ToLOVEる - FIRE GENERATION -   作:改造ハムスター

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第4話「バーンアウト・ハイスクール」

「ふほほほ!久しぶりですね、

クロウ・キリサキ」

 

闇の中、なんか変なじいさんがケンカ売ってきました。

あんた誰?

 

「我が名はツカイ・マワッシ伯爵。

 

あなたの両親に滅ぼされたウザースの恨み、ここで晴らせでもらいましょう……」

 

ズシャッ……

 

変なじいさんの陰から、男が現れる。

 

「嘘、だろ」

 

そこにいたのは、昨日宇宙に吹っ飛ばしたはずの、あの……。

 

「ゆけ!アーサー☆天城院Z!」

 

キェエエエーーィッ!!

 

くそっ

俺はフライパンを引っ掴み、そして……

 

 

「夢見てるんですかぁ、先輩?」

 

 

ガバァッ!

 

目が覚めた。

 

 

あ、おはようございます。結城ザク郎です。

 

なんだか不快な夢を見ていたような……。

 

ただ今ベッドの上で、なぜか昨日のフライパンを持っている次第であります。

 

結局あれから、家は直りました。アーサーの側近が2人いたでしょう。あれ(ナインとフジとかいった名前でした)を人質にとって、そいつらの通信機からデビルークに、家を直せと脅したんです。どうせ居場所はとっくにバレてるでしょうからね。

 

そしたら一瞬ですよ。ブゥン!って、一瞬で側近が消えたと思ったら、もう家が直ってたんです。壁の傷とかポスターとかもそのまんまです。怖すぎる笑

ありゃ脅す相手を間違えましたね……。

 

アッシュがいることもあって、常に自宅を監視されてる訳にはいかない。今は家全体に強力な盗撮・盗聴遮断バリアーを張ってます。

これは確かモモ様のメカだったかな。

 

モモ・ベリア・デビルーク……第二王子ビシャモのお袋。

 

あのお方こそ、リト様……親父のハーレム構築に最も貢献した人物だ。

 

悪人なんかじゃなかった。ただ親父が好きで、でも、親父や他の王妃たちの想いにも目を背けられなかったから、「ハーレム」という手段を取った。別に珍しくもない。他の王国でもよくやってることだ。

 

でもその結果が、今の王位継承戦争に繋がった。

 

優しすぎたんだ。モモ様も、親父も、皆んな。

 

でも、王座は違う。一つしかねぇ。欲しい奴にとって、他の奴は全員敵だ。

 

まぁ親父の世代が、そんなことまで考えて地球の高校生活送るわけがねぇ。これは俺たちの問題だ。

 

俺も巻き込まれた以上、覚悟決めねぇとな。

 

とりあえずアッシュはお護りする。例えどんな目にあっても。

 

珍しく崇高な思いで、俺は昨日のフライパンを握りしめた。

 

 

しっかし、昨日のフライパンか……

 

た、確かこの上にぜ、全裸のアッシュが跨って…………

 

ムラムラしてきたwww

 

いや、このフライパンはね、電圧式で、底だけちょっと鏡みたいになってるんですよ。だから……

 

あの時ちょっとだけですよ、本当にちょっ、とっ

 

映っ

 

あああああああーっ!

 

し、しかもよく見たらこ、ここ濡れてるぅっ!? まさか……いや汗だよ汗。そうに決まってる!いやにおったりしませんよ分かんないしさすがににおいは…………

 

 

フォオオおおおーーーう!!これ絶対アレだ!これ絶対アレ……

 

やっべぇっ!

 

こんな状況、学生時代の親父にとっては日常茶飯事だったらしいが……。

 

親父はどうやって耐えられたんだ!?ぶっちゃけ結構見てきただろ!!アレとか、アレとか!しかも見ただけじゃねぇよな!

 

唯様とか

「そんなこと一度もないわよ!馬鹿じゃないの!!」

って言い張ってたけど絶対嘘だよな!!

 

春菜様も

「ちょ、ちょっと、見られちゃったことはあるかな///」

とか言ってたけどもっとやらかしてるよな!!

 

ヤミさんにしつこく聞きに行った猛者が行方不明になってるけど、あのヤミさんにもやったってことだよな!

 

コックの同僚は、俺のお袋に聞いたらゴミ見るみたいな目で見られたって言ってたけど……。

 

「ラッキースケべ」

 

この能力こそ、宇宙最強だ。

 

親父すげぇ!!

 

俺には絶対無理だ!こんなの耐えられない!!

