君のいる町 if   作:中矢

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5回目の投稿です!
はいっ!
ついにあの子が登場いたします!
それでは楽しんでください!



桜の舞う日に

春休みもほとんどが終わり、高校の入学式まで残すことあと数日となっていた。

 

春休みには、青大、尊、月、俺の4人でスキーをしに行ったり、釣りをしたり、じいちゃんの畑仕事の手伝いをしたり、高校入学の準備をしたりとそれなりに忙しくも充実した日々を送っていた。

 

そんなある日、青大から「相談があるんじゃ、悪いけど今からこれんかの?」と言われ青人の家に向かっていた。

 

いつものように田んぼ道を歩いて青大の家に向かう。

歩くと少し時間がかかるが今日はなんだか歩きたい気分だった。

毎年、田植えが行われている田んぼも今は何もなくもう少し先の田植えの時期のため静かに休んでいるように見えた。

まだ道沿いや屋根に雪が残り、太陽の光に反射してキラキラ光っている。

遠くを見ると、桜色の花びらが散っているのが見える。

まるで真っ白な残り雪を飾り立てるように。

 

卒業式からすると、町はだいぶ暖かくなり、生命の息吹を日に日に感じるようになってきた。

といってもまだまだ寒い。

 

「よう!男前!散歩か?」

 

近所のおじさんが話しかけてくる。

 

「散歩...みたいなものです。これから青大ん家に行くんです。なんか相談があるみたいで。」

 

「律人はあいつらの兄貴みたいなもんじゃけぇの。まぁ力になってくれや」

 

「兄貴とか柄じゃないですよ。」

 

俺は、おじさんに苦笑いしながらそう答える。

 

「なにゆうとるんじゃ、成績優秀、容姿端麗、おまけに空手の黒帯ときたら、そりゃー頼りたくもなるわ!」

 

「成績は俺より頭のいいやつもいますし、容姿も普通です。それに、空手は中二でやめてますから。」

 

「謙遜するのもえぇ男の余裕じゃな!」

 

「あはは...」

 

兄貴か...

俺より成海さんがそんなタイプだよな。

それか...タイプは違うけどあの人もそうだよな。

 

俺は、東京にいた頃のことをふと思い出した。

 

 

青大の家が見えてきて、今度は小学生3人組に声をかけられた。

 

「お、律人くんじゃ!」

 

「今度野球おしえてや!」

 

「あと空手もな!」

 

「はいはい、今度な。転ばない様に気をつけてな。」

 

小学生低学年の3人組は元気よく走り去っていった。

 

それがまた、東京にいた頃とかさなって思い出した。

「元気にしてるかな、あの2人」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちはー!律人です!青大くんいますかー?」

 

階段からドタバタという音が聞こえ、青人が玄関を開けた。

 

「待っとったで、とりあえず上行こ。」

 

青大のお母さんにお邪魔しますと挨拶をして青人の部屋に向かう。

 

ここら辺の家はどこもそうだが東京に比べるとだいぶ広い。

 

「相変わらず広いなー。」

 

「ほぉか?律人ん家も変わらんか、家より広い方じゃろ。」

 

「東京に比べると、ていうことだよ。」

 

青大は「東京」に鋭く反応した。

 

「そうなんじゃ〜!くるんじゃ!東京から来るんじゃ!」

 

いきなりの反応に驚いた俺はとにかく落ち着いて聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

「なるほど、その枝葉柚希って子がわざわざ東京からこんな田舎に、しかも青大の家に居候してくるんだ...」

 

青大の話によると、その枝葉柚希(えばゆずき)ちゃんは俺たちと同い年の女の子で、柚希ちゃんの父親が元々はこっちの出身であり、青大の父親とは古い友人ということもあり、本人の強い希望でこっちの高校に通うため、青大の家に住むということになったという。

 

「どないしたらええんやぁー、知らん女と一緒に住むとか気ぃ遣うし考えられんわー」

 

青大は情けない声で俺に縋ってくる。

 

