ToLOVEる - FIRE GENERATION -   作:改造ハムスター

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第7話「vs ヒッタクン星人」

「カラスめ、地球で牙を抜かれたと聞いていたが……やはりそう甘くはないか」

 

「仲間がいるなんて話も聞いてねぇんだよオイ!もう三階制圧されたぞ。てめぇの計画全然駄目じゃねーか!!

あとカラスに牙なんかねぇよ動物なめんなバーカ」

 

「ふん、まさか貴様と天城院の信頼があんなに薄かったとは予想外だったからな。

ま、詰めが甘い、ハン兄様らしいが」

 

「ビシャ、いつもいつも俺を見下しやがって……噛みつくぞコラァッ」

 

「まぁまぁ二人とも、喧嘩はやめようよ。今は一旦協力してアシュラちゃんたち潰すって話っしょ?」

 

「タナ、お前の情報は誤っている。ザックの戦闘力は格段に下がったなどとほざいていたが、この通りだ。嘘を言うくらいなら……」

 

 

「えー、甘いなぁ、ビシャモくんも。

何言ってんの?

 

 

 

 

本当だよ」

 

 

 

ねぇ

 

 

 

 

 

 

せーんぱい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全力疾走してる最中というのに、またうっとうしい夢が頭に流れ込んできました。もう無視です、無視。今は闘いに集中させてくれ。もちろんアッシュを探しながらね。

 

俺たちは今二階にいます。俺たち二年の階です。屋上から三年、二年、一年と手強い方から突破する作戦です。さっきは真剣持った剣道部員全員とチャンバラやって、蹴散らしてきましたが、問題はまだ地球人としか闘ってないことです。

 

(そろそろ婚約者候補が出てきてもおかしくないはずだが……)

 

「危ないっ」

妻村の悲鳴。

 

ドガァッ!!

「カッ、ハッ!?」

 

はらわたに巨大な筋肉が突き刺さる感覚。

と同時に、視界に横縞のシャツが映った。

 

(ラグビー部かッ)

 

細身の俺は軽く5、6メートル吹っ飛び、床に背中を打ち付けた。

 

「ウラアアアッ!」

 

2人目の柔道部員っぽい奴が俺の胸倉を掴み上げ、壁へ投げ飛ばす。

 

バガァン!

 

俺は壁に人型のヒビを作り、剥がれ落ちた。

 

やっぱり武器より、重量級の突進のが俺は怖いです。

 

「潰れろォッ」

 

視界がグラつく中、ラガーマンの大振り右フックが迫る。

 

ど素人め。

(なめんじゃねえぞ)

 

ゴォッ!

火を噴くジェットブーツ!

 

「ドリャァッ!」

両足で壁を蹴飛ばし、右肘でガラ空きの顔面を切り裂いた。

 

バキャッ!

 

やべ、やりすぎた。

 

顎砕いちまったか?

 

そう思ったその時……

 

ビリビリィッ

 

ラガーマンの顔が破れた。

 

「あ、てめぇ、俺の変装をっ!」

 

新たに現れた顔は……

 

緑の肌。

頭の突起。

穴だけの鼻。

とんがった耳。

 

こいつは確か……

 

 

「ナ○ック星人?」

「違うぞ妻村。こいつ、

 

ヒッタクン星人だ」

 

すると柔道部の奴も、自分の顔を剥がし始めた。

 

「俺たちの変装を見破るとは、なかなかやるな」

 

見破ったというより物理的に破ったんですが……

 

 

ヒッタクン星人というのは、その名の通りひったくりが得意な宇宙人です。お袋も小学生のとき被害にあったらしい。なんかシャンプー食われたとかちょっと面白かったとかおそろいいいよねとか意味不明なこと言ってたが、今俺の前にいるこいつらにそんな愛嬌はありません。当たり前か、暴力でアッシュを奪いにきた野郎なんだから。

 

スチャッ

 

レーザー銃が向けられる。

 

俺はとっさに、フライパンで顔面を隠した。

 

「アシュラ姫はどこだ」

「し、しらねぇよ」

 

片目だけ出して、フライパン越しに答える。非常にダサい格好だが仕方ない。レーザーに炎は効きませんからね。跳ね返すしかないんです。

 

「とぼけてんじゃねえ!見当ぐらいはついてんだろ!」

「だったら苦労しねぇよ!」

 

「これでもか?」

 

ブゥン

 

柔道家がでっかい光子剣を出してきた。

 

はい、どう見てもアーサーのイマジンソードです。

 

「それ、どうしたんだよ!?」

「決まってんだろ。

 

 

ひったくったんだよ」

 

 

あのポンコツ剣士ィィイ!!

