やはり俺が死後の世界で過ごすのは間違っている   作:璃羅

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書き溜めていたのがなくなってしまったのでこれからは多少の間が空くかと思われます。

今回は、あのバンドの人たちが登場です!

では、どうぞ!


第6話 彼女たちの音楽

 

俺が死んだ世界戦線に加入した次の日——

 

あのあと俺は戦線に正式に加入し、戦線の制服を受け取り、諜報班として遊佐からインカムなどの使い方を学んでいた。これが意外と難しい。

 

俺が配給されたインカムはどうやら遊佐と同じ機種?(っていうのだろうか)のようで割と複雑な機構になっており、操作を覚えるのも一苦労だ。

 

操作を覚える中で聞いたんだけど、どうやら戦線の幹部メンバーには基本的に発信機と盗聴器が付いているという。この話を聴いた時、思わず自分の身体を見て確認してしまった。

 

「そんな焦らずとも比企谷さんにはついていませんよ。ーーーまだ」

「不穏なつぶやきが聞こえたんですが?おい、目をそらすんじゃない」

 

このあと、遊佐は発信機とかは同意した人の装備品についていると説明してくれた。例えば、野田のハルバードなどらしい。

よかった。非人道的な組織ではなかったようだ。…人格が崩壊するような罰ゲームがあることから怪しいところだが。

 

と、本日の予定は午前中に遊佐と操作の確認だけで終わり、午後の予定は特にない。だって、所属したからといって自分から話しかけるとか無理だし。

 

昼飯の醤油ラーメンを食べおわり、トレーを片した。あ、ラーメン美味しかったです。午後は何をしようかと考えていると声を掛けられた。

 

「あんたが比企谷かい?」

「んあ?」

 

声の先には、戦線の制服を着た茶髪をポニテにした姉御という言葉がしっくり来るような女子がいた。何処とは言わないがとある一部がデカイ。

というか最近女子に声掛けられすぎじゃね?遊佐、立華、そしてこの女子。小町、お兄ちゃんこの世界来てからめっちゃ人と話してるよ…。

 

「ふむ、濁った目とアホ毛…。あんたが比企谷だね?」

 

小町…初対面の人にもdisられたよ…。

 

「そうだが。で、あんた誰?」

「私は陽動班のバンドをやってる、ひさ子っていうんだ」

「陽動班?あー、ギャルデモだっけ?」

「びみょーな間違いするな…。Girls Dead Monster 略してガルデモだ」

「で、そのガルデモの人がなんか用か?」

「ああ、あんた諜報班で幹部になったんだろ?ゆりからのお達しで、あんたと私達の顔合わせをしとけってさ」

「えぇー。なんで?」

「嫌そうな顔するな…。陽動班と諜報班は割と作戦の時とかよく連携取るからな。あんたは『顔合わせに行けって言ったらいつ行くかわかったもんじゃないからひさ子さん、迎えに行ってあげて』ってゆりが」

 

よくわかってるじゃないか。リーダーさんよぉ!その予想は大正解だ。誰が好き好んで挨拶なんて行くか。さて、逃げるか。

 

「あ、そういえば遊佐が『逃げても無駄ですよ』って言ってたな」

 

バ レ て る⁉︎なんで俺の思考がこんなに読まれるんだ?ちょっと自分の行動の単純さにちょっと泣けてきた。

 

「ま、ままさか!顔合わせとか大事なことなのに俺が逃げるわけないだりょ」

「汗かいてるし、目合わせないし、噛んでるし、逃げる気満々じゃねーか!」

「いやいや、そんなことないにょ。ただガルデモって名前なくらいだし、女子しかいねーだろ〜なとか思って逃げようとしたわけではないよ?」

「説得力皆無だから!ほら、行くぞ!」

 

手首を掴まれ、引っ張られる。

やめて!なんか目立ってるから!手首掴まれるとか勘違いしちゃうから!ぼっちをこれ以上イジメないで!

