ISなんかどうでも良いから女の子とキャッキャウフフしたい。   作:大塚ガキ男

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また一つ歳を取りました。

メモリーカードを買ったので、ようやくラブアンドパージが出来ます。ワクワクです。


4話

「・・・・・・で、この状況はどォいう事でせうか?」

 

 朝起きて、束からの『IS出来たよ!』というメールを読んで驚きと共に目が冴えて、箒と一夏がギクシャクしつつも並んで朝ご飯を食べてるのを見て一安心し、穏やかな気持ちで臨んだ朝のHR。教室に入って来た真耶と千冬にプロポーズ紛いの挨拶をしてーー気付いたら首元に出席簿が当てられていた。これから本気で行くぞ、と言わんばかりに光也の首元をトントンと出席簿で軽く叩き、狙いを定めている。

 

「キサマヲコロス」

「ちょ、ちょっと落ち着いて下さい織斑先生!いつもと様子が違いますぜ!?」

「キサマヲコロス」

「駄目だ話が通じねェ!」

「光也、取り敢えず逃げーー」

 

 姉の只ならぬ気配を察した一夏が、その旨を親友に伝える途中。気付いたら光也が机に伏していた。一夏が驚いて千冬を見るが、当の本人は事も無げに出席簿に何かを書き込んでいた。先程のような素振りは見せていない。動作も見えず、音も聞こえていないのに光也は何故か机に伏したまま起きない。ついに人間辞めたか、と一夏は姉に畏れの念を抱き、光也に黙祷を捧げた。

 

(光也が何をしたのかは知らないけど、御愁傷様)

 

「さて・・・この屑の事は放っておく。HRを始めるぞ」

 

 

 千冬だけが知っている千冬の怒りが、千冬の中で燻ったまま、時間は進みーー

 

 

「ーーハッ!」

「光也、大丈夫か?」

「危ない所だった。所持金無くて助かったぜ」

「渡り賃云々の所まで行ってたのか!?」

「やっと起きたか、馬鹿」

「千冬ちゃんに臨死体験させられてたんですけど・・・・・・で、どうかしたん?千冬ちゃん」

「敬語を使えこの屑」

「罵倒がクセになりそうーー織斑先生、何でしょうか?」

「・・・・・・まぁ良い。今クラス代表を決めている。織斑とお前に推薦があった」

「へぇ、誰がオレを推薦してくれたんですか?嬉しいなァ。是非友達になりたいなァ」

「俺だけど」

「クソ!これを切っ掛けにクラスの女の子とキャッキャウフフ出来ると思ったのに!」

「俺とキャッキャウフフするか?」

「止めろ!一夏ちゃんがソレを言った瞬間に、女の子の目が光ったのをオレは見逃さなかったからな!」

「兎に角。二人もクラス代表は要らんからな。話し合ってどちらがクラス代表になるかをーー」

「納得出来ませんわ!」

 

 光也と一夏。どちらかがクラス代表になるという形で話が進もうとしていた所で、誰かの言葉が割って入る。声の方を向かずとも、光也は瞬時に理解した。

 

「セシリアちゃん?」

「こんな助平と無能にクラス代表を任せるなんて、皆様正気ですか!?」

「待ってくれよセシリアちゃん!確かに一夏ちゃんは助平だし無能だし、ついでに言えば不能だけれども!」

「おい待て!少なくとも助平は光也の事だし、俺は不能じゃない!」

「オレのどこが助平だって言うんだよ!どこからどう見てもイケメン好青年だろうが!」

「授業中、床に落とした消しゴムを拾う振りして山田先生の胸を見上げてたのは知ってるんだからな!」

「バレてた!」

「そんな事してたんですか!?」

 

 今知った衝撃の事実に真耶は驚くが、二人は構わずに口論を続ける。この口論の発端である筈のセシリアをも置き去りにして。

 

「大体、一夏ちゃんだって人の事言えねェだろ!千冬ちゃんと学校で再会したその日の夜、嬉し過ぎてニヤニヤが止まらなくて『うわー。超嬉しい。うわー!』しか言わなくなったのはどこのどなたでしたっけェ!」

「ちょ!それは無しだろ!」

「一夏・・・・・・」

 

 額を押さえ、嘆息する千冬。口論は止まらない。それどころか話は段々と変な方向へ進む。

 

「そもそも光也は人の名前覚えるの苦手クセして一年生全員の顔と名前を一致させた上に、最近寝る間も惜しんで二、三年生に迄手を伸ばしてる頑張り屋さんだって事、俺は知ってるんだぞ!」

「それを言うなら一夏ちゃんだって、同室の箒ちゃんに迷惑掛けまいとメールでオレに何時間もアドバイスを求めてきたイケメンの鑑だろうが!」

「・・・・・・光也!」

「・・・・・・一夏ちゃん!」

「「愛してるぜ!」」

 