「うーん、と言っても、もう決まったことなんでしょ?今更、反対しても遅いしさ、覚悟決めるしかないよね。」

 

「くぅ〜...とんだ災難じゃ〜...」

 

青大はがっくりとうなだれている。

 

「枝葉さんていつからこっちくるのさ?」

 

「明日じゃ...」

 

「そっか、もう入学式まで少ししかないしな。」

 

「頼む!律人!明日は家におってくれんか?」

 

「えっ?いや、俺がいても別に何も変わらないんじゃ...」

 

「おってくれるだけでええんや!律人がおれば最初はなんとかなる気がする!」

 

最初はって...仕方ないな

 

「わかった。青大が頼み事するのもめずらしいし、明日もここに来るよ。でも、その後のことをどうにかするのは結局青大なんだからな?」

 

「ありがとう!わかっとる!助かるわ!」

 

そんなこんなで明日も青大の家に行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、青大との約束通りに青大の家に向かったのだ。

昨日と同じように歩いて田んぼ道を進んでいると、ここらでは見かけない1人の女の子に出会った。

 

ん?もしかして...

 

向こうもこちらに気づいたようで近付いてくる。

 

「あの、こんにちは、枝葉柚希っていいます!」

 

やっぱり。

 

女の子は腰まで伸びた綺麗な髪に大きな瞳が特徴でスタイルがよく、同い年には見えないような綺麗さがあった。

明るくて、どこか儚げな、例えるなら桜のような女の子。

 

というかこの子...

 

「こんにちは、枝葉柚希さん。俺は一ノ瀬律人っていいます。青人から話は聞いてますよ。」

 

「...律人くんだね!覚えた!よろしくね!そうなの!桐島さんのお家に行く途中なの!」

 

「俺も青大の家に行く途中だから、良かったら一緒に行こうよ。」

 

「うん!ありがとう!」

 

そういいながら柚希ちゃんは横に並んできた。

 

「ねえ、律人くんは青大くんの友達だからこっちの人なんだよね?」

 

「うん。そうだよ。」

 

「律人くんは広島弁じゃないんだね!」

 

うーん、この子は気づいてて隠してるのかな?

 

「当たり前じゃん、前にも言ったでしょ。俺は元々東京に住んでたんだから。」

 

そう言うと柚希ちゃんはすごく驚いた表情をしていた。

 

「律人くん...もしかして覚えてたの?」

 

「もちろん!て言っても俺も名前だけじゃ思い出せなかったんだけどね。久しぶり、柚希」

 

「覚えて...たんだ...」

 

そういいながら柚希は涙を流してた。

 

そう、俺達は小学生の時に一度会ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶はさかのぼり六年前...

 

「おーい!あかりィー!たかしィー!...どこいったんじゃあの2人は...」

 

「2人を探すのに時間をかけるのもなんだし、出店を見て回ろうよ。」

 

「そうじゃな!俺、りんご飴くう!」

 

「りんご飴って...青大もまだまだ子供だな...」

 

「むぅ、そーいう律人こそ、同い年なのになんでそんな大人みたいなんじゃ!背も高いし!東京のやつらはみんなそうなんか?」

 

「青大がこどもすぎるんだよ。」

 

俺は苦笑いしながら青大を宥める。

 

「なんといわれよーと、俺はりんご飴くうけんの!律人には欲しい言うてもあげんけぇ!」

 

そういって近くにあったりんご飴の出店でお望みのものを手にいれた青大は嬉しそうだった。

 

それからしばらく歩いてみても、月と尊は見当たらなかった。

 

「ほんまにどこいったんじゃ、あの2人は...」

 

「ほんとだね...ん?」

 

「おい、律人!どこいくんじゃ?」

 

俺は道の真ん中で泣いてる子を見つけた。

見た感じ同い年くらいだったその子は肩まで伸びた髪に可愛らしい浴衣姿の女の子だった。

俺は近くで律人が買ったのと同じりんご飴を買い、その子に駆け寄っていった。

 

「ねぇ、君?名前は?」

 

「ふえ?...枝葉...柚希」

 

「柚希ちゃんか、お父さんとお母さんは?はぐれちゃった?」

 

「っ!やだ!お父さんのとこには行かない!」

 

むー、訳ありか...

