夏の梅の子ども*   作:マイロ

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刹那よりも永く

 何のために――とある人が問うた。

 

 

 瞬きをする。

 その合間にはもう既に情景は刻々と表情を変えていた。

 

 眼前で零れ落ちていくような時を留めたいと願ったから。

 私は目を見開く。

 

 過敏になった神経が様々な些末な情報を無差別に拾い上げ、それらを恣意的に関連付けて意味のないでたらめな物語を紡ぎ、脳内の小人たちが姦しく支離滅裂のそれを喚き立てる。情報は主に視覚から。瞳孔は限界まで広がり、血は眼球へと引っ切り無しに送られ、張り詰めた目尻が痙攣する。視界の大部分を占める色彩は大まかにいうと『黒』に分類される色。その中に浮かび上がる物体を観察する。それはゆらゆらと踊っていた。

 

 蝋燭――木蝋から作られた和蝋燭。炎は大きく揺らめき、一定しない。炎の先頭の、細かく裂けたところから生まれた煤が、暗室の闇に融けて消えていく。

 

 陰影の中から気まぐれのように、瞼を閉じた少女の白貌を浮かび上がらせた。薄く開く、血の気の引いた唇は紫に変色し、乾燥によりひび割れ、暗い洞を縁取っている。

 制服を装った胸の上で組まれた白い指――そこに生えそろった爪の先は赤黒い色に染まっていた。

 

 

“芸術”は、刹那の一瞬を、それより僅かでも永く世界に留めようとしたところから始まっている。

 

 

 ――…ひ……ぁ

 

 横たわる少女が作る洞から、空気が漏れた気がした。

 生きている――いや、死んでいる?

 

 

 その場で耳を澄ます。音はない。息を止めて、耳を傾ける。無音だ。しばらく待って、動きだしはしないかと目を細める。動きはない。埒が明かない。大股でそちらに近寄り、見下ろす。大きく揺らめく小さな炎の陰影で、動かない少女の白貌に勝手に表情を見出す。馬鹿馬鹿しい。傍らに膝をつき、顔に掛かる髪を耳の後ろで押さえながら、少女の唇が形作る洞に耳を近づける。何の感触もない。

 

 呻いたと思った。身じろいだと思った。苦悶の表情を作ったと思った。息を漏らしたと思った。――それは幻だった。

 

 

 留めなければと手を伸ばした一瞬が、そこで息をし損ねた。

 それは物質になってしまった。

 

 

 だから私は絵を描いた。

 

 

 

✣✣✣ ✣✣✣

 

 

「――おっとと。これは失敬」

 

 白い花束と果物籠を抱えたその人物は、大げさに驚いて済まなそうに眉を下げて見せる。

 

 場違いに陽気な声が響いたのは、部下たちが報告をしに病室へ訪れているときだった。外から人が近づいてくることを察知し、早めに口を閉ざした部下たちが警戒し臨戦態勢に入っていた。中は緊迫していたが、何の躊躇もなく開かれた戸に、部下の内の新人の方は身体に力が入り過ぎ、硬直していた。ちらりともう一方の部下がその新人へと視線を向ける。その視線がこちらを仰ぐように向くので、目で制して首を振る。

 

()しなさい。ここはいいから、お前達は指示通り動くように」

 

 寝台の上から退室を促すと、目礼で応えた部下たちは太宰の脇を通り、病室から去っていく。

 

 病室の扉を躊躇なく開くなり、その男は一方的に用件を述べたのであるが――次の瞬間には、中に他の人間もいることにたった今気づいたかのように、伺うような素振りを見せる。恰も小鳥が首をかしげる様を彷彿とさせる仕草だが、どうしてこうもこの男に似合うのか、中身を知っているだけにこれほど薄気味悪くなるのも中々ない事象だった。

 

「済まないね。仕事の打ち合わせ中だったかな?」

 

 ため息が零れ、頭痛が酷くなった気がした。

 自分が胡乱な目をしているだろうことは自覚している。

 

