刹那は奈落の底へと落ちていくかのような感覚に苛まれていた。姉の聖羅はよく手に包帯を巻いていた。理由を尋ねては、よくあしらわれたものだ。そして、頭の中に直接流れてくる映像のようなもの。
『うっ・・・・・・!』
『聖羅?体の調子は・・・・・・聖羅!?』
(あれは・・・・姉さんに母さん?)
聖羅はベッドに腰をかけながら、手に黒い物体を握っていた。
『聖羅、何をしているの!早く離しなさい!』
『嫌よ・・・・・!絶対に離さないわ・・・・・!』
そして握られている黒い物体はまるで拒絶するかのように、聖羅の手を弾き飛ばした。僅かな力であったが、常人である聖羅にとっては激痛だった。
『きゃあ!』
『聖羅っ!』
黒い物体はそのまま地面へと落下した。聖羅の手は火傷をしたかのように真っ赤に腫れている。
(あれは、《正宗》の発動体!)
『《
『ええ、わかってるわ・・・・・!でも、なんで刹那なの・・・・・!なんでよりによってあたしの弟を選ぶのよ!』
『聖羅・・・・・』
『なんで、他の人じゃないの・・・・・!』
聖羅の目からは大粒の涙が零れていった。
『
『まだ小さいのに・・・・酷いよ、お母さん!この世界は・・・・・!』
そこで映像は終わった。瞬間、断片的ではあるが脳内に映像が次々に流れていく。何者かが眠っている聖羅を抱き抱え、遠のいていく映像。どこかの施設内。横たわっている目線から見えるカプセル内のような天井。そして、それを見下ろす仮面の人物。
刹那ーーーーー・・・・・・
跳び上がるように起き上がる。時刻は丁度六時を指していた。片目からは一筋の涙が流れていた。どうやらルームメイトのことを起こしてはおらず胸を撫で下ろす。おもむろに机に目を向けると、カーテンから差し込む僅かな光を反射して、《正宗》の発動体に埋め込まれた紫色のウルム=マナダイトが艶やかに輝いていた。
「・・・・・・あれはお前の記憶なのか?《正宗》・・・・・・」
もちろん返答はなく、刹那の独り言は虚空へ消えていった。あれは自分にはない記憶だった。一体なぜ、あんなものを自分に見せたのか。
「待っていろ、仮面の男。お前を見つけて必ず・・・・・・・!」
刹那は奥歯を噛み締めた。だが、一つだけ分からないものがある。あれがもし《正宗》の記憶だったとしたら、時々見るメガネをかけた少女は何者なのか。
(あれは誰なんだ・・・・・昔、会ったことがあるのか?俺か姉さんが。だがどこか、綾斗に似た雰囲気があった。顔はあまり似ていなかったが・・・・・)
この世の中に似たような人なんていくらでもいる。考えるのをやめ、制服に着替える。気晴らしに外に出るために、机においてあった
「お、お前さんも朝早いのな」
「っーーーー!・・・・・夜吹か」
「ここの朝は視界不良だから気をつけんだぜー」
(こいつ、いつの間に後ろから・・・・・)
足音、ましてや気配すら感じ取れなかった。刹那とてこういう視界が悪い時は警戒心は持っている。だが、夜吹の気配には気づけなかった。まるで背後から近づく暗殺者のような感覚だった。いつも飄々としてるため、掴みどころがないのも夜吹の特徴だ。裏表がないのはいいことなのだが、やはり食えない男であるのは間違いない。《
「俺に何か用か?」
「いやな、神木が散歩してるって小耳に挟んだもんでよ。天霧も呼ぼうと思ったんだけど起こすのも悪いしな」
「そうか」
「《閃光》の実力をもっと決闘か公式序列戦でも拝見したいしな!今度はちゃんとお姫様とやってくれよ!」
「あの時勝手にライブ中継してたのはお前だな?」
「おー!気付いてたのか!いやー、バレるとは俺もまだまだ未熟だな〜」
英士郎の額を指で弾く。少し鈍い音が鳴り、少し遅れて「いってー!」という声が発せられた。