 

「わかったから!行くから離して!」

 

奇異の目線に晒されながらしばらく歩くとようやく腕を離してくれた。ふぅ。

 

「最初からそういえばいいんだよ。全く…」

 

ここまで接して分かったがこのひさ子という女子はこの戦線のなかでかなりまともなほうに入るんだろう。それ故に、彼女の心労は大変なものだろう。

 

「?なんでそんな暖かい目で見て来るんだよ!辛かったなみたいな目で見て来るな!」

 

わかる!わかるよぉ!あの連中の相手って大変だよね!ひさ子への好感度がガン上がりした。ひさ子へふざけるのはやめておこう。

 

「で?このまま何処行けばいいんだ?」

「急に真面目になるなよ!」

「いや、まともな人だったから心労も絶えないと思って、ちゃんと接することにした」

「なら最初からしてくれよ!」

 

この戦線でまともな奴とかいないんだろうなと思ってた俺を許して欲しい。

 

「はぁ、とりあえずこれから行くのは学習棟の空き教室だ。基本的にはいつもそこでバンド練習してる」

 

ー空き教室ー

 

「ただいま、みんな揃ってるか?」

「お帰りなさーい!ひさ子先輩!噂の人は連れてこれました?」

「お帰りなさいです」

「………」

 

空き教室へとたどり着き、ひさ子は中へと入っていってしまった。俺はいまだ入らず中の様子をうかがってみたが、なに?俺?噂されてんの?ゾンビが戦線に入ったとかだろう。誰がゾンビだ。

 

「おい、比企谷!取り敢えず入ってこいよ」

 

ひさ子に呼ばれたので教室に入ることにした。中には、ひさ子とオレンジ色の髪のテンションが高い女子、紫の髪のおっとりしてそうな女子がこっち見てちょっとビクッてなった。べ、別に慣れてるし!…泣きそう。

赤い髪の女子が何かを書いていた。やっぱり女子しかいないじゃないですかー。ダレカタスケテー。

 

「じゃ、比企谷から自己紹介頼む」

「あ、ああ、比企谷だ。よろしく頼む」

「………」

「………」

「………」

「………」(何か書いている)

「……え?それだけ?」

 

オレンジ色が沈黙に耐えかねたのか声をかけてくる。え?なんか変な事言った?名前言っただけだよね?

 

「ああ、そうだが?」

「それだけかよぉぉーーーーーー!」

「うおっ」

 

オレンジ色が突然叫ぶ!唐突に大きい声出すんじゃない!びっくりしただろうが!

 

「なに?なんなの?情緒不安定なの?」

「お前の自己紹介が短すぎるからだろうが!」

「は?何言ってんだ。自己紹介なんてものは名前がわかればそれでいいだろ。むしろ、他の趣味とかなんて情報はいらないまである。だから名前だけ名乗るのが正しい。だから、俺は間違っていない」

 

間違ってないよね?だって昨日名前だけ言って何も追求されなかったし。

 

「間違ってるだろぉーー!なんなんですかその価値観!間違い過ぎてますよぉ!」

「はは……」

「はぁ…」

「……」

 

オレンジがさらに怒鳴る。紫の髪の子が苦笑い。ひさ子はため息をついている。さっきから赤い髪の人こっちを一切見ないよ?気づかれてないのかな…?

 

「まあいい。んじゃ、こっちの自己紹介だな。さっきも言ったが、私はひさ子だ。ガルデモのリードギター担当だ」

 

バンドの知識とか一切ないのでリードギターといわれてもよくわからないが、主旋律的なのかな?よく分からんけど。

 

「はーい!ベース担当の関根でっす!噂の通り、目がやばいっすね!よろしくっす!」

 

こいつぶん殴ってやろうか。ノリが鬱陶しいな。こいつ絶対調子に乗るタイプだ(確信)。というか、噂が目のこととかどれだけこの目は目立つんだ。そんなに特徴的?

 

「えっと…。ドラム担当の入江です。よろしくお願いしますね」

 

紫の髪の小動物的な可愛さがあるこの少女は入江というらしい。こう見ていると何故か守ってあげたい気持ちになる。これが、父性なのか…?

何が言いたいかってことは、とても可愛い」

 

「ふぇ?ええぇーー!」

 

突然入江が声を上げた。?どうしたんだ?顔も赤いし、風邪か?

