ISなんかどうでも良いから女の子とキャッキャウフフしたい。 作:大塚ガキ男
光也と誰かがふざけている時が一番筆が進みます。
ガチガチ、と歯と歯が触れて音を奏でている。
限界迄開かれた目は、一点を見つめている。
その他諸々、平常時ではあり得ない身体の現象のオンパレード。美少女を前にした際の極度の緊張によるモノだ。
目の前には金髪の美少女。綺麗な目は、光也の状態を見て怪訝そうに細められている。
ーー話し掛けられた。その事実を受け入れた光也が、最初にすべき行動とは?そんなの、決まっている。
「お初にお目に掛かります、セシリア・オルコット様」
椅子から立ち上がり、その場で床に片膝を付いて恭しく頭を垂れる事だ。セシリアは然程驚かず、「あら」と一言漏らした。
「頭を上げて下さいな、唐橋光也さん。わたくし達はクラスメイトなのですから」
「はっ」
光也は頭を上げて、改めてセシリアの姿を謁見する。光也は無意識の内に呟いた。美しい・・・と。勿論、膝は未だ付いたままだ。
「オルコット様」
「何ですの?」
「貴女のーーいや、この口ではとても語り切れない程の魅力を放つ貴女に一目惚れしました。オレと結婚して下さいお願いします」
「は、・・・はい?」
「I.LOVE.YOU」
「英語で言えば良いと言うものではありませんわ」
「月が綺麗ですね」
「今はお昼ですし、文学的に言えば良いと言うものでもありませんわ!」
「えーっと、えーっと・・・」
「良いですこと?いくらわたくしの家の遺産が目当てだからと言って、もう少し『取り繕う』という事を覚えた方がよろしいのではなくて?」
「遺産なんて知らない。オレは貴女が欲しい。オレから溢れ出る
敬語を取り止め、光也は訳が分からないといった表情でセシリアに問うた。真面目に、疑問をぶつけた。
それに驚くセシリア。今迄様々な男に言い寄られたその経験から、男を見る目はかなりあると自称している。しかし、今迄の経験を蓄えたその目で光也を見ても、光也からは他意は感じられないのだ。金を求める者の目はとても分かり易い。しかし、目の前の男の目にはそれが感じられない。セシリアは困惑する。
「正直に答えなさい」
「はい」
「何が目的で?」
「美少女とイチャコラしたいーーその一心で(キリッ)」
「表情だけ見れば、一流の
「返事を聞かせてくれねぇですか?」
「そ、そんなの決まってます!ノー、ですわ!」
「な、何だってー!?」
「当たり前でしょう!何故、このわたくしが見ず知らずの男と結婚しなければいけないのですか!?」
「どうすりゃ良い!オレはこの気持ちをどうすりゃ良いんですか!」
「知りませんわ!」
項垂れる。光也の絶望を助長するBGMとして、チャイムが鳴った。「ふんっ」とセシリアは自分の席に戻っていく。
余談だが、教室に戻ってきた一夏は真っ白に燃え尽きた親友を目にして大層驚いたそうな。
「オレはもう駄目だ・・・」
「何がどうしたんだよ、光也」
「もう、駄目だァ・・・」
「だから、どうしたんだよ!しっかりしろって!らしくないぞ!?」
虚ろな瞳でブツブツと呟き続ける光也の肩を、一夏が意識を取り戻させる為に強引に揺さぶる。授業が終わり、放課後になったばかりの出来事だ。
一夏は動揺していた。自分の唯一無二の親友である光也の、普段はあまり見られない今の状態にどうしたら良いのか分からないのだ。
(どうしちゃったんだよ・・・。いや、落ち着くんだ、俺。今の光也の状態に前例は?ーーそうだ、アレは去年のクリスマス。街に繰り出してナンパして、こっ酷く断られた時のアレに似ている!)
