ISなんかどうでも良いから女の子とキャッキャウフフしたい。   作:大塚ガキ男

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今回は、実験的な意味合いも兼ねて光也の一人称でお送りします。
いつもより少しだけ文字数が多いです。



8話

「じゃあ、改めてラファール・リヴァイブを起動させてみてくれるかな?」

 

 あぁ、そう言えばそうだった。ルリちゃんと話していてすっかり忘れていたが、セシリアちゃんとの決闘が始まる迄の僅かな時間で、束姉からISの操作に関する指導を受けようーーそんな展開だった。

  オレは束姉の言葉を受けて、再度ラファール・リヴァイブに触れる。先程(時間が止まっていたあの世界を先程と言って良いのかは疑問だが)まで女の子だったラファール・リヴァイブに触れるのは少し躊躇いを覚えたりもしたが・・・まぁ、しょうがないよな!起動させる為だからしょうがない!グゥッヘェッヘェ触っちゃうぞォ!

 

「・・・・・・みっくん、何でラファール・リヴァイブに触るだけなのにヤラシイ目をしてるのかな?」

「気の所為だよ、束姉」

 

 実は、ラファール・リヴァイブは美少女になれるのだ!とか言っても信じてもらえる訳がないので、オレは笑顔で誤魔化した。

 

「いきなりみっくんが、『ラファール・リヴァイブって名前で呼ぼう』って言ったのと関係あったりする?」

 

 しかし流石は、世界中を飛び回る超絶天災美女篠ノ之束。語尾に疑問符をつけながらも、その目は核心に近付いている事を確信していた。

  むむむ、どうしようか。適当に誤魔化すために『実はオレは、機械に興奮する性癖なんだ』と言うわけにもいくまい。

 

「だから気の所為だって。オレがヤラシイ目で見てるのは束姉だよ」

「本人の前で言っちゃうの!?ま、まぁ別に束さんは構わないけどねっ?」

 

 あれ、オレは今何て言った?ラファール・リヴァイブの事について考えていて、自分が何を言ったのかを覚えていなかったんだが。

  ・・・まぁ良いか。取り敢えず笑っておこう。束姉の後ろに居る千冬ちゃんの身体からトンでもない程のドス黒いオーラが滲み出ているが、笑っておこう。

 

「じゃあ、起動させてみる」

 

 一夏ちゃんと箒ちゃんがジッとオレを見ている。オレが氷魚を起動させられなかった事が心配なんだろう。もしかしたら、今回も駄目なんじゃないかと。

  だが、心配には及ばないぜ?

  時が止まった時点でーーオレがルリちゃんと話した時点で、オレにISが反応した事は確定しているんだからな。・・・まぁ、あそこでの出来事が全て夢だと言われたらどうしようもないのだが。

  夢だったらどうしましょう?

  大丈夫だ、と自分に言い聞かせながらラファール・リヴァイブに触れる。

 

『おひさ』

 

 手のひらに伝わる冷たい感触と共に、脳内でルリちゃんのボイスが再生された。

 

「久しぶり」

『あ、もうちょっと声抑えときなって。周りに不審に思われるから』

 

 それもそうか。今のオレの発言は、ラファール・リヴァイブに話し掛ける不思議系な奴っぽかったかも知れない。

  男で不思議系が許されるのはイケメンだけだ。

  いや、もしかしてこれがミステリアスなのか・・・!?

