学戦都市アスタリスク TRILOGY   作:宙の君へ

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お久しぶりです!
長らく投稿してませんでしたが、これからちょくちょく出来たらして行きたいと思います!


第7話 六花園会議

アスタリスクの中央区、商業エリアが接するあたりのホテル・エルナトと呼ばれる超高層ビルがある。各国のVIPや著名人が利用するホテルだが、なによりも名高いのがその最上階に広がるドーム型の空中庭園だ。しかし、縦横に水路が張り巡らされ、四季折々の花々が咲き乱れるこの庭園へ、実際に足を踏み入れた事がある者はそう多くはない。このホテルに宿泊するような階層の人間でも、例えそれが統合企業財体の幹部であろうとも、無許可に立ち入ることは許されていないからだ。

ここは一ヶ月に一度、極めて限られた人間が集う為に造られた聖域であり、その扉を開く資格を持つものは世界でたった六人のみ。

ーーーーすなわち、アスタリスクにおける六つの学園の生徒会長である。

 

「ごきげんよう、皆様。お元気そうでなによりです」

 

庭園の中央部、周囲を軽く見渡せる程度に小高く盛られた丘の上に、ぽつんと設えてある洋風の四阿。そこにはアスタリスクをそのまま縮小したかのような六角形のテーブルが備えてあり、六つの椅子のうち四つが埋まっていた。優雅な仕草で一礼した少女ーーークローディアは、いつものように優しく微笑んでその五つ目を埋める。

 

「ようこそ、ミス・エンフィールド。相変わらず時間通りだね」

 

柔らかな笑顔でクローディアを迎えたのは、左側の席の貴公子然とした青年。整った顔立ちといい、癖のない淡い金色の髪といい、かなりの美男子と言ってもいい。落ち着いた物腰で、仕草の一つ一つが洗練されている。青年の顔に浮かぶ薄い微笑は一見すると穏やかそうに見えたが、しかしそれはクローディアの顔に浮かぶ笑みと同種類のものと()は一瞬にして見抜いた。

 

「ところで、ミス・エンフィールド。君が連れを連れてくるなんて珍しいね」

「ああ、彼は私のボディガードです。最近何かと物騒なので」

「なるほど」

 

クローディアはそっと視線を半歩後ろで控えているサングラスをした彼に送る。

 

(大丈夫、バレてませんよ)

(了解、任務を続行する)

 

ボディガード、神木刹那はほんの僅かに首を縦に動かした。服装は黒のスーツを着崩しサングラスという何ともガラの悪い格好。

青年は刹那にも笑みを送り、軽く会釈する。白を基調とした清廉な聖ガラードワース学園の制服が、まるでこの青年のために誂えられたかのように似合っている。

 

「さて、それじゃ全員揃ったようだし始めようか。皆、時間に余裕がある身では無いわけだしね」

 

金髪の青年はそう言うと空間ウィンドウを展開させた。六つの学園の生徒会長によるこの定例会議は、舞台となる庭園の名を取って俗に『六花園会議』と呼ばれている。

表向きは六学園の友好関係を維持し、お互いの発展と《星武祭(フェスタ)》の円滑な開催を目的に意見を集約する場であるとされるが、その実態は互いの腹を探り合う政治的なパワーゲームの舞台となっている。なお、その進行役は前シーズン総合成績一位の代表者が担う事になっている。

 

「あら、ですが・・・・・・」

 

クローディアはまだ空席である右隣の席を見た。クインヴェール女学園の生徒会長が座っているべきはずのそこは空席のままだった。

 

「ああ、彼女は確か欧州ツアーの真っ最中じゃなかったかな。例によって委任状を預かっているよ」

「そうでしたか。流石は世界の歌姫様、お忙しいようですね」

「はっ、どうせいてもいなくても変わりやしねーだろ、あんな小娘」

 

