ISなんかどうでも良いから女の子とキャッキャウフフしたい。   作:大塚ガキ男

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鈴ちゃん可愛い。
原作を進めようとすると束ちゃんの出番が臨海学校まで無くなってしまう・・・。恐ろしや。



11話

「その情報、古いよっ」

 

 声を聞き、身体が硬直した。当然それは意識したモノではなく、美しいその声に否応無く身体の機能が一瞬停止させられたのだ。

 聞き覚えのあるその声。脳を回して正解を導き出す。

 答えはーー

 

「その声はーー鈴ちゃん!?」

 

 言いながら振り向く。そこには、教室の入り口のドアに寄りかかって腕を組んでいる美少女が居た。忘れる筈も無い。小学校五年生から中学校二年生まで一緒にいた、鳳 鈴音(ファン リンイン)改め鈴ちゃんだ。

 

「正解。久し振りね、みt」

「久し振りじゃんかよぉぉぉ!鈴ちゃん!」

 

 キメ顔の鈴ちゃんの台詞が途切れる。と言うのも、鈴ちゃんの台詞の途中で椅子から立ち上がり、光の速さで鈴ちゃんの背後に回って脇腹を左右の手で挟んで、たかいたかいをしたからだ。

 

「一年振りの再会だって言うのに、もう少しやる事あるでしょ?もう!」

 

 そう言いながらも、たかいたかいをされている鈴ちゃんはそこはかとなく嬉しそうだ。

 

「二組にやって来た転校生ってのは、鈴ちゃんの事だったのか」

「そう。今日は宣戦布告に来たってわけ」

「宣戦布告?そんなに制服がエッチなのに?」

「制服は関係無いでしょ!」

 

 鈴ちゃんの制服は一体どんな改造をしたのか、両肩が見えてしまっている。そのせいでオレの心臓はドキドキとワクワクが止まらないのだが。スカートも短いし、もうIS学園最高!

 鈴ちゃんはゴホンと咳払いを一つしてから、

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの」

「その口振りで言うと、鈴がなったのか?」

 

 一夏ちゃんが会話に入る。たかいたかいされたままの鈴ちゃんと自然に会話が出来るとは。やはりこのイケメン、侮れない。

 一夏ちゃんが鈴と名を呼んだ時に、箒ちゃんが不機嫌そうな顔をしていた。

 そうか、箒ちゃんは鈴ちゃんの事を知らないのか。

 えーっと。確か、束姉がISを開発した関係で箒ちゃんが引っ越す事になったのが小学校四年生の終わりの頃で、鈴ちゃんが中国から転入してきたのが小学校五年生の頭の辺り。丁度入れ替わりのようになったから、二人は互いを知らないのだ。

 箒ちゃんがファースト幼馴染で、鈴ちゃんがセカンド幼馴染と言ったところか。

 

「そうよ。あたしがクラス代表になったからには、そう簡単には優勝出来ないから」

 

 そう言い放つ鈴ちゃんの姿は、一年間という空白があったとは思えない程に『そのまま』だった。

 まぁ、オレに持ち上げられているままなのでイマイチ格好が付かないのだが。

 鈴ちゃんの引き締まった脇腹を堪能しつつ、会話を続ける。

 

「しっかし、鈴ちゃんが代表候補生ねェ」

「私も、光也達と会えなかった一年間で成長したんだから」

「それにしては鈴ちゃん軽いよなァ。中学から変わってないんじゃねェの?」

 

 体重とか雰囲気的な意味で。

 

「変わってなくて・・・悪かったわねっ!」

 

 たかいたかいをする事によって、上下に揺れるツインテールとか制服のスカートの裾とかに夢中になっていると、いつの間にか鈴ちゃんの靴裏が目の前に迫っていた。オレの口から「ぐぇ」と声が漏れ、オレの顔を踏み台にした鈴ちゃんは華麗に宙を一回転してから着地。

 褒めたつもりなのに、何故怒っているのだろうと疑問に思いながら鈴ちゃんを見ると、こちらを睨みながら胸を押さえていた。・・・・・・あぁ。目測、確かにそっちは成長してねェわな。

 

「その全てを悟ったような顔をやめなさい!」

「大丈夫だ鈴ちゃん。オレは小さくても気にしないぜ」

 

 大きくても小さくても等しく胸だからな。そう励まそうとしたら、ガツンと脳が揺れた。確かな激痛の中に、ほんのり優しさを感じさせる痛みだった。

 

