ToLOVEる - FIRE GENERATION -   作:改造ハムスター

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第6話「バーンアウト・ハイスクール Ⅲ」

なんてこった。まさか学校でパクられるとは。

 

アッシュに関してはむしろ安全な場所へ隔離されたとも言えますが、俺はやばい。別に地球の法に触れてなくても、極力警察とは関わりたくないです。なんせ亡命中なのでね。

 

「やい、俺は被害者なんだよ、弁護士を呼びやがれ」

「黙れ。暴れれば地球で前科がつくぞ。それともデビルークに移送して皇女誘拐か?それも面白いな。どちらか選べ」

 

腹立つ!でもこいつただ者じゃねぇ。だって片腕で挟まれてるだけなのに全く抜け出せる気がしない。細いくせに。何者だよ。この学校規格外の地球人多すぎだろ。

 

 

このまま護送船にでもブチ込まれるのかと思いきや、なんと連れて行かれたのは学校の屋上だった。

 

急に警官は手を緩め、そっと俺を座らせた。

 

「手荒な真似をしてすまなかった。こうでもしないと、奴らが五月蝿いからな」

「奴ら?」

「デビルークの王子たちだ」

 

……地球の警察にしては、大胆なこと言いますね。

 

「でも屋上なんかもっとバレやすくね?」

「この騒ぎだ。今は校内に監視が集中している。だが下手な動きはするな」

 

だから俺は今亀甲縛りにされていると。

 

「さて、霧崎玄凰。お前は」

 

ブチィッ

 

「その名前で呼ぶんじゃねえよ」

 

俺は速攻でブチ切れました。頭の血管と、亀甲縛り両方です。

 

「……すまなかった、結城ザク郎。話を聞いてくれるか?」

 

警官は意外に紳士的な対応をしてきた。ビビってる感じは全然しないけど。

 

俺は警察とか信用しませんが、こいつは結構まともな奴なのかもしれない。

 

「あんたの名前は?」

「すまんが後で話す。まずはこれを見てくれ」

 

警官は自由の身になった俺を警戒するでもなく近寄ってきて、パソコンを開いた。

 

「校内に設置したカメラの映像だ」

 

次々に映し出される、血にまみれ、崩壊した教室、便所、廊下、渡り廊下、食堂。

 

酷い、酷すぎる。一体誰がこんなことを……。

 

あ、食堂は俺か 笑

 

「そしてこれが数時間前の体育館だ」

 

俺がまだ食堂にいた時間か。

 

ワーーッ!

アァーーッ!

ウワァーーッ!

キーーィイーーッ!

 

制服を着たケダモノたちの、割れんばかりの叫び声。みんな我が校の男子生徒です。全員荊棘で拘束されている。

 

彼らの目線の先には……。

 

 

巨大スクリーンに映し出された、

 

アッシュの顔。

 

 

「これが転校生だ。こんなハレンチな女子生徒は、風紀のため、俺たちが管理しなければならん!」

 

「オーーッ」

 

「お前ら、俺に協力するか!?共にアシュラを支配したいか!?」

 

「オオーーーッ!!」

 

「なら、俺がこのクラスの委員長だ!!」

 

「ッシャアァーーーッ!!」

 

「この古手川龍に、清き一票を!!!」

 

ウワアアアアアーーーーッ!

 

 

「こっちが、現在の校庭」

 

砂の巻き上がるグラウンド。今度は理性のある生徒たち。少し女子もまじっている。あとは……宇宙の猛獣たち。

 

「勇敢なる生徒諸君!我々はクラスメートである以上、どんなに危険な存在であっても、転校生であるなら、友好に迎え入れなければならない!」

 

「ハッ!」

 

「私自身、不安を抱えている。しかし、クラス委員を希望する者として、この問題を解決する義務がある!」

 

「ハッ!!」

 

「諸君、我々で古手川龍の暴走を止めよう!」

 

「押忍!!」

 

「そして、この西連寺季虎に清き一票を!!」

 

おーーっす!!!

 

 

 

 

 

どういう状況、これ?

 

 

「お前たちがキューオクトパスと戦っている間、西連寺と古手川が闘っていただろう。その時にクラスの男子が分裂した様だ。結果双方につき、なぜがそれに全学年の男子まで付き従っているという異常事態が起きている。あの野球部の連中も俺の同級生だが、もう古手川についたらしい。つまり、理性は失われたままだ。プリンセス・アシュラの顔を晒し、生徒の暴走状態をキープさせる古手川のやり口は、人間の脳に多大な負荷をかけ、生命を脅かす。必ず止めなければならない」

 

「双方の大将それぞれに動物と植物が付き従っている事実についてだが……」

 

警官の冷静な分析に我に返る。

 

「二人とも一見上手く操っている様に見えるが、彼らは所詮人間。動植物と心を通わす力など持っていない。実際にコミュニケーションを取り、命令を下しているのは、地球外にいるプリンス・ハンニャとプリンス・ビシャモだ。つまり彼らは自我を残したまま完全に奴らの駒にされている」

