ISなんかどうでも良いから女の子とキャッキャウフフしたい。 作:大塚ガキ男
「浴びたらロリショタ化する薬を作ったよみっくんっ!!」
「よッしゃア早速使おうぜ束姉!!」
「……その前に、束さんがロッカーから出てきた事に驚こうか」
ISを使った実技の授業終わり。つまりは何でもない平日。今日も疲れたなァとか放課後どうするよとか笑いながら一夏ちゃんと着替えている最中。男二人しか使わないのにやたら広い更衣室内で、オレが使っているロッカーのすぐ隣から束姉が薬瓶片手に飛び出してきた。オレも反射的に乗っかってしまったが、よくよく考えたら確かにおかしい──ってなるかい。束姉は凄いんだぞ、IS学園の警備なんて有って無いようなモンなんだからな。
「みっくん久し振りぃ〜〜」
「束姉久し振りィ〜〜」
オレは授業終わりで汗をかいているにも関わらず、構わずひしっと抱き着いてきた束姉。束姉が気にしないなら良いかと、頬擦りされた左頬で頬擦りし返す。
「はぁ……なんか二人を見てると気が抜けるよ」
先に着替え終わった一夏ちゃんは溜め息を吐いてやれやれと首を振りつつも、オレが着替え終わるまで待っててくれた。
ちなみに、オレが授業で着てたISスーツは束姉に回収され、新品の同じサイズのISスーツが手渡された。どうやら、色々アプデが入ってるらしい。
オレの汗を吸ったISスーツを受け取った束姉は「本当にありがとうございます助かります」とやたら真剣な顔で言っていた。何故かは分からんけど助かるならよかった。いや本当に。
そして、それを見た一夏ちゃんが「光也のISスーツに入ってるうさぎのマークって、そういう事か……!」と何やら驚いていた。
今気付いたんかい。
*
「で、と」
「で、だな」
束姉は千冬ちゃんに見つかる前に帰りたいらしく(4徹明けの身体で受ける千冬ちゃんからの折檻は流石にややしんどいとのこと)、薬が入っている小瓶をオレ等に渡してスタコラと退散してしまった。ちなみに使用データは別にいらないらしい。ガチプライベートで大発明かまされてしまった。
「これ、どうする?」
一夏ちゃんが小瓶を摘み、中に入ってる液体をゆらゆらと揺らしながら言った。オレはそれにグーサインと共に返す。
「決まってンだろ、使おうぜ」
「いや、簡単に言うけどな」
「副作用は無ェんだろ? 大丈夫だって」
「でも一晩中って長過ぎだろ」
そう、一晩中。
束姉からの説明によると、この薬をかけられた者は明日の朝までロリショタ化──つまり、小学生くらいの年齢まで若返ってしまうらしい。
その状態で夜眠ると、ノンレム睡眠中に脳から発せられるどうたらがこうたらして効き目が無くなり、元の年齢に戻るらしい。
えっじゃあ徹夜したらそのまま? と聞くと、そもそもの効果時間(今から薬を浴びた場合)も明日の早朝までらしいので安心だ。さっすがは束姉!
朝起きたら元に戻っているか、みるみる身体が成長していくのを体験するかの違い。後者は成長痛が10数秒の内に濃縮されるのでメッチャ痛いからなるべく寝た方が良いらしい。束姉が言ってた。まるで経験者のような口振り──まさか、束姉ったら誰よりも早くロリ化してたッて言うのか!?