「ノックぐらいしたらどうです」

「退屈しているだろう君に、新鮮な驚き(サプライズ)を届けたくてね」

 

 悪びれない態度にため息がまた一つ。

 動く方の手で眼鏡の位置を直し、その際に視界に入った手のひらを見る。

 改めて自由になる身体の部位の少なさを実感する。湧き上がってきた些末な感慨を握り潰すように拳を固めた。

 

「――扉の掛札を見なかったのですか?」

 

 扉には仰々しい字体の『面会謝絶』の札が掛かっている筈だ。

 人と会うのを避けるためのもの。

 太宰は、片目をつぶって見せた。

 

「無論見たとも!」

 

 元気のいい返答だが、顔面通り見たかどうかを聞きたかったわけではない。

 寝台の上で横になって指示するしかない歯がゆい状況と山積みの問題、自己管理の甘さへの自責で、苛立っていた気が緩み、別の意味で頭痛がしてきた。

 

「……見ただけですか」

「いや、見て判断したとも。つまり私の他に面会者はいないと思ってね?」

 

 つまりこの男にとっては、札は何の効力も持たず、ただの情報の一つにしかならないのだった。

 

「どうやってこの病室に辿りついたのです?」

「我が社に稀代の名探偵がついているのは知っているだろう?」

 

 目を閉じる。噂に聞く人物。

 

「――ええ。幾つもの難解な事件を解決へと導いてきたあの御仁ですね」

「そうそう。――けれど、この場所に関しては私が検討をつけた!」

 

 太宰の言葉に、がっくりと肩を落とし半眼で睥睨する。

 太宰は視界の中をちょこまかと動き、寝台を迂回するようにして移動し、抱え持っていた見舞いの品々を隣の机に置いた。横目でその動向を監視する、白い花束。総じて色のない花。香りの薄い花。白い花々は気が付けば病室の白い壁に埋没していく。

 

「身動きできない入院生活はどんなものだい? 何もかもを白衣の天使にお世話をしてもらえるなんて羨ましい限りだけれど」

「代われるものなら代わってもらいたいものですね。骨身が腐ってしまいそうなほどに怠惰な生活ができますよ。最も……貴方に入院の必要はないようですがね」

 

 片目で睨み付けるも、飄々とした男は首をかしげて全く無垢な様を装っている。この男の過去が、乾く間もない血塗られたものと結びつける者が何人いるだろう。

 

「あの事故のおかげで、連日連夜掛けてもまだ終わらないという仕事量が僕の机の回りに日々(うずたか)くなっているようです。滞っているどころではありません。見ての通り、こうして一々部下を呼びつけて指示しなくてはならない始末ですからね」

 

「それもこの件を君が受け入れたなら、あっという間に解消さ」

「積もりに積もった仕事を片付けるという問題まで解決されるわけじゃあないでしょう」

 

「それは君の仕事だもの、安吾」

 

 

 仕事――そう、それが自分の仕事だ。選び取った正義。進むべき道。

 そこに、かつての友はいない。すべてあの時間、あの場所に置いてきた。

 

 すべては過ぎたことだ。

 

「ええ、それが私の仕事です」

 

 視線をずらすと、持ち込まれた果物籠が目に入った。色のない花束と違い、見舞いの籠に盛られた林檎の果皮は艶々としている。瑕疵のない甘蕉や網目模様の細かい舐瓜がぎっしりと詰められていた。

 色のない花か、果実からか、どちらのものか知れぬ、仄かに甘い香りが混ざり合い病室を漂った。……気分のせいか、瑞々しいはずのそれらに、どこか腐乱したものが鼻腔にとどまるような心地がした――溜め息をつく。

 

「……それで、見返りにこちらは何を提示すれば?」

「話が早くて助かるよ、安吾。物事はこうしてきりきりさくさく進めなければね? 却説(さて)――実は今、軍警に捕らえている探偵社員ひとりがいるんだが、彼女の解放を頼みたいんだ。何とか取り成してはもらえないだろうか」

