ISなんかどうでも良いから女の子とキャッキャウフフしたい。   作:大塚ガキ男

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戦闘シーンの描写が難し過ぎます・・・。
あと、ラファール・リヴァイブについては「こんなんだったっけか?」と思いだしながら手探りで書いているので、間違っていたらご指摘お願いします。

銭湯シーンなら大好きなのになぁ。


6話

() 光也のその一言に、誰もが驚いたのは言うまでもない。が、その中でも一番驚いたのは開発者である束だった。半泣きになりながら光也に詰め寄る。

 

「ど、どういう事!?やっぱり束さんのISが気に入らなかったのかな!?」

「そんなんじゃ無いって!本当に起動出来ないんだよ!」

「あぁもう!貸して!」

 

 束が光也の左手を取り、氷魚(こまい)に触らせる。

  結果は変わらず。光也の手のひらに冷たい感触が伝わってくるだけ。

 

「・・・・・・嘘」

 

 そう驚愕する束が、事の重大さを物語っていた。

 

「・・・こ、こういう場合ってどうなるんですか?」

「知らん。何せ、前例が無い事態だからな」

 

 声を震わせながらの一夏の言葉に千冬が返す。それから束の方を見やるが、束は呆然と何かを呟いているだけ。そんな束に千冬が強めの声で問い掛ける。

 

「おい、どうするんだ」

「・・・まだだよ」

「?」

 

 束の返答に、千冬は眉をひそめた。

 

「ちーちゃん。ラファール・リヴァイブを用意して」

「いきなり何を」

「早く!ラファール・リヴァイブーー量産機なら、みっくんも起動出来るかも知れない!」

「・・・山田君、頼んだぞ」

「分かりました」

 

 千冬に指名された真耶は、どこかに電話し始めた。

  ・・・因みに、束が打鉄ではなくラファール・リヴァイブを用意させたのは、光也の実力を鑑みて、汎用性が高い機体の方が良いと考えたからだ。

 

「ラファール・リヴァイブって言えば・・・」

「ISの量産機の一つだ」

 

 そう説明された光也は、深緑色の機体を思い浮かべた。思い出すのは、入学試験の時の事。まぁ、その時乗っていたのがラファール・リヴァイブだったのかは定かではないのだが。光也が覚えているのは機体の事ではなく、

 

(相手の教官の脚、綺麗だったなァ)

 

 だった。

  涙はいつの間にか止んでいた。そうだ、へこたれていても仕方が無い。氷魚に乗れない以上、束が言っていたラファール・リヴァイブで頑張るしかあるまい。

 

「ラファール・リヴァイブが届きました!」

 

 ピットの中に、ラファール・リヴァイブが現れる。

 

「織斑は出撃の準備をしておけよ」

「俺!?」

「当たり前だろう。コイツのセッティングには少しばかり時間が掛かる。オルコットをいつまでも待たせる訳にもいかんからな」

「・・・分かりました。ーー光也」

「どしたん?一夏ちゃん」

「俺は二番手も十分格好良いと思うぜ。じゃあな、行ってくる」

 

 一見、よく分からない一夏の言葉。しかし、光也はその意味をすんなりと理解した。ポツリと、ニヤけながら呟く。

 

「・・・格好良過ぎンだろ、一夏ちゃん」

 

 一夏の専用機、白式。『白』という色が名前に入っていつつも機体の色はどこか暗く、真っ白ではない事に疑問を覚えたが、その疑問は他の出来事に上書きされてすぐに消える。

  一夏が白式に触れてみると、懐かしい感情が込み上げてきた。コイツとは初対面の筈なのに、初めて会った気がしない。その感情は奇しくも光也と出会った幼少期を思い出させ、白式への親近感を湧かせた。

 

(コイツとなら、行ける)

 

 一夏は直感し、笑った。

  千冬の説明を受けながら白式に乗る一夏を見ながら、光也も準備を始めた。無論、ラファール・リヴァイブに乗る為のだ。

  光也が氷魚に乗れなかった理由は、ISの適性が無くなったりしたからではない。

 

(氷魚が、まだオレを認めていないのかもな)

 

 自嘲気味にそう結論付ける。

 

(そうだ。まだ数十分程度しかISを動かしていないオレみてぇなペーペーの素人が、初戦から専用機を扱える事がおかしいンだ。そんな事が出来るのは選ばれた人間(一夏ちゃん)くらいだ。専用機に釣り合うくらいにもっと強く、そして上手くならねェと。氷魚を問題無く起動させられるくらいの人間にならねェとな)