 

「みっくん、身体の調子はどう?変じゃない?」

 

 随分と下の方から束姉の声が聞こえる。意識を外側に傾けると、いつの間にやら自分がラファール・リヴァイブに乗っていた事に気付く。

 

「大丈夫、いつもと変わらないぜ☆」

「光也、大丈夫なのか?」

「大丈夫だって一夏ちゃん。ほら、見ろよこのウインク。いつもよりも三割増しで弾けてるだろ?」

「みんなで応援してるからな」

「華麗なスルー!」

 

 心配してくれた一夏ちゃんに向かってウインクをするも、スルー。

  腕を動かしてみる。自分の腕の動きに合わせてラファール・リヴァイブの腕も動いた。

 

「ルリちゃんは大丈夫か?」

 

 先程の反省を生かし、小声で問い掛ける。

 

『うん、大丈夫。今のアタシの意識はラファール・リヴァイブの中にあるけど、戦闘直前になったらアンタの頭の中に移動するから。・・・それが失敗したら、アンタだけの力で戦わなきゃいけなくなるんだから気を付けなさいよ?』

「了解。その時は土下座でも何でも決めてやるさ」

『カッコ悪!』

 

 まぁ、ルリちゃんが失敗した場合の時の事(最悪の事態)も考えて、この時間は有効的に使わせていただくとしよう。

  武器の出し方や、飛ぶ際の力の入れ方(流石にピット内を飛び回る訳にはいかないので、これは束姉による説明のみだが)等。

  四十分という時間は、意外と早く流れ。気が付いたらオレの出番がやってきた。

 

「心の準備は出来たか?」

「あァ。万全だぜ」

 

 千冬ちゃんからの問いに応える。それと同時に、ルリちゃんに合図をする。

 

「そろそろ頼む」

『りょーかい。取り敢えずはちょこっとだけやってみるから』

「ーーッ!?」

 

 コレを何と表現したら良いのだろう。何かが入ってくる感覚は何物にも形容し難く、ただ言えるのはドクンと身体が一瞬自分の意思とは関係無く揺れた事。これでまだ『ちょこっと』なのだから恐ろしい。ルリちゃんの全てが入ってきたら、オレはどうなってしまうのだろうか。

  オレの一瞬の異変に気付いたのか、千冬ちゃんが声を掛けてきた。

 

「お、おい。本当に平気なのか?無理してないか?」

「あァ、平気だよ。千冬」

「?・・・お前、今」

「どうかした?千冬ちゃん」

「い、いや、何でも無い。ーー光也、必ず勝てよ。勝利以外の報告は許さんからな」

「一夏ちゃんの時よりも条件キツくねェですか?」

「そんな事は無い」

 

 堂々と嘘を吐かれては、不思議と反論する気も失せる。オレは黙って出撃の位置についた。

 

「唐澤君、準備は良いですか?」

 

 キーボードを叩きながら、真耶が問うてきた。オレはニヤリと笑いながら一度は言ってみたかった台詞で応えた。

 

「唐澤光也、出ます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・あなた方は、どこまでわたくしを馬鹿にすれば気が済むのですか?」

「馬鹿にしちゃあいねェよ。セシリアちゃん」

 

 口元を怒りでヒクつかせながらセシリアちゃんがオレに笑顔で問うてきたので、オレもまた笑顔で応える。美少女はどんな表情も美しいというのは本当だったんだな。怒ってるセシリアちゃんも可愛いな。

  アリーナに飛び出したオレを待っていたのは、怒りを隠し切れない表情のセシリアちゃんと、騒つく観客席の女の子達だった。一夏ちゃんと違って、オレが量産機で出てきたモノだから驚いているのかもな。

 

「愚かな貴方は、専用機と量産機のスペックの差はご存知無くて?」

「最近知った。だけどな、セシリアちゃん。スペックで勝負が決まるとは限らないんだぜ?戦いに於いて一番重要なのは」

「技術、ですか?わたくしに意見するのは結構ですけど、まずは貴方が技術を磨いて来たらいかが?貴方はスペックと技術、どちらもわたくしに負けているんですのよ?」

「まぁそうだな。セシリアちゃんの言う通りこの状況は勝ち目が無ェ。本来なら、戦意を失っても可笑しくない実力差だ」

「・・・・・・本来なら?」

「本来なら、な。ルリちゃん、全部頼む!」

『後はまかせなさい!』

 

 指を天に突き上げながら叫ぶ。ルリちゃんが入ってくるのがよく分かる。だが・・・・・・。

 