 

 軍警察に捕らえられた探偵社員――異能力者で、『彼女』――女性と来れば、該当するのは一名しかいない。そして、解放の手続きというのは特務課であれば可能だ。脳内で換算していると、一つ指が立てられた。視線がそちらへと向かう。

 

「――そしてもう一点」

 

 言葉を切った男は、傍らの椅子に腰かけた。

 包帯の巻かれた両手を、足の間に置く。――武器は持っていないようだ。

 こうした確認はもはや職業柄、癖になってしまっていた。

 

「特務課にギルド攻略の協力を仰ぎたい」

 

 眉間にしわが寄る。

 特務課で頭を抱えるような事案はかなり(、、、)あるが、ここ最近ではこの探偵社とポートマフィアとギルドという三つ巴の抗争が最大の懸案事項となっていた。その真っ只中である今、安吾は全治一か月以上の怪我を負っているため、病室へ持ち込んで熟す仕事量も限られており――怒りと焦燥で夜も眠れないほどだった。……単純に、部下が泣きついてくる電話のせいもある。

 

 そんな状態にある自分のことを知ってか知らずか――十中八九知っているだろう――目の前の男は、明日の天気でも説明するかのような軽薄な調子で流れるように要求を語った。

 

「具体的には、飛行船への突入とその後の補助だ。突入のための手段として、輸送機かヘリコプターなどの貸し出しは勿論のこと、人員をいくらか割いてほしい。優秀な電網潜士(ハッカー)である特務課の捜査員と、物理的な攻撃からの盾となる異能力者あるいは隠密に長けた異能力者を頼みたい。こちらからは探偵社員二名を派遣する。うち一名は、潜入の際の補助役だけれどね。どうだろう?」

 

 どうだろう――?

 肺の奥から空気を絞り出した。

 

「突っ込みたいところが山ほどありますがね」

 

 頭痛が痛い――そんな重言が今の心境にぴったりだった。

 眼鏡の蔓を押し上げて、知った顔の男を見遣る。

 にこりと、男は笑む。その男は、黒々とした闇を集めたような眼をしている。何処かの時間で同じような眼をしていた。錯覚しそうになる。自分の立場は四年も前からとうに明確になっているというのに。

 

「どんどん突っ込んでき給え」

 

「――捕らえられている異能力者ですが、三十五人殺しのことを云っているのでしょう。確かに、特務課ならば免責を手続きし、身柄の拘束を解くことは可能です」

「それは善い知らせだ」

 

 にこにこと男は両手を組み、予想の通りなのだろう言葉を受けて頷く。

 

「そして、特務課からの突入と云いましたが、確かに特務課ならば指定された捜査員たちを派遣することは可能です。ギルドという異国の異能力組織から横浜を護るのに否やはありませんから」

「これもまた善い知らせだね」

 

 にこにこと微笑む男は、日向にいる筈なのに、過去に片足を突っ込んでいるような顔をしている気がした。

 

「――ですが、それもこれも、目につく粗が幾つかあります。まず、三十五人殺しが、本当に探偵社員なのかどうか。そして、ギルドという組織の動向をきちんとあなた方探偵社が把握し切れているのかどうか」

 

 

 薄笑いを浮かべるかつての“友人”であった男は、白昼の中でも鳥肌が立つような――昏く狂気的な笑みを浮かべた。

 

 

 

❂❂ ❂ ❂❂ ❂

 

 

 

 

 赤色の花は、一本だけでもとてもきれいだ。

 白色の花は、さいごに瞳を閉じた母の瞼の影に似ている。

 黄色の花は、元気になりそう。

 

 どの色が良いだろう?

