今回は3話の前編部分です。
今回も宜しくお願いします。
ピッ!
とある日の神田明神の朝。ことりが笛を吹き、音が鳴る。その音を聞いた、海未と穂乃果が走り出して階段をダッシュして駆け上がる。
穂乃果もことりも弓道部で鍛えている海未に劣らないほどの速さで走れる様になった。そして、最初は辛い顔でしていた、階段ダッシュも笑顔を作りながら出来るようになっている。やはりライブの為にそれほど真剣に練習しているからであろう、その成果が出ている。
「
ライブの為の練習ならもちろんダンスの練習もする。海未がリズムを取りながら、ことりと穂乃果がステップを踏みながら簡単なダンスの練習をしている。
「ことりちゃん。左手。」
「あ、」
穂乃果がことりに言ってるように、プロを目指してるアイドルや、
ちなみに隼は何をしているのかと言うと、希と神社の掃除をしている。
手伝いをやっている奴が何をしているんだとツッコミたくなる。
最初は手伝いとしてステップを考えたり踊ったりしている時におかしいところがあれば指摘したりしてたのだが、3人のレベルが隼がおかしいと思うところが無いレベルにまで達したので、手伝いと言う大義を捨てているわけではないが、希の手伝いをしている。
手伝うと言った時は「神社のお手伝いじゃない人に手伝ってもらうわけにはいかない」と断っていたが、事情を説明すると希は「そっか、じゃあお願いしよか。」と安心したような表情で言った。3人がそこまでダンスが上達した事に安心したのだろう。
「はぁ~。終わった~!」
「まだ、放課後の練習がありますよ?」
「でも、随分出来るようになったよね?」
「2人がここまで真面目にやるとは思いませんでした。穂乃果は寝坊してくるばかりかと思ってましたし。」
「大丈夫~。その分授業中ぐっすり寝てるから!」
「折角早起きしてるのに、授業を寝てどうする。ほら、お疲れさん。」
穂乃果がアホみたいな事を言ってるところ、隼がやってきて3人に飲み物を渡す。「ありがとう」と3人が感謝の意を述べた時、穂乃果が階段に誰かいる事に気がつく。
階段のところまで駆けだした穂乃果はこっそりと去ろうとしていた真姫に向かって大声で呼ぶ。
「西木野さーん!」
「ヴぇえぇあぁ!?」
「まーきちゃーん!」
穂乃果に大声で呼ばれた真姫は変な声を出して驚き、再び階段を上って穂乃果達の元へ向かう。
「大声で呼ばないで!」
「? どうして?」
「恥ずかしいからよ!」
どうやら真姫は海未程ではないが、恥ずかしがり屋らしい。
「そうだ!あの曲、3人で歌ってみたから聞いて?」
「はぁ?何で?」
「だって、真姫ちゃんが作ってくれた曲でしょ?」
「だから私じゃないって何d、「まだ言ってるのですか。」」
「歌ってるんだから声で分かるだろ。」
真姫は自分が作った曲ではないと言いたげに否定するが嘘だと見破られてしまう。
「ぐううう、がお~!」
「はぁ!?何やってんの!?」
穂乃果がいきなり叫び出して、真姫に抱きつく。抱きつかれた真姫はかなり驚いている。
「うひひひひひひ......」
「い、いや~~~!!!」
まるで犯罪者のようににやにやとし出す穂乃果。顔がだんだんと近づいてくる恐怖感に真姫は悲鳴を上げる。
何も事情の知らない人間から見ると、女子高生に犯罪でもする直前にしか見えない。
「その辺にしとけ。」
「え!?」
隼が促し、穂乃果がスッと真姫の耳にイヤホンを指す。
「よし、作戦成功!」
「え!?」
真姫は観念したかのようにイヤホンを耳に押さえる。
「結構上手く歌えたと思うんだ行くよー。」
「μ's!」
「ミュージック!」
「「「スタート!」」」
打ち合わせでもしてたのかの様に3人が言う。しかし、
「そんなのあったのかよ。」
隼1人だけ知らなかったようだ。真姫はずっこけそうになった。
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まだ登校してる生徒も少ない朝。
花陽はμ'sのライブのお知らせのポスターとチラシのある廊下に居た。
自分が好きなスクールアイドル。そのスクールアイドルが自分の通う学校で結成された。花陽にとってはたまらなくうれしい。ライブをやると言う告知が出た時から行く事を決意していた。
しかし、他人に言うには少し恥ずかしい。だから登校してる生徒少ない時間の今チラシを取りに来た。