 

 

…………

 

「バリアー万歳!!」

 

俺はフライパン片手に、パンツを下ろした。

 

宇宙人だってこういうことしますよ!!

 

みなさんには、僕の家族構成でもお話ししますね 笑

 

俺たちの親父であり、銀河の覇者、現デビルーク王のリト様は地球人で、子どもは養子の俺を合わせて11人います。(ただ一人、一つの体に男女の別人格が共生している奴がいるので、それを含めると12人です)。

 

娘は3人で、あとは皆息子です。

 

親父は11人と結婚したので、皆一人っ子です。その内デビルークの王族は3人だけで、アッシュことプリンセス・アシュラ、そして昨日の話に出てきた2人の弟、ハンことプリンス・ハンニャとビシャことプリンス・ビシャモです。

 

あとは王宮に仕えたり、地球で暮らしたり、他の惑星の王族だったり、行方不明だったり、追われてたり(俺www)します。

 

ハンといえばデビルークきっての武闘派で、親衛隊を手篭めに出来たのも頷ける。噂では情報局の局長とも親しい間柄らしい。

 

実は知能派のビシャが怖いと言う人もいますが……ハンに暴れられた方が犠牲は大きいでしょうね。

はーぁあ……めんどくさ、っ

 

あーーーー

 

ガチャ

「ザックー、おはよう。今日学校とか……」

 

…………

 

「おまえ、そのフライパン……」

 

そう言ったアッシュの顔が青ざめる。

 

まずい!昨日のこと覚えてる!

 

「いやいやいや別にフライパン見て興奮とかしてねぇし!昨日の今日ですから、またなんか襲ってくるかもしれないし!備えてただけだし!何ですか!?」

 

アッシュの視線が殺気を帯びる。

まだ寝起きで髪も整ってませんが、勘は冴えている様です。ダメですね。こういう男の嘘って、女性にはぜっったいバレます。

 

プリンセスの強烈な舌打ちッ!

 

ズカズカと部屋に入るなり、俺の手からフライパンをふんだくる。

 

「これは私が預かる」

 

そして……

 

こ、殺されるぅ!

 

「も、申し訳ありませんでしたぁっ!!」

 

俺は潔く頭を下げた。

 

 

「結婚してくれるなら、返してもいい」

 

 

 

……あれ?

 

「それまではダメ!朝ごはんも私が作る。マズくても我慢して食えよ」

 

アッシュが顔をまっかにして、足早にドアへ戻る。

 

そしてちょっと涙ぐんだ横目で睨みながら、

 

 

 

 

「エッチ」

 

 

バタン!

 

出て行った。

 

 

 

これ以上の生殺しには耐えられん。

 

俺はさっさと制服に着替えて、学校に行くことにした。

 

(アレは公園のトイレで処理しよう!)

 

ガチャリ

 

玄関のドアに手をかける。

 

「行ってきま……」

 

「ザック、朝ごはんは?」

 

「…………」

 

「食べるよね?」

 

そうだった……。

 

「アッシュ、お料理のご経験は?」

「ぜんぜん」

 

やっぱり。

 

フライパンを取られた俺は、姫君の料理に任せるしかなかった。

 

ー午前7時40分 通学路ー

 

アッシュの朝飯は、思ったほど酷くはありませんでした。たぶん地球ではダークマターが入手困難だからでしょう。あれ入れないだけでも大分違います。

 

朝の時とはうって変わり、アッシュは満面の笑みで俺を送り出してくれました。服装もジャージではなく、地球の可愛らしい服着てましたね。

 

そう、今日は学校なんです。

 

しかも新学期です。4月です。

 

(もう高二かぁ……)

 

進路のこととか、なんも考えてねぇや 笑

 

「おはよう、結城くん」

 

後ろから、馴染み深い声がする。

 

「おぅ、西連寺」

 

こいつから挨拶してくるなんて珍しい。

 

「あのさ、結城くん」

 

西連寺が、酷く悩んでるように俯く。目にくまができている。

 

やべぇ、こいつ寝てねぇな。

 

「昨日のことなんだけど」

 

「おーっす、季虎ぁ!」

 

ズニュ

 

「いった!」

 

空気読まずに西連寺を羽交い締めする奴が一人。

 

「あー、おしい。乳首はもうちょい下か」

 

これ言ってくる奴いるよな。

 

「結城も久しぶりぃ」

「一昨日会ったばっかだろうが」

 

こいつはクラスメートの妻村です。

 

こいつが来たということは……

 

プス

 

「フンッ!」

「ぎゃああ指が折れる」

 

指野もいます。いつものごとくカンチョーしてきたので、ケツ筋でへし折ってやりました。

 

