ボクの旅路に幸あれ!……無理か。   作:隔離場

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遅くなりました。


登録

 そういえばカズマ君の泊まってる宿の位置知らないや。しょうがない。今のうちにできることやっちゃおうか。

 

 SCPの書物(パンドラボックス)の中身が気になるけど……ここで開けるのは危険すぎるね。後回しにしよう。

 

「よし、樹ちゃん。持ち物チェックをしよう」

 

「も、持ち物チェック……ですか?」

 

「そう。キミが今何を持っているかの確認。ボクの時はいろいろと役に立つ物が入ってたけど、キミが持ってるものも把握しときたいからね」

 

「は、はい。……今持ってる本はいいですよね。…まずはこのリュックサックですね」

 

 そう言いながら、本をテ-ブルに置くと、ボクと移動し始めた時も来るときもずっと肩にかけてた青色のリュックサックを見せてきた。って、何?事務所ではリュックが流行ってるの?

 

「うん。中には何が入ってる?」

 

「えっと…お財布、ティッシュ、ハンカチ、タオル、絆創膏、折りたたみ傘、筆記用具、メモ帳、アクセサリー……これなんでしょう、手紙?で全部です」

 

 樹ちゃんはリュックから一つずつ持ち物を見せて、またバッグにしまっていく。手紙だけはテーブルの上に残したけど。……手紙、ここで開けてもいいよね?後ろから盗み見る人なんていないだろうし。

 

「この手紙、あの人からですね」

 

 あの人……女神さんか。『神様』なんて言ったのを周りの人に聞かれたら”変な子(めぐみんちゃん)”みたいに思われちゃうかもしれないら伏せたのかな?賢い賢い。……めぐみんちゃんの事を知ってるわけないんだけどね。

 

「あ、その手紙、覚えるまでは最後の文は読まないようにしてね?ボクの時はいきなり燃えちゃったから」

 

「燃えて……分かりました。気を付けます」

 

 樹ちゃんは真剣な表情で手紙を読み始めたけど……うん。いい百面相。

 

 ……この子、誰かと一緒にいたら表情豊かになったりツッコミできるようになったりするけど、一人の時は体が全く動かなくなるんだよねー…「一人で居たくない」って理由で事務所に泊まってたこともあるし。それを許しちゃう所長もアレなところあるけどさ。

 

 さーて、このあとどうしようかなっと。……とりあえず本人が望めば冒険者登録――その後依頼は受けずにカエルのいる平原に行こうか。あそこならなかなか人通らないし。SCPの書物(パンドラボックス)の使い方も把握しとかないと……ボクも命が危ういからね。

 

「あの、千尋ちゃん?大体覚えたけど……最後まで見ちゃっていい?」

 

「あー、もう覚えたの?やっぱり早いね。……万が一、忘れたら困るからメモ帳に重要なところ書いてみたら?」

 

「分かりました。 あ、そういえば千尋ちゃんに『あの人』から手紙が届いてますよ」

 

 樹ちゃんがボクにもう一枚の紙を渡してくる。多分ボクの時と同じで二枚に分かれてたんだろうね。

 

「……ありがと。なんだろう?」

 

【お久しぶりね。本当はこっちの近況なんかをいろいろと書き綴りたいところだけど、この手紙を書いてるとき時間が無かったから簡潔に用件だけ書かせてもらうわね。

 まず、貴女のお友達〖速水 樹〗ちゃんがそっちに行ったわ。特典については本人に使い方を記した手紙を渡しているから、そっちに聞いてね。ー―くれぐれも悪用しないように。

 次に、そっちの世界に例の神話群が侵入しているのがこっちでも確認できたわ。もう遅いかもしれないけど、十分注意して頂戴。

 あと、たまにだけど私たちが貴女達の生活を覗き見していることがあるけど、気にしないでね。】

 

 ボクが最後の方に目を通すと、前と同じように燃えてなくなった。

 

 神話群って、クソガエルとかのことなのかな?連絡するにしてもちょっと遅いんじゃないかな?……もしかして、他にも来てるの?

 

 ちょうど樹ちゃんも終わったみたいで、手紙が焼失してる。やー、早いねいつも。ボクがこれ読み終えるまでに要点まとめてメモに書き留めたんでしょ?所長が書類管理任せるだけはあるね。

 

「あの、書き終わったんですが、これから何すればいいんでしょう?」

 

「えっとね、ボクとしては樹ちゃんには自由に生活してほしいと思ってるんだけど……樹ちゃんは何をしてみたい?」

 

「まだこの世界のことをよく知らないのですが、とりあえず自分の身分が証明できる物が欲しいです」

 

「……うん。満点」

 

 さりげなく登録を薦めようと思ってたのに、真顔で即答されちゃったよ……ボクの立場とは一体……。

 

「それだとここで登録できるね。【冒険者】っていう職業なんだけど、ここで登録した後に商人とかになっても良いらしいからおススメ」

 

「そうなんですか?……じゃあそれにします」

 

 随分と速い決断だなぁ……。面白くなりそうだからいいけどさ?

