ToLOVEる - FIRE GENERATION -   作:改造ハムスター

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第13話「対メモルゼ防衛戦線」

ー西連寺宅ー

 

「はぁ……アシュラさん」

 

「思い悩んでいるようじゃな、季虎」

 

「うわぁっ!む、村雨師匠」

 

「念力は使いこなせるようになったか?」

 

「はい、少しずつではありますが」

 

「そうか。ならば明日、実戦で使ってみるといい」

 

「はぁ、師匠、明日ですか?」

 

「この惑星に危機が迫っておる。その発端は……宇宙の姫君じゃ」

 

(!アシュラさん……)

 

「お主の母親には、わしの娘も仲良くしてもらったからのぅ。お主が行くなら、わしも協力する。明日の朝、彩南町の中心部に行くのじゃ

 

いいか季虎。いかなることが起ころうとも、心を落ちつけ。念力を暴走させるようなことは」

 

ばうっ!

 

「ひぃっ!い、犬ぅ!!」

 

ピシッ

 

ドカーン!

 

「し、師匠、家を壊さないでぇーーっ!」

 

 

ー古手川宅ー

 

カリカリカリカリ……。

 

「昨日はアイドル活動で遅刻。一昨日は急用で早退。その前は居眠り。その前はジャージで登校……、

 

 

ったく、校則をなんだと思ってやがんだ。あいつ!ムカつくぜ。た、確かに俺のせいで、結城が逮捕されたのは悪かったが……、そ、それも、お前の顔がハレンチすぎるからだぞ!アッシュ、お前が悪いっ!!こんなに俺を悩ませやがって。だいたいあいつのせいで風紀が乱れまくって、勉強にも集中できやしねぇ。この間なんか、アホの妻村と補習まで受けるはめになった。屈辱だ。こりゃ制裁が必要だな……。

 

『おい、アシュラ。お前のせいで試験に落ちたぞ』

『そ、そうなのかよ龍。じゃあ今日、私の家に来なよ。一緒に勉強しよう』

『え、い、いいのか』

『大丈夫。もうザックの奴も、家にいないしな……』

『……アシュラ?』

『なぁ、龍。私、寂しいよ』

『アシュラ……』

『今日だけじゃなくて……(上目遣いで)毎日、来てくれる?』

『アシュラっ!!』

『龍っ!!私、やっと気づいたぁっ!うわぁっ、はぁあっ!あっ!』

 

はぁああっ!!すあっ、はんん!あっ!ほぁあっああ!」

 

「まうまうーーっ!!」

 

「うわっ、エルメス!」

 

「まうー」

 

「どうした、ラーメンが不味かったのか?俺に何でも言っていいぞ」

 

まう!まうまう。

 

「メモルゼ星?インベーダー?どういう……」

 

まーう!まうまうっ。

 

「何!彩南に、別の婚約者候補が!?」

 

うまー。

 

「ア、アシュラが、連れ去られるのかよ…………」

 

まうっ!

 

「くっそおおおっ!アシュラ!これは、べ、べつにお前のためじゃねぇぞ!クラスメートの危機を見逃すわけにはいかねぇからな、それだけなんだからな!ちくしょーー!」

 

 

ー翌日ー

 

天気は快晴。侵略軍にとっては最高の日和です。くそったれ。

 

午前9時30分。俺は彩南ステージに徒歩で到着した。箒を担いで、殺気をみなぎらせながら町を歩く俺の姿は異様だっただろう。

 

でも、それも仕方がない。今日初めて、地球が戦場になる。

 

ザーーッ

 

無線が繋がる。

 

ガチャ

 

「……俺だ」

『ザク郎殿。あと一駅で国会議事堂に着きます』

「よし、自衛隊の要請頼んだぞアーサー。敵メモルゼの救援は間違いなく来る」

『お任せください。それでは、ご健闘を』

「ああ」

『……あ、あれぇ?ここ国家議事堂前じゃ……あ、路線間違えた。ここどこ』

 

ブツッ

 

ツー

 

………………。

 

あいつ、大丈夫か?

 

ザーッ

 

ガチャ

 

『配置に着いたヘア』

『……了解』

 

 

おい!もうすぐ開演だぞ!