 

 女の子と戦うのは嫌だけど。語末にそう付け加えるのも忘れない。技術向上の訓練の相手は全て一夏に頼むとしよう。そうしよう。

 

「一夏。鍛錬は嘘を吐かん。全力で行け」

「あぁ。一週間、付き合ってくれてありがとうな。箒」

 

 白式に乗った一夏を見上げながら、箒が一夏に激励を送る。それに一夏は、女殺しのイケメンスマイルで応える。そのイケメンスマイルにやられた箒は顔を赤く染め、一夏に悟られまいとそっぽを向いた。

 

「気分は悪くないか?」

「大丈夫、千冬姉。いつでも行ける!」

「だから私は織斑先生と・・・いや、今は良しとしよう。一夏、勝ってこい」

「あぁ、行ってくる!」

 

 ピットから勢い良く飛び出していく、一夏と白式。光也はそれを少し羨ましく思いながら、視線をラファール・リヴァイブの隣の氷魚に戻した。

 

「悪ィな。今回はお前と一緒に戦えないみてぇだ。また今度ーーオレがもっと強くなったら、一緒に戦わせてくれ」

 

 他の人に聞かれると小っ恥ずかしいので、小声で氷魚に語り掛けた。その際にもう一度触ってみるが、やはり反応は無かった。

 

「・・・・・・みっくん、ごめんね。束さんの所為で」

「そんな事無いって。きっとアレだ。この機体は強過ぎるから、セシリアちゃんを可哀想に思った神様がストップを掛けたんだ。最強ハンサムボーイ唐澤光也には、専用機相手にも量産機でも事足りるってな」

「・・・・・・馬鹿」

 

(小声での『馬鹿』は可愛い過ぎますよぉぉぉ!もう、束姉の天使!天使兎!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピット・ゲートから飛び出した一夏を待っていたのは、見るからに不機嫌そうな顔をしたセシリアだった。

 

「レディを待たせるなんて、あなた方はつくづく教養の無い馬鹿ですのね」

「うっせぇUMK」

「ゆ、ゆーえむけー?」

「ユナイテッド・メシマズ・キングダム」

「ムキー!もう許しませんわ!情けをかけようかと思ってましたが、止めです止め!完膚無きまでに叩き潰しますから覚悟なさい!」

「やってみろよ!」

 

 売り言葉に買い言葉でそう返した一夏の目の前に【警告】の文字が浮かび上がる。何だコレはと疑問に思っているとーー

 

「ーーな!?」

 

 被弾。ダメージ46、シールドエネルギー残量521、実体ダメージレベル低。そう白式が教えてくれた。

 

「さあ踊りなさい。わたくしセシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!!」

「決めゼリフのつもりかよ!」

 

  セシリアからの攻撃に焦りながらも、次弾に備えて移動する。

 

「遅いですわ!」

 

 しかし、その移動も遅くてはただの動く的。被弾した。

 

(拙い!このままじゃ一方的にやられる!どうすれば!)

 

 情報だけは次々と視界に浮かび上がるのに、一夏自身がそれを使いこなせないまま試合は進む。

  情けない。

  一夏は悔しげに歯噛みする。

 

(威勢良く喧嘩売っておいて、俺はこの様なのかよ!)

 

 もっと早く。

 

(こんなんじゃ、一週間特訓に付き合ってくれた箒にーー世界最強の千冬姉にーーオレの親友に顔向け出来ないだろ!)

 

 もっと早く。

  早く。

  セシリアが一夏に狙いを定めるよりも早く。高速で移動をしなければ。

  気付けば、被弾の数は見るからに減っていた。一夏がどれだけ高速で移動しようとも、ハイパーセンサーが動体視力を補助してくれて、視界は快適。加えてズーム機能。セシリアの顔も良く見えて、一夏の動きに苛付きながらスターライトmkIIIの引き金を引いているのが分かる。

  剣道の試合に於いて、焦った方が負ける。そんな持論を特訓の最中に箒が語っていたのを不意に思い出す。

 

(落ち着け、俺。オルコットさんは今焦りながら攻撃をしている。それを上手く逆手に取れれば、俺にも勝機がある筈だ!ーー)

 

 自分の武器を確認してみる。相手が銃を使うなら、こっちだって。そんな対抗心を燃やし、移動しながら装備欄に目を移す。

 

「・・・・・・?」

 

  見間違えてしまったようだ。セシリアの隙を見付けて、もう一度装備欄に視線を。

 

(・・・・・・可笑しい、可笑しいぞ!?何で装備欄には刀一本しか表示されないんだ!?)

