ISなんかどうでも良いから女の子とキャッキャウフフしたい。   作:大塚ガキ男

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ようやく本編に戻りました。
何で、ISスーツってあんなにエッチな構造してるんでしょうね。
今回の文字数は八千字程度なので、まあまあ長いかもです。


二章
10話


「・・・何で一夏ちゃんのISスーツは腹が見えてんだよ」

「俺が知る訳ないだろ」

 

 時が経つのは早いもので、もう四月も下旬。今日はISの飛行操縦とかに関する授業をするらしい。

 更衣室でISスーツなる物に着替えて、一夏ちゃんとご対面。俺のは、サーファーが着ているラッシュガードのような形なのだが、一夏ちゃんのは違った。

 上下が分かれていて、薄らと腹筋が浮かんでいる腹が見えてしまうのだ。うーん、これは思春期の女の子には刺激が強いんじゃねェか?

 一夏ちゃんも鏡で自分の姿を確認。恥ずかしいようで、顔をほんのり赤く染めながら自嘲気味に言った。

 

「笑えよ・・・」

「何言ってんだよ。自分では分からないかも知れねぇけど、中々似合ってるぜ?寧ろ羨ましいくらいだ」

「じゃあ、光也のISスーツも俺のと同じ形状に変更してもらうように束さんに頼んでおくから」

「嫌に決まってンだろ馬ァ鹿!」

「本性表したな!?」

 

 しかし、まぁ。わざわざ用意してもらったのだからいつまでも文句を言ってもいられまい。似合ってるのは本当だ、と一夏ちゃんに何度も言い聞かせ、グラウンドに強引に押し出した。

 一夏ちゃんを見付けた瞬間、キャー!と黄色い悲鳴を上げる女の子達。「今迄頑張ってきた努力が報われた!」と聞こえてくる辺り、一夏ちゃんのモテ度が窺えた。

 

「・・・・・見ろよ、一夏ちゃん。IS学園って素晴らしいだろ」

「涎垂れてるから。拭けって、みっともない」

「こりゃ失敬」

 

 目の前には、ISスーツと言う名のエッチな衣装を着た美少女達。恥ずかしくはないらしく、これが当然とでも言っているかのように堂々としている。

 これはヤバい。何とは言わないが、元気になってしまう。

 オレは視線を隣にいる一夏ちゃんに固定し、列に並んだ。

 

「何で俺を見るんだよ」

「お前だけを見ていたいんだ」

「み、光也・・・!」

「一夏ちゃん・・・!嘘だ馬鹿」

「知ってるよ助平」

 

 隣なので、会話をするのは容易い。腕の筋肉を見せ合ったりしながら時間を潰していると、千冬ちゃんが現れた。

 

「はい!千冬ちゃん」

「織斑先生と呼べと・・・まぁ良い。何だ、唐澤」

「どうして織斑先生はISスーツではなくジャージを着ているのでしょうか!?」

「ISを操縦しないからだ。では、これよりISの基本的な飛行操縦をしてもらう」

「ナイスクール!」

 

 モンドグロッソで華麗に戦っていたアレ以来、千冬ちゃんがISスーツを着ている所を見ていない。第二回大会の時のオレは十一歳だったから、おいおいマジかよ!四、五年は見てねェって事か!

 千冬ちゃんのISスーツ姿。束姉の制服姿と同じくらいの見たさだ。

 

 

「おい、唐澤。早くしろ」

「は?」

 

 千冬ちゃんに催促されるも、話を聞いていなかったモノだから何の事だか分からない。何故か一夏ちゃんとセシリアちゃんが、整列している皆よりも一歩前に出ている。取り敢えずオレもそれに(なら)って一歩前に出た。

 女の子達に向かって右側に一夏ちゃん。左側にセシリアちゃんが立っている。

 

「一夏ちゃん。何が始まるんだ」

 

 小声で、右隣の一夏ちゃんに問うた。一夏ちゃんも小声で答える。

 

「聞いてなかったのか?これからラジオ体操をするんだよ」

「あー、成る程。だから三人だけ前に出てる訳か」

「そういう事。ラジオ体操の内容は覚えてるよな?」

「あぁ。中学では体育の度にやらされたからな」

「あれを口で言うんだ」

「言う!?あれって普通ラジカセとかで曲を流すんじゃなかったか?」

「細かい事は気にするな。良いから早く。皆待ってるから!」

「クッ、仕方無ェーー腕を前から上に挙げて、大きく背伸びのうんどぉぉぉぉ!はい!!」

「はい、じゃない馬鹿者」

 