周りに誰も居ない事を確認して、チラシを取る。そしてすぐに反対側の壁を向く。
そこに同じクラスの真姫が来て、一瞬ドキッっとするが自分がチラシを取った事には気付いていないようだ。
一瞬だけμ'sのポスターを確認するもすぐに行ってしまった。
「えへ...♪」
自然と笑みがこぼれてしまった。
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神田明神での朝練を終えた穂乃果、海未、ことり、隼は制服に着替えて登校していた。
「ふわぁ~。」
「眠る気満々ですね。」
もうすぐ授業が始まると言うのに眠たそうにあくびをする穂乃果。やはり、毎朝ほとんど寝坊していた穂乃果に一ヶ月間も朝練をするというのはそれなりに辛かったのだろう。
「ねぇ。あの子達じゃない?」
「ん?」
女子生徒2人組が小声で話をしている。そこにことりが反応した。リボンの色からして女子生徒2人組は3年生だろう。
「あなた達ってもしかしてスクールアイドルやってるって言う、」
「はい!μ'sっていうグループです!」
「ミューズ?あぁ石けn「違います。」」
「そうそう。うちの妹がネットであなた達のこと見かけたって。」
「本当ですか!?」
どうやら、μ'sはランキングに名前が載ってから、名前がそれなりに知られているらしい。穂乃果達が話しているところを隼は自分は違うからとスッと後ろに下がる。
「明日ライブやるんでしょう?」
「はい。放課後に講堂で。」
「どんな風にやるの?ちょっと踊って見てくれない?」
「え!?ここでですか!?」
「ちょっとだけでいいから。」
登校する生徒が多い中踊れと言ってきた。困った顔をすることり。明らかに嫌という顔の海未。そのふたりとして穂乃果はニヤリとしていた。
「いいでしょう。もし来てくれたら、ここで少しだけ見せちゃいますよ~?お客さんにだけ特別に~。」
「お友達を連れてきて頂けたら、さらにもう少し。」
「本当?」
「行く行く!」
「毎度あり!」
穂乃果が商売のテクニックを使ってライブに来てもらう代わりにダンスを少し見せ、さらにことりが友達も連れてきたら、さらにもう少し見せると言った。
「じゃあ、頭のところだけ。」
「あれ、もう1人は?」
「「ん?(え?)」」
いざ見せるとなったら海未が居なかった。
「恥ずかしくて逃げたな。すみませんさっきの話は無かった事にしてください。行くぞ。」
「え!?ちょ、ちょっとー!」
隼が上手く場を収め、穂乃果とことりも撤収させ、海未を探しに行った。
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海未は屋上に体育座りをして居た。
「やっぱり無理です...。」
「えー!?どうしたの?海未ならできるよ!」
「できます...。」
「「ん?」」
「歌もダンスもこれだけ練習して来ましたし、でも...、人前で歌うのを想像すると...。」
「緊張しちゃう?」
ことりの問いに海未は首を縦に振る。それには隼も頭を抱える。そこで穂乃果が提案をする。
「そうだ!そう言う時はお客さんを野菜だと思えってお母さんが言ってた!」
「野菜?」
「小学生か。」
穂乃果の提案は恥ずかしがり屋の海未にとってはいい提案かも知れないが、隼にツッコまれる。
隼の言葉が聞こえてない海未は客が野菜である事を想像する。
『みんなー!行っくよー!』
「私に1人で歌えと!」
「そこ!?」
「どの道無理か...。」
「はぁ...。困ったなぁ...。」
「でも海未ちゃんが辛いんだったら、なにか考えないと。」
「ひ、人前じゃ無ければ大丈夫だと思うんです...。人前じゃ無ければ...。」
やっぱり海未の恥ずかしがり屋の部分を克服するのは難しいらしい。そこで穂乃果は海未の手を取り無理やり立たせ。言った
「色々考えるより、慣れちゃった方が早いよ。じゃあ行こう。」
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「じゃーん!」
場所は移動して秋葉原駅前付近。
平日の夕方でも人が多い。
「ここでライブのチラシを配ろう!」
「ひ、人が沢山...。」
「当たり前でしょ。そういうところを選んだんだから。ここで配ればライブの宣伝にもなるし大きな声出してればそのうち慣れてくると思うよ。」
