今回は『まきりんぱな』回です。
それでは今回もよろしくお願いします。
自分の小説にしてはかなり長めの10000文字超えてます。
「ふぁあぁぁぁ~...ふぇえぇぇぇ~...」
ここは学園にあるアルパカ小屋、俺と穂乃果達の4人で来ている。なんで来ているかって言うと。
「ことりちゃん最近毎日来るよねぇ。」
「急にハマったみたいです。」
ことりが急にアルパカにはまったらしい。確かに毛はふさふさしてるし目も綺麗だし、可愛いな。こいつオスだけど。
「ねぇチラシ配りに行くよ~。」
「あとちょっとぉ~。」
「もう...。」
「5人にして部として認めてもらわなくては、ちゃんとした部活は出来ないのですよ?」
「う~ん、そうだよねぇ~。」
その様子からして絶対あとちょっとじゃないだろ。
「可愛い、かなぁ?」
「ンイィィー!」
「「うわぁ!?」」
そりゃメスが「可愛いかな?」とか疑問形で言われたら怒るだろ。ちなみにアルパカ小屋にいるアルパカは2匹で、白い毛の可愛い顔してる方がオス。茶色い毛の目つきが悪い方がメス。何で知ってるのかって言うと。去年係とか委員会決める時に、なんも考えずにじっとしてたら残った飼育委員が流れ的に俺になった。
おっとこんな事考えてたら、穂乃果と海未じゃなくて俺を睨んできた。やっぱ目つき怖ぇ。
「えぇ可愛いと思うけどなぁ~。首のあたりとかふさふさしてるし~。」
「フェェェ~♪」
「はぁぁぁ~...幸せ~♪」
「ことりちゃんダメだよ!」
「あ、危ないですよ!」
「大丈夫だよ―、ふわぁ!?」
このアルパカ首のあたり撫でられるの好きなんだよな。俺も去年小屋掃除した後。撫でたらやられた。メスの方もやって、お気には召したらしいけど、やっぱ目つき怖かった。
「はぁ!どうすれば! あ!ここはひとつ弓で!」
「ダメだよ!」
「ンンンンー!!!」
あぁーやっぱ怒っちゃうよねー。そりゃ自分のボーイフレンドが悪気無いのに弓で射抜かれるとか言われたら怒るよねー。めっちゃ目つき悪い。
「ほらー変なこと言うから!」
ことりがアルパカになめられてから連鎖的に海未と穂乃果がパニックになっている。ってなってるところに誰か来たぞ。
「よーし、よし。 ふふ♪」
あ。ライブに来てくれた小泉じゃないか。
「ふぇぇぇ~...」
「大丈夫?ことりちゃん。」
「うん。嫌われちゃったかなぁ?」
「あ、平気です。楽しくて遊んでただけだと思うから。 あ!お水!」
「犬がよく飼い主のことなめたりするだろ?それと同じだ。俺も去年やられた。」
「そっか~。 って隼くん飼育委員だったの!?」
「委員会決める時にかくかくしかじかで。」
小説だと説明するときにこういうのが出来て楽だな。あ、流石に今のはまずいか。
「アルパカ使いだねぇ~。」
「わ、私、飼育委員なので。」
「ふ~ん。...ん?...おぉ!」
なんだいきなりうるさいな。また下らん事でも閃いたのか。
「ライブに来てくれた花陽ちゃんじゃない!」
そこかよ。っていうか気付くの遅いなこいつ。くだらないこと言わなかっただけいいけど。
「えぇ...。」
「駆けつけてくれた1年生の!」
なんだよお前まで気付いてなかったのかよ。ま、そうかこいつはそれどころじゃなかったな。
「ねぇ!あなた!」
「は、はい?」
「アイドルやりませんか?」
いきなりすぎだろ。
「穂乃果ちゃんいきなりすぎ。」
それが普通の人の感想だ。
「君は光っている!大丈夫!悪い様にはしないから!」
「詐欺師の売り文句か。」
思わずつっこんじまった。5人にするために必死なのは分かるけど、焦るなよ。
「あ、あの。」
「「「「ん?」」」」
「西木野さんは...。」
「あぁ、ごめんもう一回いい?」
「に、西木野さんがいいと思います。す、すごく歌、上手なんです。」
「そうだよねぇ!私も大好きなんだ!あの子の歌声!」