 

なんで剣ひったくられてんだよーー!!

 

「そりゃっ!」

 

俺は尻餅をついたまま、コサックダンスみたいに左足を突き出した。

 

ゴゥッ

左足のジェットブーツが火を噴く。

 

「ハァッ!」

 

ブゥン!!

 

狙い通り、柔道家が跳びのきざまに剣を斬り払ってくる。

 

ガァンン!

 

フライパンで弾き、サイドステップ!このフライパンはオリハルコンとかいう無駄に硬い金属で出来てるので無敵です。仰け反る柔道家。すかさず俺は腰に手を回し、包丁を引き抜……

 

え?

(包丁は?)

 

 

「足怪我してる割には速いじゃねえかよ」

 

 

すぐ横に、俺の包丁をプラプラさせるラガーマン。

 

今、ひったくられたのか?

 

全然見えなかった……

 

ブゥウン!

 

迫るフォトンエッジ!

 

だがもう引っかからねえ!

 

(次はフライパンをひったくるつもりだろ!)

 

俺は両手でフライパンを抱き抱え、横切るラガーマンをバックステップでかわし……

 

ズボォッ!

 

ドカッ

 

(!?)

ふいに俺は、仰向けに転げた。

 

「甘いな」

 

廊下を仰向けに滑りながら、ラガーマンが嘲笑う。

 

奴の手にあるのは、

 

さっきまで俺の左足にはまっていたはずのジェットブーツだった。

 

どうなってやがるっ!?

 

履いてるブーツってひったくれるものなのか……タイにもそこまでの奴いねぇだろ。

 

とにかく、こいつらは強敵だ。

 

息を荒げる俺を見下ろし、二人のヒッタクン星人が腕を組む。

 

「俺たちは、ただのヒッタクン星人じゃねぇ

 

元ヒッタクン陸軍特殊空挺部隊だ」

 

うそだろ……

 

「俺たちにひったくれないものはない。そう、たとえ

 

銀河のお姫様だろうとな」

 

なんかとんでもないこと言い始めやがった。

 

 

甘く見てましたね。たかがひったくりが兵士になるとこんなに手強いとは。しかも2人とも特殊部隊。

 

俺は両足怪我してるし。

 

部が悪すぎる。

 

しかもここは廊下。火砲になりそうなもんは意外とどこにも無い。鉛筆ケースが落ちてますが、あれじゃゴキブリしか殺せません。鉛筆ケース……まだ使ってる人いるんだな。

 

どうしたもんか。

 

ビィイーンン!

 

柔道家がイマジンソードを振りかざし、突進してくる。俺は右足のブーツを脱いだ。もうフライパンしか使えない。

 

(くっそー、俺ガンマンなのによ!)

 

やるしかねぇっ!

 

俺はフライパンを両手で握り、イマジンソードの刃に潜り込んだ。

 

ガキィイン!!

 

キン!キン!

 

荒ぶ炎。飛び散る光子。相手も相当やり手だが、やはり剣技はアーサーより数段下だ。それでも剣を取るのは、俺の調理服にレーザー銃が効かないことを知っているのだろう。

 

「せりゃっ!」

 

ガッ!

 

フライパンの柄を逆手に持ち、回転斬りを浴びせる。

 

「くっ」

 

柔道家の体勢が崩れる。裏拳を放とうとしたその時、

 

ビュン!

 

ラガーマンッ、フライパン獲りに来やがった!

 

「させるかっ」

 

俺はフライパンを上空に掲げた。

 

それで、

 

胴が開いてしまった。

 

ブチン!

 

ブチブチッ!

 

奴が狙っていたのは、フライパンなんかじゃなかった。

 

俺の調理服の、腹部をつなぎ止める金具。

(しまっ……)

 

ペラッ

 

服が垂れ、無防備な俺の腹が露わになる。

 

瞬間、柔道家は軍人らしい洗練された動きで剣をレーザー銃に持ち替え、こちらに向けた。

 

バシュッ!