「俺もやるのか...。」
「いいでしょ!やるの!」
「はいはい...。」
そう言われた海未は目をつぶり、
「(お客さんは野菜、お客さんは野菜、お客さんは野菜...。)」
そして目を開いたがその時の海未からは道行く人の顔が全て野菜に見えた。その恐怖感で絶句する。
「ダメかな?」
「ううん。私は平気よ。でも海未ちゃんが...。」
ことりに言われた穂乃果と隼は海未の方を見ると、
「あ、レアなの出た見たいです。」
そう言いながらガチャガチャを回している海未の姿があった。
「海未ちゃーん!」
「やれやれ...。」
隼も呆れてる様子。
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海未が秋葉原でチラシを配るのが無理と判断した穂乃果学院の校門で配ろうと提案し、穂乃果達4人は学院に戻ってきた。
「ここなら平気でしょ?」
「まぁ、ここなら...。」
「じゃあ始めるよ。μ'sファーストライブやりまーす!よろしくお願いしまーす!ありがとうございます!」
「よろしくお願いしま~す!」
「お願いします。」
「あ、あの...。」
穂乃果は店番でかなりなれた感じで配り、ことりもどことなく慣れた感じで配る。隼はいつも口数が少ないため、こう言う事は苦手なのかと思いきや、案外普通に配っている。
海未も配ろうとするが、上手く渡せない。
「お願いします!」
「...いらない...。」
勇気を出して渡そうとしたが、背の小さい3年生にしては珍しいツインテールの少女に冷たい対応を取られ断られてしまった。
「随分感じの悪い奴だったな。あいつ。」
「あ、あいつって...。リボンの色からして同級生ですよ?」
「あぁ、そうだったのか。ま、本人が居ないならいいんだよ。」
上級生なのに敬うという気持ちが全くない隼。生徒会長と話していた時はあんなに礼儀正しかったのに。
「ダメだよそんなんじゃ。」
「穂乃果はお店の手伝いで慣れてるかも知れませんが...。」
「ことりちゃんだってちゃんとやってるよ。」
ことりは笑顔を作りながら配り続けている。それからは違和感など一切感じなく、まるで
「ほら、海未ちゃんも。それ配り終えるまでやめちゃ駄目だからねー!」
「えぇ!?無理です!」
「海未ちゃん、私が階段5往復できないって言った時、なんて言ったっけー?」
「... 分かりました。やりましょう!よろしくお願いしまーす!μ'sファーストライブやりまーす!」
穂乃果に煽られた海未は決意したのか、声を大きくしてチラシを配り始めた。そこに1人の少女が話しかけてきた。
「あの...。」
「あなたは、この前の。」
「は、はい。ライブ...、見に行きます!」
「本当!?」
「来てくれるの!?」
「ありがとうな。」
「では1枚2枚これを全部...、」
「海未ちゃん...。」
「アホか...。」
「分かってます...。」
花陽にチラシを全て押しつけようとする海未。それを制止する穂乃果。聞こえない声で馬鹿にする隼。
その姿を生徒会長の絵里はしっかりと見ていた。
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チラシ配りの後、穂乃果と海未は穂乃果の家に、ことりと隼は、ことりが衣装の手仕上げを頼んだものを取りに、神田の駅の少し外れにある茜の店「SORA」に来ていた。
「すみません。」
隼がカウンターに居る女性に話しかける。
「茜さん居ますか?陽ノ下茜さん。」
「はい、少々お待ち下さい。」
「少し待とう。」
「うん。」
カウンターの女性が茜を呼びに行き、ことりと隼は待つ。
するとカウンターの女性が居なくなってから、1分もたたないうちに茜が来た。
「ごめんね、待たせて。」
「大丈夫。それで、ことりが頼んだ衣装の仕上げ出来てる?」
「出来てるわよ。...これ。」
茜がカウンターの下から、取りだしその袋を隼に手渡す。
「ありがとう。ごめん仕事の邪魔しちゃって。」
「大丈夫よ。...ことりちゃん、衣装の事でまた何か困った事があったら言ってね。手伝うわ。」
「ありがとうございます。」
「それじゃ、もう行くから。じゃあね。」
「うんじゃあね。ことりちゃんも。」
「さようならー。」