不愉快そうに鼻を鳴らしたのは、金髪の青年の向かいに座る青年。色のくすんだ赤髪で、背は低く小太り。目ばかりが大きくギラギラしている。

 

(コイツは確かレヴォルフの現生徒会長、《悪辣の王(タイラント)》だったか)

 

ふんぞり返って腕を組み、いかにも不機嫌そうに顔を歪めているが、これはいつもの事らしく、少なくともクローディアでさえも彼が笑った顔は見たことがないらしい。レヴォルフの制服はタダでさえ威圧感があるのだが、青年の纏う禍々しい雰囲気が更にそれを増しているようだ。

 

「この場で他学園の代表を侮辱するような発言は慎んでもらえるかな、双剣の総代」

 

金髪の青年は困ったように苦笑しながら、赤毛の青年を諌める。

 

「侮辱だぁ?笑わせんな、んなこたぁ周知の事実だろうがよ。そもそもクインヴェールの売女共に、まともな学園の管理なんざ出来んのか?あの小娘が生徒会長になってからこれで何回目の欠席だ?クソの役にもたってねぇじゃねぇかよ」

「はぁ・・・・・・君は本当に口が悪いな。わかったからもうやめたまえよ」

 

金髪の青年は大きく溜息をついた。それでも赤毛の青年はふんぞり返ったまま、言葉を続ける。

 

「ま、見た目だけで選ばれたような愚図共の代表に、それ以上の事を求めるのも間違いってもんだろうがーーーー」

 

と、次の瞬間ーーーー赤毛の青年の喉元に純白の剣が付き付けられていた。

 

「やめたまえと言ったはずだよ?双剣の総代」

 

金髪の青年は穏やかな苦笑を浮かべたまま、片手でその剣を構えている。

刹那は思わず感嘆した。

 

煌式武装(ルークス)をホルダーから抜き放ち、起動し、振り抜くまでの所作が恐ろしく速いーーーー。流石は《聖騎士(ペンドラゴン)》と言ったところか)

 

「・・・・ほほぉ?おもしれー。やってみるか、《聖騎士》殿?いいぜ、その瞬間ガラードワースはおしまいだがな」

 

一方で赤毛の青年も顔色一つ変えず、更に挑発して見せた。確かに六花園会議の場で刃傷沙汰を起こしたとなれば、金髪の青年はおろかその所属学園もタダでは済まない。

 

「だろうね」

 

しかし金髪の青年はにっこり笑うと、躊躇なくその切っ先を押し込んだ。薄らと光を放つ純白の刀身が、あっさりと赤毛の青年の首を貫く。ーーーーだが、

 

「ふん、子供騙しもいいところだな」

 

赤毛の青年はその短い首に刃を挟んだまま、つまらなそうに言った。見ればそこからは一滴も血が流れていない。

 

「ほほ、相も変わらずお主らは仲が良いのう。ようも毎回、飽きもせずそうじゃれ合えるものじゃ」

 

そこへ声を掛けたのは、金髪の青年の左隣にちょこんと座った少女だ。いや、少女というよりは、童女と言った方が正しいだろう。愛くるしい顔立ちに黒髪を蝶の羽のように丸く結わえ、あどけない笑みを浮かべている。しかしその立ち居振る舞いには、どこか老成された落ち着きさえ感じられる。その胸に煌めくのは、界龍(ジェロン)第七学院の校章『黄龍』。

 

「じゃが戯れ(あそび)もそのあたりにしておくが良いぞ、小僧ども。でないと儂も混ざりたくなってしまうからのう」

 

さも楽しそうに童女が言うと、金髪の青年は二度目の溜息をついてその剣ーーーー聖ガラードワース学園が誇る純星煌式武装(オーガルクス)白濾の魔剣(レイ=グラムス)》を引き、赤毛の青年は舌打ちをして口を慎んだ。

 

「ふふ、公主の調停とあれば仕方がありませんね」

 

クローディアが口元を押さえながら笑うと、金髪の青年は大袈裟に肩をすくめる。

 