「なんでこの二人なんだ?」

「西連寺……この男は念力を使えるそうだな。俺には霊感の類はわからないが、こういった力を持つ者は動物の魂と同調しやすいらしい。そこを利用されたのだろう」

「古手川は?」

「彼に関しては、性的な妄想力が異常に強い。それが植物の「子孫繁栄」の本能と結びつき、成長を促進させるそうだ」

 

どんな能力だよwww

 

「そして、さらに悪いことには……

 

王子たちが、プリンセスの婚約者候補を雇っていることだ」

 

……異星人か。それはやばいな。

 

「どこに潜伏させているか、俺にもわからん」

「報酬はアッシュだと」

「ああ。だから、プリンセスを巻き込む訳にはいかなかった」

 

どこか遠くを見つめて、警官はそう言った。

 

「でもおまわりさん、そりゃあちょっとアッシュを舐めすぎてたみたいっすよ」

 

俺に促され、警官はパソコンのモニターを見つめて絶句した。

 

 

慌てるおまわりの部下たちの真ん中に

 

脱ぎ捨てられた、スカート、ブレザー、靴……etc

 

全部アッシュの服です。

 

「ぴょんぴょんワープくん、っすね。あれは」

「どうなっている!?」

「たぶん学校のどっかにいます。どこかはわかりません。しかも今、彼女は全裸です。

 

……いや、まて!!」

 

「どうした!?」

 

「正確にはネクタイにブラウス、パンティ、靴下は身に着けてるみたいっす!」

 

「どうでもいいわ!!」

 

クールそうな警官は頭を振り、立ち上がった。

 

この違いがわからないとは……まだまだだな。

 

「俺、探してきますよ」

 

俺は立ち上がった。

 

「1人で何が出来る」

「出来る出来ないじゃなくて、やるんすよ」

「デビルークに監視される中、数百人以上の暴徒を突破し、正体不明の異星人たちと戦い、何処にいるかもわからないプリンセスを1人で探すか」

 

…………

 

「本当の能力を封じたまま」

 

なんでやる気を削ぎにくるかね。

 

「それにお前は、失礼だが、そんなに責任を感じる奴だったか?プリンセスの方が勝手に来たんだ。この件は俺たちに任せて、お前はこの機会にどこへでも行けばいい。その料理の腕なら、いくらでも勤め先はあるはずだ」

 

「責任とかじゃないです。

プライドです」

 

 

殺し屋が、絶対に標的(ターゲット)を逃さないように。

 

運び屋は、絶対に荷物を捨てない。

 

どんな形でも。

 

 

「変わったのか、変わらないのか……。プリンセスの能力は大変だな。

 

俺もそうだが」

 

そう言って、警官はなんかのボタンを押した。

 

タタタタッ

 

誰かが来る。

 

 

「ここにいたのか、結城!」

妻村!!

 

「お前、理性大丈夫なのかよ」

 

「へっ、童貞と一緒にしてんじゃねぇよ」

 

それは関係ないと思うが……意外だな。

 

「二次元の女にしか反応しない俺に死角はなかったwww」

指野……なんかかっこいいと思っちまった。

 

「この指野が、俺に連絡をくれたんだ」

 

「ザック」

「猿山……」

 

「あんたがあんな可愛い娘連れてきたから……バカ虎、わたしの方が、ずっとアイツのこと……」

「まだ何も始まってねぇよ」

「わかってる。だから、私も協力するよ。なんも出来ないけど、アイツを正気に戻してやるくらいさせてよね」

 

「ザク郎殿〜!」

バリィイイン!

「またお前かよ!!」

 

窓を割って入ってきたのは、昨日ぶっ飛ばしたはずのアーサー天城院!

 

「申し訳なかった!!」

 

……へ?

 

「デビルーク親衛隊隊長の務めは、王家に忠義を尽くすこと。ですが、私はアシュラ様のお力を怖れるあまり、父や、主君であるリト様のご意向に反し、ハンニャ様に利用されていました。

もう母星からは追放されましたが、せめてこの星で、ザック殿と共にアシュラ様をお護りさせていただきたい!どうか、お許しを!」

 

俺は、急に土下座しだしたかつての敵を見下ろした。

 

「……大丈夫か?」

「ハッ」

「ウザースに改造された使い回しじゃないよな」

「……は、ウザースとは?」

「いや、こっちの話だ」

 

床に着いたアーサーの頭には、白い目隠しがされている。

 

「アーサー、なんで目隠ししてんだ?」

「勿論、アシュラ様の素顔を見て、暴走しないようにするためです」

 

「いやいやそんなんじゃ戦えないっしょ!」

 

妻村のツッコミに、アーサーがムッとした表情を浮かべた。

 

「私は、心眼ナイトでもあります!アシュラ様の為ならこの両眼、惜しくはな

 

ずべっ!!」

 

心眼ナイトが立ち上がった瞬間、盛大にこけた先には、猿山の……

 

 

ぐにぃっ

 

「きゃあっ、どこ触ってんのよっ!」

ドゴォッ

「くほぉっ」

 

心眼ダメじゃねぇかw

 

「目隠し外せよ、アーサー」

 

「……な、何故?」

 

俺はキョドるアーサーに言ってやった。

 

「そんだけの覚悟がありゃ、お前はもう大丈夫だ。チャームの能力なんか効かねぇよ」

 

「ザ、ザク郎どの…………」

 

 

「ワーッハッハッハ!!