「だったらスカウトに行けばいいじゃないですか。」
「行ったよ~。でも絶対イヤだって。」
「曲作ってもらったんだからいいだろ。」
「あ、すみません。私、余計な事を...。」
「ううん。ありがとう!」
小泉を安心させるために穂乃果が手を握ってお礼を言った。小泉に悪い事したな。
「かーよちーん!」
かよちん?あぁ、確か小泉の名前花陽だったな。それから取ってるのか。んで誰が呼んでるのか気になったから声のする方を向いたら星空がいた。
「早くしないと体育遅れちゃうよ~!」
「あ...。失礼します。...行こ。」
星空もぺこりとお辞儀をして体育の授業に向かった。
「私達も早く戻りましょう。」
「そうだね。」
「うん。」
昼休み終わってるし。
てか俺この短い時間で何回目つき悪いと目つき怖い言ったのか。
「......」
やっぱ怖ぇ。
―――――
「じゃあまた明日。」
「「「「「はーい!」」」」」
帰りのホームルームが終わった1年の教室。
「かーよちん!決まった?部活。今日までに決めるって昨日行ってたよ。」
「う、そ、そうだっけ。明日決めようかな。」
「そろそろ決めないとみんな部活始めてるよ!」
「う、うん。え、えっと、凛ちゃんはどこ入るの?」
「凛は陸上部かなぁ?」
「陸上かぁ...。」
「あ、もしかしてぇ...、スクールアイドルに入ろうと思ってたり?」
「えぇ!?...そ、そんなこと無い...。」
指を合わせて人差し指を小刻みに左右に振る花陽。けどそれは花陽が嘘をつくときに決まってする動作。幼馴染の凛はすぐにわかるわけで、
「ふーん。やっぱりそうだったんだねぇ。」
「そんなこ―。」
「だめだよかよちん。嘘つくとき必ず指合わせるから、すぐわかっちゃうよーん。」
凛に言われてる通り、やっぱり花陽はアイドルになりたいらしい。けどやっぱり自分からはやりたいと言い出せない。
「一緒に行ってあげるから、先輩達のところに行こう!」
「えぇ!?ち、違うの!本当に。...私じゃアイドルなんて...。」
「かよちんそんなに可愛いんだよ?人気でるよー。」
「で、でも待って!待って!」
「んー?」
「あ、あのね。わがまま言ってもいい?」
「しょうがないなぁ。何?」
「もしね、私が、ア、アイドルやるって言ったら一緒にやってくれる?」
「凛が?」
「うん...。」
一緒にアイドルをやろうと花陽は言うが凛は、
「ムリムリムリムリ。凛はアイドルなんて似合わないよ。ほら女の子っぽくないし、髪だってこんなに短いし。」
「そんなこと...。」
「ほら!昔も――、
凛と花陽が小学生の時だった。
凛はいつもスカートを履かずにズボンを履いていた。しかし、ある日、スカートを履こうと思い、数えられるほどしか履いた事がないスカートを学校に履いて行った。
凛のスカート姿をみて花陽は「可愛い」「似合ってる」などと褒めた。凛も「そうかなぁ」と照れたように言った。
「スカート履いてきてよかった。」
そう思ってた凛だが、後ろから男子3人組「スカートだ!」「いつもズボンなのに!」「スカート持ってたんだ!」と言われた。
その男子達は凛のスカート姿が可愛いから言ったのか、それとも茶化すつもりで言ったのかはわからないが、その言葉に凛は酷く傷ついた。スカートなんて履かなければよかった。やっぱりいつものようにズボンを履くべきだった。心からそう思った。
結局その日凛は一度家に帰ってスカートからズボンに着替えて学校に行き、中学生になるまで凛がスカートを履く事は無かった。
「アイドルなんて、凛には絶対無理だよ。」
「凛ちゃん。」
頭を掻きながら花陽の誘いを断る凛。花陽はもう凛は気にしていないと思っていた事を聞いてしまい、凛を傷つけたと思って後悔した。
結局、部活はまた明日決めようという事になり、今日は帰ろうという事になったが、花陽は部活を見て帰ると言ったので凛は先に帰った。
