ISなんかどうでも良いから女の子とキャッキャウフフしたい。 作:大塚ガキ男
弾みたいな友達欲しかった。
「IS学園ってさ」
「何だよ一夏ちゃん。藪から棒に」
夕食も食べ終わり、消灯時間迄オレの部屋で一夏ちゃんとダラダラと過ごしていた。テレビを観ながらボーッとしていると、一夏ちゃんが何気無く呟いた。
「あまり外に出れないよな」
「出れないってか、出るのが面倒なだけだろ。一々外出届出さなきゃいけないのダリぃし」
「皆、今頃どうしてんのかな」
「甘酸っぱい高校生活を送ってんじゃねェの?知らねェけど」
「・・・怒ってるのか?」
「良いか、一夏ちゃん。オレの前で他校の高校生活の話は禁止だからな。こればっかりは弾ちゃんが羨ましく感じるぜ」
「意外だな。光也なら『IS学園最高!』とか言うと思ってたのに」
「そりゃ、女の子に囲まれてる学園生活も最高だぜ?・・・だが、男数人でワイワイやるってのが恋しくなってくる訳よ」
「中学校の頃の光也ははっちゃけてたもんな。モテないのを逆手に取って暴れまくってたし」
「・・・言うな、恥ずかしくなってくる」
「アレ最高だった。弾と二人でやってた【アンモニアの臭い我慢対決】。二人とも意地張って我慢しちゃうもんだから、時間いっぱい迄嗅ぎ続けてたんだよな」
「今思うと、オレはyoutuberになった方が良かったんじゃないかってレベルの企画力だわ。マジで色んな事やったよな」
「鼻が痛過ぎて何の臭いも感じないから焦って、上履きとか色んな物の臭い嗅いで、どさくさに紛れて鈴の髪の匂い嗅ぎに行ってぶっ飛ばされてた時は、光也がどれだけイカれてるのかを思い知らされたな」
「イケるかな〜って思ったら駄目だったわ。気付いたら頭から地面に沈められてたもん」
思い出話に花を咲かす。一区切り付いた時に、天井を見上げて、二人して呟いた。
「「中学校時代かぁ(かァ)・・・」」
【授業中、飴玉の代わりに小石を舐めていたら果たして先生は怒るのか】
「・・・・・・今何て言った?」
授業と授業の間の十分休み。一夏は、つい先程光也の口から出た言葉を一瞬理解出来なかった。
「授業中、飴玉の代わりに小石を舐めていたら果たして先生は怒るのかって言ったんだよ。やろうぜ」
「訳が分からない事この上無ぇよ。どうしちゃったんだ光也。悪い物でも食べたか?」
それこそ、小石でも食べたか?と聞いてやりたいくらいには理解不能な言葉だった。光也の頭のネジが緩んでいる事は前から知っていたが、ここまでとは思っていなかった。
光也は得意気に続ける。
「授業中にお菓子を食べるのは御法度・・・そんなの、誰でも分かる事だろ?」
「まぁ、そりゃあな。小学生なら注意とかで済むけど、中学生になったら反省文とか書かされるからな。リスクが大き過ぎる」
「そこで、天才の擬人化こと唐澤光也様は考えた訳よ。『お菓子じゃなければーー食べ物じゃなければ怒られないんじゃねぇか!?』と」
「馬鹿過ぎるわ」
一夏は呆れの目で光也を見た。当の本人はそれに気付かず、遂には弾と鈴を巻き込むまでに発展した。
光也の説明を聞いた二人は、
「いきなり呼び出したかと思えば。光也・・・馬鹿じゃないの?」
「俺は賛成だぜ。面白そうだ」
「じゃあ、この作戦の要は弾ちゃんにやってもらう。異論は無いな?」
「有るわボケ!作戦の要ってアレだろ!?」
「小石を口に含んでおく係だ」
「嫌過ぎるっての!俺が面白そうって言ったのは、見てる分にはって意味だ!やりたいとは一言も言ってねぇ!」
「えぇー。・・・じゃあ鈴ちゃんやる?」
「腕相撲でアタシに勝てるならやってあげても良いわよ」
「愚かな質問、誠に申し訳ありませんでした」
「「勝てないのかよ!!」」
「仕方無ぇ。こうなったら、一夏ちゃんに任せるわ」
「自ら発案しておいて、何故自分が小石を口に含むって発想が出てこないんだ」
「やりたくないからに決まってンだろ!良い加減にしろ!」
「今聞こえたぞ!発案者自身の口から『やりたくない』って確かに聞こえたぞ!」
「あァもう、お前等の言いたい事はよーく分かった!そんなに頼まれちゃあオレも考えを改める事もやぶさかじゃねェな!」
「何でアタシ達がお願いしてるみたいになってんのよ!」
鈴が横目で時計を確認。次の授業が始まる迄、二分を切っていた。
「もう時間無いからやめとけば?アタシ達には何の得も無い訳だし」
「おいおい、コイツは損得勘定で決められるような事じゃねェんだぜ?鈴ちゃん」
「内容が、小石を口に含む云々じゃなければもうちょい格好良かったんだけどな」