「ッ!ぐ、あああ!」

「ちょ、ちょっと!?どうかなさいましたか!?」

 

 頭に流れてくる情報の奔流。ラファール・リヴァイブが今迄見てきた記憶からスペックのデータ、更には開発途中の記憶迄、ラファール・リヴァイブの全てが流れ込んできた。その衝撃が物凄い。気を絶ってしまいそうな程の衝撃だ。

  胸を押さえて衝撃に耐えるオレに、敵ながらも心配してくれるセシリアちゃん。以前からオレ達に喧嘩腰な態度だが、本当は優しい女の子なんだよなァと嬉しく感じる。

 

『・・・・・・ピンク色かと思ったら、意外にもまともじゃない』

「あれ、只今オレのプライバシーがダダ漏れ中?」

 

 身体の痛みも収まってきたので、オレはもう平気だとルリちゃんに伝えた。

  セシリアちゃんを見据える。今気付いたけど、セシリアちゃんの格好スッゲェエロいな。何だアレ。上手く言葉に出来ねェけど、素晴らしいな。実技の授業が今からとても楽しみだ。

 

「体調が優れないのでしたら、無理に決闘をしなくても」

「あー、余裕余裕。心配しないで。今のアタシ、滅茶苦茶調子良いから」

 

 ・・・・・・おや、口が勝手に動くぞ?ねえねえルリちゃん。オレの身体使ってそんな事も出来んの?

 

「当たり前じゃん。後はアタシに任せとけば大丈夫だから。・・・・・・あー、久し振りに暴れられる。おいセシリア・オルコット。ボッコボコにしてやるから覚悟しな」

 

 ちょ、ちょっと!?任せて大丈夫か!?不穏な単語が聞こえるぜ!?

  ルリちゃんってば、やけに血気盛んだな。他人に操られてばかりで鬱憤が溜まっていたんだろうか。まぁ、それなら今回くらいは・・・とはならないからな!?セシリアちゃんをボッコボコにするのは絶対駄目だ!おーい、聞こえてる!?ルリちゃん!?

 

「貴方、変な物でも食べました?口調が可笑しいように感じますが」

「アンタこそ、何食べたらそんなひん曲がった性格になるワケ?」

 

 ルリちゃん!何て事を言うんだ!

 

「・・・・・・蜂の巣がお望みでしたか」

 

 (まず)い!売り言葉に買い言葉で場が大変殺気立っていらっしゃる!ルリちゃんの本気がどんなモノかは知らないけど、オレの身体の関節の可動域を無視して行う挙動がまともな訳が無い!幾らセシリアちゃんが代表候補生とは言え、危険過ぎる!

  何とかして止めなくては。

  あー、あー!

  声が出ない。更に力を入れる。

  あー!!

  惜しい気がする。あと少し!

 

「あぁぁぁぁぁ!!」

 

 出た!

 

「ちょっ、いきなりどうしたのよ!今はアタシの番で五月蝿い!セシリアちゃんを傷付けちゃ駄目だってさっきも言っただろ良いじゃんこの際!少しくらい痛い目見ないとあの性格は治らあの性格が良いんだろうが!」

 

 発言の主導権(物理)を握ったり離したりを繰り返し、オレの口から出ている言葉はもうてんやわんや。オレが言いたい事とルリちゃんが言いたい事が混ざって何が何だか。

  こうしている間にも、オレにはよく分からない疲れが溜まっている。今のオレの身体を動かしているのはあっちが主体だからか、言葉一つ喋るにも結構力がいるのだ。

  オレが喋れるのはあと少し。それが過ぎれば、後は完全にルリちゃんのターンだ。

 

「セシリアちゃん、一度しか言えないからよく聞いてくれ!」

「な、何ですの?」

 

 

ぶっ飛ばすから避けるんじゃないわよ(早くここから逃げてくれ)!」

 

 