西木野真姫はμ'sのメンバー募集のチラシが置かれている1年の教室すぐ前の廊下にいた。
チラシをじっとみつめ、それを手に持ったままどこかに行ってしまった。
「今の...。」
花陽もチラシが置いてある場所へと行く。
しかし最初に注目したのはチラシでは無く、チラシが置いてある机の下。緑色の手帖が落ちている。
手帖を開くと「西木野真姫」と書かれている学生証がある。つまり真姫の生徒手帳だ。ポケットかなにかから手を出した時に落としてしまったのだろう。
職員室に届けようと思ったが、クラスが同じなためわざわざそうしなくても直接渡せる。しかし、真姫と話した事が無い上に人見知りな花陽にとってそれは中々レベルが高い。
よって花陽は家に直接届け、母親に渡すことにした。
―――――
「生徒は全く集まりませんでした。スクールアイドルの活動は、音ノ木坂学院にとってマイナスだと思います。」
理事長室に絵里と希は来ていた。もはや最近は見慣れた光景である。理由はもちろんスクールアイドルの活動は学院にとってマイナス。生徒会も学院存続の為にも独自に活動を認めろという事。
「学校の事情で生徒の活動を制限するのは、」
「でしたら!学院存続の為に、生徒会も独自に活動させてください!」
「それはダメよ。」
「何故ですか!?」
何故スクールアイドルがよくて生徒会がダメなのか。自分の娘がいるからか?その幼馴染いるからか?いずれかだろうと絵里は考えていた。
「それに、全然人気が無いわけじゃないみたいですよ。」
自分が操作していたノートパソコンの向きを180度変えて2人に見せる千鶴。
そこに映っていたのは誰かが撮っていたと思われるμ'sのライブ。
「この前のライブの。誰かが撮ってたんやなぁ。」
横目で絵里を見る希。やはりこの少女にとってはなんでもお見通しなのだろう。
―――――
学生証に書かれた住所をたよりに真姫の家に来た花陽。あまりにも大きすぎる真姫の家。一度は疑って携帯の地図を二度見したレベル。
とりあえず家の前でおどおどする訳にもいかないためインターホンを押す。
『はい!』
「あ、あの、真姫さんと同じクラスの、小泉、です...。」
インターホンに向かってそう言うと、ガチャっと扉が開き、真姫そっくりな若い女性が出てきた。
とりあえず中にと、中に案内され、リビングにあるソファに座るようにと促され、そのまま座る。
やはりと言うべきか外から見た通り中も広い。その上ソファも間違いなく高級なものが使われている。
家具だけは無い。「西木野真姫」と書かれたトロフィーや賞状などがいくつもある。おそらくピアノのコンクールか何かでとった物なのだろう。もはやすごすぎて、すごいとしか言えない。
「ちょっと待ってて。病院の方に顔出してるところだから。」
「病院?」
「あ、うち病院を経営していて、あの娘が継ぐことになっているの。」
「そう、なんですか...。」
「よかったわぁ!高校に入ってから友達1人遊びに来ないから、ちょっと心配してて。」
若いため真姫の姉だと思っていた女性は、自分の娘を心配してる様子から母親らしい。あまりの若さに子供を生んでいるとは思えなかった。
「ただいま。誰か来てるの?」
「うふ...。」
「こ、こんにちわ。」
母親の友人か誰かが来ているのだろう思っていた真姫だったが、驚いた。なんとそこにはおどおどしながら座っているクラスで一度も喋った事がない花陽だったから。
「おちゃ入れてくるわね。」
「ごめんなさい、急に...。」
「何の用?」
無愛想に家に来たようを聞く真姫。聞きながら自分もいつもは母親が座っているイスに座る。
「これ、おちてたから。西木野さんの、だよね?」
「な、なんであなたが?」
「ごめんなさい...。」
「なんで謝るのよ...。あ、ありがとう...。」