Hollyちゃーん!

いやそれより、ついにAshちゃんの顔が見れる!

あれ、なんか空が暗くなった?

 

 

客がざわつき始める。

 

すでに、敵艦は迫っているようだ。

 

俺は足早に舞台へ向かった。今は男の姿だ。

 

「みなさん!こんにちはーー。Hollyだよーっ!」

 

Hollyちゃーーん!!

 

ステージに姿を現したホリーの姿に、観客が沸き立つ。

 

「そしてぇーーっ(チッ!チッ!)

 

私のお友達、Ashちゃんでーーす」

 

新人を迎える、派手な演出が始まった。

 

うおーー!Ashちゃーーん!

早くベール外してぇーっ!

どけよてめぇ、見えねえだろっ!

結婚してくれーー!

 

(ベール?)

 

なるほど、アッシュは今日、いつものマスクじゃなくてベールで顔隠してるのか。

 

急がないと、時間がないっ

 

「すみません。警備の方っすか?」

「なんだこんな時に!」

「俺アルバイトで舞台の掃除頼まれてんすけど、従業員通路って」

「あっちだ、早く行け」

「どうも」

 

よし、完璧だ。

 

これで間に合うッ!!

 

ダダダダ

 

裏口から舞台へ駆け上がる。

 

タン!

 

午前10:00。

 

見えた!

 

暗い舞台の隅、今まさに準備を終え、大衆の前に進み出んとするアッシュの背中……よし、まだベールは外してねぇっ!

 

「アッシュッ!」

 

ベールをしたプリンセスが、ゆっくりと振り返る。

 

「…………ザッ……ク?」

 

「アッシュ!」

 

 

「ざっくん!!」

 

どしっ

 

予想外のタックルを死角から受け、俺はあと一歩のところで転げた。

 

「ホ、ホリー?」

「ざっくん、嬉しいっ!!私のこと、見に来てくれたんだ!!」

「いや、違う。とにかく今は離れ……」

 

ハッ!

 

アッシュが、通夜見たいな顔して俺を見ているッ!!

 

「……ザック……」

「いや違うんだアッシュ、これは」

 

その時、

 

 

ピシィィイーーンン……

ドゴォーーーン!!!

 

 

空が裂け、極太の光線が大地を抉ぐる。

 

来た!

 

メモルゼ戦艦の砲撃か!!

 

ギャーーッ

何じゃこりゃあーっ

助けてぇーっ

 

客席はもう、ステージどころじゃなかった。

 

 

 

ヒュンッ!

 

さらにもう一つの影が、

 

「アシュラちゃん!!」

 

ダンッ!

 

ステージに降り立つ。

 

「お前……ホーレンちゃん?」

 

アッシュが、驚いたように呟く。

 

「ああ、アシュラちゃん」

 

ばっ!

 

そいつ……ホーレンは、急にアッシュのベールを剥ぎ取り、顔を近づけた。突然のことに怯えるアッシュ。

 

俺はそれを見て、なぜだろう。初めて、こいつを本気で殺してやりたいと思った。

 

「ふふ……やっぱり君は、いつ見ても美しい!僕の天使だ!!

さあ、僕の船へおいで。一緒に宇宙へ旅立とう!」

「ちょっ、勝手に……、

ザック!助けて!!」

 

「アッシューーッ」

 

ガバァッ

 

「だめだよ!!ざっくん」

再び、ホリーが抱きついてくる。

「アシュラちゃんなんかほっといて、私と話そうよぉ〜っ」

 

「ははは、さらばだ結城ィッ!」

 

「待てこのやろぉーーっ!」

 

身動き出来ないまま、ホリーの下から叫ぶ。だがホーレンはアッシュを抱き上げたまま、ジェットボードで宙に消えた。

 

やっべぇ……

 

ホーレンに先越されちまった。

 

「ねぇ……ざっくん。なに考えてるの?」

 

何も知らないホリーが、俺の腕を掴み、顔を覗き込んでくる。

 

「せっかく私に会えたのに……まさか、

 

アシュラなんかが気になるのぉ??」

 

腕を握る指に力が入る。彼女の袖口から、傷跡のある手首が見えた。

 

くそっ。こんなことしてる場合じゃないのに。

 

 

「ざっくん……忘れてないよね。ざっくんが、私のお城で迷子になった時、私が助けてあげたこと」

 

「あ、ああ……」

 

「そしてその時に、私と……

 

結婚してくれるって、言ってくれたこと」

 

「え、えぇ、そんなことあったかな」

 

「言ったよね。私がざっくんにずっっと耳元でプロポーズしてたら、2863回目によだれ垂らしながら「うん!結婚するぅっ!」って」

 

ああああ思い出したくねぇえ!