 

 

 

 

❂❂ ❂ ❂❂ ❂

 

 

「安吾、君が気に掛ける必要がないことは私が保証するよ、その(いず)れの点もね」

 

 

 どんな免罪符があってこの目を直視できるだろう。安吾は、言葉少なに目をそらす。この男を怒らせるなんて、どこの命知らずか、とその対象を思ったが、そのうちのひとりが紛れもなく自分自身であることに思い当ると、全く皮肉なものだった。冒した過去は変わらない、変えられない、「――そう、ですか」

 

 淡々とした言葉が、行き場を失った感情を纏って、口から零れ出る。

 力のない言葉、意味のない悔恨、ただ無言のまま流れたに歳月。

 

 

「先の件、受諾しました」

「それは善かった、お互いにね」

 

 違和感を覚える程穏やかに、太宰は莞爾として笑う。

 白い病室に、それが何故だかたった一つの汚点(しみ)のように感じられた。

 

「――ところで、ひとつ尋ねたいことがあるのですが」

 

「なんだい?」

 

 

「車が突っ込んできた事故。あの時は年端も行かない少年がいたため、言及しはしなかかったことですが。本当に、可笑しな話なのですがね。いくら何でも怪我の度合いに差があり過ぎる。もっと言えば、緩衝嚢(エアバッグ)が僕のだけ開かなかった。そして、未だに突っ込んできた運転手の足取りが全くつかめない。僕がこのような状態になってしまったあの出来事について……何かご存じないですかね」

 

 

 

 太宰はゆっくりとひとつ瞬き、口角をわずかに歪めた。 

 

 

 その時、廊下から微かな足音が聞こえて来た。そして扉がノックされる。

 太宰に目を遣ると、肩をすくめるのを認めて、「どうぞ」と入室を許した。

 

「安吾先輩、外にこんなものが落ちていました」

「なんです――チューリップですか? それがどうしたというんです」

 

「ここの花束に、妙な紙がついていたんです。妙な紙っていうか、妙な文字?なんですが」

 

 部下が太宰を気にしながら報告してくるが、その内容はどうも判然としない。自分の目で確認するしかないかとため息をつきかけたとき、傍らで椅子が盛大に倒れた。

 

「太宰君?」

「ちょっとその紙片を見せてくれ給え」

 

 太宰は、正方形に切り取られた紙を取ろうと手を伸ばす――部下がその手を避けようとしたが、安吾は首を振り、太宰に渡させた。眼鏡をした遠目からでも、その文字は見慣れぬものだった。だが、見覚えはある。確か――

 

「これ、は―――」

「なんです、それは」

 

 太宰は口元を押さえた。

 

「……奴らは『(あれ)』を狙っている筈……いや、奴らの目的のためには、手段は『(あれ)』でなくともいいのか?」

「何か心当たりがあるんですか?」

 

 太宰の顔を覗き込もうとしたとき、突然、顔をあげた。黒い蓬髪が乱れ、顔は虚脱したように呆然としていた。まるで、幽霊を見たかのような表情だった。

 

 

「――ああ、死者(あの人)だ」

 

 声を掛けようとしたとき、太宰の手元から、ぐしゃりと紙が潰れる音がした。

 小さな紙片は、角に赤い梅の花が印記されている。持ち主の愛らしさを感じさせるものが、今は太宰の手の中で無残に扱われている。瞳孔が開いた瞳を虚空に漂わせていた男が、唸るように息を漏らす。 

 

 

「そうか、そういうことか」

 

 

 ああ、なんてことだ――と、男はとうとう吠えたのだ。

 

 

 

 

 

❂❂ ❂ ❂❂ ❂

 

 

 

 

 

 夏梅は花屋にいた。太宰と車に乗っていた知り合いの人を見舞う、花束を買いに。

 ただ、太宰が既に花束を持って行ったので、夏梅はそれよりも小さめの花束を買う予定だ。

 

 

 軒先に並ぶ花々。

 

 日当たりのよい花屋はそこにあるだけで、気分が良くなる気がする。

 夏梅の目を一番にひいたのは、形のシンプルなチューリップの花だ。

 