ことりと隼は店を後にして穂乃果の家に向かう。
穂乃果の家に向かっている。そこで隼が問いかける。
「なぁことり。」
「何?」
「君達が知ってる子供の時の俺って、どんな子だったんだ?」
「違う人なんじゃなかったの?」
「それでもいい。少しでも、違ってても昔の事が知りたい。」
「わかった。」
隼は中学生までの記憶が無い。そのことについて彩にも茜にも聞いたが、2人が詳しい事は教えてくれないため、隼も深くは追究しなかった。
「隼くんは、穂乃果ちゃんみたいな子だったよ?」
「あんなアホだったのか...。」
「あ、あぁ!違うよ!そうじゃなくて、穂乃果ちゃんと一緒によく私達を引っ張ってくれたんだよ。そういうところが穂乃果ちゃんと似てたところだよ。」
「そうか...。」
「なにか思い出せた?」
「いや、何も...。ごめんな。」
「ううん大丈夫。あ、穂乃果ちゃん家着いたよ?」
「和菓子屋だったんだな。」
「そうだよ。入ろう?」
「わかった。」
ことりが知る昔の隼を話したところで穂乃果の家の『穂むら』に着いた。
「お邪魔しま~す。」
「お邪魔します。」
「あら、いらっしゃい。そちらの子は?」
「穂乃果さんと同じクラスの一文字隼です。」
「あなたが隼君なのー!あ、穂乃果なら上に居るから上がって言って!」
「「ありがとうございます。」」
ことり、隼は2回に上がっていく。
佳穂は今の隼から一方的だが隼を知っている。ただ自分の知っている隼よりもかっこ良くなっていたので気がつかなかった。
「お待たせ~。」
「邪魔するぞ。」
「あ、ことりちゃんと隼君!見て見て!」
「?あ、すごい!」
「すごいじゃないか。」
「あ、もしかしてそれ衣装?」
「うん!さっきお店で最後の仕上げしてもらって。」
「ワクワク!」
初めて自分達が着る衣装に興奮する穂乃果。
「じゃーん!」
「うわぁ!」「ぁ....。」
「上手じゃないかすごいな。」
「可愛い!本物のアイドルみたい!」
「本当!?」
「すごい!すごいよことりちゃーん!」
ことりが袋から取り出した衣装はいかにもアイドルらしいピンク色のミニスカートのワンピース。それをみて興奮する穂乃果。
だが、海未は固まっていた。
「ことり...。そのスカート丈は...。」
「ん?あ...。」
なぜ海未はスカート丈のことを言うのか。それはことりが衣装を考えた時、スカート丈は膝下出なければ履かないと言っていたからだ、ことりは曖昧にだがそれを承諾していた。
「でも今から直すのは流石に...。」
「そういう手に出るのは卑怯です。ならば私は1人だけ制服で歌います!」
「えぇ!?」
「そんなぁ!」
「そもそも2人が悪いんですよ。私に黙って結託するなんて!隼もなにも言わなかったんですか!?」
「俺はこのことに関しては何も知らなかった。」
「……だって、絶対成功させたいんだもん。」
穂乃果がブツブツと言い出した。
「……歌を作ってステップを覚えて、衣装も揃えて、ここまでずっと頑張ってきたんだもん……。3人でやって良かったって、頑張ってきて良かったって、そう思いたいの!」
穂乃果は窓開けていきなり叫びだした。
「思いたいのー!!!!」
「何をしてるのですか!」
「それは私も同じかな。」
「え?」
「私も、3人でライブを成功させたい!」
「ことり...。」
「……はぁ。いつもいつも、ズルいです……。」
「海未ちゃん……!だぁーいすきぃ!!」
穂乃果は海未に抱きついた。でも海未の顔はさっきのような硬い顔では無く、笑顔を浮かべていた。
―――――――――――――――――――――――――
4人は神田明神に来てお参りをしていた。
「どうか、ライブが成功しますように!いや、大成功しますように!」
「緊張しませんように……」
「みんなが楽しんでくれますように......」
「(こいつらが無事に歌えますように......)」
「よろしくお願いしまーす!」
4人はそれぞれ願った。
「明日が、楽しみだな...。」
4人が見た星空は東京とは思えないほど綺麗な空だった。
如何でしたか?
この話を投稿しようと思った時に。いざ投稿しようと編集終了しようとしたらパソコンが固まって1度書いた4分の1が消えました。そのせいで少し、投稿する時間が遅れました。
次回はライブの回の予定です。
次回も宜しくお願いしまーす!