「急に立ち上がるなよ。驚くだろ」
「悪ィ。つい」
ちなみに、薬を被った本人は若返っている間の記憶は元に戻る際に消えるらしい。
恐ろしい薬だ。
現在時刻は午後4時。この瓶を持っているところを誰かに見られたら何かと面倒事を呼びそうなので、丁度そこら辺にあった空き教室内でオレと一夏ちゃんはこの瓶について話し合っていた。
女子ズにバレないように、こっそりと、密かに。
誰に使うかを、話し合っていた。
「俺も使ってみたくはあるけどさ。束さんの発明って何かしらヤバい目に遭うから心配なんだよ。特に光也が」
「オレ!?」
「ほら、前にもあったろ。体格が良くなる薬を貰ってその場でグイ飲みしたらたしかに束さんの言う通り身体デカくなったけど、ベルトしてたから危うく胴体千切れそうになったヤツ」
「いっそいで束姉の所行って治してもらったヤツな。束姉の前でベルト外そうとカチャカチャしてたら、丁度その場に出くわした千冬ちゃんにクッソ叱られたりな」
「光也氏災難でワロタwww」
「急に古いオタクになんな」
「でも、思い出として語る分には傑作だったなぁ……」
「本当になァ……」
窓の外の斜陽を見ながら、二人してしみじみと思い出に浸る。数秒。
「──ッて、しみじみしてる場合かよ! 早い所薬使わないと、明日の朝にギリギリ間に合わねェかも知んねぇぞ! 朝のHRに小学生が混じってるのは流石にマズい!」
「あぁ〜〜〜〜もう、わかったよ! 使おう! そんで二人で怒られよう!」
「よっしゃ、それでこそ一夏ちゃん! これでオレ等二人は──」
「「共犯だッ!!」」
カチカチに固い握手を交わし、ニヤリと笑う。一夏ちゃんもこういうところは男子脳なので、一緒にいるとマジでオモロい。オレ等ズッ友だかんな!
「そんで、誰にぶっかける?」
「言い方な──確かに、誰にかけたら面白いかな」
「この小瓶の量だと、果たして何人にかけられるのか〜ッと」
出来れば女子ズのみんなにかけてオレの知らないロリのみんなを見てみたいところだが、この小さな瓶でどれだけの人間を幼く出来るのだろうか。ラベルの反対側の成分表(束姉はこんなところまで手作りしてるらしい)を確認すると、二人分! という文字と共にデフォルメ化された束姉がピースサインをしていた。可愛い〜!
「二人分かァ。束姉的には、オレか一夏ちゃんか千冬ちゃんか箒ちゃんの内二人を幼くして、残った二人にどうにかしてもらおう的な
「光也以外はしっかり者だから後を任せても大丈夫ってことか。納得」
「おいおいおいおい、オレだって中学生の頃から擬似一人暮らししてるっつ〜〜〜の。3人には負けるけど、オレもそれなりにしっかり者だぜェ?」
意味も無く制服の前を開けて、ガバ開き。パタパタと開閉しながらそう言い放つと、一夏ちゃんは溜め息を吐いた(吐くな)。それから、オレをキッと睨んでからほつほつと語り始めた。
「……二ヶ月に一回は止められてる電気」
「え?」
「……夏の間は払わないガス代」
「んん?」
「……洗濯は着れる服が無くなるギリギリまで回さない」
「おや?」
「……洗剤と柔軟剤の量はフィーリングで入れる」
「雲行きが」
「……干したら雨が降るまで取り込まない」
「怪しく」
「干す前に皺伸ばさないから服に皺残ったまま乾くし」
「なってきたぞ」
「取り込むのも畳むのも面倒だからベランダからその日着る服を取ってそれ以外は出しっぱなし」
「もう頭下げるよ?」
「親から送られてくる生活費をほとんど娯楽に費やすし」
「なんなら下げたよ」
「俺がいなかったら定期的に飯抜くし!」
「語気強くなってきてない?」
「だんでぃ目指してるとか言って特に似合ってないサングラスとか革ジャン買うしッ!」
「それは別にオレの勝手だろ!」
「光也……! こんなに駄目駄目な中学生だったお前がどうして高校生になった程度でしっかり者なんて自称出来るんだ……?」
過去のオレを思い出したのか、泣きながら訴えかける一夏ちゃん。なんて情けない姿だ。いや情けないのはオレだったわ。
一から百まで暴露してくれるな。
「悪かったよ、一夏ちゃん。だから泣くのをやめておくれ」
一応言い訳をしておくと、女の子と会う時はバチバチにちゃんと炊事洗濯何でもばっちこいな感じなの。でも野郎と遊ぶ時(つまりは日常生活)では別に良いだろうという楽観的な、ね。
「──でもさ、確かに光也、あの頃に比べたら多少なりとも人間味ある生活送ってるなってふと思って」
「そう、そうだろ? オレってしっかり者ルート歩んでんだろ?」
酷い言われようだが、流れが変わってきたので必死に肯定。
「なんでかななんでかなって考えたらさ。──光也お前、IS学園入ってから女子陣にお世話されまくってるんだよな」
ズコッ。
オチをつけるな。オチを。
閑話休題。
「どうすんのさ」
「どうしようか」
しっかり者と駄目人間で薬を誰に使うか考える。
どうも、同室のシャルちゃんに家事の全てをやってもらっている駄目人間です。最近おパンツを干されることに抵抗が無くなってきました。
「じゃあ、こうしようぜ。次会った二人に使おう」
勿論、見知らぬ人にかけるわけがない。オレ等は迷惑系IS操縦者じゃないからだ。オレと一夏ちゃんの脳内には、いつメンの姿が共有されているので、いつメンの中で次会った二人に、ということだ。
「……なんか前にもこんなこと無かったか?」
「そうだっけ?」
「ほら、クラス代表決める時あたりの──あっ、そういえばお前女子二人に甘えるってヤツ結局うやむやになってないか?」
「え?」
「あの時は束さんの乱入があったから、あと一人甘えなきゃいけないんじゃないか?」
芋づる式に、するすると思い出していく一夏ちゃん。
まずいな。
あの晩、なんやかんやあって結局千冬ちゃんに甘えまくったんだけど、このことって一夏ちゃんに言って良いのか? 姉としての威厳っつうモンが無くなっちまわねェか?