お互いに初めての会話の為なかなか会話が進まない。そこで花陽がいきなり真姫にとって爆弾を投下する。
「μ'sのポスター、見てた、よね?」
「私が!?知らないわ!人違いじゃないの?」
「でも、手帖もそこに落ちてたし、」
「ち!違うの!ちがッ!――、
ガツッっと音がする。真姫がいきなりイスから立ち上がったため机に膝をぶつける。さらに負の連鎖は続き真姫は脚を押さえたままバランスを崩しイスと共に倒れる。痛そう。
「だ、大丈夫!?」
「へ、平気よ。全く!変なこと言うから!」
「ふ、ふふふふふふ!」
「笑わない!」
いつも教室で落ち着いてる真姫がここまで動揺して倒れているのだから花陽は笑ってしまう。
「私がスクールアイドルに?」
「うん!私放課後いつも音楽室の近くに行ってたの。西木野さんの歌聞きたくて。」
「私の?」
「うん!ずっと聞いていたい位、好きで。だから。」
「私ね。」
「?」
「大学は医学部って決まってるの。」
「そうなんだ...。」
「だから、私の音楽はもう終わってるってわけ。」
病院を継ぐという事は医者になるという事。医者になるためには医学部に通わなければならない。当たり前の事だ。真姫の将来は決まっている。だから真姫の音楽は終わっている。だから真姫はアイドルはやらない。そう思っている。
「それより、あなたアイドルやりたいんでしょ?」
「え?」
「この前のライブの時夢中で見てたじゃない。」
「え?西木野さんも居たんだ。」
「いや私はたまたま通りかかっただけだけど...。やりたいならやればいいじゃない!...そしたら少しは応援、してあげるから...。」
「ありがとう!」
そうは言ったもののやっぱり1人ではアイドルをやるとは言いに行けない。だから花陽の心はまだ迷ったままである。
―――――
真姫の家から帰宅する途中。
「お母さんにお土産買っていこうかな。」
たまたま見つけた和菓子屋で母親にお土産を買っていこうと思い入った。しかしその和菓子屋こそ、
「あ、いらっしゃいませー!」
「「あ。」」
「先輩...。」
穂乃果の家の和菓子屋、穂むらである。
色々あって穂乃果の部屋まで案内された花陽。本人は母親へのお土産を買って帰るつもりだったが、なりゆきで上がってしまった。
「おじゃましま~す。」
穂乃果が店番から戻ってきたころにことりがやってきた。ちなみに隼は今日もバイト。穂乃果の家に集まる時には何故かバイトの日が多い。
「おじゃましてます...。」
「え!?もしかして、本当にアイドルに!?」
「たまたまお店に来たから御馳走しようかと思って、穂むら名物穂まんじゅう!略して穂むまん!おいしいよ!」
穂むらの名物は何と言っても穂むまん。海未の好物でもある。
「穂乃果ちゃんパソコン持ってきたよ。」
「ありがとう!肝心な時に限ってこわれちゃうんだー。」
ことりがかばんの中からパソコンを取りだそうとしているが机は今お茶や煎餅などが入った皿がある状態でパソコンが置けない。それに気付いた花陽がさっとそれらをどける。
「あ、ごめん。」
「いえ...。」
「それで、ありましたか?動画は...。」
「まだ確かめてないけど、たぶんここに...。」
「あったぁ!」
「本当ですか!?」
あった。
「誰が撮ってくれたのかしら?隼くんも知らないって言うし。」
「すごい再生数ですね...。」
「こんなに見てもらったんだ!ここのところ綺麗に行ったよね!」
「何度も練習してたところだから、決まった瞬間ガッツポーズしそうになっちゃったぁ~!」
それぞれがライブをした時の感想を述べている中花陽はじっと集中して動画をみていた。
「小泉さん!」
「は、はい!」
「スクールアイドル、本気でやってみない?」
「でも、私、向いてないですから...。」
「私だって人前に出るのは苦手です。向いているとは思えません。」