 スパァン!と、後ろから(恐らく出席簿で)思い切りぶん殴られた。

 

「何で!?」

「準備体操は各自でしておけと、朝のHRで伝えただろう」

「? でも確かに、一夏ちゃんはラジオ体操をしろとーーまさか!」

 

 オレはここで気付いた。一夏ちゃんが口元を押さえて必死に笑いを堪えている事を。

 

「騙しやがったな一夏ちゃん!」

「話を聞いてない光也が悪いだろ」

「そ、その通り・・・!」

「予想以上に素直」

 

 はて、ラジオ体操じゃないのなら、オレ等三人が前に立たされた意味は?千冬ちゃんに問うてみる。

 

「お前達三人は、皆の為に飛行操縦の手本を見せろ。オルコットとアレだけの戦闘を繰り広げたのだから、まさか出来ないとは言うまいな?」

 

 いや、あれはオレじゃなくてルリちゃんの実力なんだけどなァ。目で訴えてみるも、効果は無し。

 まぁ、恐らく千冬ちゃんもそれを分かっていての発言なのだろう。・・・・・・どういう事だ。分かっていてやらせるのか。

 

「そもそもオレのISが無い件について」

「案ずるな。ほら、コイツをやる」

 

 さりげなく逃れようかと考えていると、千冬ちゃんがポケットから十センチ程のキーホルダーを出した。そのキーホルダーはラファール・リヴァイブの形をしていてーー

 

「ルリちゃん?」

「あぁ。あの決闘以来、何故か分からんが私達が触れても起動しなくなってしまってな。量産型というハンデを負っているにも関わらずアレだけの機動力を魅せたお前なら、私達とは違った反応を見せるのではないかという、職員全員で行った会議での決定だ。遠慮はするな」

 

 どうやら、暫く会わない間にルリちゃんはご乱心のようだ。

 何故そのような事態になったのかを問うよりも、オレは一つ気になる事があった。

 

「だからって、日本の大事なISの内の一つをオレにあげますかねェ?」

「所持していても、使えなければ意味が無いだろう。コアを抜いて廃棄処分にするとしても、色々と面倒だからな」

「・・・まぁ、そうだけど」

 

 新しくISを作ってみたら?と言おうとしたが、やめておいた。束姉が身近にいる所為で感覚が麻痺しているが、そもそもISというのはそう簡単に作れるものではないのだ。

 コアを抜き取って新たにISを製作するよりも、まだ使える可能性のあるオレに渡した方がそちらとしても楽なのだろう。

 オレも、コアを抜き取られるのは(ルリちゃんとお別れするのは)嫌だし。

 動かせないISは、学園にとって夏炉冬扇ーーもしくは、無用の長物という訳か。それなら仕方無い(とはならないが、取り敢えず話が進まないので納得しておいた)。

 貰えるなら貰っておこう。

 

「てか、待機状態可愛いな」

 

 一夏ちゃんの白式の待機状態はガントレットという男心をくすぐるカッチョいいヤツだし、セシリアちゃんのーーあぁ、分かった。ありがとね。

 セシリアちゃんのブルー・ティアーズの待機状態は、イヤーカフスという美しい装飾品だ。

 一方オレのは、鞄や携帯に付けられるキーホルダーの形。

 どういう事だってばよ。

 ルリちゃんがこの形を希望したのか?そもそも、希望した形になれるのか?

 身体に身に付けられないのでいざという時に困るんじゃないか。とか、疑問は残るが別に良いだろう。いざという事態を起こさせなければ良いだけの話だからな。

 ・・・キマった。

 

「じゃあ、展開してみろ」

「だってさ、セシリアちゃん。取り敢えず離れようか」

「・・・・・・分かりました」

 

 オレの左腕にピッタリとくっついていたセシリアちゃんが、名残惜しそうにしながらも離れる。因みに、オレが皆の前に立ってからずっとこうだったのだが、敢えて描写しなかったーーいや、描写出来なかったと言うべきか。躊躇無くオレの左腕に当てられる柔らかいモノに意識を傾けてしまうと色々と危ないので、オレは無関心を装って今迄我慢していたのだ。

 セシリアちゃんがこうしてオレに触れてくるようになったのは、束姉とデートをした日の翌日から。部屋のドア前で待機されていた時は、女の子大好きなオレでも流石に一歩退いてしまう位には驚いた。

 どうしちゃったんだ?