 

さすがは私、紳士ナイト!余裕で克服してやったわ!!」

 

紳士ナイトってなんだよ。

 

 

「これを着ていけ」

 

どこにあったのか、警官がでっかいケースを俺に放ってきた。

 

中身を開ける。

 

「これは……!」

 

入っていたのは、俺が王宮に置いてきた真っ黒い防弾調理服。そして愛用の肉切り包丁と、フライパン。

 

「どうやってこんなもの」

 

「お前は希少な戦闘能力を有しているが、身体能力そのものは、極めて優れた地球人とそう変わらない。違うか」

 

俺の質問には答えず、警官は俺の弱点を公表しだした。

 

そうです。俺は1ヶ月くらい猛特訓すればオリンピック全種目の記録を塗り替える自信がありますが、宇宙レベルではその程度、貧弱です。銃で撃たれたら死にますし、生身では弾を避けることも難しい。全部ジェットブーツのおかげなんです。

 

「そして地球人の母親に育てられた。お前はもう、自分を人間だと思っていていい。

だから人間らしく、利用出来るものは全て利用して戦え。武器も、仲間も、情報も。自分だけで勝とうとするな。

 

宇宙は変わった。暴力だけでは生き残れない。これからは頼れるものを多く持つ者が勝利する。現デビルーク王が人間なのも、そういう時代だからだ」

 

 

確かに、それはそうなのかもしれない。

 

 

俺は調理服を被った。ガキのころから着てたらしい、無意味なベルトがいっぱいついて、背中に白いひび割れと真っ赤な斑点が散らばった戦闘服。お袋にザクロと名付けられた所以だ。

 

「こんなもん俺に渡して、俺が暴れたらどうすんだよ?」

「安心しろ。その時は直々にぶった斬ってやる」

 

警官の腰から、赤黒い日本刀が刃を覗かせた。

 

あれは魔剣ブラディクス……とんでもねぇもん持ってますな。

 

「カフェで初めて聞いたけど、お前やっぱり宇宙人だったんだな」

 

指野が感慨深そうに頷いている。呑気な奴らだ。

 

 

でも、それでいい。

 

 

「ここにいるみんなも、西連寺も、アッシュや王子たちも、みんな人間の血を引いてるんだ。俺だって血は繋がってねぇけど、人間に育てられた。みんな、兄弟なんだ。

これ以上この星で、同族どうしの馬鹿げた争いを続けさせるわけにはいかねぇ。

 

だから、

 

最後に、暴れようぜ」

 

アーサーのイマジンソードが唸る。友達が、力強く頷く。

 

「あんたは来ないのか、おまわりさん」

「馬鹿言え。警察が前線に立つのは最後の時だ。

 

まだまだ、お前たちはやれる」

 

こいつかっこいいな……

 

「まだ、お前から名を聞いていなかったな」

 

俺は振り返って答えた。

 

「結城ザク郎。ただのコックっす」

「……そうか」

「あんたは?」

 

「九条麟。銀河警察の潜入捜査官だ」

 

マジかよ、人間なのにヤバ過ぎる。

 

ってゆうか、この人が九条先輩だったのか!!

 

 

九条麟

 

親父の息子の一人で、三人目の地球人。

 

次期デビルーク王候補者の中でもトップクラスの実力を持っているが、王位には一切興味を示さず、警察として地球を守っている。

 

噂通り、肝が据わった男だ。俺もこれからは九条先輩と呼ぶことにしよう。

 

「何かあれば、また協力する。ただ他言はするなよ。お互いにな」

「ああ、よろしく頼むよ」

「プリンセスは、お前が護れ」

 

「ナイン!フジ!」

アーサーの呼びに応えて、あの側近2人が飛んできた。

 

「元気そうだな、兄貴」

 

九条先輩が、ナインに向かってそう呼びがける。

 

「沙姫様のことは任せてくれ、麟」

 

兄弟だったのかよwwwww

 

 

 

『来るな!変態っ!』

『そんな格好しといてどっちが変態だこの露出きょウリィイイーッ!!』

 

『ザック!助けて!』

 

モニターから、護るべき人の声が聞こえる。

 

使えるもんは、全部揃ったみたいだな。

 

 

「行くぞ、みんな、

 

調理実習じゃーーー!!!」

 

 

見えてるか、ゴウカ。

 

俺は、ちょっとずつ変わってるぞ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

見てるよ、クロウ。

 

 

すぐそばで。

 

to be continude


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