「だから俺にカンチョーは出来んと言うておろう愚民め」

「くっそぉー後ろから来たのにどんな反射神経してんだよお前、宇宙人かい!」

「宇宙人があんなうまい飯作れるはずねぇだろー」

 

妻村のツッコミに指野が笑う。俺のことを知ってる人間は西連寺だけです。いまのところは、ですが。

もう宇宙人なんて当たり前の世の中なんですが、俺の場合はちょっと、ね。

 

「結城、お前今日くらい教室来いよ。新学期だぜ」

「あー、おんなじクラスだったらな」

 

俺は本来学食のコックで授業には全然出ませんが、この星は高卒のが何かと有利なんで生徒として登録してもらってます。なんでも俺のメニューで東大行ったり、運動部で優勝したり、難病治したり、更生したりする生徒が続出したらしく(だいぶ盛りました)、それでこの特別待遇です。

 

結構なことですが……飯で変わるなんて地球人はピュアすぎる。

 

宇宙全部がこれだけ純粋だったら、俺も胸張って教室に出入りできるんだがな。

 

俺も、アイツも……アイツも。

 

まぁ授業なんて受けなくても全部解ってますが。

 

「今年も体育だけはよろしくな。宇宙人圧倒する人間なんてお前しかいねぇ」

「また食いに行くぜー」

「おーう」

「季虎先行っとくぞー」

「クラス一緒だといいなー」

「…………」

 

いい奴らだ。

 

二人を見送ってから、俺は西連寺に向き直った。心ここに在らず、って感じだ。理由は聞かなくてもわかる。

 

「アッシュだろ?」

「え?」

「プリンセス・アシュラだよ。昨日俺といた奴。

 

お前の妹だ。お袋は違うけど」

「……あの子が、結城くんの言ってた」

「ああ、地球に来ちまった」

 

こういうことは先に伝えた方がいい。王宮は極秘とかほざいてるが、無視だ。

 

「西連寺!」

 

俺は西連寺の細身な両肩に手を置いた。久しぶりにマジになる。

 

「一回の失恋しか知らん童貞が教えてやる。叶わない恋もある」

 

「…………。

お前はアシュラさんと付き合ってはいない、ということか?」

 

避難するような目で、親友が問いかける。

 

「ああ。面倒くせぇことになるし、俺には他に……、忘れられない奴がいる」

 

「そのこと、アシュラさんは」

「…………」

 

ダメな俺は何も言えなかった。

 

「お前!」

 

突然、西連寺は俺を振りほどき、構えをとった。怖い奴。すげぇ覇気だ。

 

「落ち着け、俺も自分でよくわからねぇんだよ」

「そんなわけあるか!!」

 

ビシィッ!

 

全身に負荷がかかる。くそ、こいつの念力……洗練されてきやがったな。

 

「あの子は……アシュラさんは、お前を想って地球まで来てるのに…………。そんな中途半端が許されるか!」

 

服が強張る。

一歩でも動けば内臓がぶちまけられる。

 

(こいつ、キレたら手に負えねぇからな)

 

チィッ

どうしたもんか……

 

ちょうどその時、彩南によくいる某パパみたいな犬が歩いて来た。

 

チャンス!

 

俺はカバンの金具を燃やして、上手いこと食材の鶏肉をちょっとこぼしてやった!

 

こっち来い、犬!

 

クンクン

 

「ばう、ばう!」

 

「ヒイッ、犬ぅ!」

 

不意を突かれ、西連寺の念力が消える。犬飼ってる奴がビビってんじゃねえよ。

 

「そんなんじゃモテねぇぞ」

俺は犬を抱き抱えて笑ってやった。

 

「……申し訳ない。取り乱してしまった」

 

西連寺は歩き出しながらも、またしょぼくれている。

 

「まぁ地球人にはわかんねぇよ。スケールがでかすぎてな」

 

そう言って俺は誤魔化した。

 

でも、そうも言ってられない。

 

西連寺が本気でアッシュを愛するなら、婚約者候補ということになる。アッシュの気持ちに関わらず、次期デビルーク王候補者になるわけだ。

 

そうでなくても西連寺は、デビルーク家ではないものの、王の血を引いている「息子」の一人だ。今までは本人が蚊帳の外だったが、こうなった以上、他の候補者から目をつけられるのも時間の問題になった。

 

「僕の母さんは、これで良かったのかな……」

 

ぼそっと、西連寺がつぶやいた。

 

「デビルーク王……僕らの父さんは、ちゃんと母さんを愛したんだろうか」

 

「…………」

 

まぁ、そう思うのが普通だ。深く考えようとしない俺よりマシです。血が繋がってる人は悩むでしょうね。

 

西連寺春菜

 

親父が本当に愛したのは、この一人だった、そんな噂がある。お袋もいつかそんなことを言っていた。

 

何で、二人だけで地球に暮らさなかったのだろうか。

 

「なぁ、結城君」

 

ふいに西連寺は、決意をこめた顔で俺を見た。

 

「君のご両親は、僕たちの父さんと、その妹なんだよね」

 

「あ、ああ」

 

「じゃあ、そういう選択肢もあるってことだ」

 

ん?