 その問いに対してセシリアちゃんはこう語った。

 

『光也さんが地上に見切りを付けて天界に帰ってしまったのではないかと心配で心配で、わたくし昨日は(ほとん)ど授業の内容が頭に入りませんでしたわ。・・・・・・いえ、行かないで下さいとは言いませんわ。ですけど、せめてお帰りになるその瞬間迄は御側に居させて下さいな』

 

 と。

 セシリアちゃんの中でのオレは一体どうなっているんだ。何だよ天界って。

 オレなんかに(うつつ)を抜かしていても、セシリアちゃんは代表候補生。オレが一夏ちゃんと話し合っている間に、いつの間にかISを身に纏っていた。

 

「流石は代表候補生だな。では次。織斑、やってみろ」

「は、はい!」

 

 千冬ちゃんに指示された一夏ちゃんが、左手で右腕を掴むという格好良さげな方法でISを展開。

 

「最後、唐澤。やれ」

「変・・・身!」

 

 キーホルダーを握り、天に握り拳を突き上げる。

 二人よりも幾らか時間は掛かったものの、何とかラファール・リヴァイブを起動させる事に成功。

 実際に起動させるまで、プリキュアの変身シーンみたいな感じで起動させるのかと思っていたのだが、違った。視覚的には別に楽しくも何ともない。

 光ったかと思ったら、何かの粒子が身体に付着して、ISになっているのだ。オレ的にはもっとこう・・・ロマンが欲しかったのだが、この感性は男ならではかも知れねェな。

 起動してもルリちゃんが話し掛けてこない事に疑問を覚えたが、千冬ちゃんの「ちゃんと起動出来たようだな」という言葉で現実に戻された。

 確かに、動くという事は壊れている訳ではないらしい。

 

「どうよ、千冬ちゃん。素人にしては中々だろ」

「時間が掛かり過ぎだ。ーーそれと、変身の掛け声は別に要らんだろう」

「えー、これが良いんだけどなァ。なぁ?一夏ちゃん」

「織斑先生、次は何をするんですか?」

「え、無視?」

「次は、飛んでみろ」

 

 一瞬ナチュラルにカツアゲされたのかと思ったが、Flyの方の飛ぶらしい。

 飛ぶって、改めて言われるとやり方が分からないんだが。

 

「では、光也さん。わたくしが先に行って安全を確認して参ります」

「敷地内なんだから危険な訳が無ェと思うんだが・・・まァ良いや。お手本にさせてもらうわ」

「て、手本だなんて・・・!」

 

 両頬に手を当てていやんいやんと恥ずかしがっていたが、千冬ちゃんからの冷たい視線に気付いたのだろう。恭しくオレにお辞儀をしてから飛び立った。

 一夏ちゃんも、「負けるか!」と後に続く。

 オレと違って一夏ちゃんは、放課後に箒ちゃんと甘〜い雰囲気になりながらもしっかりと練習をしている。急上昇と急降下は昨日習ったばかりだと言うのに、速度はセシリアちゃんに劣るものの、キチンと飛行していた。

 セシリアちゃんとの決闘前にピット内で受けた束姉からの指導を思い出してみるが、あの時はピット内だったので飛行の訓練は口頭での説明のみ。

 確か、自分の前方に角錐を展開させるイメージ・・・だったか?

 うーん、分からん。

 しかし、いつまでもこのままだと格好悪いので、頭の中で宙を自由自在に舞う自分の姿を強くイメージしてみる。

 あの時とは違ってルリちゃんの力を借りていないので、飛べるかは不安だったのだが。何とかラファール・リヴァイブは上昇を開始した。

 上を見ると、セシリアちゃんはもう到達したのだろう。動きを見せずにオレの方をキラキラとした目で見ている。

 拡声器で千冬ちゃんからドヤされながら、一夏ちゃんも上昇している。

 一応、自分は空を飛んでいる筈なのだが、安定感が凄過ぎてエレベーターにでも乗っているような気分だった。この高さで三百六十度景色を見渡せるというのは中々無いな。貴重な経験だ。

 ・・・高所恐怖症じゃなくて良かった。

 それにしても、ハイパーセンサーとやらは凄いな。自分の視力では見えない遠くの方も、ハイパーセンサーで補助されてくっきりと見える。セシリアちゃんのあんな所もこんな所も、それはもう、高解像度で丸見えだ。ぐへへへ、エッチな絶対領域してやがるじゃねェかよセシリアちゃん!