「私も歌を忘れちゃったりするし、運動も苦手なんだ。」
「私はすごいおっちょこちょいだよ!」
ドヤァという効果音が流れそうな顔で穂乃果がドヤ顔で言う。そこはドヤ顔で言うところじゃない。
「でも...。」
「プロのアイドルなら私達はすぐに失格。でもスクールアイドルなら、やりたいって気持ちをもって自分達の目標をもってやってみる事が出来る!」
「それがスクールアイドルだと思います。」
「だから、やりたいって思ったら、やってみようよ!」
「最も、練習は厳しいですが!」
「海未ちゃん...!」
「失礼...。」
「えへへ。」
3人の仲睦ましい様子を見て笑みがこぼれる花陽。
「ゆっくり考えて、答え聞かせて。」
「私達がいつでも待ってるから!」
その後は穂むまんを御馳走になり母親へのお土産の分も貰って花陽は帰った。
―――――
翌日の放課後。花陽はひとり学院の中庭にある木のベンチに座っていた。
6限の授業では恥ずかしい思いをしてしまった。
声も小さいし、授業でまともに教科書を読む事も出来ない。こんなの、アイドルなんて出来ないそう思っていた。そこに、
「何してるの?」
「西木野さん...。」
真姫が来た。
「あなた声は綺麗なんだから、あとはちゃんと大きな声をだす練習をすればいいだけでしょ?」
「でも...。」
それが出来れば苦労はしないのが花陽である。
「あ~あ~あ~あ~あ~...。はい」
「え?」
「やって。」
そこから真姫と花陽の発声練習が始まった。そして見事真姫の指導のお陰でいつもより大きな声で出す事が出来るようになった。
「ね?気持ちいいでしょ?」
「うん。楽しい!」
「はい!もう一回!」
追加でもう一回練習しようとおもったところに、
「かーよちーん!...西木野さん?どうしてここに?」
「励ましてもらってたんだ!」
「わ、私は別に――、
「それより今日こそ先輩のところに行って、『アイドルになります!』って言わなきゃ!」
「う、うん...。」
「そんな急かさない方がいいわ!もう少し自信をつけてからでも――、
「なんで西木野さんが凛とかよちんの話に入ってくるの!?」
「!?...別に!歌うならそっちの方がいいって言っただけ!」
「かよちんはいつも迷ってばっかりだから、パッと決めてあげた方がいいの!」
「そう?昨日話した感じじゃそうは思わなかったけど!」
「あの...喧嘩は...。」
「「ん!」」
「ぁぁぁぁぁ...。」
これは花陽には手がつけられない、お手上げ状態である。まさかこんなことになるとは。
「かよちん早く行こ!先輩達帰っちゃうよ!」
「え!?でも...!」
「待って!」
「「え?」」
「どうしてもって言うなら私が連れていくわ!音楽に関しては私の方がアドバイス出来るし、μ'sの曲は私が作ったんだから!」
「え!?そうなの!?」
まさかの発言だった。でも真姫なら作れても納得である。
「いや...えぇと...。とにかく行くわよ!」
花陽の腕を掴んで無理矢理進む真姫。こう言う時に女の子の力と言うのは凄いものである。
「待って!連れてくなら凛が!」
「私が!」「凛が!」「私が!」「凛が連れてくの!」「なんなのよもぉ!」「凛じゃなきゃダメなの!」
「誰か...。」
完全に喧嘩している状態である。もう花陽には完全に手がつけられない。よって花陽がすることは
「ダレカタスケテーーー!!!」
全力で助けを求めることだった。
―――――
「つまり、メンバーになるってこと?」
時間は経ってもう完全に夕方の頃、花陽の腕を真姫と凛で引っ張りながらなんとか穂乃果達が帰る前までに来られた。花陽は引っ張られているだけなのに項垂れているが。
「はい!かよちんはずっとずっと前からアイドルやってみたいと思ってたんです!」
「そんなことはどうでも良くて!この子は結構歌唱力あるんです!」