 

あれはまさに地獄だった。二度とこいつの城には行かないと誓ったッ!

 

「それなのに……、

ねぇ、まだアシュラと住んでるの?」

 

ホリーが、焦点の定まらない目で俺を見つめ、そして、

 

なぜか、俺の服を探り始めた。

 

 

「……今日は、包丁持ってないんだね」

 

 

いやだ死にたくねぇ!

 

「じゃあ、やっぱりこれだね」

 

そう言って、ホリーは俺の上で手榴弾を取り出し、

 

ピンを引っこ抜いた。

 

「ばっ!お前なにやって」

「へへ、抜いちゃった」

 

ホリーはさも当たり前のように、その爆弾を俺の腹の上に乗せ、そしてその上に、自分の腹を密着させ、爆弾を挟み込んだ。

 

「力緩めたら……爆発しちゃうね」

 

んんっ……

 

吐息とともに、ホリーが腰をくねらせ、体を擦りつける。

 

「ねぇざっくんっ……死にたくなかったら、もっと私とくっつくしかないよ……、そう、「ひとつ」になっちゃうくらいねぇっ、んああっ!」

 

心なしか、ホリーの下着が少し、ずれてる気がする。

 

く、くそっ、こいつ本気か!?

 

「あはぁっ!こんなにみんなの人がっ!私目当ての人がいっぱい来てる前でっ、私、ざっくんにこんなことしてるの見られちゃうっ!」

 

一筋の雫が、ホリーの太ももを伝う。

 

や、やばいっ!俺まで変な気分に……

 

「いいよ。私、ざっくんになら、どんなに、は、恥ずかしいことでも、出来るからっ。ずっと、それを待ってたんだからぁっ!ざっくん、お願い!ざっくぅん!!」

 

うわぁ、駄目だぁっ!

 

何が駄目なのかもよくわからなかったが、俺は限界を迎えていた。

 

その時、

 

 

「こらぁっ!ステージで何してやがんだっ!!」

 

スタッフらしき者の声に、俺たちは驚き、つい、

 

腰を離してしまった。

 

 

カチッ……

 

「「あっ」」

 

 

ボウンッ!!!

 

 

「うわっ!」

 

 

スタッフの悲鳴が、煙ごしに聞こえる。

 

 

「ホリー、俺たちは死んだのか?」

 

 

「ううん、着衣消滅ガスと間違えた」

 

 

チャンス!

 

俺は全裸のまま煙から飛び出した。

 

「待て!不審者め」

 

スタッフを振り切り、舞台裏に飛び込む。

 

バチチッ!

 

俺は慣れた手つきで、自分のこめかみにダンジョくんをぶっ放した。

全身が変貌し、夕崎ザラになる。

 

でも裸じゃ話にならない。

 

「確かポケットに……」

 

よし、あった!

 

簡易ペケバッジ!

 

「ちょっと借りるぜ、アッシュ」

 

あいつのことだから、「あの」コスチュームも入ってるはず……!