「ーーって、おい!女子にフラれただけだろ!」
「大当たりですよこの野郎・・・」
「よ〜く思い出したら、光也がそこまで落ち込むのって女子関連でしか無いんだよな」
「その他の一切では血も涙も無いーー格好良いだろ?」
「寧ろ、そんな奴が女子関連には滅法弱いっていうのはクソダサいと思う」
「厳しーな」
「思いやりだから」
「もう、一夏きゅんったら///」
「・・・・・・」
「無反応って辛いんだな、って・・・」
「いや、ごめん。想像以上にキたから」
「フォローしてるつもりかよォ」
いつの間にか調子を戻した光也に安心した一夏は、思い切って問うてみた。
「なぁ、誰にフラれたんだ?」
「あそこの超絶美少女・・・・・・」
気不味さ故か、それとも恥ずかしさか。光也は俯いたままセシリアを指差した。『超絶美少女』という単語に反応したセシリアはピクリと肩を揺らす。一夏は「へぇ」と納得したのかしてないのか分からない声を発した。
「・・・・・・誰、あの子」
ガクリ。一夏を除いたクラスの全員が一昔前ではお馴染みの反応をした。それはセシリアも例外ではなく、唇をワナワナと震わせながら一夏に近付いてきた。
「貴方、このセシリア・オルコットをご存知なくって!?」
「え?ま、まぁ。自己紹介も光也で終わっちゃったしな」
「イギリスの代表候補生ですわよ?知ってて同然ですわ!」
「あ、そう言えば何で光也はオルコットさんの事を知ってたんだ?」
「二、三年生のお姉様方はまだだが、一年生の可愛い子ちゃんーー即ち一年生全員の名前は把握済みだぜ☆」
「キモいけど凄いな、それ」
「と、言う訳で。セシリアちゃん。オレと結婚してくれ」
「嫌ですわ!」
自らの肩を抱きながら拒絶の意を示すセシリア。光也から滲み出る変人のオーラと、いつの間にか名前呼びされていた事からの行動だ。
「てか、代表候補生って何?」
「え、一夏ちゃん知らねぇの?」
「逆に聞くけど、お前は知ってるのかよ」
「当たり前だろ。良いか?代表候補生ってのはーーほら、オレってモテモテだろ?当然、そんなオレと結婚したい子は沢山いる。だけど、この国では一夫多妻制は認められていない。だから、代表を一人に決めてオレと結婚する。その代表の候補の一人って事だ」
「ビックリする程違いますわ!」
「へぇ、そうなんだ」
「貴方も納得しないで下さいな!」
ツッコミ疲れたセシリアは、「良いですこと?」と先に話す事によって二人を黙らせた。
「代表候補生とは、その名の通りISの国の代表の候補生ーー数多の試練を乗り越えたエリートの事ですわ。しかも、わたくしのIS適正はA+。加えてわたくしは専用機を所持しているーーこの意味をお分かりで?全世界に467機しか無いISの内の一つをこのわたくしが持っていますのよ?貴方達は運が良いですわ。全人類60億超の中のエリート中のエリートであるわたくしと同じクラスになれたのですから」
「やったぁぁぁぁ!」
「貴方は少し黙りなさい!」
「代表候補生、言われて見れば名前通りだな。ラッキーラッキー」
「・・・・・・貴方達、わたくしの事を馬鹿にしてまして?」
「一夏ちゃん!いくらお前でもセシリアちゃんを馬鹿にするのは許さねぇからな!」
「貴方もその片割れである事をお忘れでは!?」
光也がボケれば(真面目かもしれない)、セシリアがツッコミを入れる。そんなルーティンを幾度か繰り返していると、真耶が馬鹿コンビ(セシリア命名)に声を掛けた。セシリアは仕方無くその場から去る。去り際に「覚えてなさい!」と言うのも忘れなかった。
「早速お友達が出来たようで何よりです」
「山田先生、今のやりとりがそう見えました?」
「え、違いましたか?」
「・・・・・・違いません」
真耶の瞳には、放課後に仲良く話す友達に見えたようだ。一夏は訂正しようとしたが、ほんわかしたその空気にやられて諦めた。
「それで、真耶ちゃんは放課後に何用で?まさか、オレへの愛の告白!?」
「はぇぇ!?」
「光也、山田先生を困らせるなって。ーーんで、どうしたんですか?」
「あ、ああそうでした。二人には寮生活をしてもらうので、部屋の番号を教えに来たんです」
「え、寮生活?部屋割りの調整の影響とか何とかで、俺と光也は一週間は自宅通学と聞かされてたんですけど」
「事情が変わりまして、今日からお願いします」
「えー、折角この後一夏ちゃんと飯食いに行こうと思ってたのになー。悲しいなー。もうこの悲しみは真耶ちゃんのおっぱいを揉みしだかないと癒えそうにないなー」
「・・・・・・」
「無言で自分のおっぱいをガードするジト目の真耶ちゃんも見れたし、オレの今日のノルマは達成したな」
「どんなノルマだよ」
「ほら、オレって可愛い子成分を補給しないと死に至る病だから」
「千冬姉にお願いして光也を男子校に放り込んでもらおうかな」
「やめてくれェ!」
