ついに、ヒロインと少し近付きます!
では、どうぞ!
「え?明日?」
「うん、明日なんやけどだめやった?」
「いや、大丈夫だよ。特に予定もなかったし。」
「良かった!じゃあ明日朝10時に家にきてもろーてもええかな?そこから近くのスーパーに買い物に行こ!」
「了解。明日10時だね。」
「うん!じゃあまた明日!」
通話が終了し、突然のことに驚いている自分がいた。
「あれ、本気だったんだ」
先日、みんなで卒業パーティをした帰りに七海ちゃんを送っていくことになり、その時に律人くんの料理を食べてみたい!と言われた。
その時は、あんまり真面目に考えてなかったのだが、今日になり七海ちゃんから改めて電話があったのだ。
『この前ゆうとった料理の話なんやけど、私だけ食べさせてもらうのも悪いから、明日私の家で一緒につくらん?』
というものだった。
ほんとに食べるつもりだったんだ、というか一緒に作るんだ、青大になんか悪いな、と思いながら眠りについた。
翌日、律人は8時に目を覚まし仕度を始めていた。
「ふぁー」
眠い。律人は昔から朝に弱いのだ。
冬の寒い時期は特に。
基本的に目覚めてから30分は身体が完全には覚醒しない。
1階に降りると母さんは仕事に行っており、ばあちゃんがご飯をつくっていた。
「おはよー、律くん。そろそろ起きる頃じゃろうおもーてご飯作りよったんよ。」
「おはよー、ばあちゃん、ごめんね、ありがとう。じいちゃんは今日も畑?」
「うん、そろそろ戻ってくるんやないかな?」
「そっか」
キッチンからは味噌汁のいい匂いと、焼き魚の香ばしいにおいがした。
律人は洗面所に向かい顔を洗い無理やりぼんやりした頭を覚醒させる。
台所に戻ると朝食が出来上がっていた。
味噌汁に焼き魚と白ご飯、備え付けに白菜の漬物だ。
「美味しそう。いただきます。」
朝食を食べているとじいちゃんが帰ってきた。
「おう、寝坊助、おはよう」
「おはよう、じいちゃん」
「どうじゃ、うちでとれた白菜は美味いじゃろ?」
「ん、あっさりしてて美味いね。」
そうじゃろそうじゃろ。とじいちゃんは満足そうに頷いていた。
「おっと、そろそろいかなきゃだ。」
時計を見ると9時半をまわろうとしていた。
「ん?どこかでかけるんか?」
「友達の家に遊びに行ってくるよ。」
「これのとこかぁ〜?」
じいちゃんはニヤニヤしながら小指を立てていた。
なんかそれ古臭いよ。じいちゃん...
「そんなんじゃないよ。ただの友達!いってきます!」
「おう!気をつけてな!」
「行ってらっしゃい、律くん」
俺は外に出ると朝の冷たい空気を目いっぱい体内に取り入れた。
そして、自転車に跨り、神咲の家に走らせた。
少し早かったかな?
時計を見ると9時45分を指していた。
ま、大丈夫かな?
神咲という表札がある家の呼び鈴を押す。
はーい!
という声が聞こえ、中からは七海ちゃん...ではなくお兄さんの神咲成海(かんざきなるみ)さんが出てきた。
「げっ、おはようございます。お久しぶりです。」
「おいっ!げっ、とはなんじゃ!久しぶりじゃな!律!元気しとったか?」
そういいながら俺の頭をわしゃわしゃしてくる。
「はい、元気してましたよ。成海さんこそ元気そうで何よりです。」
この人は中学の時に俺を野球部に勧誘し続けた張本人である。試合がある度に駆り出され、果てには部員でもないのに練習にまで参加させ、声出しやベースランを強要させられていたのだ。
「俺はいつでも元気じゃ!そう言えば卒業おめでとうな!律!もちろん高校では正式に野球部員になるんじゃろ?」
「それは...ちょっと...家庭の事情で...」
「嘘つくなや!お前が入ればええとこまでいけるんじゃ!真面目に考えとってくれ!七海はお前にやるけぇ!」
「ちょっとお兄ちゃん///!何ゆうてるの!」
すると玄関の奥から七海ちゃんが出てきた。
ナイスタイミング、七海ちゃん。お兄さん怖いよ。
「もう!お兄ちゃんたら勝手なことばっかゆうて!律人くんはよいこ!」
「なんじゃー、七海だって、律にもろーてもらえば嬉しいくせ」
「う、うるさい/////!」
成海さんのスカウトの口実に巻き込まれた七海ちゃんは顔を紅くして俺を引っ張り、ある程度神咲家から離れたところで七海ちゃんが口を開いた。
「ごめんなー律人くん、変なお兄ちゃんで...いっつも律人くんのこと聞いてくるんよ!律は元気しとるけ?高校入ったら野球部入れて言うてくれ!って。」
「いや、べつに大丈夫だよ。それにそこまで本気で嫌ではないんだ。成海さんが構ってくれるの。」
「ありがとうね。やっぱり律人くんは優しいよ。」
本心では成海さんのことは結構好きだ。
あー、兄さんがいたらこんなものなのかな?とか成海さんを見ていたら思う。
成海さんと出会ったのは小4の時だった。
近くのグラウンドで野球をしている6年生を見ていた時だ。
その頃の俺はこっちにきて月や尊や青大と仲良くはなっていたものの、まだ土地に慣れていないことと、母さんが病気で入院していたこともあり、寂しさから、1人になりたくなる時があった。
そんな時に成海さんが「何そんなくらい顔しとんのじゃ!一緒に野球やろ!楽しいで!」といって誘ってくれたのが始まりだった。
最初はいやいやだったが、打つと気持ちよくて構えた所に投げられると嬉しい野球が、いいストレス発散になっていた。
成海さんが中学に上がってからは野球をすることはなくなったが、俺が中学に上がると同時に部に勧誘しだしてよく助っ人として入っていたのだ。
「どしたん?ぼーっとして?」
七海ちゃんに声をかけられて我にかえる。
「いや、成海さんとの出会いを思い出してた。そういえば最初から強引な人だったなーと思って。」
「あー、律人くんは、小学生の時からお兄ちゃんと知り合いじゃったんよね?その時もお兄ちゃん律人くんのことよく話してたよ。」
クスクスと七海ちゃんは小学生のときのことをおもいだして笑っていた。
「帰ってくるたんびに、律がな、律がな、て」
七海ちゃんが成海さんの真似をしているのを見てあることを思いついた。
「七海ちゃんさ、俺のこと律って呼びなよ。」
「え!?急になんで??」
七海ちゃんは驚いた顔で聞いてきた。
そんなに驚くことかな?