 

「てめー!みゆきちを口説くとかいい度胸してんじゃねーーか!!!」

「は?口説いてねぇよ」

「今、可愛いとか言ってただろぉーーーー!」

「え?まじで?声出てた?」

「ああ、バッチリな」

 

うわ、まじか。入江の顔が赤いのは怒ってたからかー。こんな初対面のやつにそんなこと言われてもキモいだけだよな…。

 

「すいませんでした」

 

俺はすぐさま土下座を決行する。すでにこの世界における心の清涼剤である入江にキモいとかいわれたら自殺までしそう。この世界じゃ、死なないから無理だけど。

 

「か、顔をあげてください!気にしてませんよ?」

「本当か?」

「はい!だから土下座をやめて下さい!」

 

土下座をやめた。

 

「いや、本当にすまなかった」

「大丈夫ですよ?だから気にしないでください」

 

許してもらえたのだろうか?次から気をつけよう。仮に次もやってしまったらここからFly awayしようそうしよう。

 

「ひさ子先輩、あたしら完全に蚊帳の外ですね」

「ほんとにな…」

 

ところでこの騒ぎの中ですらも赤い髪の人は、何かを書いている。俺だけに見える幽霊じゃないよね?

 

「おーい。岩沢?」

「……」

 

良かった。幽霊ではなかったよ!ひさ子の呼びかけも聞こえていないようだ。すごい集中力だな。だが、まともな部類ではないだろう。

 

「岩沢!…ライブが始まるぞー!」

「え?ライブ?」

 

あ、ようやく反応した。周りをキョロキョロしていたが、こちらを見て止まる。

 

「…誰?」

「新しく戦線に入って幹部になった比企谷だよ。あんたも幹部なんだから話は聞いてるだろ?」

 

ひさ子が代わりに紹介してくれた。自己紹介しなくていいとかやっぱり楽だね。そして、ひさ子は世話を焼くのが好きということがわかった。

 

「ガルデモのボーカルとリズムギターをやってる岩沢だ。よろしく。ところで、この曲調なんだけど…」

「待て待て!岩沢!突然そんなこと言われても困るだけだって!」

 

岩沢は自己紹介した後に、なんかよく分からん話をしだそうとしたが、ひさ子に止められていた。

 

「岩沢先輩は音楽キチですからね〜。ああいう話に捕まると半日は逃げられないっすよ?」

「あはは…」

 

ふーん、音楽キチねぇ。やっぱりまともじゃなかったな。あと、入江の苦笑いが可愛いです。キモいな、俺。

 

「あー!そうだ岩沢!新人も来たことだし、練習でも見て言ってもらおうぜ!」

 

ひさ子が大声をあげた!あー、なんか巻き込まれそうだし、逃げよっかな。

 

「じゃ、そろそろ俺は用事あるから…」

 

比企谷八幡はクールに去…「まあ、待てよ」れませんでした〜。あ、やめて下さい!腕にそれ以上力を入れないで!肩が壊れる!

 

「うちらのバンドの練習なんて滅多に見られないんだから、見ていけよ」

「いや、用事があ「な?」ると思ったけどそれはいつでもできるからいいや!」

 

怖っ!なんだこの圧力は!俺が気圧される、だと!いや、この世界に来てかなり気圧されてましたわ。しかも、女子っていうね。

 

「うわ〜。ヒッキーよわっ」

「まあまあ…」

「うるせー。俺は長いものに巻かれる主義なんだよ。あと、ヒッキーってなんだ?」

「ニックネームだよ〜。比企谷って言い辛いし。」

 

ニックネームかー。オタガヤとかナルガヤとかニックネームというものにいい思い出がマジでないな。泣ける。

 

「誰が引きこもりだ。せめてヒッキーはやめて下さい。お願いします」

「おおう、見事な頭の下げ方…。うーん?あ、下の名前って?」

「知らない人に名前教えるのはちょっと…」

「ここまで喋っておいて知らない人扱い⁉︎どんなイジメだーー!」

「教えてもらえないですか…?」

 

入江がお願いしてくる。入江の背は低い方なので自然と俺と話すと上目遣いになる。くっ、凄いドキドキする。これが、恋か。違いますね。

 

「…八幡、だ」

「八幡か…。うーん、八幡ねぇ」

「八幡さんですか…」

 

やめて!下の名前を連呼されるのは慣れてないうえに女子が呼ぶとかすごい!恥ずい!けど嬉しさがある!