 

まさか……

 

「俺、諦めないよ。

 

アシュラさんと結婚する!

 

例え血が繋がっていようともな」

 

やっぱそうきたかーーーーー!

 

親友だからって、ちょっとこいつに色々話しすぎましたね。

 

「その時は、

また組手でも」

 

たくましいガッツポーズしやがった。こいつ、意外と強引だな。

 

やっぱアッシュの顔見てから、何かしらの影響はあるみたいですね。静かな暴走、といったとこでしょうか。

 

「いや、朝から不快な思いをさせて悪かったね。

じゃあ、また会おう。あのゲーム以外なら、いつでもお相手するよ」

 

気がつけば正門前です。俺は西連寺とも別れて、一人職員更衣室へ向かいます。

 

しかし、やっぱ西連寺はイケメンだな。見た目も性格も、デビルーク兄弟よりよっぽど王子っぽい。「テニス」やってるし 笑

 

 

もうあいつが次期デビルーク王でいいんじゃないか?

 

まぁでも、アッシュの気持ちを考えないとな……

 

 

そんなこと思いながら、俺は自分の主戦場である食堂の厨房に立っていた。

 

「結城ぃ〜!」

勢いよく戸が開いて、指野が駆け込んでくる。

「よう指野、まだ始業式前だろ」

「それどころじゃねーよ、特大のニュースだ。いいやつと悪いやつ、超すげぇやつの三つ」

「順番に教えてくれ」

 

指野は彩南高一の情報通で、どっから集めてくんだ?ってレベルの質と量を揃えている。いつか俺の出生についても調査してもらいたいもんです。

 

「全部クラス替えのことだ。まず俺ら4人、俺とお前と西連寺と妻村はみんな同じクラスだ。あ、あと猿山も。それが一つ。そのかわり、あの古手川龍も一緒らしい。あいつと季虎がぶつかったら彩南高は崩壊する。だからなんかあったら俺はお前に救援を頼む。それが悪い一つ」

 

ああ、古手川ってあいつか。彩南でも札付きの不良です。直接見たことはありませんが、話聞く限りそんなに悪い奴とは思いませんけどね。家族想いらしいし。あと不良の衝突なんかなくてもこの学校は十分崩壊の危機です。そうです、俺のせいです。ごめんね。てへぺろ。

 

「で、目玉は?」

「聞いて驚くなよ」

 

指野は息を整え、眼鏡を外した。

 

何で眼鏡外すんだよ 笑

 

 

「すっっっげえ可愛い転校生が来るらしい」

 

 

ふぅ、なんだ。

 

その手の情報ほど期待外れなものはありません。なんせ俺は「チャームの能力」すら効かない面食いですからね。人気女優の顔面だって大したことないですよ。

 

アッシュ以外で可愛いと思った娘は……二人ぐらいかなぁ。

 

あ、王妃は全員美人ですよ。おばちゃんとは思えないくらいです。

 

まぁとりあえず、話にのってやりますか。

 

「どんくらいだよ、それ」

 

「おう」

 

 

「あの生徒指導部の鳴岩が」

「ふむ」

 

我が校最恐の先公だな。

 

 

 

 

「証明写真見た瞬間」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶叫してシ◯ったらしい」

 

 

 

 

 

 

あああああ?

 

 

 

「そういえば始業式の前にまずうちのクラスで紹介があるんだった!

こうしちゃいられねぇーっ」

「まて指野、行くなッ!それぶっちぎり最悪のニュースだぞっ」

 

いそいで彼を追いかけようとしたが

 

遅かった。

 

もうすでに、俺は敵の罠にはまっていたらしい。

 

指野が厨房を出ていった瞬間、

 

ズダン

 

何かに足を取られ、俺は転がった。

 

閉まるドア。

閉まるカギ。

 

血だらけの足に、絡みつく鉉。

 

「これ……ナスか?」

 

俺が用意した食材だ。生きてるみてぇに締め付けてくる。そして鉉の先には包丁がくくりつけられていた。

「くそっ」

俺の脚を斬り落とす気かっ。

 

背後から息遣い。

 

(誰だ……?)