 ひしっ、と涙を流しながら抱き合う。

 

「訳が分かりませんわ!」

「・・・アレ、何の話だっけ?」

「おいおい一夏ちゃん。ついさっきの会話をもう忘れちまったのかよ」

「悪い、どんな感じだっけ?」

「勇気を振り絞ったセシリアちゃんが、顔を真っ赤にしながら大衆の面前でオレに告白してきた大事な場面だろ」

「あー、そんな感じだったな」

「嘘をおっしゃらないで下さります!?」

「これから真実に変えてみせるさ。・・・・・・って、ほら皆。ここはキャー!って黄色い悲鳴を上げる所だぜ?」

「キャー!」

「野郎の悲鳴は要らねェんだよ!」

「あぁもう!次から次へと!」

「おい、唐澤。織斑。オルコットが何か話したい事があるみたいだぞ。黙って聞いてやれ」

 

 セシリアがこれから言おうとしている事を知ってか知らずか、千冬が馬鹿コンビを諌めてからセシリアに続きを促した。セシリアが放った言葉の数々を要約すると、

  やれ、男がクラス代表なのは恥晒し。

  やれ、極東の島国。

  やれ、文化的に大きく後退している。

  etc・・・。先程まで光也とふざけまくっていた一夏だが、知らない内に憤慨していた。自分を馬鹿にされるのは許せるが、男性や日本を馬鹿にされるのは我慢ならなかったのだ。ふつふつと怒りは積もり、発する声が低くなっていく。

 

「おい、オルコットさん。今の言葉、撤回しろよ」

「真実を言っただけですわ」

「ふざけんな!」

「まぁまぁ、二人共落ち着けって。ーーそれで?千冬ちゃんはこんな状況を解決する方法を知ってるんですよね?」

「まあな。おい、馬鹿三人衆」

「わたくしは馬鹿ではーー」

「馬鹿同士仲良くやりやしょうぜ」

「いやぁぁぁぁ!」

「・・・・・・続けるぞ。お前等三人には、一週間後に第三アリーナで戦ってもらう。三人の内、一番強い者が晴れてクラス代表だ。分かり易いだろう?」

 

 クラス内が騒つく。

 

「賛成だ。しのごの言うより分かり易い」

「わたくしも構いませんわ。このセシリア・オルコットに巫山戯た態度を取った事を後悔させてあげます」

 

 一夏とセシリアは早くもやる気で、睨み合って火花を散らしている。どこからか、『降参した方が良いんじゃない?』と心配の声が聞こえてきた。勿論、一夏と光也に向かって。

  片や、未だ実践経験の無い素人×2。

  片や、ISへの搭乗時間300時間を越すイギリスの代表候補生。

  戦わずとも、勝負は目に見えているというモノだ。

 

「ハンデを差し上げますわ。貴方はそこの助平と手を組んでーーつまりは二対一で戦いましょう」

「ハンデ?そんなの要らねぇよ。寧ろオルコットさんこそ、ハンデが無くて良いのか?」

 

 言った瞬間、教室のあちこちから失笑。何故笑われたのか分からずに戸惑う一夏に、光也が耳打ちした。

 

「一夏ちゃん、男の方が女より強いーーなんて時代はとっくのとうに終わってるんだぜ?今は女尊男卑。女の子の方が遥かに強い時代だ」

「あー・・・そう言えばそうだっけ」

「てか、何でオレ迄戦いに巻き込まれてるんですかね!?」

「あれだけわたくしを馬鹿にしておいて、戦わないとおっしゃるのですか?」

「当たり前だろ!何でIS学園に入ってまでISで戦わなくちゃいけねェんだ!」

「馬鹿だ・・・」「大馬鹿ですわね・・・」

 

 呆れた目で見つめてくる二人は気にせずに、光也は主張を続ける。

 

「そもそもISは束姉が発明したーー宇宙を夢見た束姉が発明した、最高の機械だろ?それを、たかが高校生如きの口喧嘩の延長線上で使って良い訳がねぇんだ」

「良い事を言うじゃないか、唐澤。建前を抜きにして言ってみろ」

「女の子と戦うなんてヤダ!ISなんかどうでも良いから女の子とキャッキャウフフしたい!」

「素直でよろしい。だが、お前は推薦された身だ。推薦された事に責任を持ち、戦え」

「い、いや、でもーー」

「何を渋っているんですの?まさか、負けるのが怖くなりました?」

「・・・・・・セシリアちゃん。オレは別に、負けるのは怖くなんかねェよ。ただ、女の子に手を上げるのが許せないだけでーー」

「安心なさいな?貴方如きがわたくしに傷を付けるなど、天地がひっくり返ってもありえませんから」

 

 髪をかき上げながらキメるセシリア。自分の主張がいまいち相手に伝わっていない事に、光也は歯噛みする。光也自身、決闘なんて本当にどうでも良いのだ。

 