「今日はお前の朝食をもらう」
「なんですと!?俺から朝食を奪うってのか!」
「それでチャラにしてやる」
「えー」
「現金を取ってもいいんだがーーー」
「私めの朝食でよかったらどーぞもらってください」
「ーーーったく」
英士郎は刹那の肩に手を回し、歩いていく。だが、刹那はまだ知らない。彼が両親を殺した一族の当主の息子であり、後々戦うことになることをーーー。
ーーーーーーーー
「おーっす、刹那」
「ん、ササミか」
「ササミじゃない、沙々宮紗夜って名前がある」
「すまない、ササミ」
紗夜はふざけて言っているのかと顔を見たが、刹那はいたって真面目な顔だった。どうやら本当にササミで覚えてしまったらしい。
「名前を覚えるのが苦手でな」
「じゃあ問題」
紗夜は問題形式で名前を覚えてもらおうと早速実践する。
「薔薇色の髪をしている女子は?」
「リースフェルトのことか?」
「水色の髪をしている女子は?」
「ササミ」
「・・・・・・・」
「なぜ睨む」
なかなか手強い。真面目に間違っているとなるとかなり苦労するだろう。
「気を取り直して、じゃあ星導館学園の生徒会長の名前は?」
「生徒会長」
「それ役職名。名前」
「《
「それは二つ名。名前」
「・・・・・・腹黒い女?」
ダメだ、こんなにも人の名前を役職名やましてや食べ物で覚えるなど。まるで試合で燃え尽きたジョーのような気分だ。紗夜の体は真っ白に脱色され、壁に寄りかかる。なんで?ユリスと綾斗だけは覚えてるのに。
「だ、大丈夫か?ササミ」
「・・・・・・・」
応答がない。紗夜の体調が優れないのかもしれない。体も真っ白だ、刹那は直ぐに次の行動にでる。
「失礼」
紗夜の右手首と首に手を当て、脈拍を測る。
「脈拍、心拍数ともに異常なし」
「うわぁ!紗夜どうしたの!?」
慌てて綾斗がやって来る。隣にいたユリスもこれにはビックリだ。
「謎の病だな・・・・・」
顎に手を付き、考え込む。体色が消えるなど有り得ない。だが《
ーーーーーーーー
「ったく、原因はお前か。刹那」
「すまない、沙々宮・・・・」
「覚えてくれたから許す」
あれから保健室まで紗夜を運び、ユリスと綾斗による一時間にも渡る教えの末、なんとか名字を覚えさせることができた。すると、保健室のドア越しに視線を感じる。敵意のような、とても危険な視線を。
「誰だ!」
刹那はドアを思い切り開けたと同時に、逃げる人影を視界に入れた。
「綾斗、リースフェルトを頼む」
「まさか!」
「ああ、犯人を見つけた。俺は先に奴を追う」
「刹那!待て、私も行く!」
「ユリス!?」
「勝手にしろ」
(そう遠くには行ってないはずだ)
刹那は足に
「な、なんて速さで走るんだ、アイツは・・・・・・!」
「ユリス、俺たちも行こう!」
綾斗、ユリスも刹那の後を追い学園を飛び出した。
ーーーーーーーー
「ちっ!逃げ足は速いな」
跳躍し建物の屋根に立ち、
「《閃理眼》!」
建物や住宅群が透き通ったように見え、その中を走る人型を見つけた。人とという生き物は生きている限り、体から微弱ながらも電磁波を発している。その電磁波を辿り、読む事で相手の行動を先読みすることが出来る。もちろん戦闘にも使えるため汎用性は高い。
「見つけた。向かった場所は再開発エリアの外れか」
今度は建物と建物の上を跳びながら再開発エリアの廃ビルを目指した。
一方綾斗たちといえばーーーー
「クローディア!刹那の居場所は!?」
『端末のGPSでは再開発エリアの廃ビルを指していますね』
「よし!私は先に行く。綾斗、お前はアレを取ってからこい」
「アレ?」
端末越しからクローディアの声が発せられる。