 

「お待たせ〜っと」

「おう、来たか」

「なぁ一夏ちゃん、角錐のイメージって分かる?」

「分からないから千冬姉にドヤされてたんだよ」

「だよなァ。ったく、ふざけんなっての。大体何だよ角錐って。平仮名にしたら四文字じゃねェか」

「訳の分からないキレ方するなよ」

「なァ、セシリアちゃん。どうやったらそんなに上手く飛べるんだ?」

 

 イギリスでは、どんな訓練を受けていたのだろうか。代表候補生なら、素人に分かり易く説明をしてくれるかも知れない。オレはそんな思いでセシリアちゃんに問うてみた。

 問われたセシリアちゃんは、強めの眼力で睨んだ。

 一夏ちゃんを。

 

「織斑さん、質問がある時は自分で質問なさいな。そうやって光也さんに頼っているようでは、まだまだと言わざるを得ません」

「俺が悪いのか!?」

 

 セシリアちゃんの脳内補正が働いたのか、一夏ちゃんを咎める。

 オレの質問一つで一夏ちゃんにダメージを与えてしまうとは。

 何これメッチャ面白ェじゃん。

 

「説明してあげてもよろしいですが、長いですわよ?反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」

「・・・・・・分かった、やっぱりやめとく。ありがとうな、セシリア」

 

 一夏ちゃんがげんなりとしていた。オレも同じだ。

 何だその用語は。文字的には格好良さげだけど。

 

『よし、次は急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地上から十センチだ』

 

 地上から、拡声器を使って千冬ちゃんが次の指示を出してきた。どっちから降りるか一夏ちゃんと醜い譲り合いをしていると、セシリアちゃんがオレ等の前に出た。

 

「では、ここはわたくしが。光也さん、見ていて下さいね」

「お、おう」

 

 セシリアちゃんが振り返り、笑顔で言ってきた。その眩しさにたじろぎながらも、オレも笑顔で返す。

 

『・・・・・・お慕い申しております』

「何だァ今の!?」

 

 セシリアちゃんが下へと降下する直前。頭の中にセシリアちゃんの声が響いた。先程迄との声とはもう少し違う、電話越しのような声質。

 

「いきなりどうしたんだよ」

「今、セシリアちゃんに告白されたんだが」

「セシリアが光也にゾッコンなのは知ってるけど、今そんな事言ってたか?」

「言ってたよ!しっとりとした艶のあるボイスで!」

「・・・・・・そうか。俺は光也を信じるよ」

「信じてる奴は台詞の途中に距離を取ったりしねェんだよ!」

「ほら、光也の番だ。行ってこいって」

「く、クソが・・・!覚えてろよ!」

 

 セシリアちゃんはもう終わったのか、ISを待機状態に戻していた。

 一つだけ心残りなのは、一夏ちゃんと話していてセシリアちゃんの降下の様子を見られなかった事だ。

 うーん、不安だ。

 取り敢えずやるけどよ。

 降下。

 日常生活に於いて頭が下にいく事は殆ど無いので、少し怖い。いくらシールドで身体が守られているとはいえ、それでも顔から地面に落ちるのは怖いのだ。

 地面がグングンと近付く。

 そろそろか?オレは身体の上下を元に戻し、ブレーキ。これも漫画とかでよくある、踵で地面を削りながら停止するイメージを浮かべると止まってくれた。しかし、急停止は叶わずに慣性で数メートルは下がってしまった。

 

「唐澤は上過ぎだな。もう少し地面との間隔を縮められるように努力しろ」

「了解っす」

 

 それでも地面とはまだ遠かったようで、オレの足は地面から二メートル程の高さで浮いていた。

 地面に着地。オレもラファール・リヴァイブをキーホルダーの状態に戻しーー

 

「どいてくれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 ーーズドォォンッ!!

 

「・・・・・・一夏ちゃん、テメェ」

「わ、悪い!大丈夫か?」

 

 安心し切っていたオレ目掛けて落下してきた一夏ちゃん。その速度は、オレを地面との間のクッションにしても地面にクレーターを作ってしまう程のモノだった。待機状態にするのがあと数秒早かったら、オレは死んでいたかもしれない。

 

「何でオレと同じ場所に降りてくンだよ!危ねェだろうが!」

「まだ慣れてないんだって!」

「そんなんで済む話じゃねェよ!」

 

 一夏ちゃんもオレもISを待機状態に戻し、ISスーツに付着した土を払いながら言い合っていると、そこに千冬ちゃんがやって来て、頭に拳を落とした。何故かオレの頭にも。

 

「操作を誤った織斑も悪いが、周囲への気配りを怠っていた唐澤も悪い。次に同じ失敗をしたらこれだけでは済まないからな」

「「・・・・・すみませんでした」」

 