「言ってやるな、光也の目を見てみろよ。アレはもう止まらないと思うぜ」
光也に聞こえない程度の声量で話し合う弾と一夏。今すぐ言い出しっぺである光也を止めたいのは山々だが、あの楽しみに飢えた瞳を見てからではその気も失せてくる。二人は次に鈴の方を見てみるが、鈴は諦めた表情と共に首を横に振った。
「ーーあ、そうだ」
光也が、何かを思い付いたらしい。内容次第では無視する訳にもいかなくなるので、弾が代表して問うてみた。
「どうした」
「小石を口に含んで先生の反応を見たいが、誰も小石に口を含みたがらない。どうすれば良いのか考えてたんだよ」
「んで、どうすれば良いんだ?」
「逆転の発想だ」
三人、首を傾げる。光也が何を言いたいのか分からないからだ。
「逆転の発想?」
一夏が返す。その言葉を待っていたかのように、光也の口角か怪しげに吊り上がった。
「あァ。オレ等じゃなくて、先生に小石を口に含んでもらえば良いんだよ」
「「「・・・・・・・・・・・・は?」」」
「ンじゃあ頼んでくる!」
「あ、おい!ーー」
止める間も無く、教師が立っている黒板前迄走っていってしまった
流石に先生に怒られはしないか?という、光也の身を案じるモノではない。
一度頭を検査してもらった方が良いのではないか?という心配だ。
「・・・・・・馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけど、大丈夫かアイツは。逆転の発想の意味知ってんのか」
「勉強はそこそこ出来るんだけどな。遊びの事になると馬鹿ゲージが限界突破してる」
「ちょっと、見て。先生に交渉してるわよ」
「声は聞こえないが、かなり言い合ってんな」
「あ、帰ってきた」
「やっぱ、授業中に巫山戯るのはいけないよな。真面目に勉強するわ。目指せ期末試験順位一桁!!」
「おい光也。何言われたんだ」
明らかに先程との言い分が違う光也を不審に思い、一夏が問い掛けた。
光也はそれに、肩を落としながら答えた。
「・・・・・・あまり巫山戯ていると、織斑のお姉さんに報告するぞって言われた」
【学校脱走事件】
昼休み。机を四つ合わせて弁当を食べていた、穏やかな時間。それが光也の一言によって、いとも容易く崩れ去った。
「学校を抜け出そうと思う」
「乗った」
「ちょっと待ちなさいよ!光也も唐突過ぎるし、弾もロクに考えもしないで光也の提案に乗る癖やめなさい!」
「ちぇ、鈴お母さんに怒られた」
「誰がお母さんですってぇ!?」
「脚の関節増えちゃうよおおおおおお!!」
机の下で繰り広げられる技。鈴の脚が光也の脚を絡め取り、ギチギチと締め上げた。器用にも弾と一夏の脚には当たっていないので、二人はポカンとしながら痛みに悶える光也を見ていた。
「・・・・・・で、光也は何でいきなり学校を抜け出そうとか言い出したんだ?事情次第では、俺も手伝うけど。ほら、親戚が事故に遭ったとか。家が燃えてるとか」
光也が落ち着いたのを確認してから、一夏は事情を聞いてみた。何せ、大の親友が突然言い出したのだ。幾らぶっ飛んでいるとは言え、理由も無く学業を疎かにするようないい加減な人ではない事は一夏がよく分かっていた。何だかんだ勉強もしているし、提出物も、期限には間に合わなくても提出はしている。
何かーーたった今一夏が口にしたような、あまり類を見ない事情があっての事なのだろう。一夏は対面に座る光也の瞳をジッと見詰めた。
返答。
「いや、特に理由は無ェけど」
いい加減な人だった。
「無いのか!?」
「ほら、良く考えてみろよ。高校生になったら、オレ等はもしかしなくても離れ離れになる。こうして四人で馬鹿騒ぎ出来るのは、今しか無ェんだよ。一夏ちゃん、お前なら分かるだろ?」
「・・・・・・ごめん、良く考えてみたけど分かんないわ。サボりは良くないと思う。内申に書かれたりしたら、高校すら入れなくなるかも知れないんだぞ?」
「アタシも反対。成績に響いたりしたら堪ったもんじゃないわ」
「お前等は内申とか成績とか、チャチなモン気にしやがって!それでも男か!!」
「チャチじゃねぇだろ」
「アタシは女よ」
「もう駄目だ。後の説得は弾ちゃんに任せた」
「言い返せないのかよ!カッコわりぃ!」
「五月蝿ェ!オレは抜け出すからな!止めても無駄だぜ!」
「何が光也をそこまで突き動かすんだよ・・・・・・。五時間目って光也の好きな体育だろ?寧ろ、サボる理由が無いとおもうんだが」
「確かに、体育を欠席するのは惜しい。バスケでシュート決めまくって女の子の歓声をこの一身に受けたい!だが、欠席をしてでも、オレは抜け出したいんだ」
