく、しょうがないわね・・・」

 

 今の自分が置かれているハッピーな状況に浸っていると、口の前に箸でつままれた酢豚が差し出された。ぱくり。美味しい。鈴ちゃんが一人でバタバタとしているが、勿論気にしない。

 

「では、わたくしも。お口を開けて下さい」

 

 お次はサンドウィッチ。これも特に意識せずに、ぱくり——

 

「——〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?!?」

「光也さん!?」

 

 さ、サンドウィッチが・・・甘いだとォ!?

 口の中に広がる、基準値を大幅に上回る甘味。

 脳天に突き刺さるような甘さだ。

 涙が出ちゃうぜ。

 

「こ・・・、個性的な味だな」

 

 ガクリ。

 

「光也さん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、やっと目が覚めたね。おはよう」

 

 寝起き直後の、天使からのモーニングコール。

 こうかはばつぐんだ。

 起き上がって横を(声のした方を)見ると、シャルルちゃんが「・・・あれ、でももう夜だし、こんばんはの方が良いのかなぁ」と可愛い自問自答をしていた。

 

「おはよう、マイエンジェル」

「な、何言ってるのさ!もうっ!」

 

 あー、シャルルちゃんがひたすら「もうっ!」とか「だめだよっ!」って可愛く叱ってくれるだけのCDとか購買で売ってねェかなー。欲しィなー。

 そんな事を考えながら軽く寝起きのストレッチをして、備え付けの時計を確認。

 二十時四十分。

 シャルルちゃんの呟き通り、いつの間にやら夜になっていたようだ。

 ・・・そう言えば、何故オレはこんな時間まで眠っていたのだろうか?

 そもそも、いつから眠ってしまっていたのだろうか?

 

「覚えてないの?」

「あぁ。でも、教えてくれなくて良いからな。嫌な予感がする」

 

 眠りたくて眠ったのではなく、気絶とかの類いの、強制的に眠らされていたような——いや、これ以上は止めておこう。何故オレは制服で寝ていたのかとか、口内に残っている甘過ぎる何かの正体とか、そういう疑問は、意識の外に追いやっておこう。

 

「まぁ、無事なら良かったよ。それじゃあ僕、お風呂入ってくるね」

 

 どうやら、風呂に入らずにオレを見てくれていたらしい。なんて良い子なんだ。結婚してくれ。

 ・・・・・・待てよ?風呂前って事は、今のシャルルちゃんってとても良い匂いがするんじゃねェか?

 まぁ、実習後にシャワーは浴びているんだろうが。

 それでも、それでもオレは!シャルルちゃんに抱き付いてくんかくんかしたい衝動に駆られているのだ。

 変態じゃない。一般的な健全男子高校生の正しい思考だ。

 

「・・・なァ、シャルルちゃん。どっかの国では、挨拶代わりにハグをするらしいんだが。オレ等もそれに倣ってやってみねェか?」

「僕の台詞の後のほんの数秒の間に何を考えたのかは分からないけど・・・光也のエッチ」

「グホァ」

 

 恥じらいながらのその破壊力。倒れるようにベッドに倒れ込んでいると、これ幸いとばかりにシャルルちゃんはそそくさと着替えを持って風呂場へ小走りで駆けていった。

 スイッと消えていく金髪。

 すぐにヒョコッと出てきた。

 

「・・・・・・覗かないでよ?」

「任せとけ。三回目のフリで突撃だな?」

「もうっ!本当にやめてよ!?」

 

 そう言って、ドアが閉められた。

 

「・・・なんつーか」

 

 その姿を見れば見る程。

 その声を聞けば聞く程。

 シャルルちゃんってば女の子にしか見えねェんだよなァ。

 何故に、男同士なのにこんなにも恥じらうのか?

 うーん、分からん。

 お嬢さ——お坊っちゃまだから、人前で肌を晒す事とかに慣れてねェのかもな。

 知らんけど。

 適当な理由を付けて納得しつつ、ベッドの上でゴロゴロと転がる。

 風呂場の方から微かに聞こえる、シャワーの音。

 

「落ち着け、シャルルちゃんは美少年。シャルルちゃんは美少年・・・・・・あ」

 

 あの犯罪的なまでの美しさ。

 言動、態度、見た目、性格、全てに於いて女々しい男の娘。

 

「・・・・・・可愛かったら別に、性別とか関係無くね」

 

 そう。

 今朝の自身の発言と同じように。

 男に備わるアレが付いてあろうとなかろうと。

 美しさの前では性別等、二の次三の次なのだ。

 可愛けりゃ何でも良い!

 興奮気味にそう結論付ける。

 しかし。

 

「・・・まぁ、だからと言って風呂場に突撃は流石に不味いよなァ。シャルルちゃんに嫌われちまったら困るし」

 

 束姉に見られてるかも知れないしな。

 そうやって自分を律し、思い留まる。

 ぶっちゃけ、今までの行いも全て束姉に見られているので、手遅れっちゃ手遅れなのだが。

 恥ずかしいなァ。

 スマホを開くと、ロック画面に『今回は光也の番だったな。光也の気絶顔で飯が美味い!』というクソみてェな通知が来ていた。

 お陰で、忘れておきたかった昼休みの出来事を全て思い出してしまった。

 ムカ付いたので、『一夏ちゃんが欲しがっていた約束のブツだ』と返信した後に、取り敢えずエロ画像を数枚送り付けておく。

 一分経つか経たないかの内に、『おい!放棄』と返信が。恐らく、文面を打っている途中にぶん殴られたんだろうな。

 一夏ちゃんに仕返しが出来た事による達成感に浸っていると、風呂場の方から大きな音がした。

 

「シャルルちゃん?大丈夫か?」

『痛たた——こ、来ないで!僕は大丈夫だから!』

「怪我したのか?」

 

 ドア越しに聞こえた、シャルルちゃんの痛がる声。風呂場で滑りでもしたのか。

 向かう。

 あのシャルルちゃんの肌に傷が一つでも付いてしまっていたらと思うと、気が気でないからだ。

 一応、部屋のクローゼットの中から湿布と包帯を取り出して、風呂場の一歩手前である洗面所のドアを開いた。

 

 

「————————は?」

 

 

 開かれている風呂場のドア。

 その付近で尻餅を付いたような姿勢から立ち上がろうとしていた状態で、こちらを見て固まるシャルルちゃん。

 ポタポタと、毛先から水滴を滴らせている。

 熱さ故か、それとも羞恥故か。赤く染まっているその頬。

 風呂場から逃げてくる湯気。

 オレの握力を弱めた手のひらからすり抜けていく湿布と包帯。

 人生初のラッキースケベ。

 男同士でもラッキースケベは成立するのか、だと?

 違ったんだ。

 違っていたんだ。

 そもそもの話。

 前提から、オレは——オレ等は、シャルル・デュノア本人以外の誰もが間違えてしまっていたんだ。

 だって、硬直したままこちらを見ているシャルルちゃんは。

 どこからどうみても。

 爪先から頭の頂点まで。

 全身隈無くオレの瞳に映るシャルルちゃんは、正真正銘——

 

 女の子だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 




臨海学校の所はどうしようかとか、これからの展開を色々と考えていたら訳分からなくなってずっと煮詰まってました(о´∀`о)
本当に申し訳無いです。

どのキャラが好き?

  • 一夏ちゃん
  • 箒ちゃん
  • セシリアちゃん
  • 鈴ちゃん
  • シャルちゃん
  • ラウラちゃん
  • 千冬ちゃん
  • 束ちゃん
  • 蘭ちゃん
  • 弾ちゃん
  • 光也

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