 

 訳が分からないが、やるしか無い。刀を取り出し、構える。今いる場所が空中なので、剣道のような構えにはどうしてもいかなかった。片手で刀を握りながらセシリアの方へ飛ぶ。

 

「銃に刀で挑むおつもりで?笑わせないで下さいな!」

 

 閃光。一夏は機体を滅茶苦茶に動かしてそれを躱しながら飛び続ける。どうやら、初心者特有の予測出来ない動きが、セシリアには効いているようだ。

 

「喰らえ!」

「くっ・・・!」

 

 刀を横薙ぎに振るう。セシリアはそれをスターライトmkIIIで強引に受け、振り払う。体勢を崩した一夏の腹に、容赦無く引き金を絞った。

 

「ぐあっ!」

 

 飛ばされ、最初の距離感に戻される。攻め切れない事実に歯噛みしていると、一夏の周囲を何かが飛んでいる事に気付いた。

 

「何だ?」

 

 視界にソレの正体が表示された。ブルー・ティアーズのどうたらこうたらと堅苦しい説明が分かり易く(分かり難く)書かれていた。

  要するに、セシリアの装備の一つらしい。

  白式が分かり易く名称を考えてくれたようで、一夏はそれに倣ってビットと呼ぶ事にした。

  ビットの数は合計四つ。一夏の周りをグルグルと回っている。

 

「初心者にしては耐えた方ですが・・・もうお終いですわね」

「まだ分からないだろ」

「いや、分かりますわ。ほらーー」

 

 一夏の死角からビットに攻撃され、被弾。衝撃に合わせて白式のエネルギー残量が減った。

  ビットは立て続けに攻撃する事は無く、セシリアが会話している間はグルグルと一夏の周りを周回するに留めていた。余裕の表れか?と一夏はセシリアを怒りの感情で睨む。

 

「弱者に睨まれても、わたくし全然怖くありませんことよ?」

「ッ・・・・・・!」

「大体、もう一人の馬鹿はどうしたんですの?わたくしに結婚しろと威勢良く言い放っておきながら、まさか最初のお相手はあなただったなんて」

「そう残念がるな。光也は、一度言った事は必ずやり遂げる男だ」

「残念がってなどいません!」

「そうかよ・・・生憎だが光也は、今お前を倒す為のイメージトレーニングで忙しいんだ。だから、俺が先に出た」

 

 光也の事情を明かす訳にはいかなかったので、一夏は即興でそれっぽい言い訳を考えた。しかしセシリアはその言葉を少しも信じていないようで。鼻でフンッと笑いながら否定する。

 

「どうだか。怖気付いただけではなくて?」

「そんな訳ねぇだろ!」

「一人は銃に刀で挑む愚か者。もう一人はわたくしに恐れを為した臆病者。あぁ、恥じる事はありませんよ?男とはそういうモノなのですから」

「ッ!!」

 

 その一言が決定打だった。親友と男を馬鹿にされた怒りが、一夏の背中を押す力となる。その力は偶然にも瞬時加速(イグニッションブースト)という形で、一夏にチャンスをもたらした。

 

「あなた、そんな芸当を!?ーーく、このッ!」

 

 セシリアがビットを操作し、一夏の前に移動させる。四つのビットは瞬間的な盾となり、一夏の行く手を阻む。

 

「邪魔だ!」

 

 しかし、瞬間的は瞬間的。盾は一夏による一閃でいとも容易く爆散し、その爆煙の中から、機体に煙を纏わせている一夏が飛び出す。

  それをハイパーセンサーで見ていたセシリアの目は、白式の色が変わっている事に気付いた。先程迄は、真っ白には届かない名状し難い色をしていたのに、今は真っ白だ。その理由は、機体の速度と、一夏の手に握られている刀が変形していたのですぐに理解する。

 

「まさか、今迄初期段階のまま戦っていたと言いますの!?」

 

  両者間の距離、僅か。

  セシリアは一夏が今迄初期段階で自分と戦っていた事と、ビットを破壊された事による驚きのあまり、次の行動に移せなくなっている。

  一夏は対象との距離感を把握してから、変形した刀ーー零落白夜を振り被る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 織斑一夏対セシリア・オルコットの決着が付く数分前。ピット内にて。

 

「・・・・・・織斑君、凄いですね」

 

 ピット内のモニターで試合を観戦している真耶は、隣で試合を観ている千冬に話し掛けた。その際にチラリと横顔を窺う。

 