「いってェ・・・。今日はやたらと首から上に攻撃を受ける日じゃんか」

「HRだ。席に着け女の敵め」

 

 ガタッ、と瞬く間に自分の席へと戻っていくクラスメイト達。流石は千冬ちゃんだ。鈴ちゃんも、オレの後ろにいる千冬ちゃんを見て声を震わせた。

 

「ち、千冬さん」

「織斑先生だ。鳳も早く戻れ。唐澤のようになりたくなかったらな」

「はいぃ!」

 

 頭を押さえて(うずくま)るオレと、背後に立たれているので分からないが恐らく出席簿片手に威圧感をバンバン出している千冬ちゃんの横をすり抜けて鈴ちゃんは二組へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏!あの女は誰だ!」

「光也さん、わたくしも少しばかり気になる事があるのですが」

 

 昼休みが終わった途端、美少女二人が一夏ちゃんとオレの机まで来た。箒ちゃんはまだ分かるとして、セシリアちゃんの謎の迫力に気圧されてしまったオレは、自分の身を守る事しか出来なかった。

 

「ち、違う!これは全部織斑一夏ちゃんって奴の仕業なんだ!」

「光也!?」

「あら、わたくしったら。勘違いでしたか。お恥ずかしいです」

「・・・・・・」

 

 オレの言葉を聞き、コロリと態度を変えるセシリアちゃん。

 まぁ、セシリアちゃんから滲み出ていた怖いオーラは消えたので良しとしよう。

 問題はーー

 

「い、一夏!?どういう事だ!」

「うおおおおお!誤解だって!」

 

 竹刀を一夏ちゃんの頭に打ち込もうとしてる箒ちゃんと、それを真剣白刃取りの要領で必死に押さえている一夏ちゃんだ。

 まぁ良いか。

 一夏ちゃんの犠牲でオレの安全が保障されるなら安いものだ。

 

「セシリアちゃん、先に食堂行ってようか」

「はい!」

 

 ここで二人の様子を観戦しているのも楽しそうだが、今は昼休み。出来るならば、空腹を満たしたい。

 てな訳で、食堂へ。

 

「待ってたわよ!光也」

 

 食堂に着くと、お盆を持った鈴ちゃんがオレを待っていた。一夏ちゃんじゃなくて何故オレを待っていたのかは分からないが、楽しそうなので別に良いか。

 

「あれ、鈴ちゃん?どうしたんだよそんな所で」

「あたしもお昼くらい食べるわよ」

「いやいや、券売機の前でって意味だ」

「・・・・・・分かってるわよ!」

 

 随分と間があったような気もするが、気にしないでおこう。可愛いからなんでも良い。

 

「いやー、それにしても久し振りだよなァ。元気にしてたか?」

 

 券売機の前から移動した鈴ちゃんも一緒に食事をする事になった。空いていた席に座り、食堂のお姉さんに大盛りにしてもらったカレーライスを食べながら歓談。

 丸いテーブルと半円形のソファ。座ってる位置としては、オレの左側に鈴ちゃん。右側にセシリアちゃんだ。隙あらばセシリアちゃんがあーんをしてくるので、オレは話しながらも笑顔のセシリアちゃんに餌付けされている状況だ。

 

「元気にしてたわよ。そう言うアンタこそ、たまには怪我病気しなさいよ」

「鈴ちゃんが看病してくれるなら幾らでもするぜ?」

「光也さん、そういった役目はわたくしにお任せ下さい。完璧に光也さんを看病してみせますわ!」

「おう、ありがとうな」

 

 胸に手を当てながら自信満々に宣言するセシリアちゃんに、決闘前のセシリアちゃんの姿がフラッシュバック。今のセシリアちゃんも充分可愛らしいけど、ツンツンしていたセシリアちゃんもたまに恋しくなるんだよなァ。と、ぼんやり考えた。

 

「鈴ちゃんとこのおじちゃんも元気?」

 

 話の流れで、聞いてみる。

 

「あ・・・・・・うん。元気、だと思う」

「?」

 

 だと思う?不自然なその言い方に違和感を覚えつつも、セシリアちゃんが差し出してきたスプーンを咥えた。やっぱりカレーライスはさいこうだとおもいました(小並感)。

 

「ーーって!ツッコまないでおこうと思ってたけどやっぱ無理!何でアンタは隣の女子とそんなにイチャついてるわけ!?」

「コレってイチャついてるのか?」

 