 

 

◇◆◇

 

 ところ変わってギルドのカウンター。場所的に考えたらあんまり変わってないけどいいよね。

 今空いてるカウンターは……リヤンさんとハルちゃんか。うーん、どっちも丁寧に教えてくれそうだけど……よし、リヤンさんにしよう。

 

「リヤンさーん!受付おねがーい!」

 

「承知しました。ご用件をどうぞ」

 

 リヤンさんは何か書いていた手を止めてボクの方を向く。後ろで「リヤン(rien)……?」とか聞こえるけど無視で。

 登録手数料は1000エリスだったね。カウンターに置いてリヤンさんにシュート。

 

「今日は冒険者登録だよ。この子の」

 

「……はい。では、こちらの書類に名前、身長、体重、年齢、身体的特徴の記入をお願いします。……名前と年齢は必須事項なので必ず記入をしていただきます」

 

 いつかボクに言ったのと同じセリフを言って紙とペンを樹ちゃんに手渡そうとして、手が止まる。

 うん。樹ちゃん背が小さすぎてカウンターに手を伸ばして書くのが難しそう。

 

「「……お願いします」」

 

 二人同時にお願いされた。……えっと、多分二人とも代筆のお願いだよね?リヤンさんボクの方に書類を渡してきてるし。

 

 樹ちゃんから小声で伝えられる身体的な情報を書き留めてる間、リヤンさんが奥の方からボクの登録の時に使ったのより少し大きくて機器がごちゃごちゃくっついている水晶を持ってきていた。カウンターの外に出てくるのと樹ちゃんが言い終わるのは大体おなじくらいの時間だったよ。

 

 ボクが書類を手渡しすると、さっと目を通して裏返しにしてカウンターに置いた。その後樹ちゃんの前で中腰になって水晶に触れやすくする。ちなみに、この目の前でしゃがむ行動は樹ちゃんにとって「優しいのか馬鹿にされてるのか分かりづらい」行動だったみたいだよ。

 

「…はい、結構です。ではこちらの書類はギルドが責任をもってお預かりいたします。

それではこちらのカードに触れてください。それで貴女のステータスが分かりますので、そのステータスの数値に応じた職業をお選びください。選んだ職業によっては専用のスキルが入手できますのでそのあたりを踏まえてお選びください。また、どの職業になればよいか分からない場合はこちらにご相談ください」

 

「は、はい」

 

 樹ちゃんが水晶にそっと触れると、水晶についてたごちゃごちゃ部分が動き出し、舌に設置された白紙のカードにレーザーを照射。【職業】と【スキル】系のところ以外は数字と文字が書かれた。

 

「はい、ありがとうございました。……ハヤミイツキさん、知力、器用度、魔力、幸運が平均を大きく上回っていますね。このステータスであれば魔法職に就くことが推奨されますが、どうなさいますか?」

 

「え?えっと……………」

 

「……ねぇ、リヤンさん。この子がなれそうな職業を教えてもらえない?ボクの時と同じで、何を選んだらいいか分からないみたいだから」

 

 ……樹ちゃん、一人で転生してたらいったいどうなってたんだろう?

 

「……先程言った通り知力、魔力が他と比べて高いので、魔法攻撃を得意とする【アークウィザード】という職業が適任と言えます。が、チズルさんと同じ【探索者】の素質もあるようです」

 

「……あの、【探索者】というのはどういった職業でしょうか……?」

 

「申し訳ありませんが、ギルドの方でも職業【探索者】の全容は分かりません。なにせ約一週間ほど前に初めて存在が確認された職業ですので」

 

「へー……。ちなみに、千尋ちゃんの職業は何ですか?」

 

「【探索者】だよ」

 

「……え?」

 

「【探索者】は、チズルさんが世界で初めて発見した職業です」

 

「えー…………」

 

 む、なにさ、その信じられない物を見る目は。ボクが偉業(?)を成し遂げるのがそんなに不安?

 

「じゃあ……【探索者】で」

 

「…こちらは職業に対する資料が完全に整っているとは言えませんが、よろしいですか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「…わかりました。それではイツキさん、ようこそ冒険者ギルドへ。スタッフ一同、今後の活躍を期待しています」

 

 ……ふぅ。ようやく登録までできたね。次は検証の時間だよ。

 




次回はscpの検証です

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