 

「っがぁっ!」

 

刹那に躱す。腹の肉が僅かに溶け、焼け跡が残る。

 

その瞬間、

 

スパアンッ

 

右手に、摩擦の痛みが走った。

 

見なくてもわかる。

 

遂にフライパンも盗られてしまった。

 

スチャッ

 

柔道家のレーザー銃。

 

「死ね」

 

くそ、こんなところでっ……

 

 

「やめろぉぉお!!」

 

プシューーーッ!!

 

妻村の放つ消化液が、柔道家の後頭部に命中した!

 

「うおぉお!?」

 

柔道家は堪らず頭を押さえる。こいつらは皮膚が弱いらしい。

 

「邪魔しやがって」

柔道家がグラつきながらも、すぐに妻村へ銃を向けた。

 

(妻村っ!)

 

俺の背後からは、ラガーマンの殺気が刺さる。突進してくる気だ。

 

今しかねぇ!

 

ドゥッ!

 

ラガーマンのタックル!

 

俺はジャンプでかわし、右足をブーツに差し込んだ。アッシュが巻いてくれた包帯から血が噴き出す。

 

「うらぁあっ!」

 

俺は妻村を狙う柔道家に向かって、全身の力を込めて体をぶっ飛ばした。

 

旋風脚ッ!

 

ドガッ

 

俺の踵が、柔道家の踵に命中する。あまりに速い蹴りに反応出来ず、柔道家は前のめりに倒れた。

 

だが俺の目的はそれだけじゃない。

 

ゴオオッ

 

ブーツのジェット気圧を屋根に走らせ、

 

ガチャン!

 

防犯カメラを落とす。これです!もうやってられっか。

 

ひったくりとは闘わずに法を適用しましょう!

 

俺はカメラを拾い、窓から身を乗り出した。ここからならギリ屋上が見えるはず。

 

やっぱり!九条先輩だ!俺は涼しい顔でパソコン見てる先輩に手を振った。

 

「おまわりさーん!ひったくりや、死刑にしてくれ!」

 

「現行犯だ」

 

ブン!

 

俺は先輩に向かって防犯カメラをぶん投げた。

 

「証拠だ、2時間以内なら解析できる。早くやらないと本部に訴えるぞこの税金泥棒め、働け働けー」

 

「ッ、うるさい奴だ」

 

タンッ

 

屋上から姿を消した次の瞬間には、先輩はもうここまで飛び移っていた。

 

だがすでに、柔道家は剣を構えて立っている。

 

「なんだ、俺たちはデビルークの王子に雇われてんだ。警察に用はねぇ」

 

「悪いがこの星では貴様たちの存在自体が犯罪だ。消えてもらおう。

 

結城、妻村、下がっていろ」

 

冷徹な態度で、先輩は刀を抜いた。

 

「ほお、てめぇ珍しい刀持ってやがんな……

 

よこしやがれぇっ!!」

 

 

ラガーマンの突進!

 

 

「フン、盗れるもんならくれてやる。

 

だがその前に」

 

 

 

ザシュッ……!

 

 

 

……一瞬で宙に散るラガーマン。

 

 

 

先輩の目から、瞳孔が消えた。

 

 

 

 

『血をよこせ』

 

 

 

 

ズバアアアアーーンッ!!

 

 

 

 

二体のヒッタクン星人は、緑色の血を残し、粉微塵になった。

 

……一応戦死なのか、これは?

 

 

「好みの血じゃなかったか」

 

魔剣を収める先輩。

 

怖すぎるwww

 

「もう少し頑張れないのか」

 

呆れたように言って、先輩は俺にフライパンをよこした。

 

「俺にも銃を許可してくれないと不利じゃないっすかね」

 

「こんな時だけ現実的なことを言うな。あと、俺はちゃんと仕事をしている」

 

 

「え、エロ動画観てたんじゃないんすか!?」

 

 

妻村を絞め落としながら、九条先輩はパソコンを見せてきた。

 

「プリンセスはここだ」

「体育倉庫?

男子生徒しか見えないんですが……」

 

「とび箱に隠れている。エロ動画にならないうちに早く行け」

 

先輩wwwww

 

「妻村は俺が保護しておく」

 

俺はフライパンやら包丁やらブーツやらイマジンソードやらを回収して先輩たちと別れた。早くアッシュを救出して、ついでにペケに調理服を修復してもらう必要があります。

 

行くぞぉ!

 

to be continud


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