「いや、まだまだだ」

「そうですかね?代表候補生相手にこの立ち回りは、中々だと思いますけど」

「アイツは焦っている。落ち着けと自分に言い聞かせているんだろうが、その自己暗示で焦ってしまっている。アイツは一つの事に関する集中力は上だが、それ以外は駄目だ。ほら、観てみろ。手のひらを開閉させているだろう?あれをやる時は、大抵初歩的な事でミスをする」

「あっ、被弾しちゃいましたね・・・」

「ほらな。・・・しかし、アイツの装備も刀一本だけ。攻めあぐねているようだな」

 

 画面の向こう。一夏は飛び回りながら刀を一生懸命振り回しているが、セシリアには当たらず、カウンターで攻撃を喰らっている。

 

「大丈夫でしょうか、織斑君」

「さあな。ーーおい、そっちはどうだ?」

「うん、概ねバッチリ。みっくん、コレを起動させてみてくれるかな?」

「了解っと」

 

 柔軟をしていた光也は、それを切り上げてラファール・リヴァイブに近付く。一夏が頑張っているのだ、オレも負けていられない。そんな思いを持ちながら近付く。

  ラファール・リヴァイブの隣で何やら調整をしていた束の目は少し充血しており、光也は申し訳無い気持ちになった。

 

「束姉、本当にありがとうな」

「い、いきなりどうしたの?嬉しいけど」

「束姉が、オレ達の為にここまでしてくれているのが堪らなく嬉しいんだ。・・・女の子には死んでも危害は加えるつもりは無ぇけど、オレ、頑張るから」

「みっくん・・・・・・」

「おい、何を良い雰囲気を醸し出しているんだ。試合が終わったぞ」

「どっちが勝ったんだ!?千冬ちゃん!!」

「落ち着け。勝ったのはオルコットだ。一夏も惜しかったんだがな・・・エネルギー残量の計算がまだ出来てなかったようだ」

「な、何だと・・・・・・?」

「まぁ、一夏も良くやっていた。戻ってきたら労ってやれ」

 

 そう語る千冬は僅かながら優しい笑みを浮かべていて、それを見た光也は、一夏が代表候補生相手にどれだけ健闘したのかを悟った。

  釈然としない顔で一夏がピットに帰還。千冬に教えてもらっていたISの解除方法で白式を待機状態に戻した一夏の元へ、光也は準備そっちのけで駆け寄った。

 

「一夏ちゃん!」

「光也!」

「凄ぇじゃんかよ、一夏ちゃん!セシリアちゃん相手に引けを取らなかったらしいじゃねェか!」

「あぁ、俺も良い所迄行ったと思ったんだけど・・・何で負けたんだ?」

「エネルギー残量を考えないからだ、馬鹿者」

「千冬姉」

「まぁ、それに関しては後ほどみっちり教えてやるから覚悟しておけ」

「光也ぁ・・・」

「お前は良く頑張ったよ。ゆっくりお休み。心配しなくても大丈夫、誰にも邪魔されないから」

「死ぬ間際の人間に言う台詞だよな、それ!」

「ふざけるのは全てが終わった後にしておけ。・・・オルコット側の機体の整備や補給等の事を考えて、光也の出番は四十分後だ。心の準備を済ませておけよ」

「了解!千冬ちゃんに名前で呼んでもらえたオレは無敵だぜ!」

「唐澤、あまりアイツを待たせてやるな。行け」

「んもう、千冬ちゃんったら照れ屋さぐほぁ!!」

 

 千冬から愛のある腹パンを頂戴して、束の元へ戻る。光也が戻ると同時に箒が一夏に駆け寄り、何やら笑顔で話していた。

 

「ごめん、束姉」

「ううん、平気平気。ーーじゃあ、改めてISを起動させてくれるかな?四十分しか無いけど、簡単な操作ならここでも出来ると思うから」

「了解」

 

 頷き、手を伸ばしてラファール・リヴァイブに、触、れ・・・・・・るーー

 

 

 




次回で、クラス代表決定戦は終わる予定です。

俺、この戦い(クラス代表決定戦)が終わったら、めいいっぱいふざけるんだ・・・。

どのキャラが好き?

  • 一夏ちゃん
  • 箒ちゃん
  • セシリアちゃん
  • 鈴ちゃん
  • シャルちゃん
  • ラウラちゃん
  • 千冬ちゃん
  • 束ちゃん
  • 蘭ちゃん
  • 弾ちゃん
  • 光也

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