うーん、分からん。適当にごまかそう。
「喝ッ!!」
「まあいいか」
ふぅ。
うまく行ったぜ。
「気を取り直して──段取りはこうだ。これから二人で空き教室を出て廊下を散策し、いつメンの誰かに会ったら一人が意識を逸らさせて、もう一人が背後から薬を内容量の半分かける」
「そうだな、真正面からかけるよりかは上手くいきそうだ」
「よっしゃ、じゃあ早速
「
オレが立ち上がって天に拳を突き上げると、一夏ちゃんも続く。二人でなら、どこへだって行ける気がした。
空き教室を出て、廊下を歩く。
「あ〜あ、セシリアちゃんにお兄様って呼ばれたいし鈴ちゃんに兄貴って呼ばれたいしシャルちゃんに兄さんって呼ばれたいしラウラちゃんに兄上って呼ばれた〜い! 千冬ちゃんにはお兄ちゃんって呼んでもらってその倒錯感を味わいた〜い! あと帰っちゃった束姉にも使いた〜い!」
「ウキウキだな」
取り敢えずオレ等の教室に向かおうという話になり、道中一夏ちゃんと小瓶片手に他愛も無い会話をしながら歩いていると、廊下の向こうに箒ちゃんが見えた。
「……光也」
「言いたいことは何となく分かるぜ、一夏ちゃん。薬使う相手はいつメンの内の誰かとか言いつつ、愛しの箒ちゃんだけは巻き込みたくないからノーカンとか言おうとしてンだろ」
「よく分かってるじゃないか。ほら、その瓶を貸せ」
「でもよォ〜〜〜〜〜、それって男として〝おかしく〟ねェか〜〜〜〜?」
舌を出して一夏ちゃんを煽ると、一夏ちゃんが眉をヒクつかせながらも頼むから渡してくれと笑顔で言ってきた。
「想い人を護りたいその気持ち、よく分かった。オレと一夏ちゃんは親友だからな。一夏ちゃんの願いは出来るだけ叶えてやりたいよ」
「ありがとう光也、じゃあその瓶を──」
「でも今回ばっかりは駄目だ馬〜〜〜鹿ッ!! オレは遠い昔の記憶のロリ箒ちゃんが、もう一度見て〜の!」
「あ──待て外道!」
走り出す。後ろからはすぐさま一夏ちゃんが、鬼のような表情で追いかけてくる。
懐かしい。中学時代はこのご自慢の脚力でいくつもの修羅場を切り抜けてきたものだ。女の子に追いかけられたり、他校の不良に追いかけられたり、etc……。
だから、オレが本気を出せばいくら一夏ちゃんと言えども決して追い付くことが出来ないのだ。
「バッハハーイ!」
「クソッ、足速ぇ!」
一夏ちゃんの声が段々後方に下がっていくのと同様、みるみる内に箒ちゃんへと近付く。箒ちゃんもこちらに気付いたらしく、二人してこちらに走ってくる姿を見て首を傾げていた。
「おーい箒ちゃん! 一夏ちゃんからのプレゼント!」
「この後に及んで俺に罪をなすりつけようとするな! 逃げろ箒! 光也が持っているのは──」
一夏ちゃんが叫ぶ途中、突如として周囲がスローモーションになったかのように映る。段々と下がっていく視線と、崩れていくバランス。視界から箒ちゃんが見えなくなり、その辺りでようやく理解。
つまりは……まァ、なんだ。
すっ転んだ。
「へぶッ!!」
「光也!?」
顔から派手に転んだ拍子に、オレは持っていた小瓶を手から離してしまう。小瓶はクルクルと回転しながら宙を舞い、箒ちゃんの方へ。
「む?」
しかし、そこは剣道部の箒ちゃん。不意打ちのような小瓶投擲にも一切怯まずに、片手でキャッチ。オレに投げ返してきた。
しかし、そこは帰宅部の光也くん。転んだ姿勢では上手くキャッチ出来ず、伸ばしたオレの手の上を越えていく。
「あ──」
頭上を越えていった瓶の行方を追う為に、腕を立てて膝立ちの状態に。そのままもう一度瓶に向かって手を伸ばすと、キャッチ。瓶は無事手の中に収められた。
ただし、オレの手ではなく後ろにいた一夏ちゃんの手に。
「……」
「……」
見つめ合う二人。片方はダラダラと冷や汗をかいていて、この場合どちらが冷や汗をかいているかは名前を出さずとも明白だった。
「な」
「な?」
「無かったことにできたりする?」
「できない」
一夏ちゃんは優し〜く微笑んでから、目をかっ
キュポン。
蓋を開ける音。
「天誅ッ!!」