 もう口を開こうとも思わないくらいの倦怠感。柔らかいソファに身を委ねているような感覚。

  オレの意識は一瞬にして奈落の底へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・何だこれ」

 

 オレは開口一番、そう呟いた。

  いや、呟かざるを得なかった。

  呟くしかなかった。

  上体を起こしてから気付いたのだが、どうやらオレはどこかのベッドで寝ていたらしい。微かに薬品の臭いがするので、保健室だろうな。自分の身体を見る限り、目立った外傷は無いから病院に連れていかれたと言う線も無さそうだ。

  そもそも、おいそれとIS学園の敷地から出る事は出来ないしな。

  それはさて置き、オレが何故『何だこれ』と呟いたのか。その理由を説明しよう。

  ベッドの隣の椅子に座り、恐らくは途中で睡魔に襲われたのだろう。ベッドに(更に言うなら、布団を挟んでオレの足に)のし掛かっている。

  セシリアちゃんが。寝息を立てながら。

  自分自身まだ理解が追いついていないので、もう一度言おうと思う。

  セシリアちゃんが。

  寝息を立てながら。

  ちょ、ちょっと待ってよ。どういう事?オレが寝ている間に何があったんだ?布団越しでも確かに伝わるセシリアちゃんのたわわな双丘の感触はベリベリグッドなのだが。何故(なにゆえ)

  うーん、うーん、と足りない頭を捻ろうにも、記憶が戻ったりはしない。いや、元々記憶していないのだから、戻し様が無いのかも知れない。オレが思い出せる一番最近の記憶と言えば・・・・・・セシリアちゃんと戦う直前の会話だ。

 

「って事は」

 

 十中八九ルリちゃんのせいじゃんか!ルリちゃんが完全にオレの頭の中に入って来た辺りから会話も困難になって、それから先が思い出せないけれどもーー総じてルリちゃんのせいじゃんか!

  ルリちゃんにこの状況を問い詰めたい気持ちは山々だが、残念ながらここは保健室。ラファール・リヴァイブを置けるスペースがある筈も無い。

 

「もう少しこの感触を味わいたいィ・・・!」

 

 幸いにも、この部屋の主はここには居ないようなので、このシチュエーションを邪魔される事は無い。

  触覚を全て足に集中させて大いに楽しみたい。

  のだが。

  眠たい。眠た過ぎるのだ。頑張って頭を働かせて眠らない努力をしているものの、そうしている間にも瞼はゆっくりと下がってきてしまっている。

 

(おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいーー駄目だ眠てェ!)

 

 頭の中を幸せで満たす事により眠気を掻き消そうと足掻くが、睡魔には抗えず。

 

「む、無念・・・」

 

 せめて、このおっぱいの感触を楽しみながら眠るとしよう。おやす

 

「ーー光也!大丈夫か!?」

「テメェ!人が折角良い感じに眠りに入ろうとしてんのに何してくれとんじゃボケェ!!」

 

 瞼を閉じ、後十秒も経てば寝息を立てていただろう場面で、いきなり保健室のドアが開かれた。入ってきたのは一人のイケメン(クソ野郎)。言わずとも分かるだろう、一夏ちゃんだ。

 

「み、光也!良かった。心配したんだからな?」

「心配してくれてたのは嬉しいけどよォ。今入って来んなよォ・・・」

「え?・・・・・・あれ、もう来てたのか」

「何だその言い方。まるで、セシリアちゃんがここに来る事を知っていたようじゃねェか」

「知ってたぞ?」

「マジで?」

 

 何気無く時計を確認してみると、時刻は六時を過ぎた頃。決闘から然程時間が経っていないにも関わらず、一夏ちゃんはもうそこまでセシリアちゃんとの仲を深めたと言うのか!?恐ろしい子!