 鈴ちゃんからのツッコミ。セシリアちゃんに隣で色々されるのはもうこの数週間で慣れてしまっているので、自分ではあまりイチャついている実感が無い。

 で、隣のセシリアちゃんーーイチャついてくるセシリアちゃんに問うてみる。

 

「いいえ、わたくしと光也さんはただお食事をしているだけですわ。至って平凡、至って平常。何も可笑しい所は御座いません」

 

 成る程、だったら別に問題は無いな。

 

「だってさ」

「中学の頃の光也が見たら嫉妬で血涙を流す程の状況にいる事に違和感を覚えなさいよ!」

 

 閑話休題。

 

「・・・・・・クラス代表を決める為にイギリスの代表候補生と決闘をした?何寝ぼけてんの?」

 

 話は進み、何故一夏ちゃんがクラス代表になったのかという経緯を話す事になった。

 

「いやいや、寝言じゃねェんだよコレが。ほら、オレと一夏ちゃんって中国にいた鈴ちゃんにまで情報が行き渡る程の有名人だろ?」

「まぁ、世界的なニュースだったしね。最初ニュースを観た時は二度見したわよ」

「そんな訳で、クラスの女の子達も『どうせクラス代表になるなら男子の方が良くない?』みたいな感じになっちまったらしくてな。気絶している間に推薦されてたんだよ」

「取り敢えず、一つ聞いても良い?」

「良いぜ」

「何でサラッと気絶してんのよあんたは!教室での話よね!?」

「当たり前だろ」

「・・・・・・はぁ、もう良いわ。それで、あんたを推薦した物好きは誰?もしかして隣の子?」

「いや、一夏ちゃんだ。クラスの女の子に推薦されたのは一夏ちゃんなんだけど、クラス代表になりたくない一夏ちゃんがオレを巻き込みやがった」

「あんた達、変わらないわね・・・・・・」

 

 中学の頃も、何かと面倒な事は互いになすりつけあってたもんなァ。んで、最終的には何も悪くない弾ちゃんに任せちゃったりして。ーーって、今は思い出に浸っている場合じゃねェ。

 

「一夏ちゃんかオレがクラス代表になるって形で落ち着こうとしてたんだけど、思わぬ事態が起きたんだ」

「思わぬ事態?」

「セシリアちゃんーーあ、隣の美少女の名前な?・・・セシリアちゃんが、男なんかがクラス代表になるのは納得出来ないってキレ出してな」

「セシリア・オルコットです。以後お見知り置きを」

「よろしく、あたしは鳳 鈴音。鈴で良いわよーーって、ほら!また出た!サラッと重要な事を流しちゃうヤツ!え、何?そんなにお淑やかな子が女尊男卑思考丸出しにしながらキレたわけ!?」

「今のセシリアちゃんだけを見てたら信じらんねェだろ。本当なんだぜ」

「あの時のわたくしは、大きな間違いを犯しておりました。お恥ずかしい限りです」

 

  頬を赤く染め、過去の自分を思い出して恥じらうセシリアちゃん。それを見た鈴ちゃんが口をあんぐりと開けていた。

 

「んで、一週間後に三人で決闘して、勝った一人がクラス代表って形になった。それから何やかんやあって、めでたく一夏ちゃんがクラス代表に就任ーーこんな感じだな」

「へぇ。何て言うか、濃い生活送ってんのね。あんた達」

 

 入学してから今までの大まかな流れを聞いた鈴ちゃんは、呆れたような笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕飯も食べ終わり、部屋に遊びに来てきたセシリアちゃんと雑談したりテレビを観たりしていると、ドアをノックする音が聞こえた。ドアの前まで行ってみる。

 

「はい、唐澤でェーす」

「あたしよ。開けて」

 

 ドアの向こうから鈴ちゃんの声が聞こえる。

 ドアを開けると、やはり廊下には私服の鈴ちゃんが立っていた。

 

「・・・・・・何でボストンバッグ?」

 

 鈴ちゃんの手にはボストンバッグが提げられている。

 遊びに来たにしては大荷物過ぎる。

 まさか、そのボストンバッグいっぱいに遊びアイテムが入っている訳じゃないよな?