「いやァアアアアアアアア!!」
瓶を逆さまにし、中身を全部オレにぶっかける一夏ちゃん。かけられたオレはというと、身体から段々と煙が上がり始めると共に意識が遠くなっていくのだった。
*
「煙で見えなくなったと思ったら、その煙の中から出てきた一人の少年。この少年が光也だと?」
「あ、ああ。束さんの発明の通りなら」
突然巻き込まれた形となった箒が、一夏に状況を確認する。一夏からの説明を受けていた箒は、全く姉さんの所為で面倒なことになったなとぼやいた。
そんな二人の間に、キョトンとした顔をしながら二人の様子を窺っている、ダボダボのIS学園の制服を着た少年が一人。背丈は縮み、表情はあどけなくなり、声は高くなって髪も茶髪から黒髪になった少年──ショタ光也。薬で小さくなった工藤○一みたいだな、と一夏はどこか呑気に考えていた。
箒がしゃがんで視線を合わせ、光也(と思われる少年)を観察する。
「……確かに、小学生の頃はこんな感じの──今みたいに軽薄ではない──ただの元気な男子だったような気もする。おい、光也」
「美人のお姉ちゃん、どうしたの?」
「む、もしや記憶が無いのか」
「多分だけど、見た目と同じで小学生の頃の頭になってるんじゃないか?」
「ここどこ……? 光也って誰……?」
「ま、まさか、全く記憶が無いのか?」
「あるよ」
「そんな! 束さんはそんなこと一言も──あるのかよ!」
一夏がツッコむと、ショタ光也はケラケラと笑った。ああそうだ。コイツは子供の頃から人をからかうのが好きな奴だった。一夏は目の前の
一応明記しておくが、一夏はなにも子供が嫌いで、少しでもナメられたら立場を分からせるようなみっともない男ではない。幼なくとも目の前の少年は間違いなく光也であり、つい先程まで小競り合いをしていたからこそ殴りたいのだ。
「……はぁ」
「どうしたの、イケメンのお兄ちゃん」
「いや、どうしたものかと思ってさ」
光也が転んでいた床には液体が飛び散っている。内容量の全てを光也にかけた筈だが、どうやら適量である半分の量しか肌に吸収されなかったらしい。こういう不測の事態にキッチリ対応してあるのも、篠ノ之束クオリティだ。
「一晩か、長いな」
「そうだろ? 俺は止めたんだけど、光也のヤツ聞かなくてさ」
さりげなく光也に全責任をベットする一夏。こういうところは、しっかり光也の悪い影響を受けている。
「自業自得とはいえ、放ってはおけないな」
「そうだな。放っておくと……」
二人の頭上に浮かぶは、光也大好きっ子クラブ(仮称)の皆さん。その中で小学生時代の光也の姿を知る者は鈴しかいないが、アイツ等なら直感で光也だと気付きかねないという不安(もしくは光也の過去をサーチ済みでそもそも知ってるんじゃないかという不安)が二人にはあった。そして、気付かれたら最後、光也の身が無事では済まないという予感も、二人にはあった。
だから、二人でどうにかしなくてはならない。
光也大好きっ子クラブの会員にバレずに、一晩やり過ごさなければならないのだ。
二人は不本意ながら決意した。ショタ光也を一晩匿い、元に戻るまで面倒を見るという決意をした。
不意に訪れた共同作業的な何かに、お互い少し心が躍っているのは内緒だ。
「アンタ達何してんの?」
「げっ!」
「〝げっ! 〟って何よ。〝げっ! 〟って」
決意失敗。
考え事をしていると、いつの間にか鈴が近くにいた。思わず失礼な反応をしてしまう一夏に、鈴はジト目で返した。
「暇だから話しかけただけじゃない。そんな反応しなくたって──ちょっと、なんで光也が小さくなってるワケ?」
「分かるのか!?」
「当たり前でしょ。幼馴染なんだから」
一夏に説明してもらっても尚半信半疑だった箒とは違い、ノーヒントで目の前の少年を光也だと断定する鈴。あとあまり驚いてない。流石は光也大好きっ子クラブげふんげふん。光也と幼馴染(セカンド)なだけはある。
「それで、なんでこんなことに?」
「実は束さんがさっきまで学園に来てて、対象を小さくする薬を光也に渡して、光也が