『先ほど《
綾斗は少し考えた後、直ぐに答えを出した。
「わかったよ。《
「ふん、私をなめるな」
二人は別方向に向かい走り出した。
ーーーーーーーー
その頃、刹那は再開発エリアの廃ビルを訪れていた。解体工事中のそこは逢魔が時の薄闇が支配している。すでに一部の壁や床が打ち壊されて広く感じるが、あちこちに廃材が積まれているため死角は多い。顔色一つ変えず足を踏み入れた。まだ日中だというのに中は薄暗く、日差しはほとんど入ってこない。確かに、隠れるには打って付けの場所だ。常時《閃理眼》を発動させながら黙々と歩みを進める。一番奥の区画に足を踏み入れた途端、吹き抜け状になっている上階部分から刹那目掛けて廃材が落ちてきた。が、もう既にそこに刹那はいなかった。《閃理眼》により、犯人の動きを先読みしたのだ。立ち込める土埃を払いながら、静かに出てくるよう促した。
「リースフェルトはいない。いい加減出てきたらどうだ、サイラス・ノーマン。お前が一連の事件の犯人だということは分かっている」
弾かれた強化鉄骨が床に突き刺さり、廃材が巻き上げた土埃はまだ落ち着かない。その中、一人の少年がゆっくりと姿を現した。
「これは失敬。余興にもなりませんでしたか。ですが、リースフェルトさんではなかったのは計算外でしたがね」
痩せた少年ーーーサイラスは、芝居がかった仕草で頭を下げた。
「それにしても驚きましたよ、よく僕が犯人だとわかりましたね」
「お前のことは最初から疑ってたさ。危なくその上手い芝居に騙されるとこだったがな」
「やはり、あの時僕を睨んでいたのは君でしたか」
適合率検査の時のことを刹那は思い出す。
「もっとも、綾斗とリースフェルトは前々からわかっていたと思うぞ。今回の事件の当事者はあいつらだからな。だが、第三者の俺に看破されるとは、その芝居の稽古が足りてないんじゃないか?」
「これはこれは・・・・・僕としたことが迂闊でした。では、彼も最初から僕を疑って探りを入れていたと」
「そのくらいはやってのける奴さ、あいつは」
「ふむ・・・・・・だとするとやはり彼のほうへ狙いを変えた方が良かったですね。リースフェルトさんを狙う上で、彼はいかにも邪魔者だ。ーーーー君も」
「この道化が・・・・・・!」
「くくっ、わかっていますわかっていますよぉ。君がわざわざここに足を運んでくださったのは、お二人を守るためでそょう?」
余裕の表情で手を広げてみせるサイラスに、刹那は拳を握り締める。
(まさか、ここに来るよう誘導されていたとはな)
「で、用件はなんだ」
「まあまあ、そう急かさないでください。僕としては話し合いで済むならばそれに越したことはないと考えているのですよ」
「この期に及んで戯れ言を」
「いえいえ本当です。僕としては正面から《閃光》とやりあうのは出来るだけ避けたいのが本音ですし」
そう言いながらも余裕の表情を崩さない。ここに来る前に調べてみたが、サイラスは序列外だし公式序列戦に参加した経歴もない。だが、その分実力は未知数だ。
「わかった、聞いてやる」
ここは相手の出方を伺った方が得策だと判断し、サイラスの提案に乗った。
「そうこなくては。実は僕、ここでの目的はお金を稼ぐ事でしてね。単身で来た君にも分かるでしょう?お金を稼ぐ大切さを」
サイラスは尊大な笑顔で頷く。
「君はおわかりでしょうが、こちらの条件はリースフェルトさんの《
「メリットは?」
「リースフェルトさんと天霧綾斗くん、そして君の身の安全では不足ですか?」
「ーーーくだらないな」
どうでもいい話を聞かせたこっちはハッキリ言って、サイラスのことなどどうでも良かった。どうせ、クローディアからは逃げられないのだから。だが、大切な友の身が危ないとなれば話は別だ。