 

「コレ?あぁ、そうそう。今日からあんたの同室になるから。その荷物」

「ハァ!?え、ちょーー」

 

 オレの横をすり抜け、部屋に入っていく鈴ちゃん。いきなりの事態に驚きつつも、ドアを閉めて鈴ちゃんを追い掛ける。

 

「聞くところによると、あんたの同室って誰も居ないらしいじゃない。だったらあたしが同室になっても何も問題は無いわよね?」

「あるわ!箒ちゃんだったら間違い無く『男女七歳にして席を同じうせず』って言うって!」

 

 まぁ、その箒ちゃんは現在絶賛一夏ちゃんと一つ屋根の下状態なんだけれど。

 いや待てよ?広い目で見れば、オレと同じ寮の女の子達全員が一つ屋根の下なんじゃねェか?うわ何それメッチャ興奮する。

 ・・・話を戻すか。

 

「あたしが同室じゃ嫌なわけ?」

「そうじゃねェって。むしろこっちからお願いしたいレベルなんだけれども。ほら、年頃の男女が同室って色々拙いだろ?」

「へぇ?光也はあたしが同室だと拙い事になるんだ」

 

 意地悪く笑う鈴ちゃん。オレはすぐさま答えた。

 衝動に任せて鈴ちゃんに手を出す等、やってはいけない事だ。答えなんか決まってる。

 

「いや、それは絶対に有り得ない!」

「この意気地無し!」

 

 格好良くハッキリ否定したら脛を思い切り蹴られた。トホホ。

 

「兎に角、あたしはこの部屋に住むから!これはもう決定事項よ!」

 

 ビシッと言い切った鈴ちゃん。

 鈴ちゃんと同室になれるのはとても嬉しいのだが、オレとしては疑問だった。

 何故鈴ちゃんは、意中の一夏ちゃんではなくオレの部屋に来たのか。

 一夏ちゃんと同室になっている箒ちゃんを恐れて?

 いや、恐らくそうではない筈だ。鈴ちゃんは、恋のライバルがいた程度で怖じ気付く程ヤワな恋はしていない。オレの見立てだと、ありゃもう五年生の頃には既に惚れてたんじゃねェの?それから今迄ずっと恋してるんだから、その思いはとても強固なモノなのだろう。

 ならば、何故?

 再びその疑問に辿り着く。

 ・・・・・・もしかして、オレからアドバイスを受けようとしているのか?

 確かに、一夏ちゃんを知る為にはオレ以上にうってつけな人物はいるまい。

 大いに有り得る。

 箒ちゃんに対抗して。という線もあるが、それではまだ理由が薄い。恐らくアドバイスを求めに来たという線の方が濃厚だ。

 答えに行き着けた事によりうんうんと一人で頷いていると、いつの間にか話は進んでいた。

 

「それは認められませんわ」

 

 鈴ちゃんの言葉に待ったを掛けたのはセシリアちゃん。その毅然とした態度に、鈴ちゃんがたじろいだ。

 

「な、何よ。セシリアには関係無いでしょ」

「いいえ、関係ありますわ。何せ、光也さんの隣はわたくしと決まっているのですから」

「あんたには同室の子がいるじゃない」

「その言葉、そっくりそのままお返しいたしますわ。鈴さんの身勝手な行動で、同室の方は迷惑しているのでは?」

「同室の子にはちゃんと言ってきたわよ」

「同室の子、には。ですが」

「・・・何よ」

「鈴さん、あなたは一つ忘れていますわ。光也さんと同室になる為には、最低でももう一人納得させないといけない人物がいる事を」

「?」

「寮長である織斑先生」

 

 セシリアちゃんの一言に、鈴ちゃんが固まる。

 

「ふ、ふん!そんなの全然問題無いわよ!」

 

 声が若干震えているのは、千冬ちゃんの恐ろしさを思い出しているからに違いない。

 

「てか、偉そうに言ってるセシリアこそどうなのよ!千冬さんを納得させられたの?」

「・・・・・・せんわ」

「え?」

 

 鈴ちゃんが言い放った反論。それに返したセシリアちゃんの声は、とても小さなモノだった。ボーッとしていたら聞き逃してしまう程の小さな声量。

 何を言ったのかは分からないが、何かを言ったのかは分かった鈴ちゃんは聞き返す。

 

「それが出来ていたら・・・苦労しませんわぁぁぁぁ!」

「ビックリしたぁ!」

 

 小さな声かと思えば、お次は耳を塞ぐ程の大声量。驚いた鈴ちゃんのツインテールが揺れた。

 

「光也さんを御慕いしているこのわたくしが、試していない訳が無いでしょう!」

「あ、あんた、光也の事好きなの?」

 

 その問いにセシリアちゃんは「当然ですわ!」と返す。

 そんなにハッキリ言われるとオレも照れるんだけどなァ。

 