「え、えーっと、話を戻して良いですか?」
「「どうぞどうぞ」」
一通りふざけてスッキリした二人は、真耶に続きを促す。この二人の仲が良い要因の一つに、互いが互いのノリを分かっているという点がある。ボーダーラインを弁えているので、幾らでもふざけられるのだ。
「いきなり寮に入ってもらう理由なんですけど、その前に唐澤君と織斑君って、自分の立場って理解していますか?」
「世界的に見ても極めて珍しい男性の操縦者」「この学園でハーレムを築ける選ばれし男」
「織斑君、正解です。唐澤君には今度みっちり補習を用意しますからね」
「やったぁぁぁぁ!」
「ハァ・・・」
「山田先生、光也はこう見えても良い奴なんです。ちょっと助平で頭のネジが緩いけど」
「と、兎に角、二人にはちょっと外を歩くだけでも護衛が必要な程の国家的重要人物なんです。一週間も自宅から通うのは、危険なので・・・」
「だから、一刻も早く寮に入れようって事なんですね。分かりました。でも、荷物も何も準備出来てないんですが・・・」
「その点については安心しろ。ほら」
「千冬姉?ーーよっと」
突然現れた実姉に驚きつつも、投げられた荷物を受け取る一夏。
「これは?」
「私が手配をしておいてやった。着替えと携帯充電器があれば大丈夫だろう」
「千冬ちゃん。一夏ちゃんにはベッドの下のエロ本も必需ですよ」
「何だと!?一夏、私に隠れてそんな物を所持していたのか!」
「してないって!」
「まぁ、そのエロ本はオレが意図的に一夏ちゃんの部屋に置き忘れた一冊なんですけどね」
「友達の家にエロ本を持って行くなよ!」
「一夏ちゃんがエロ本欲しそうなオーラ出してたからな。気を利かせてこの前こっそり」
「そんなピンポイントなオーラ出してないから!」
「ほら、黙れ。・・・同居人に迷惑かけないようにしろよ」
「同居人ってーー俺の同居人は光也じゃないのか?」
「そうだよ千冬ちゃん。オレもてっきりそのつもりでいたんだけど」
「残念ながら、違うぞ」
放課後だからか、一夏と光也が敬語を使わなくても怒らない千冬。発言してから一夏は自分の失態に気付いたが、怒られなくて内心ホッとした。
そんな一夏の耳に入る、千冬からの衝撃的な一言。
「お前の同居人は女子だ」
「はい!?」
「ほら、これが部屋の番号だ。さっさと行って挨拶の一つでもしろ」
「え、わ、分かったよ」
急かされるままに荷物を持って、部屋の番号を見ながら一夏は歩き出した。
教室に残されたのは、光也と真耶と千冬。
「千冬ちゃん。オレは!オレはどんな女の子と同室なんでしょうか!?」
「お前は一人だ」
「ガッデムッ!!」
「自分の行動を思い返してみろ」
「・・・聖者ですね」
「な訳あるか。お前と女子を同室にしたら間違い無く問題が起こるからな。お前は二人部屋を一人で使え」
「そんな!せめて千冬ちゃんと同室が良い!」
「・・・嫌だ」
「おや、無理ではないのかなァ?」
「・・・無理だ」
「あれ?顔赤くない?ねぇねぇ?どうしたの?風邪引いちゃった?ねぇ?教えて?無理なの?ねぇねぇ?おーい?千冬ちゃん?顔赤いよね?ね?」
「ッーー死ね!」
「グボァ!?」
千冬の本気の蹴りを食らった光也は、机を薙ぎ倒しながら吹き飛んだ。チカチカと点滅する光也の視界。真耶の悲鳴にも似た光也の名を呼ぶ声。ああ、死ぬのか。自分の意思に関係無く段々降りていく瞼を見て、光也はそう思った。
意識が途切れる直前、光也の顔が柔らかい何かに包まれた。
「おっぱい、最高・・・(ガクリ)」
「唐澤君!?」
そろそろクラス代表を決めなきゃいけませんね。戦闘シーンは大の苦手ですが、自分の脳内バトルが皆様に伝わるように頑張ります。
御指摘、御感想お待ちしております。
どのキャラが好き?
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一夏ちゃん
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セシリアちゃん
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シャルちゃん
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ラウラちゃん
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千冬ちゃん
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蘭ちゃん
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弾ちゃん
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光也