 痛む頭を下げる。その際に、千冬ちゃんにバレない角度で『お前の所為だ』と互いに睨み合うのも忘れない。

 それから、待機状態から武器を即座に出す練習としてまた三人が前に出て実演をさせられた。セシリアちゃんが銃を横に展開して千冬ちゃんに注意されて落ち込んだり、ナイフを展開するのに手間取って悔しがっている顔が可愛かった。一夏ちゃん?特に記憶に無ェな。

 

「む、時間だな。今日の授業はここまで。グラウンドに穴を開けた織斑と唐澤はグラウンドを直しておくように。以上」

 

 解散。千冬ちゃんに抗議をするのも疲れたオレは、一夏ちゃんと一緒にグラウンドの整備をする事にした。

 

「箒のヤツ、確実に目が合ったのに知らん振りして帰ったぞ・・・」

「仕方無ェって。箒ちゃんは何もしてないからな」

「まぁそうだけどさ。そう言えば、セシリアも帰っちゃったけど良いのか?」

「帰ってもらったんだよ。手伝うって言ってくれたんだが、申し訳無ェし」

「へぇ」

「そう言えば、いつの間にセシリアちゃんを名前呼びするようになったんだ?」

 

(・・・・・・光也の情報を通じて話していたとは言いづらいな。よし、誤魔化そう)

 

「・・・・・・この前、偶々(たまたま)仲良くなる機会があったんだよ」

「へぇ、セシリアちゃんも遂に一夏ちゃんへの認識を改めたか?」

「別に。さっきも、『今回は光也さんの寛大な御心に免じて許して差し上げますが、次あのような無礼を働いたら蜂の巣にしますから』って耳元で脅されたし」

「セシリアちゃん・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、転校生の話聞いた?」

 

 朝のHR迄はまだ時間があったのでクラスの女の子達とお話をしていると、そんな事を聞かれた。オレも一夏ちゃんもご存知無いので、首を傾げる。

 

「転校生?」

「今の時期にか?そりゃ珍しい」

「なんでも、中国の代表候補生なんだってさ」

 

 女の子からの更なる情報。中国の代表候補生?まさか、セシリアちゃん級の美少女が転入してくると言うのか!?

 そんな具合に人知れずテンションを上げていると、箒ちゃんが残念なお知らせを口にした。

 

「このクラスに転入してくる訳ではないのだろう?騒ぐ程の事でもあるまい」

「このクラスじゃないのか?」

「らしいぞ」

「良かったな、箒ちゃん。ライバルが増えなくて」

「な!?光也、お前!」

「大丈夫大丈夫、こんぐらいじゃあのイケメンは気付かねェから」

 

 イケメンは、ライバル云々の一言は聞こえておらず、「転校生ねぇ」と考えてるんだか考えていないんだか分からない顔で呟いていた。

 

「中国の代表候補生って事は、強いんだろ?クラス対抗戦は大丈夫かなぁ」

 

 一組のクラス代表である一夏ちゃんは、まだ見ぬ敵に我が身を案じているらしい。

 今の調子で頑張ってりゃ、良い試合に迄持って行けるんじゃねェの?

 と、激励の言葉を掛けてやろうとしたら、女の子とタイミングが被った。

 

「今のちょーー」

「織斑くんっ、クラス対抗戦頑張ってね!」

「織斑くんが勝てば、クラス皆が学食のデザート半年間フリーパスだもんね」

「今の所、専用機を持ってるクラス代表は一組と四組だけだから余裕だよ!」

 

 うげぇ、デザートのフリーパスかよ。と、顔を(しか)める。すると、わざわざ自分の席から椅子を移動させてオレの隣に座っていたセシリアちゃんに、「わたくし達は代わりに違う物を用意してもらいましょう」と提案された。正に、渡りに船。オレは甘い物が苦手なので、セシリアちゃんの提案はとても嬉しかった。

 セシリアちゃんも、甘い物は苦手なのだろうか。だとしたら気が合うなァ。

 セシリアちゃんに礼を言う。そして、照れ臭いが白状する事にした。

 

「実はオレ、甘い物苦手なんだよな」

「えぇ」

 

 セシリアちゃんの既に知っていたかのような返事に違和感を覚えつつも、いや、セシリアちゃんが知る筈が無いと違和感を払拭。

 不意に、どこからか声がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ついにあの美少女が登場!!果たして、声の主の正体とはァ!?

どのキャラが好き?

  • 一夏ちゃん
  • 箒ちゃん
  • セシリアちゃん
  • 鈴ちゃん
  • シャルちゃん
  • ラウラちゃん
  • 千冬ちゃん
  • 束ちゃん
  • 蘭ちゃん
  • 弾ちゃん
  • 光也

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