「どうでもいいってどういうこと!?」
「言葉通りの意味よ!」
「わ、私はまだ...、何ていうか...。」
まだ花陽は迷っているのか、踏ん切りがつかないらしい。
「もう!いつまで迷ってるの!絶対やった方がいいの!」
「それには賛成!やってみたい気持ちがあるならやってみた方がいいわ!」
「で、でも...。」
「さっきも言ったでしょ?声出すなんて簡単!あなただったら出来るわ!」
「凛は知ってるよ!かよちんがずっとずっとアイドルになりたいって思ってた事!」
「凛ちゃん...。西木野さん...。」
「頑張って!凛がずっとついててあげるから!」
「私も少しは応援してあげるって言ったでしょ?」
「え、えっと、私、小泉――、
名前から言おうとしていた花陽を真姫と凛が背中を押す。それで花陽は完全に踏ん切りがついた。
「私、小泉花陽と言います!1年生で、背も小さくて、声も小さくて、人見知りで、得意な物も何も無いです...。でも、でも!アイドルへの思いは誰にも負けないつもりです!だからμ'sのメンバーにしてください!」
やっと言えた。自分が1人では言えなかった事支えがあってやっと言えた。
そして穂乃果も答える。
「こちらこそ!」
頭を下げていた花陽はその言葉を聞いて顔をあげる。
「よろしく!」
そう言って手を差し出す穂乃果。
涙を流しながらも花陽は穂乃果と握手を交わす。
「かよちん...、偉いよ...。」
「何泣いてるのよ...。」
「だって...って、西木野さんも泣いてる?」
「だ、誰が!泣いてなんか無いわよ!」
「それで、2人は?」
「?」
花陽がμ'sになれた事に泣いている真姫と凛。そこにことりは「2人は?」と質問する。いつもぼーっとしている抜けているが、こう言う時は以外とちゃっかりしているのである。
「2人はどうするの?」
「「え?どうするって?えぇ!?」」
「まだまだメンバーは募集中ですよ!」
「うん!」
そういって2人にも手を差し出す海未とことり。
真姫と凛は質問された時は鳩が豆鉄砲でも喰らったような顔をしていたがしばし考え、2人で顔を合わせてから2人の手を握った。
「ようこそ...。女神様...。」
1人隼は誰も聞こえない声で呟いた。
こうしてμ'sは6人になった。
―――――
μ'sが6人になってから1週間が経った朝。朝練の為神田明神の長い階段を上っていた真姫と凛。
「朝練って毎日こんなに早起きしなくちゃいけないのぉ...。」
「この位当然よ。」
「当然なのぉ...。」
「そう当然よ。」
朝練が朝早い事に愚痴を漏らす凛。朝早起きすることが穂乃果同様に辛いらしい。逆に真姫はいつも早起きしているため何も苦では無いらしい。
2人が階段を登り終えるとそこには体育着ではなく練習着を着た花陽がいた。
「かーよちーん!」
「おはよう!」
凛に呼ばれて振り返る花陽。だがその花陽はいつもの花陽とは全く違う。なんとトレードマークと言っても過言ではない眼鏡をはずしているのだ。
眼鏡を外している花陽は凛でもプールの時以外で見たことない。
「あれ?眼鏡は?」
「コンタクトにしてみたの。変...かな?」
「ううん!全っ然可愛いよ!すっごく!」
「へーいいじゃない。」
「あ、西木野さん。」
「西木野」と呼ばれることに反応する真姫。そして少し顔を赤らめがらも言う。
「眼鏡取ったついでに...名前で呼んでよ!」
「「え?」」
「私も名前で呼ぶから...花陽!凛!」
今まで名前で呼ぶような友達が少なかった真姫は恥ずかしいのかどんどん顔が赤くなっていく。それに追い打ちをかけるように花陽と凛は、
「真姫ちゃん!」
「真姫ちゃーん!」
満面の笑みで言う花陽ぴょんぴょん飛びながら言う凛。だけど凛は一回では終わらず、
「真姫ちゃん!真姫ちゃん!真姫ちゃーん!」
「何よぉ!」
「真姫ちゃん!真姫ちゃーん!」