「成海さんが言ってたよ、七海ちゃん家で俺の事話す時は律くんて呼んでるって。」
「わっ///ばかお兄ちゃん...///違うんよ?お兄ちゃんが律、律、ゆうからなんかうつったんよ///」
七海ちゃんは顔を紅くして必死で弁解していた。
可愛い。小動物みたいだ。写真に撮りたい。
もちろん他意はない。...うん。
「いや、嫌ならいいんだけどさ...」
「あ...///逆に嫌やない?」
「どうして?」
「なんか...///な、なんででも!」
なんか面白いな。こんな七海ちゃんレアだ。
「ふふ、別に嫌じゃないよ?」
「じ、じゃあ...り、りつ、律くん/////」
「あはは、顔紅いよ?そんなに恥ずかしいかな?」
「は、恥ずかしいに決まっとるやん!///」
「呼び方なんて些細なことだよ。これからは気軽に呼んでよ。」
「わ、分かった///頑張ります///」
そんなやりとりをしながらスーパーで買い物をして七海ちゃんの家に戻る。
七海ちゃんの料理の腕はというと...うん、まぁ...
俺は、得意の麻婆豆腐を素から作り、神咲家の方々の絶賛をうけた。
七海ちゃんの両親が「この子なら将来は安心やね」と言い出したのにはさすがに動揺した。
そして、夕食を食べた俺は6時半を過ぎていることに気づき帰ることにした。
「じゃあ、俺、そろそろ帰ります。今日はありがとうございました。」
「あら、律人くん、帰るん?今日は泊まっていけばええのに」
「そうじゃ!泊まっていけばええ!」
神咲両親にそう言われたがさすがにそれは断る事にした。
「お気持ちは嬉しいですが、今日は帰ります。すいません。」
「まぁ、そうゆうんなら...またいつでもきてええんよ!」
「おう!七海はお前にやるけぇの!」
「もう!お父さんまで///」
七海ちゃんのお父さんてもっと怖いイメージあったけど意外とフレンドリーな人だな。
「ありがとうございます。それじゃみなさんおやすみなさい!」
おやすみなさい、気をつけてねと神咲両親から聞き、俺は玄関を出ようとした。
「あ、そこまで送っていくよ!」
「いいよ、外寒いから。風邪ひいちゃうよ。」
「お見送りだけしたいんやけど...」
可愛いんだけど...
「じゃ、じゃあお願いしようかな...」
後ろから神咲家の方々の温かい?笑みを感じながら玄関を出る。
とめておいた自転車に跨り、七海ちゃんに別れを告げる。
「じゃあ七海ちゃん、今日はありがとう。楽しかったよ!」
「うん...私も楽しかった!」
「改めて高校からまたよろしくね。じゃあまたね!」
「うん、こちらこそ!気をつけて帰ってね、り、律くん!/////」
「う、うん!/////」
またもや七海ちゃんの不意打ち攻撃をくらった俺はなんとかそのまま家に帰り風呂に入って寝た。
あ、ちなみに昼ごはんはスーパーでテキトーに買ったお惣菜を食べました。
七海side
「ふぅー」
律人が帰ったあと、七海はベッドで紅い顔をしながらごろごろ悶えていた。
「律くん...」
自分で言っておいて紅くなりごろごろと転がっている七海は傍からみれば変な人極まりないだろう。
「律くん...かぁ、でも、律くん鈍感なんよね...」
今日、料理をしようと誘ったのは単なる口実で本当は家に招くことで律人に自分を女の子として意識してほしかったのだ。もちろん律人の料理の腕は期待以上だった。普通の中華料理店で食べるものより美味しかったのだから。
それに、優しくて、かっこよくて、同年代の男の子より大人びていて、落ち着いている。
男の子相手にこんな気持ちになったのは初めてだった。
「律くんはわたしのことどうおもってるんやろ...青大くんのことばっかり推してくるゆうことは私には興味無いんかなぁ...」
うーんと唸ったあとに七海は飛び起き、決意した。
律くんに女の子として意識してもらうこと、好きになってもらうこと。
「よーし頑張ろう!」
いやぁー、SSって難しい。
なかなか苦戦しています。
こんな駄作にも関わらずお気に入りをして下さった方々やコメントをして下さった方、本当にありがとうございます!
これからも頑張っていきますので、ご指摘、応援などよろしくお願いします!