 

「さ、流石は一夏ちゃん。女の子を落とすスペシャリストなだけはあるぜ」

「何言ってるのか分からんけど・・・食堂から夕飯貰って来たぞ」

「おう、ありがとな。それ置いてさっさと帰れ」

「酷い言いようだな!?」

 

 言いながらも、椅子を用意してオレの隣に座る一夏ちゃん。一夏ちゃんの膝の上に置かれている夕飯からは美味しそうに湯気が上っており、(ルリちゃんにまかせっきりの)運動後の為空腹なオレの食欲を大いに刺激した。

 

「一夏ちゃん・・・!頼む・・・!早くそれをくれ・・・!頭がどうにかなりそうだァ!」

「台詞だけ抜き取るとヤバい薬服用してる人みたいだな」

「冗談は兎も角、マジで腹減った。トレーちょうだいな」

「いや、一人じゃ食べれないだろ」

「は?いつの間に食事はダブルス制になったんだよ」

「そういう意味じゃないからな。・・・腕、動かしてみ」

「腕?ほらよーーッ」

「な?」

 

 成る程。目立った外傷が無い事から安心していたが、こういう事だったのか。忘れてたけど、オレは保健室で寝てるんだよな。

  一夏ちゃんに言われた通り腕を動かしてみると、声を出す迄はいかないものの激痛が走った。そして、身体の痛みから導き出された恐ろしい疑問。

  あの決闘は、オレの身体がここまで痛む程の闘いだったのだろうか?

 

「・・・・・・一つ聞きたいんだが」

「どうした?」

「オレって、試合中どんなんだった?」

「滅茶苦茶格好良かったぜ。武器も持たずにオルコットさんに殴りかかって、零距離で撃たれても気にせずに殴って、それから蹴って投げ飛ばしてーー」

「止めろ!止めてくれ!それ以上は聞きたくない!」

「えー?これからなのに」

「それだけやっといて続きがあんのかよ!」

 

 最後迄聞かずとも、オレが超絶怒涛のクソ野郎だっていうのは分かった。

  やっちまった・・・!恐れていた事が現実になっちまった・・・!!

  絶望。頭を押さえて現実逃避したいが、それさえも痛いので上を向いて泣く事にした。

 

「まぁ、晴れて俺達男子の名誉は守られたんだ。喜ぼうぜ。な?」

「オレはボロボロだけどな!」

 

 ルリちゃんを責める気にもならない。戦闘の一切合切をルリちゃんに任せていたとは言え、制御出来なかったオレの責任だ。

 

「・・・一夏ちゃん、連れて行ってほしい所があるんだが」

「歩くの辛いもんな。良いぜ、俺が連れていける所ならどこでも連れて行ってやる」

「富士の樹海」

「何する気だ光也!」

 

 ワーワーギャーギャー。夕飯そっちのけで騒ぐ。まぁ、そんな事を続けていたら誰かが眠りから覚めてしまうのも当然。

  オレの足から(幸せな)重みが消えたのに気付き、視線を一夏ちゃんからそちらに移す。

 

「・・・・・・お早うございます。光也さん」

 

 目を見張る程の天使が居た。

 

「お、お早う。セシリアちゃん。起こしちゃったかな」

「えぇ、光也さんの声で目が覚めました」

「わ、悪ィな。騒ぎ過ぎた」

「いえ、今一度こうして、改めて光也さんと話す事が出来たのですから、寧ろ僥倖というモノですわ」

「・・・・・・うん?」

 

 何だろう、この違和感。セシリアちゃんってこんな感じだったっけか?あれェ?

  首を傾げながらセシリアちゃんを見詰めてみる。セシリアちゃんもオレを見詰めてきた。

  一秒経過。

  二秒経過。

 

「嫌ですわ、光也さん。そんなに見詰められたらお恥ずかしいです」

「やっぱ可笑しい!セシリアちゃん!?君は一体どうしちまったんだ!?」

「どうもしていませんわよ?いつも通りですわ」

 

 一番有り得るのは、ルリちゃんがやり過ぎた後遺症で、セシリアちゃんの人格に異常が来した可能性。寧ろ、そうじゃないとこの状況を説明出来ない。何故にセシリアちゃんはオレを名前呼びなんだ?嬉しいけれども。