頑として自分の意思を曲げようとしない光也に、三人はもう止めるのをやめた。諦めて、少しでも光也の行動を良い風に変換出来ないかと考える事にした。
「『保健室に行ってきます』とかじゃ駄目な訳?無断で抜け出すよりかはマシだと思うけど」
「おいおい、鈴ちゃん。そんなの男らしくねェだろ。オレみたいなダンデーな男は、わざわざ先生に報告したりせず、ズバッと抜け出すのさ」
「アンタのその価値観なんなのよ・・・」
「てか、抜け出すって事は帰ってくんのか?」
「それ俺も思った」
「当たり前だろ。鞄が無くなってるのがバレたら怒られちゃうからな。一時間居ない程度ならトイレとかで誤魔化せるが、二時間連続はちょっとキツい」
「ビックリする程男らしくねぇじゃん、お前」
「あァもう!さっきから何なんだよお前等は!寄って集って一人を口撃して!」
「目の前に悪がいるんだから当たり前じゃない。そりゃ口撃もするわよ」
「鈴の方がよっぽど男らしいよ」
「やめてくれよ。オレが女々しいみたいじゃねェか」
「暗にそう言ってるんだよ」
「こん畜生!」
三人で妥協案を考えては光也に提案してみるが、光也はその全てを跳ね除ける。
食事の場は混乱を極めたように思えたが、一夏の何気無い一言によって事態は終息へ向かう。
「・・・・・・学校を抜け出したりしたら、千冬姉怒るんだろうなぁ」
「「「あっ」」」
五時間目のバスケの得点王は、何かを吹っ切ったような凄まじいプレーを見せた光也だったそうな。
「・・・・・・色々あったなァ」
「あったよなぁ」
今、オレと一夏ちゃんで話していたのはほんの一例。まだまだ思い出そうと思えば思い出せるのだが、消灯時間迄間も無い為ここら辺で終わるとしよう。
「中学の頃は、何かと千冬ちゃんに怒られてたもんな」
「それは光也だけだからな。普通だったら、一度怒られたらもう二度と悪事はしまいと改心する程の怖さなんだよ。あの千冬姉の説教は」
「久し振りに怒られてェな〜」
「どういう感情なんだそれは」
「今度二人で怒られに行こうぜ!」
「ファミレスに行くような感覚で誘うんじゃねぇよ!」
「あ。でも、千冬ちゃんも忙しいから迷惑掛ける訳にはいかねェか・・・」
怒られたいというのは流石に冗談だ。
そもそも、オレは千冬ちゃんには怒っているよりも笑っていてほしいからな。もう中学時代のような失態は犯すまい。
部屋に戻る一夏ちゃんに別れの挨拶を告げ、ベッドに飛び込む。
久し振りに中学校に遊びに行きたいが、行ったら行ったで騒ぎになりそうだよなァ。
そんな事を布団の中で考えてながら、オレは眠りにつくのだった。
この前の後書きで、出番もうちょい先だね!みたいな事を言ったのに、さらっと鈴ちゃん出てきちゃった。嬉しい。自分で書いたんだけど。
最近、ファイズが戦ってる時に流れてた『the people with no name』って曲を聴いてます。メッチャ良い感じですね。
クラリッサちゃんの髪を下からぽわぽわし隊。入隊者募集。
どのキャラが好き?
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一夏ちゃん
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箒ちゃん
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セシリアちゃん
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鈴ちゃん
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シャルちゃん
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ラウラちゃん
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千冬ちゃん
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束ちゃん
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蘭ちゃん
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弾ちゃん
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光也