一夏は説明をしながらも、責任を逃れることは忘れなかった。
「ふーん……。嘘ね」
「えっ」
そして、バレた。
「アンタ達男子の悪ノリってことくらいなんとなく分かるわよ。どうせ一夏もノリノリで加担してたんでしょ」
「ギクッ」
「……一夏?」
図星を突かれて跳ね上げた肩を、箒に掴まれる。振り返ると、箒は怖い顔をしていた。
その話はまた後で聞くからな。
箒の言葉に、一夏はいずれ来たる未来を思い浮かべて胃が痛くなった。あとなんか〝いずれ来たる未来〟って意味が重複してそうで頭も痛くなった。
頭痛が痛くなった。
……。
「……話を戻そう。光也が
「……確かに、セシリア達に見つかったらとんでもないことになりそうね」
光也大好きっ子クラブのメンバーを思い浮かべて
、先程の二人と同じようにげんなりする鈴。そんな鈴の制服を、光也がちょいちょいと摘んだ。
「どうしたのよ」
「鈴ちゃん、この二人と知り合いなの?」
「あたしのことが分かるの!?」
「当たり前じゃん」
「いや〜やっぱり幼馴染ね! 光也からしたら知らない人達だけど、やっぱり心では繋がってるってことね!」
ショタ光也に認知されてるのが嬉しいのか、隣にしゃがんで光也の頭をわしゃわしゃと撫で回す鈴。
しかし、箒と一夏は何故鈴だと分かったのか不思議で仕方なかった。記憶は小学生の頃のはずなのに、何故当時に出会っていない高校生の鈴を見て鈴だと理解したのだ? と。
その疑問に答えるように、嬉しそうに撫でられている光也が口を開いた。
「すぐ分かったぜ! 服装は違うけど、鈴ちゃんそのままだもん!」
「……」
「……」
「……」
瞬間、冷え切る場の空気。鈴は笑顔で光也を撫でている姿勢のまま固まってしまった。
箒と一夏が、どうしたものかとお互い目を合わせる。どうやってフォローを入れようかと、脳をフル回転させて考える。
まぁ確かに、鈴って小学生の頃も髪型ツインテールだったし、IS学園で光也と再開した時も全然変わってないって言われてたしな。
一夏は心の中でうんうんと頷いた。
「一夏、殴るわよ」
ボコっ。
「本当に殴る時は言わないセリフだぞ、それ!」
グーで殴られた一夏が頬を押さえながら抗議するも、鈴は素知らぬ顔で光也の両こめかみをグリグリしてお仕置きをしていた。何がなんだか分からない光也は絶叫しながらお仕置きを受けていた。
閑話休題。
明日になったら忘れてるでしょうけど。
鈴はそう前置きしてから、光也に言い聞かせるように人差し指を立てた。
「いい? 光也。あたしだって小学生の頃から色々変わってるんだから、あまり失礼なこと言っちゃ駄目なんだからね。そんなことばっか言ってたら、アンタに愛想尽かしてどっか行っちゃうわよ?」
「わかった。ごめんね、鈴ちゃん」
「……そんなこと有り得るのか?」
「……いや、有り得ない。というか、鈴の方から離れるなんて天地がひっくり返っても無理なんじゃないか」
「そこ! ヒソヒソ話さない!」
箒と一夏が小声で話していると、鈴がすかさずツッコミを入れる。
「え〜っとつまり、今の鈴ちゃんはいつもの鈴ちゃんと違うってこと?」
「……まぁそういうことで良いわ」
伝えたいことが7割ほどしか伝わっておらず、思わず肩が落ちたが、無邪気なショタ光也に心を洗われている鈴はまあ良いかと流した。
鈴の言葉を受けて、目を凝らして鈴を観察する光也。どうやら、
「うーん、分からん」
「……はぁ。別に無理して探さなくて良いわよ」
「──あ! 鈴ちゃんお化粧してる!?」
「えぇ!?」
「お目目もいつもよりパッチリしてる気がするし、なんか肌も明るい気がするし!」
凄い勢いで回答する光也。一夏は鈴に近付き、光也に分からないように自分の口元を隠しながら問うた。
「……で、合ってるのか?」
「……合ってるわよ」
メイクしている箇所をバラされた羞恥か、それとも放課後に光也と会う為におめかしをしたのがバレた羞恥か、顔を赤くしてプルプルと震える鈴。その姿に火山の噴火の予兆を見た一夏は慌てて距離を取った。嗚呼、子供の無邪気さ、恐るべし。