 

 

 邪魔になるなら無い方がいい。

 けれどもできたら傍においてほしい。そうできるものを、そんなものを。

 

 

 夏梅はチューリップの歌をぼんやりと知っている。その歌詞は覚えていない。きっと聴覚がまだしっかりしていない頃に聞いたのだと思う。

 緑のバケツに入った花はどれも綺麗で、きっとどれを選んでも綺麗な花束ができる。

 

 けれど、太宰の知り合いに渡すものだから、夏梅はしっかり選んで決めたかった。

 じい、と目を凝らして、バケツの一つ一つを覗き込んでいると、ふいに影が落ちた。

 

 

「こんにちは、中村夏梅くん」

 

 

 

 夏梅は振り返った。

 

 

 

 

 

✣✣✣ ✣✣✣

 

 

 

 追って連絡する、と安吾に言い残した太宰は、その場から足早に立ち去る。病院から最も近い花屋への道筋を辿り、何かの痕跡がないかを具に見ていく。足がかりになりそうなものは、ない。争ったような形跡はなく、散った花びら一つ落ちてはいない。

 

 ――落ち着け。

 

 砂色のコートのポケットに手を突っ込み、携帯電話を取り出す。番号を押して、電話を掛ける。数コールの末、相手が出た。太宰は、その声を聴いていつも覚える安堵とぬるま湯に浸っているような幸福感と共に、今は強い焦燥感に見舞われた。

 魂の底から絞り出すように云う、「――済まない、織田作」

 

 

『太宰? どうしたんだ』

「此れからすぐに戻るが、きみにだけは先に伝えなければならないと思った」

『……どうした』

 

「夏梅くんが攫われた」

 

 電話の奥で、息を飲むのが聞こえた。間髪入れずに云わなければならなかった。

 引きつる喉に、咳払いで何とか言葉を絞り出す。

 

「私の、失態だ。だが絶対に必ず取り戻す。だから――だから、どうか織田作、早まった行動だけはとらないでくれ」

『夏梅はどこにいるんだ、太宰』

 

「聞いてくれ、織田作!」

 

 

 しばらくの沈黙があった。その沈黙の時間のうちに、焦燥が全身を覆い、火達磨になったかのような苦痛に苛まされる。そして――返答があった。

 

 

『聞いている』

 

「……きみは落ち着き過ぎじゃあないかい、織田作」

『夏梅はよく攫われるからな』

 

 一寸(ちょっと)どう反応したものか解らなかったので、流すことにした。

 緊急事態だった、これでも。

 

「夏梅くんは無事だ。……この先も落ち着いて聞けそうかい?」

 

 元々俺は落ち着いているが、という言葉は実に不思議そうで、電話の向こうで首をかしげている織田作の姿が目に浮かぶようだった。感情を読み取らせない朴訥とした声でひとこと返される。

 

『――聞こう』

「……奴らの目的は一つだが、それに至る手段としての可能性を、もう一つ見つけてしまった。だから、ギルドの連中は、その両方に手を掛けようとしている」

 

 言葉を切って、電話の向こう側の音に耳を澄ませた。探偵社の誰かの声が聞こえてきた瞬間に、言葉を継ぐ。

 

「おそらく、ギルドの目的は死人の蘇生だ。そして――織田作、きみはそれを為し得た女人(ひと)を識っている」

『………太宰、ちょっと待て。お前は今どこへ向かっているんだ』

「私は――」

『行くな、太宰。計画の練り直しだ、と乱歩さんが云っている』

 

 立ち止まる。ちょうど横断歩道が青になっている。

 それでも、足を止めずにいるには、注意を引きすぎる言葉だった。

 

 

「このまま私に行くなというのか、織田作――きみが」

 

『嗚呼、そう云った。何度でも云う、一人で行くな、太宰』

 

 

 言葉が、立場が逆転していた。あの四年前と。




改稿中

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