(あれが、《万有天羅》・・・・・・)

 

赤毛の青年は忌々しそうに眉をひそめたが、両足を机に放り出すとその顔をクローディアへと向けた。

 

「そういやぁおもしれー噂を小耳に挟んだんだがな、クローディアよぉ」

 

真っ直ぐクローディアを睨みつけるその瞳は、狂犬のような無差別の攻撃性を感じさせる。

 

「星導館とアルルカントが新型煌式武装(ルークス)の共同開発に合意したって話なんだが、これはどういうこった?」

「へぇ?」

「ほほう」

 

金髪の青年と童女も興味深そうにクローディアを見る。

 

「あら、流石と言いましょうか・・・・・随分耳がいいのですね」

「ってこたぁ、本当なんだな?」

「確信があったからこそ、ここで話題を出したのでしょう?」

 

クローディアは目を細めて再び口元を押さえた。この赤毛の青年はこうして卓を囲む者達の中で、最も抜け目がない。闘いの場でまみえるならば金髪の青年や童女の方が遥かに手強いのだが、こうした場において一番厄介なのが間違いなく彼だった。なにしろレヴォルフ黒学院史上初めて、《星脈世代(ジェネステラ)》ではない学生として生徒会長の座についたのだ。彼の武器は知略と策謀。力もカリスマも人望も品性も、およそ人の上に立つべき資格は何一つ持たないが、人を使い操ることにかけては彼の右に出る者はいない。正に、そちらに関して悪魔的な才を持つ青年だ。この世に存在する有りと有らゆるものを、恐らくは自身をも嫌悪しきっている憎悪の権化。

 

「ですが、その件はあくまで我が星導館学園とアルルカント・アカデミー間の話です。皆様とは関係ない話だとおもいますが」

「そうはいかねーな、女狐。学園同士の密約は星武憲章(ステラ・カルタ)違反だ。他の学園がそんな抜け駆けを黙って見ていると思ったか?」

 

赤毛の青年はぐるりと卓を見回した。

 

「まあ、確かに奇妙ではあるね。細かい条件が分からないから何とも言えないけど、普通に考えればアルルカントにメリットが無さすぎる」

 

金髪の青年は薄い笑みを浮かべたまま、静かに頷く。煌式武装(ルークス)の技術に関してはアルルカントが頭一つどころか三つも抜けている。他の学園の手を借りる意味がない。

 

「そもそもにおいて、学園としての正規の煌式武装(ルークス)開発施設を備えているのはアルルカントだけじゃろ?うちも含めて他の学園は全て統合企業財体から提供された物を使っておるのじゃからな」

「ええ、ですから今回はうちの技術者がアルルカントに出向して、共同開発にあたることになります」

 

これには流石に驚いたのか、一同が目を丸くした。

 

「おいおい、それじゃ共同開発どころか最早一方的な技術提供じゃねーか」

「確かに。こう言ってはなんだけど、好きなだけ技術を盗んでくださいって言ってるようなものだね、それは」

 

これには刹那も驚いたのか、静かに聞いている。

 

「アルルカントも太っ腹じゃのう」

 

それでもクローディアは笑みを崩さない。

 

「これは是非とも、もう片方のご当人に話を伺いたいもんだな。なぁ、アルルカントさんよぉ?」

 

全員の視線が、クローディアの正面に座っている学生に集まる。

今まで一言も発言せずただただ恐縮したように座っている青年は、狼狽えるように首を振った。

 

「いや、僕は何も聞かされていないというか、承認サインをしただけで、その、はい。詳しいことはさっぱりでして・・・・・・・・」

 

中肉中背、目は細く黒髪で、見るからにぱっとしない風貌だ。気弱そうな眉は八の字に下がりっぱなしで、全体的に影が薄いというか、まず存在感があまり無い。とはいえ、その胸には叡智の象徴たるアルルカントの校章『昏梟』が、しっかりと煌めいている。