 

「行きたくないならええじゃろ」

 

「え?」

 

「そうだね。それまで俺達と一緒に見て回ろうよ。はい!りんご飴あげる!」

 

「いいの?」

女の子は驚きの顔で俺達を見ている。

 

「ええよ。どうせ俺達も友達とはぐれとるけーの。」

 

「いこっ柚希!俺は一ノ瀬律人!」

 

「俺は桐島青大じゃ!」

 

そういって俺は柚希の手を取り青大と夏祭りをもう一度楽しんだ。

 

夏祭りも終わりに差し掛かり、花火が始まる時間が近づいていた。

 

「結局、月も尊も見つからんやったのォ」

 

「きっとどこかで楽しんでるよ。柚希ちゃんは楽しめた?」

 

「うん!楽しかった!」

 

「そっか。じゃあ、俺達から最後にプレゼント見せてあげるよ!」

 

「プレゼント?」

 

「あ、律人あれ見せるんか?」

 

「うん、いいよね?せっかくだし!」

 

「仕方ないのォ、じゃあ行くか!」

 

俺達は柚希を連れてとっておきの秘密の場所まできた。

 

「ほんとは月と尊に自慢するつもりじゃったのにのォ」

 

「まぁいいじゃん、それより柚希はどこから来たの?」

 

「私は東京からきたの、お父さんが元々この町の人だったから...」

 

「そうなんだ。俺も元々東京に住んでたんだよ。小学1年までだけど。」

 

「えっ!そうなの?」

 

「そうだよ。」

 

「なんじゃー、柚希も東京の子だったんか!東京の子も俺らと変わらんやないか!やっぱり律人が大人っぽいだけじゃ!」

 

「たしかに、律人くん、大人びてるね!そういば律人くんはいくつなの?6年生?」

 

「ちがうよ。3年生。青大も同じだよ!」

 

「えぇ!そうなんだ!私たち同い年なんだね!」

 

「律人はでかいからのー。」

 

2人してうんうんと頷きあっている。

 

「ほら、そろそろ花火が上がると思うよ。」

 

ヒュー...ドーン

 

その瞬間に空に大きな花火があがり、池の水面にもそれと同じくらい大きな花が咲いた。

 

「すごい...きれい...」

 

「ねっ!すごいでしょ!俺と青大で去年発見したんだよ。」

 

「やっぱ綺麗じゃの!」

 

ひゅーんと花火があがりどんどん夜空に大輪の花が咲いていく。

そして、水面にもそれに負けないように大きな花を咲かせていた。

 

「ねぇ、柚希。つらいことがあったら、ううん、なくても!またこの町にきなよ!そしたらまたこの花火見せてあげるから!」

 

「おお!そんでこの町もいろいろ案内しちゃる!」

 

「2人とも...ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんとに覚えててくれたんだね...」

 

柚希は涙を拭って本当に嬉しそうな顔で笑った。

 

「あの時私、本当に嬉しかったの。家族のことでいろいろあって...でも、二人のおかげで...あの花火を見て元気をもらったの。」

 

「そっか。それなら良かったよ。」

 

「あ、でも、青大くんには言わないでね。わざわざ自分から言うのも嫌だし...」

 

「分かってるよ。でも、多分、青大は忘れっぽいからな...忘れてるかも」

 

柚希は右手をくちもとにあててクスッと笑った。

 

「それならそれでいいよ。私は覚えてるから。」

 

「でも、きっと思い出すよ。きっかけさえあれば。」

 

そういって2人で青大の家に再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっと次回から原作に入れそうです...

そして、今回は生意気にも後々の伏線を張っておきました!
ばればれだよ!という方も、なになに?という方も今後をお楽しみに!

次回からは投稿が少し遅れそうですが初作品なので完結させたいと思っておりますので応援よろしくお願いします!

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