「そんなもの、お前を叩きのめせば済む話。それに俺が黙っていたとしてもすでに生徒会はお前まで嗅ぎつけているはずだ」
「そっちはどうとでもなります。なにしろ、僕がやったという証拠は一切ないのですからね」
「大した自信だな。別に自分の力を誇示する訳では無いが・・・・・・勝てると思っているのか?」
サイラスは圧倒的強者の威圧を身に受けてた。血の気が引き少し足がぐらついたが、なんとか平然は保っていられた。なんとか、だが。
「事実ですから」
刹那とサイラスの視線がぶつかり合う。と、そこに割り込むように、低く怒りに満ちた声が響き渡った。
「これは一体どういうことだ、サイラスッ!」
「・・・・・《
ずかずかと大股でやって来たのはレスター・マクスウェイルだった。レスターの目線と怒りは明らかにサイラスに向けられている。
「やあ、お待ちしておりましたよレスターさん」
「ユリスが決闘を受けたというから駆けつけてみれば・・・・・今の話は本当なのか?てめぇがユリスを襲った犯人だと」
どうやらさっきのやりとりを聞いていたらしい。
「ええ、その通りです。それがなにか?」
「ふざけるな!なんでそんなマネしやがった!」
「なんでと言われましてもね。依頼されたからとしか答えられません」
「依頼だと・・・・・・?」
レスターは驚きと怒り、そして混乱が混ざった表情をしている。これが演技なら大した役者だが、そんな器用さを持ち合わせていないことぐらい刹那にもすぐわかった。
「そいつはな、どこぞの学園と内通して《
声が発せられた方を振り向けば、そこには仁王立ちしたユリスがいた。その表情はレスター同様、怒りに満ちていた。
「・・・・・!」
「遅かったな、リースフェルト。道中危険がなくて何よりだ」
「遅れてすまんな、刹那」
レスターは言葉もないといった表情だった。彼にとって余程従順な取り巻きだったのだろう。そんなレスターを嘲るよう
な目で見ながら、サイラスが肩をすくめる。
「僕はあなた方と違い、正面切ってぶつかり合うような愚かしいマネを繰り返すのはごめんなんですよ。もっと安全でスマートに稼げる方法があるなら、そちらを選択して当然でしょう」
「このやり方がお前にとってスマートとやらと言うなら・・・・・お前、かなりの外道だぞ」
「それが同じ学園の仲間を売ることだと?」
「仲間?ははっ、ご冗談を」
サイラスは笑いながら首を横に振った。
「ここに集まっている者は皆敵同士じゃありませんか。チーム戦やタッグ戦のために一時的に手を組むことはあっても、それ以外ではお互いを蹴落とそうとしている連中ばかりです。リースフェルトさんや神木刹那くんのように序列が上位の人はよくお分かりでしょう?必死で闘って、血と汗を流して勝って、ようやくそれなりの地位を手に入れたと思ったら、今度はその場を付け狙われる。僕はそのような煩わしい生活は真っ平なんですよ。同じくらいに稼げるのであれば、目立たずひっそりしていたほうが余程賢いと思いませんか?」
「確かに貴様の言い分にも一理ある。同じ学園に所属しているが仲良しこよしの関係ではないし、名前が広がれば煩わしさも付いて回る」
「おい、ユリス・・・・・!」
心当たり抜群だったのか、顔をしかめるレスター。
「だが、決してそればかりではない」
「おや、これは意外ですなぁ。あなたはどちらかと言えば僕に近い方だとばかり思っていたのですが」
「こちらも心外だな。貴様のような外道と一緒にされるとは」
ユリスはこれで終わりとばかりにサイラスを睨みつける。