 

「聞いていないって・・・・・・・本当かい?」

「はぁ・・・・・・・・」

 

細めの青年は困ったようにぽりぽりと頭を搔く。

 

「いくらアルルカントといえど、それでは生徒会長としての立場があるまいて。大丈夫なのかえ?」

 

六つの学園はそれぞれ個性的な特徴を持つが、中でもアルルカントは構造的に異質な部分がが多い。学生は研究開発を専門に行う研究クラスと、その研究成果物を使って闘う実践クラスに分かれており、前者の方がヒエラルキーの上位に立っているのだ。更に研究クラスはそれぞれの分野ごとに派閥が分かれ、常に熾烈な勢力争いを繰り広げているらしい。この勢力争いは、自分の派閥の成果物を使った実践クラスの学生が《星武祭(フェスタ)》において、どれだけの成績を残せたかによって大きく変動していると、夜吹から聞いた。

つまりアルルカントにおける最高権力は必然的に最大派閥のトップが握る訳で、生徒会は派閥間の調整役程度としてしか機能していないのだという。要は体のいいお飾りだ。

 

「まあ、それはその・・・・・・・」

「皆さん何か勘違いしていらっしゃる様ですが、これは密約でも何でもありません。我が星導館学園とアルルカント・アカデミーが取り交わした正式な提携です。いずれ内容の詳細も発表されますが、何でしたら今お見せしましょうか?」

 

合図を出すと、後ろにいたボディガードが懐から一枚の紙切れを取り出し、机の真ん中へと置いた。それは正式な提携を記した書面だった。

 

「あくまで対等の取引だってーのか?」

「勿論です。我々はアルルカントの施設を借り受ける代わりに、研究開発費の七割を負担するのですから」

 

と、そこへ童女が何気ない口調で入ってくる。

 

「そうそう、星導館といえば先頃何やら学内で小さからぬ揉め事があったようじゃのう。わざわざ《影星》まで動かしたようじゃが、もしかして今回の件と何か関係でもあるのかの?」

(なに・・・・・・・?)

 

確かにサイラス・ノーマンに関してはクローディアに任せた。その後の処遇も聞いた。しかし、《影星》を動かしたなどという情報は聞いていない。

 

「さて、何のことでしょう」

 

顔色一つ変えずけろりと答えるクローディア。だが、もちろん無関係なはずもない。今回の共同開発合意は、言ってしまえば先日のーーーーーサイラスが巻き起こした一件の落とし前だ。他学園の生徒を利用してその学園の生徒を襲わせるなど、それこそ明確な星武憲章(ステラ・カルタ)違反である。公表すればアルルカントの処罰は免れないだろうし、学園の評判にも傷がつく。それだけは何としてでも避けなければならないが、それでは星導館(こちら)に旨味がない。そこでクローディアはその一件を表沙汰にしない代わりに、アルルカントから実践的な技術提供という実益を引き出したのだ。

 

「ふん、腹黒女がいけしゃあしゃあと抜かしやがる。人に化けるのも上手けりゃ、他人を化かすのも上手いってか?」

 

赤毛の青年がふんぞり返りながら言い終わると同時に、今度は青い刀身の切っ先が付き付けられていた。

 

「・・・・・・あん?」

「口を慎んで頂きたい、双剣の総代」

(せ、刹那!?)