「いや〜、メイクしてるなら言ってよ鈴ちゃ〜ん! いつも可愛いけど今も違う雰囲気で超可愛い! これで一夏ちゃんもイチコ──」
「ソイヤッ!」
「ぐえぇ」
小学生の光也は鈴の好きな相手は一夏だと確信している。そして、この場にいるイケメンを一夏だと認識していない。その二つの事象が重なり起きかけた事故。しかし鈴が咄嗟の超反応を見せ、事故を未然に防いだ。別にバレたところで今の鈴には何の傷にもならない勘違いではあるのだが、事情を知っている一夏はともかく箒から憐みの視線を向けられるのが鈴には我慢ならなかった。
だから、ショタ光也の背後に回って抱き抱え、口を塞いだ。
何も知らない一夏は首を傾げながら「イチゴ?」と呟いていた。
「光也くん。少し私とお
「あっ、鈴ちゃんがガチでキレてる時に見せる敬語だ! 助けてお兄ちゃんお姉ちゃん! 裏でボコられる!」
光也を抱え、曲がり角の向こうに消える鈴とショタ光也。そこから「ひぃ〜!」と光也の情けない悲鳴が聞こえ、程なくして二人は帰ってきた。光也の頭には、漫画の世界のようなたんこぶが膨らんでいる。
「話が逸れたわね。それで、光也をどうするの?」
「あ、ああ。俺と箒で保護しようって考えてたんだ。光也を自分の部屋に帰したらシャルに見つかるし、自室だと何かあった時に俺達が介入出来ないからな」
「あたしが預かるわよ」
「目が怖いぞ。……えぇとな。鈴にはルームメイトがいるだろ? だから適切じゃないんだ」
「一晩くらいどうにかするわよ──」
「……具体的に、光也をどう隠し通すつもりだ?」
「──ルームメイトを」
「ルームメイトを追い出そうとするな!」
懇切丁寧に説明しても、光也と一緒に居たいのか頑なに納得しようとしない鈴。この場で話していたら、先程の鈴よろしくまた誰かに見つかってしまうかも知れない。そう危うんだ一夏は溜め息を吐いてから、取り敢えず
一つのテーマでお話を書こうとすると、どうしても上下に分けないと収まらないようになってしまいました。そんな大塚も愛してね。
今回テンション高くて書きやすかったです。後半は半分くらいは出来てるから、気長〜に待っててね。
あと、さっき確認したらUAが40何万とか書いてあって、とても嬉しかったです。これからも突破記念書いていきたいですね。
【朗報】大塚ガキ男、銀の福音編の続きであるインフィニットストラトスの原作5巻を、無事購入した模様。
どのキャラが好き?
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一夏ちゃん
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箒ちゃん
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セシリアちゃん
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鈴ちゃん
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シャルちゃん
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ラウラちゃん
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千冬ちゃん
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束ちゃん
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蘭ちゃん
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弾ちゃん
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光也