 

肉が床を這い回り、くっついて、やがて……牛、馬、豚、猪、生前の姿に戻ってゆく。

しかも猪はギガイノシシっつー超危険な宇宙動物。

 

そいつらが口を開けて……

 

「お前が殺した」

「お前が殺した」

「この町から出て行け」

「殺し屋め」

 

「ここはお前の居場所じゃない」

 

何者か知らんが、悪趣味な真似しやがる。

「まだ人殺しはねぇっつの」

 

しかし、どうする。

 

両脚を拘束されている、この状況で撃てる技は……

 

パンチ 座ってるから無理

グランド 敵は一体じゃないから無理

ブレス 火を吹くことはもちろん出来ますが、威力が低すぎる。あれは広範囲をじわじわ燃やす技で、こんな密室でやったら俺も巻き込まれます。

 

(やっぱ飛び道具しかねぇよな……)

 

よし、

あれしかねぇ!

 

俺は足をバタつかせてなんとかズボンとパンツを下ろした。

そうです。あの「穴」を使います。今日は朝から下ネタばっかですいません。

 

仕方ない。そんなに食われたくねぇなら、食材は諦めてやりますよ。

 

ドドドッ!

 

ギガイノシシ(以下ギーちゃん)の猛進。

 

俺は、ちょうど足に絡まった荊棘がギーちゃんの牙に引っかかるように、どうぞいらっしゃい、といった感じで両足をあげた。

 

突撃してくる豚を、股開いて受け入れる俺wwwなんて恥ずいポーズwwwお袋が見たらドン引きしそうです。

 

ブチブチィッ!

 

ちぎられる荊棘。そして

 

ドゴォッ

「ぶげぇっ!」

巨大な鼻がもろ腹に突き刺さった。ぶっ飛ぶ俺。壁に激突、皿が散乱する。

 

でも、これで両足が自由になった!

 

前ではギーちゃんが前足を蹴り、二発目の準備にかかっていた。次に食らえば、さすがに内臓が破裂する。

 

だが食らうのは一発だけだ。

 

「後悔させてやる、畜生め」

俺はギーちゃんのタックルでガスが押し出された腹に思い切り力を込めた。只今俺の肛門は世界一凶悪な火炎砲となっております。

 

喰らえっ

「っそれーーい!」

 

ブッブボボボボボアアアアアァーーーーンン!!!

 

俺は思いっきし、放屁した。

 

俺の有害ガスが、火炎を纏い、ギーちゃんたちを包み込む。

 

「ブヒィィィイイッ!!?」

 

ドサッ

 

大事な食材は全部、めでたく悪臭を放つ丸焼きになりました。もう使いようがない。コックが食堂で一番やっちゃいけないことを仕出かした結果です。なんか自分が泣けて来た。

 

俺はムシャクシャしてドアをぶっ壊してから、びっこひきながらも全力で新しい教室まで走った。

 

もうとっくにアッシュは教室に入ってるでしょう。マスクを着けてても、俺を襲ったのと同じ奴が、何とかしてマスクを無理矢理外してるに決まってます。

きっともう男子生徒はチャームの能力にやられて、とっくに暴走してるだろうな。

 

仕方ねぇ、そん時はアッシュだけ連れてズラがるか、全員ぶっ飛ばすだけだ!

 

ガラガラッ

 

教室の扉を開ける。

 

目の前に広がる光景は、俺の予想からはかけ離れていた。

 

血と埃で、赤黒く染まった壁。

 

隅で震える女子たちの、啜り泣き。

 

床一面に転がる、ピクリとも動かない男子たち。

 

そして教卓には、どういうわけか傷一つなく眠る、アッシュの姿。

 

「来たか、結城ザク郎」

 

なんだ、あいつは。

 

「感謝しろよ。俺がこの転校生を守ってやったんだ。こいつらの暴走からなぁ」

 

真ん中にただ一人、立っている生徒がいる。

 

思い出した。

こいつは昨日、暴走族の中心にいた奴だ!!

 

「勘違いするんじゃねぇぜ。俺はただ風紀を守る為にやっただけだ」

 

まさかこいつが……

 

「こんな女子と同棲してやがるなんて、

 

『ハレンチ』だよなぁ?お、ま、え」

 

この男が……

 

「…………消えな」

 

 

こ……

 

こ…………

 

 

 

 

 

「コケ川?」

「古手川だ!!!」

 

to be continued


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