たん、と小さく一手を放つ。
それは場を見た上での牌だったのか。
それとも、俺の思い描く理想のためだったのか。
それらは分からないけれど。
目の前の、相手。
他県の、団体戦に参加するという一人の少年にとっては。
致命的で、絶望的だったのだろう。
項垂れた表情のまま、手牌を前へと流し込んだ。
残り1000点での流局。
狙ったつもり――――ではない。
狙うつもりなら、もう少し大きい点数を狙う。
「(なんだかなぁ。)」
そんな思いを込めて、一度大きく息を吐き切った。
※※※
全国前の最後の練習。
個人戦と団体戦のメンバーは練習試合をしても問題はない。
問題があるのは、個人戦と個人戦、団体戦と団体戦のメンバー。
ただ、男女だけはまた別。
というのも、同じ学校である以上。
男女混合で打つ場所も少なからずはある、という建前の上だという。
実際のところ、そういった高校が出場した気配は殆ど無いのだけど。
「お疲れー。」
「……ん?」
ぴたり、と頬に感じる冷たい缶の感触。
その手の先を見れば。
「怜さんに、竜華さん。」
「見とったでー。」
「何あれ、狙ったん?」
違いますよ、と小さく嗤った。
「アガるつもりで鳴いてたんですけどね。」
「まぁ、1000点差やしなぁ。」
「相手もそんな感じだったと思うんやけどねー。」
受け取った缶、良く見かける有名な会社の炭酸飲料。
プルトップを開けて、中の液体を嚥下した。
ぷしゅ、と言う音が廊下に響いて。
「物凄い悔しがってました。」
「そらそやろ。 あの点数差やで?」
「りゅーかもそんな悔しがることあるん?」
「当たり前やがな、何ゆーてんの怜。」
そんな姦しい二人を見ながら、反省をする。
あの時、こうすればよかった。
あの時、あの牌を切ったのは失敗だった。
考えれば考えるほどに、自分の失敗点が見えてくる。
それもこれも、恐らくは。
「ん? きょー、どーかした?」
「ああ、いえ。」
無意識に、二人を見ていたのだろう。
怜さんが不思議がるように俺を眺めている。
こうして、幾つかの失敗を思い返せるのも。
落ち着いて、振り返れるのも。
今、こうして二人がいてくれるからなのだろう、と。
自然と、受け入れることが出来ていた。
「三人でいると、なんか気楽でいいな、と。」
「……ほへ?」
「な、何ゆーてんの京太郎くん。」
つい、そんな言葉が漏れていて。
慌てる二人に、苦笑いを返した。
どちらも、選べない。
そんな、どっち付かずの俺。
そんな俺が思って良いのかは、分からないけれど。
ただ、二人のうち。
一人を選んで、一人を切り離すのは。
何故だか、してはいけないと思った。
にゅー(遅れた