 

「んー?閃いた!ハッチーかハチ!どっちがいーい?」

「ヒッキーじゃなきゃ、なんでも」

「じゃ、ハチさんと呼ぼう!」

 

一体どこの渋谷駅の前にいる犬なのだろう。だが、関根の言葉に俺を貶めようなどという黒いものは感じない。純粋に付けてくれたようだ。そこは少し嬉しい。

 

「ハチ公!お手!」

 

前言撤回。こいつぶん殴っていいですか?関根に対するイラつきが上昇している中、入江が会話に入ってくる。

 

「しおりん!そういうのは良くないよ?」

「みゆきちに注意されてしまった!はーい。やめまーす」

 

好感度上がるわ〜。入江さんは天使かな?よし、小町に次ぐ第2の天使と俺の中で決まった。

 

「おーい。そろそろ練習再開するぞ〜」

「比企谷は見ていくよな。な?」

 

岩沢から練習再開の言葉が飛んでくる。嫌だな〜、ひさ子さん。そんなプレッシャー出さなくても居ますから。いや、ほんと。逃げたら怖いし…。どんだけ岩沢の話に付き合わされたくないんだよ…。

 

「うっし。じゃ、一曲やるから感想を言ってくれ」

「いや、俺音楽とかわからないんだけど…」

「そこは別に期待してない。素人目線の意見も大事だからな」

「それなら了解だ」

「それじゃ、やりますか。『crow song』」

 

チッチッチッと入江がドラムでリズムをとる。こうして、少女達による曲は始まったーー

 

——————————————————————

 

「ーーー。ふぅ。で、どうだった?比企谷?」

 

——すげぇ。まるで高校生とは思えないほどの演奏を見た俺には、その感想しかなかった。

 

「ああ、月並みなセリフしかいないが、本当にすげぇわ。音楽を聴いていてここまで鳥肌たったのは初めてだ。感動したとしか言えないわ」

 

なんかシーンとなった。え?なんか言っちゃいけないこと言っちゃった?やめてよこの空気〜。

 

「ーそっか。こんなに直接的な言葉での感想はひさしぶりだな、なあ、ひさ子」

「そうだな。しかも、それを言ったのが比企谷だからな」

「おいおい、俺だって感想はしっかりいうぞ」

「いや、だってお前なんか遠回りな感想しか言わなそうだからな」

 

何故わかった。いつもの俺ならば確かにこんな直接的な言葉を使うことはないだろう。くっ、この戦線は俺の行動を予知できる能力でもあるのか?

 

「短時間接しただけだけど、そのくらいはわかるって、ハチさん」

「そうです、そうです。比企谷さんは意外と恥ずかしがり屋ですよね。だから婉曲な表現を使うかと」

 

いや!なんか恥ずかしい!ここまで自分のことを客観的にいわれるのはすごい恥ずいわ。え、こんなに恥ずかしいものなの?絶対、顔赤いよ。

 

「そっか。みんながそう言うお前が素直な感想を言うなら本当にそう感じたんだろうな、嬉しいよ」

 

岩沢がまとめに入る。

やめて〜これ以上精神力を削るのはやめて〜。俺はこれ以上ここにいると本当に恥ずか死ぬので、逃げることにした。お、覚えてろよ〜!いずれ第2、第3の俺が…!

 

「また来てくださいね!比企谷さん!」

 

教室を出ようとしたところで入江に声を掛けられる。

 

「……たまになら」

「はい!」

 

くっ!笑顔が眩しい!目が開けられないぜ!俺はガルデモの教室から逃げ出した——。

 

ーガルデモsideー

 

八幡が去った後の空き教室では、ガルデモのメンバーが話をしていた。

 

「変わったやつだったな。比企谷は」

「ああ、この戦線の中でまともなやつだろうな。時々ふざけるが」

「まあまあ…」

「ああ言うまともな人が来てくれると助かりますね!ひさ子先輩!」

「なんでお前が誇らしげなんだ…?」

「まあまあ…」

「みゆきちーー!お前は『まあまあ』しか言えないロボットかーーーー!」

「ええっ!ロボットじゃないよ?人間だよ」

「ボケを普通に返されたぁーーー!」

「うるせー!関根!お前はもう少し黙ることが出来ねーのか!」

「うるせー!今のはみゆきちが悪いだろーーが!」

「ああん?なんつー口聞いてんだ?おい?」

「しおりんが壊れた⁉︎」

 

賑やかなガルデモの練習風景である。そんな騒がしい中でも岩沢は再び何かに集中している。

 

「岩沢?今度は何書いてるんだ?」

 

関根への制裁を終えたひさ子は岩沢に聞く。ちなみに関根は、入江に介抱されながら後ろでのびていた。

 

「ん?これはさっき比企谷と話してて詩が降りてきたから書き出してる」

「岩沢先輩、やっぱりあなたは…」

「「「音楽キチだ…」」」

 

 




どうでしたでしょうか?
やりとりがかなり書いてて楽しかったです。

ありがとうございました。

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