「光也、諦めろって。ISに関わった以上、女子と戦わないなんて不可能だ」

 

 一夏が光也の肩に手を置き、諭す。

  何せ、光也が手を上げる事の出来る例外は二人しかいないのだ。しかも、その内一人は自分自身。

 

「あぁ、クソ!戦いたくねェよ!」

「そう嘆くなって。オルコットさんをぶっ倒して、皆に謝らせれば万事解決だ」

「謝るのはそちらの方ですわ!」

「・・・オレと一夏ちゃん。それと男性と日本が馬鹿にされた云々は、すっげーどうでも良いんだけどな」

 

 睨み合う一夏とセシリア。話を聞いてもらえない光也は、一人溜め息を吐いた。

  セシリアがニヤリと笑いながら(その仕草も優雅で光也のハートを撃ち抜いた)、二人に向かって言い放つ。

 

「そちら側が負けたら、貴方達は一生わたくしの奴隷としてこき使って差し上げますから」

「ーーよし、やる気出てきた」

「ちょっと待て!光也のソレは『やる気』じゃなくて『負ける気』だろ!」

「馬鹿言え、セシリアちゃんの奴隷だぞ?あわよくば『奴隷』の二文字の前に『性』が付くかも知れないんだぞ!?」

「馬鹿言ってるのそっちだろ!この助平!落ち着けって!」

「・・・いや、待てよ?オレが勝ったらどうなるんだ?」

「好きにして構いませんわ。わたくしは負けませんから」

「マジで!?セシリアちゃん今の言葉覚えといてな!?」

「勿論ですわ」

「よっしゃ!やってやるぜ!!」

 

 戦う理由を見付けた光也は天に拳を突き上げてから、その拳をセシリアに向けて下ろした。それから、人差し指だけ伸ばして指を指す。

 

「セシリアちゃん。もしもオレが勝ったら、結婚を前提に付き合ってくれ」

「はい!?」

 

 セシリアは自身の耳を疑った。コイツは、まだそんな事を言っているのかと。その件は昨日、セシリアが光也を振って終わりになったのではないのかと。

  しかし、目の前に立つ光也の瞳は真剣そのもの。セシリアは、もう一度確かめるように光也に問うた。

 

「・・・本気ですの?」

「あぁ。いきなり求婚するのは流石にやり過ぎだと思ったからな。付き合ってから、互いの事を知って、それから結婚しよう」

「ッ、絶対に負けられませんわ!」

「奇遇だな、オレも同じ事考えてた。やっぱり運命?」

「世の女性の為に死になさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 オマケ。〜とある人物との電話〜

 

 

 

 

 ?『近々、日本に行く事が決定しました。光也殿に会えるのを楽しみにしてます』

 

 光也『あ、久し振り。日本に来るのか?そしたら、観光は任せてくれて良いんだぜ☆』

 

 ?『観光は・・・。まぁ、少なくとも三年間はそちらに在住するかと』

 

 光也『へぇー、そうなんだ。細かい日にちとかわかったら連絡して。空港迄オレが迎えに行くから』

 

 ?『いや、光也殿の手を煩わせる訳には・・・』

 

 光也『気にすんなって。オレが行きたいだけだから』

 

 ?『ッ!は、はい!よろしくお願いします!』

 

 光也『おう。・・・・・・それで、要件はそれだけ?』

 

 ?『あ、その、IS学園に入学したと聞きましたが。どうですか?』

 

 光也『どうですか?って、また曖昧な。まぁ、楽しいよ。昨日も今日も美人にプロポーズしたし』

 

 ?『(ミシッ・・・!)』

 

 光也『え、何の音!?大丈夫!?』

 

 ?『相手はダレデショウカ?』

 

 光也『あの、・・・すみません。ちょっとした嘘でした。だからその恐ろしい声と、電話越しに抹殺とかブツブツ呟くのを止めて下さい』

 

 ?『・・・・・・嘘、ですか?』

 

 光也『はい』

 

 ?『・・・そ、そうですよね!光也殿はそんな気軽に女性にプロポーズするような軽薄な人ではありませんよね!』

 

 光也『ア、アタリマエダロー?』

 

 ?『よく考えてみればそうでした。疑ってしまい申し訳ありません。ーーでは、私はこれで』

 

 

 ブツリ。

 




果たして、光也はセシリアとの決闘に勝利する事が出来るのか!?そして、電話の相手は一体誰なのか!?

最近、友達の家でファイズを見始めました。話面白いし、海堂がメッチャ格好良いので好きです。

どのキャラが好き?

  • 一夏ちゃん
  • 箒ちゃん
  • セシリアちゃん
  • 鈴ちゃん
  • シャルちゃん
  • ラウラちゃん
  • 千冬ちゃん
  • 束ちゃん
  • 蘭ちゃん
  • 弾ちゃん
  • 光也

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