「織斑先生に部屋替えを申し出る事二十三回。十回を越えた辺りからは無言で出席簿が来ましたわ」

「申し出過ぎじゃね」

「二十三回目で『次同じ用で来たら唐澤を殺すぞ』と言われ、わたくしは渋々引き下がりました・・・」

「オレの知らない所でそんな事になってたのか?!」

 

 セシリアちゃんがもう一回頑張ってたら、オレは何も知らないまま千冬ちゃんに殺されていたかも分からなかったとは。セシリアちゃんに感謝。まぁ、元はと言えばセシリアちゃんが発端みたいだけど。

 兎に角。と、セシリアちゃんはそこを強調してから、

 

「光也さんとの同室は認められませんわ。しっかりと織斑先生の許可を得てからにして下さいな!」

「・・・・・・セシリアちゃん、本音は?」

「わたくしが駄目だったのに、鈴さんが同室になれるのは(ずる)いですわ!」

「可愛い本音をありがとう。ーーで、どうするよ?」

 

 セシリアちゃんの頭を撫でてから、鈴ちゃんに問う。

 何故か、鈴ちゃんは未だ強気だ。

 

「同室になるのは諦めてあげるわ。最悪、放課後遊びに行けば良いだけだしね・・・でも、セシリア。あんたじゃあたしには勝てないわよ」

「と、言いますと?」

 

 セシリアちゃんが、普段よりも二割くらい低めの声で問う。怒りたいのを我慢しているような声だ。

 それにしても・・・・・・鈴ちゃんとセシリアちゃんは、オレの知らない間に何か勝負をしていたのか?いつの間に視線で火花を散らす関係に?

 内容は分からないが、二人の表情を見る限り並大抵のソレではないようだ。

 

「あたしには、光也と交わしたあの約束があるんだから!」

「約束?」

「そうよ!約束よ約束!数週間前に光也と出会ったぽっと出のあんたとは違って、あたしは四年近くも光也と一緒にいるんだから」

 

 オレって言うか、一夏ちゃんとだけどな。

 鈴ちゃんが何故一夏ちゃんではなくオレの名前で思い出を語っているのかは、恐らくオレの事を慕っているセシリアちゃん(改めて言うと恥ずかしい)を悔しがらせる為だろう。同室云々の時にアレだけ正論を並べられたのだ。一矢報いたくなる気持ちも分からないでもない。

 得意気な顔で約束を連呼する鈴ちゃん。先程の悔し気な表情とは打って変わって上機嫌なその顔で、オレに問うてきた。

 

「ほら、光也も憶えてるでしょ?あたしが中国に帰る前に交わした大事な約束の事!」

 

 思考。それからすぐに思い出す。印象的だったから、思い出すのは簡単だ。

 

「あぁ、アレだろ?『毎日酢豚をーー』みたいな」

「そう、それ!」

「忘れる訳ねェだろ。確か、一夏ちゃんに食べさせる酢豚を作る練習の味見役だったよな。まぁ任せとけって。一夏ちゃんの胃袋と心を掴むその時まで、オレは鈴ちゃんを応援するぜ」

「・・・・・・はい?」

 

 箒ちゃんも一夏ちゃんを狙ってるのだが、それに関しては、どちらも幼馴染。平等に塩を送るしかないだろう。

 ・・・それにしても、鈴ちゃんにあの約束を言われた時は驚いたな。二人きりの時に目を潤ませて、顔を赤くしながら言われたんだもん。告白されたのかと一瞬勘違いしちまったぜ。

 オレも男だ。

 そして、鈴ちゃんの親友だ。親友の恋を邪魔する程腐っちゃいねェ。あの時のオレは「あぁ、喜んで!」と笑顔で言ってーー

 

「ーーあ?」

 

 頬に走る不意打ち気味の激痛。数秒遅れてから、嗚呼、オレはぶん殴られたのかと認識した。

 

「女の子との約束をちゃんと憶えてないなんて男の風上にも置けないヤツ!犬に噛まれて死ね!!」

 

 そう言った鈴ちゃんは、泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 




実は、鈴ちゃんが好きだったのは一夏ではなく光也でした。
一夏の事は鈍感だとか言ってるけど人の事言えませんね。

どのキャラが好き?

  • 一夏ちゃん
  • 箒ちゃん
  • セシリアちゃん
  • 鈴ちゃん
  • シャルちゃん
  • ラウラちゃん
  • 千冬ちゃん
  • 束ちゃん
  • 蘭ちゃん
  • 弾ちゃん
  • 光也

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