 

 

「不審者め、どこにいる、出てこい!」

 

 

「不審者なら爆殺しちゃいましたぁ〜っ!」

 

俺はアッシュのペケバッジに実装されていた、マジカルキョーコの衣装を着て、スタッフの前に出た。

 

「き、きみは確か、夕崎ザラちゃん?」

 

「なんでもかんでもっ、

 

燃やして解決!」

 

 

一時期は二度と言わないと誓った言葉が、保身のためにいとも簡単に出て来る。

 

俺も、もう戻れないのかな。

 

 

「な、なんでいきなりこんなところに」

「サプライズ出演ですよ。聞いてませんでしたぁ?」

「そ、そうなんだ」

「それじゃあっ」

 

俺は舞台裏にかけられた「ブルーメタリア」と書かれている衣装をひっ掴み、裸のホリーの元に走った。

 

「ホリーちゃん!」

「あ、あなたは……?」

「始めまして、私は……、

 

ミラクルクロー!」

 

我ながら適当だな……。

 

「とりあえず、これを着て!」

「え?あ、これ、ママが着てた……」

「ブルーメタリアだよ!今日のステージは、あなたのお兄さんにアッシュがさらわれて、私たち2人で助けに行くって設定なの!」

「そ、そうなの?」

「そう!この爆発とかも演出!もうすぐメモルゼ星の戦艦も来るよ」

「ほ、本格的だね……」

「私たちは本当は宿敵だけど、今日は協力して!」

 

「う、うん。わかった。

 

ねぇ、いまアシュラちゃんのこと、アッシュ、って言った気がするけど」

 

ギクゥッ!

 

「その呼び方って、ざっくんだよね?ねぇ、何でざっくんのこと知ってるの?はっ、そういえばざっくん」

 

「さぁ、早く行こうっ!」

 

「うわぁ、ま、待ってよぉーっ!」

 

ステージを飛び出し、箒でホバリング待機する。

 

「さあホリー、早く後ろに乗って!」

「え、こ、これに乗るの?」

 

ホリーが戸惑いながらも、俺の後ろに跨る。

 

これ、アッシュに見られたら嫌だな……。

 

まぁ今は「女同士」だし!非常事態だし不問だろ!

 

「いくよっ」

 

ドシュッ!

「キャァッ!」

 

箒からフレアをぶっ放し、俺たちは大混乱の観客の頭上を飛び上がった。

 

 

「ザラちゃん、私、ジェットコースターとか苦手で……」

ギュウッ

 

箒の後ろに乗せたホリーが、俺の背中にしがみついてくる。

(うぉっ、ホリーの胸が背中にぃっ!!)

 

ははは、自転車の2ケツで舞い上がってる地球のリア充どもめ!見ろ、俺の勝ちだ!

 

「イヤーー!ザラ、前っ!」

「えっ?」

 

ガツン

 

「うわーーっ!」

 

調子に乗っているところで鉄塔に肩をぶつけ、箒から振り落とされる。

 

ボシュウー

 

急いでジェットブーツで鉄塔を蹴り、空の箒を掴む。

 

「もう!びっくりするよぉーー」

「すまん」

 

いかん、馬鹿なことしてる場合じゃなかった。

 

ザーッ

 

俺は無線をモジャックに繋いだ。

 

ガチャ

 

「なんだヘア?」

「すまん、失敗だ。アッシュがホーレンにさらわれた」

「なにやってるんだヘア!お前が先を越されたら」

「作戦変更だ。俺は今からホリーと一緒に戦艦へ乗り込む」

「ひ、1人でヘアか!?2000人がいる戦艦の中へ」

「だからメモルゼの王女を盾にすんだよ。さすがに相手も手が出しにくいだろ」

「兵士じゃない、しかも女ヘア。戦いに巻き込んで、危険とは思わんのかヘア」

「死なしゃしねぇ。それに、相手も王女をさらってんだ、これで平等だろ。これが闘いってもんだ」

「…………やっぱりお前は、異星人ヘア」

「……どういうことだ。お前もじゃねぇか」

「そうヘア。お前は結城リトの子どもの中で唯一、人間の血が通っていない。見た目は地球人でも、考え方は根本的に違う……残忍で、イかれた異星人ヘア。わしよりも」

「嬉しそうに言ってんじゃねぇよ」

「当たり前ヘア!まずこっちに救援に来いヘアー!!」

「了解」

 

ブチッ

 

「ホリー!聞いてた?」

 

俺はホリーに振り返った。

 

「風の音しか聞こえないよーー」

「よかった!ねぇ、まだ爆弾持ってる?」

「いっぱいあるよ」

「よし、2人で盛り上げよう!」

 

俺たちは、モジャック将軍たちのもとへ飛び立った。

 

to be continued


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