何回も言うだけでなく、真姫の肩に手を乗せて頬ずりまでしている。ほっぺすりすりしても麻痺にはならないぞ。
でも真姫には効果抜群のようだ。名前で呼んでくれと言った時よりも顔が赤い。まるで真姫の好きなトマトの様である。
真姫と凛が戯れ合い、花陽がそれをみて微笑んでる中、ゆったりと階段を上って隼が来た。
「あ!先輩!おはようございます!」
「おはようございます...。」
「おはようございます。」
元気に挨拶する凛。まだ若干男の先輩と言う事で緊張している花陽。普通に挨拶する真姫。3人しかいないの随分と個性的だ。
「おはよう。早いなみんな。星空はもう朝練来ないと思ったぞ。」
「星空」という呼び方に反応する3人。
「あ!あの隼先輩!」
「なんで、ってか呼び方。」
「あ、あの!私達も先輩の事名前で呼ぶので私達も名前で呼んでください!先輩は付けますけど...。」
「何で?」
「穂乃果先輩たちは名前で呼んでるのに私達は苗字って...寂しくて...。」
「あぁ、あれはあいつらが昔俺がそう呼んでたとかわけのわからんこと言って、それで。」
「!?」
「どうした西木野。」
「い、いや...何も...。」
~※真姫視点~
嘘...。穂乃果先輩たちは
あ、それに今苗字で呼んだ...。私も昔みたいに名前で呼んで欲しい...。でも、言えない...。「私も昔そう呼んでたから名前で呼んで」なんて...。
~※隼視点~
なんか今日のこいつら変だな。いきなり自分達の事を名前で呼べとかいいだしたり、「昔そう呼んでた」って言葉に反応したり、なんか変なもんでも食ったか。
「そ、それでもです!それだけが理由で私達の事を名前で呼んでくれないなんて寂しいです!」
「そうにゃ!そうにゃ!凛達も名前で呼んで欲しいにゃ!」
「にゃ」ってこいつは猫か。小泉が眼鏡とったら積極的になったな。まぁでも、初めてまともに出来た後輩だし、後輩のわがまま聞いてやるのが先輩ってやつか。
「凛と...花陽...真姫...。これでいいか?」
そう言うと3人の顔が一気に明るくなった。何、俺から名前で呼ばれるなんてそんなにいいことなの。今まで男の先輩と喋った事なかったとかか。
あれ...。花陽が眼鏡取った?あ、本当だ取ってるコンタクトにでもしたのか。ここはなんか言っとくか。
「花陽。」
「は、はい!」
「それ、似合ってるぞ。」
「!!! はぁぁぁ...♪」
んまぁこう言うのも悪くないか。
―――――
カチッ、カチッとマウスを叩く音が薄暗い部屋から聞こえる。ここは学院のとある一室。中にはポスターやらDVDやBlu-rayやその他のアイドルのグッズが棚に並んでいた。
そしてその部屋にあるパソコンに映されていたのはどこからとらていたか分からない、神田明神でのμ'sの朝練前のやりとり。そしてスクールアイドルのサイトのμ'sのページ。
「アイドル部...。」
3年生にしては珍しいツインテールの小柄の少女。海未がチラシを渡した時に無愛想に断った少女である。
パソコンを見る目はまるで何か憎いと言いたいような目。
カタカタカタと高速でタイピングしてμ'sのページに直接コメントする。そのコメントが。
『アイドルを語るなんて10年早い
((┗──У( ` А ´ )У-~ケッ!!』
そう打たれていた。
この少女はあと後μ'sに突っかかってきそうである。
なんか隼最初とキャラ変わってない?
前回更新してからテスト期間に入ってしまい、その後も検定の試験があったので更新できませんでしたすみません。
次回は5話の『にこ襲来』回です。
誤字脱字などありましたら報告よろしくお願いします。
Twitterにて執筆状況などのツイートをしています。
https://twitter.com/sin_tori0120
高評価、感想などお待ちしております!
次回もよろしくおねがいします。