「・・・・・・・・」

 

その光景を静かに金髪の青年と童女は見ていた。

 

(一連の動作が速すぎるーーーー中々の手練を懐に入れたね、ミス・エンフィールド)

(ほう、あの小僧・・・・・強いのう)

 

赤毛の青年は、スーツに身を包み、サングラスで目元を覆っている少年を睨む。

 

「先程も光輪の総代が仰られたはずだ、口を慎めと」

「だからなんだ」

「我が赤蓮の総代は多忙の身故、円滑な話し合いを所望したい。それでも尚話の折をくじくのであればーーーーここで切らせてもらう。それに我が赤蓮の総代への侮辱、些か癇に障る所がある」

「ほぉ?」

 

赤毛の青年は目を釣り上げた。しかし、そこに金髪の青年が割って入った。

 

「そこまでだよ。確かに彼の言い分は最もだ。そういう事だ、双剣の総代」

「チッ」

「彼の代わりに僕から非礼を詫びさせて貰いたい、済まなかったね。君も剣を納めてくれるかい?」

「ご理解、感謝する」

 

そう言い、刹那は煌式武装(ルークス)をホルダーに納めた。

 

「では、この話はここまでということで」

 

にっこりと微笑み、この話題を打ち切る。

 

「ふむ・・・・・・確かに発表内容は吟味してからでも遅くはないだろうからね。うん、それじゃ改めて今日の案件だけどーーーー」

 

ところが金髪の青年が仕切り直そうとしたところで、再び声が割って入った。

 

「あのぉ、すいません。ちょっといいでしょうか?」

「おや、今度はそちらか。なんだい?」

 

おずおずと手を挙げたのは、細めの青年だった。

 

「ええっとですね、実はその、急な話になりますが、今日の議題に挙げさせて頂きたい案件がありまして」

「ほうほう、何事じゃ?」

 

一同の視線を受けて心なしか小さくなったように見えるの細めの青年は、しばらく周囲を見回してからおずおずと口を開いた。

 

「えー、皆さんにご提案させて頂きたいのは、アスタリスクにおける人工知能の取り扱い及びその権利についてです」

「人工知能だと?」

 

赤毛の青年は訝しげに眉を顰める。

 

「ええ、はい。昨今落星工学の発展により人工知能の研究は大幅に進んでいます。遠からず、人間の自我に近いものを持った人工知能が誕生するであろうことは疑いの余地がありません。ですが、おそらくそういった存在に対する法整備はどこの国でもすぐには進まないでしょう。なにしろ僕達は《星脈世代(ジェネステラ)》ですらそうだったのですから。そこでですね、余計なしがらみのない我々が、まずモデルケースのような形で彼らを受け入れる態勢を整えれればと・・・・・・・・」

「それはつまり、自我ともいえるものを持ちえた機械を、アスタリスクの学生として受け入れるということかい?人間と同様の権利を与えて」

 

どこか呆れ果てたような顔で金髪の青年は言った。

 

「はい、出来れば《星武祭(フェスタ)》への参加にも・・・・・・」

「アホか、論外だ。討論する価値もねぇ」

 

赤毛の青年も白けた表情で切って捨てる。

 

「てめーのとこが機械を学生扱いするってのなら知ったこっちゃねーが、そいつらを《星武祭(フェスタ)》に出そうってんなら話は別だぞ」

「そうですね。幾ら何でも無理がある提案だと思います。少し考えただけでも問題が多すぎですから。例えば星武憲章(ステラ・カルタ)の年齢規定はどうクリアするおつもりなのです?十三歳から二十二歳までという制限に当てはめるのであれば、彼らが参加する頃には旧式にも程があるようになってしまうのでは?」

「第一自我の有無はどうやって判定するんだい?まずはその基準から整備しなければならないんじゃないかな。まあ、確かに将来的には何らかの規定が必要になるとは思うけどね」

「なんじゃ、主ら皆反対か。つまらんのう」

 

ぷくーっと頬を膨らませた童女は、腕組みをして一同を見回した。

 

「あん?界龍(ジェロン)は賛成に回るってーのか?」

「無論じゃ。その方が面白いからの」

 

この黄龍の総代は、とにかく自由気ままだ。

学園の代表でありながら個人の意思を優先させ、自分の学園の利益は二の次なのだ。場が混乱し、状況が混沌とするのを楽しんでいるかのようにさえ見える。そんな彼女が生徒会長の座に立ち続けていられるのは、その圧倒的な戦闘能力があってこそと言われている。