「ぶちのめす前に聞いておくぜ。なんでオレ様を呼び出した。まさかオレ様がてめぇの味方をするとでも思ったのか?だったら大馬鹿野郎としか言えねぇな」
「いえいえ、あなたは保険のようなものですよ。もし刹那くんとの交渉が決裂した場合、誰か代わりに犯人役をやっていただく必要がありますからね」
「・・・・・・てめぇ、本当に馬鹿なのか?オレ様がはいそうですかと引き受けるわけねぇだろ」
「なに、三人とも口がきけなくなれば、あとは適当な筋書きをこしらえますからご安心を。ま、そうですね、三人が決闘の挙句、仲良く共倒れしたというのが、一番無難なところでしょうか」
その言葉にレスターの堪忍袋の緒は完全に千切れたようだ。
「おもしれぇ、てめぇのチンケな能力でオレ様を黙らせるっていうんなら、是非ともやってもらおうじゃねぇか」
そう言って
「レスター、あまり先走るな。何を仕掛けてくるかわからんぞ。やつも《
「ハッ、あいつの能力は物体操作だ。せいぜいそこらの鉄骨を振り回すぐらいしかできやしねぇさ。それよりユリス、刹那。てめぇらは手を出すんじゃねぇぞ。これはオレ様が残した不始末だ、自分のケツは自分で拭く!」
言うが早いかレスターは地を蹴った。一瞬でサイラスとの距離を詰めると、巨大な光の刃を唸らせて三日月斧を振り下ろす。
「くたばりやがれぇ!」
が、その寸前。
「なにっ!?」
突如として吹き抜けから降ってきた黒ずくめの大男が二人の間に割って入り、レスターの一撃を受け止めた。
それも素手で。レスターは驚いた表情をしつつ、一度距離を取る。
「へっ!そうかそうか、そいつがご自慢のお仲間ってやつか」
「仲間?くくっ、馬鹿なことを言わないでください」
サイラスがパチンと指を鳴らすと、大男に続いてさらに二人、黒ずくめの男たちが姿を現した。
「こいつらは、僕の可愛い可愛いお人形ですよ」
男たちが黒ずくめの衣装を脱ぎ去る。その下から現れた体は、まさしく人形だった。顔には目とおぼしき窪みがあるだけで、鼻や口もない。関節は球体で繋がっており、全体的につるんとしている。強いていえばマネキンだが、それより遥かに不気味だった。
「戦闘用の
ユリスは冷静に判断した。
「僕の能力は印を刻んだ物体に
四体の擬形体がレスターに飛びかかったが、その四体全ての胴が一瞬にして斬られた。
「・・・・・へ?」
「刹那・・・・てめぇ・・・・・」
「すまない、《
「刹那・・・・・」
「リースフェルトも。《
「・・・・・・ふん、勝手にしろ・・・・・サイラスを頼む・・・・・」
「ああ、頼まれた」
刹那はゆっくりとサイラスへと歩み寄る。
「サイラス・ノーマン。正直、外道のお前と口は聞きたくないが、これだけは言っておく。お前のいうスマートな選択は間違えたようだな」
「何を理由のわかないことを」
「お前は選択を間違えた。お前は、俺の怒りを買った」
刹那の
「なんだ、《正宗》が・・・・・」
ユリスは目を凝らした。そう、《正宗》が変形しだしたのだ。柄が割れ、割れた中から更に柄が伸び、漆黒の刀身が更に伸びる。まるで、野太刀のような姿に変形したのだ。
「ば、ばかな・・・・!
サイラスも流石に驚きを隠せないようだった。
「《正宗・
野太刀へと変貌した《正宗》を構え、サイラスを睨む。
「ま、まあいいでしょう。僕が最大で操れる128体の人形で相手をしてあげましょう!」
目の前には総勢128体の擬形体がひしめき合う。だが刹那は全く動揺した表情を見せず、構える。
「この形態になると少し
《正宗・叢》に黒雷が纏われる。
「雷切・
纏った黒雷がまるで生き物ように巨大な顎を模し、128体の擬形体の半分を根こそぎ狩りとった。
「懺悔の用意はいいか、外道」
刹那は鋭い眼光でサイラスを睨みつけた。