 

「なぁ、一夏ちゃん!セシリアちゃんは何とも無いのか!?オレはやっぱり死んだ方が良いんじゃないのかァ!?」

「落ち着けって。光也は悪くない」

「なら、どうして!」

 

 オレの意識が無い間に何があったと言うのか。

  状況を整理出来ずに、混乱していると、セシリアちゃんの白魚のような御手が、オレの手を包み込んだ。

 

「わたくしは、間違っていたのです。光也さんの事を助平と貶し、素人が無謀にもエリートに挑む愚か者だと馬鹿にしました。ーーですが、光也さんは違ったのですね。わたくしの間違った思考を、闘いの中で正して下さいました」

「どうしよう!全く身に覚えが無ェ!」

「無自覚であの行いを!?貴方は一体どこまでわたくしの想像を超えて下さるの!?」

「何か知らねェけど好感度が更に上がってるし!」

 

 セシリアちゃんが瞳をキラキラさせてオレに語ってくるが、オレには全く身に覚えが無い。そりゃそうだ。ルリちゃんが勝手に暴れたのだから、その時の事はオレは知り得ない。

  まぁ、一つだけ言えるのは、ルリちゃんはセシリアちゃんが言うような目的で拳を振るったんじゃないって事。絶対アレは、ただストレスを発散したかっただけだ。

 

「まあまあ、光也。良いじゃないか。オルコットさんが男に対する差別的な考えを改めてくれたんだから」

 

 一夏ちゃんがオレを宥める。別に、オレは男が幾ら貶されようと痛くも痒くもないのだが、一夏ちゃんはそうじゃないらしいし、セシリアちゃんの改心は嬉しいのだろう。

  後の問題は、セシリアちゃんが日本について色々失言をしてしまった件についてだが。それに関しては然程問題では無い。今日の夜にでも、一組の皆に謝りに行けば良い。怖いんだったら、オレも一緒に謝ろう。そもそもの話、オレと一夏ちゃんがふざけ過ぎたのもいけないんだしな。

  そんな感じで、今回の話を締めようとした所で。セシリアちゃんの口からトンでも無い言葉が飛び出た。

 

「いえ、男は相変わらず無能ではないですか」

「「え?」」

 

 その言葉が信じられず、オレと一夏ちゃんの疑問の声がハモった。

 

「男が素晴らしいのではなく、光也さんが素晴らしいのですから、そこを勘違いなさらぬようにお願いしますわ」

「せ、セシリアちゃん。念の為聞いておくけど。・・・・・・一夏ちゃんの事どう思う?」

「威勢良くわたくしに挑んでおきながら、間の抜けた負け方をした低脳ですわね」

「ぐほぁ」

「一夏ちゃーん!」

「男という塵芥にしか満たない存在の中で、唯一その眩い輝きを放つ至高の存在。それが光也さんなのですわ・・・!」

 

 未だ底無しの語彙でオレを褒め続けるセシリアちゃん。

  セシリアちゃんからの暴言でやられ、座ったまま力尽きた一夏ちゃん。

  違う、オレはそんな奴じゃないんだ。とセシリアちゃんが言うオレと現実のオレを重ね合わせては苦しむオレ。

 

 千冬ちゃんがオレの容態を確認しに来るまで、この奇妙な空間は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて、クラス代表戦は終了です。少しふざけてから本編に戻るので、鈴ちゃんの出番はまだ先なんだ。ごめんね、鈴ちゃん・・・。

結構書き易かったので、これからは一人称で書いていきたいと思います。

どのキャラが好き?

  • 一夏ちゃん
  • 箒ちゃん
  • セシリアちゃん
  • 鈴ちゃん
  • シャルちゃん
  • ラウラちゃん
  • 千冬ちゃん
  • 束ちゃん
  • 蘭ちゃん
  • 弾ちゃん
  • 光也

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