生徒会メンバーを選出する方法は学園ごとに異なるがーーーー例えば星導館では選挙が行われるし、レヴォルフでは序列一位が生徒会長の指名権を持つ。界龍(ジェロン)はシンプルな学内トーナメント方式で採用していた。立候補者の中でも強い者が生徒会長となるのだ。それはつまり六学園中最大の規模を誇る界龍(ジェロン)で、誰一人彼女を止められる者がいないということを示していた。何にせよ、星導館、ガラードワース、レヴォルフは反対。一方で界龍(ジェロン)が賛成の意向を示したものの、提案したアルルカントを含めて、こちらは二票。

 

「クインヴェールの委任状には、多数票に一票。よって反対は計四票。否決という事になるね」

「そうですか・・・・・・・残念です」

 

細めの青年はがくりと肩を落とした。しかしーーーー

 

「でしたら・・・・・・自我のある無しに拘らず、それらはあくまで武器として扱う、ということでよろしいですね?」

 

俯きながら細めの青年が呟いたその言葉に、場の空気が僅かに張り詰めた。

 

「それは、どういうことかな?」

「だってそうでしょう?学生としての権利は与えない、自我の有無に拘らず機械としてみなすーーーー先程皆さんがそう仰ったじゃありませんか。それが例え人の形をしていたとしても機会は機械、つまり道具です。そして星武憲章(ステラ・カルタ)には道具のーーーー武器武装の使用に関して、形状でそれを制限するような項目はありません」

「・・・・・・つまり自立型擬形体を武器として使おうってーのか?」

「ふむ。確かにそれを制限するような項目は星武憲章(ステラ・カルタ)にもないのう」

 

それは当然だ。人間が操作する戦闘用擬形体ならともかく、単純作業しか出来ないような自動制御の擬形体を舞台に上げたところで、《星脈世代(ジェネステラ)》の相手になるはずもない。あっという間にスクラップだ。だが、もしーーーその擬形体に人間と同じような判断力を持たせることが出来たとしたらどうだろうか。

 

「なるほど、つまりここからが本番ということですね」

 

クローディアはそう言って目を細めた。

 

「やれやれ、これから「神器(イノセンス)」の所在などに付いて話し合いもしないとならないのに・・・・・・」

(イノセンス・・・・・・・?)

「では、そちらも並行して進めましょう」

「ふぅ・・・・・・・わかったよ、これは本腰を入れて話し合う必要がありそうだね」

 

金髪の青年が三度目の溜息混じりにそう言うと、細めの青年は恭しく頭を下げてそれに答えた。

 

「ありがとうございます。これで僕も怒られずに済みそうですよ」

 

刹那はその後の話し合い、そして、「神器(イノセンス)」と呼ばれる純星煌式武装(オーガルクス)について静かに聞いていた。




刹那「今回から始まるアスタリスクお悩み相談室。読者からの質問もどしどし受け付けている、何でも聞いてくれ。早速だが、今回のお相手はこいつだ」
クローディア「どーもー♪クローディア・エンフィールドです」
刹「記念すべき第一回はこの悪質腹黒女狐ことクローディア・エンフィールドとお送りする」
「ディルク・エーベルヴァインだ」
ク「これはまた陰険そうな子豚さんがいらっしゃいましたね。記念すべき第一回がこんな子豚さんでは刹那が可哀想です」
豚(ディ)「黙れ腹黒女狐。いいから相談だ。部下の占いが的を外れすぎてい困っている。何とかしろ」
ク「そんな顔して占いに頼るだなんて存外心は乙女なのですねこの豚野郎♡自分の思うようにしたければ、権力と裏金でどうとでもすればいいのです。そういうのお得意でしょう?」
豚(確)「ふん、いつもてめぇがやっているようにか?そもそもーーー」
ク「はぁい♡これでお悩み解決ですね♪」
刹「汚い奴らだ」

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