ToLOVEる - FIRE GENERATION -   作:改造ハムスター

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第9話「ブラックホール vs メテオ」

「俺が西連寺と古手川をやります!アッシュはサポートを!」

「やるんじゃなくて、とめるんだろ?」

「はいはい」

 

黒い調理服と白いジャージが校庭を爆走する。ペケで修復はバッチリです。俺たちは西連寺軍と古手川軍がぶつかる、粉塵の境目に突っ込んだ。

 

「アッシュ、飛んで!!」

 

「おりゃあーーっ!!」

 

金切り声とともに、ピンクの頭が空高く飛び、拳を構える。

 

「せりゃっ!」

 

ドガッ

 

ガァーーンン!!

 

時間差でクレーターが出現。早くも数十人が空中でリタイアする。

「ザック!ちょっと力が戻ったみたい!」

 

小さな拳でガッツポーズするプリンセス。デビルーク人にしては非力だと思ってましたが、そんなことはありませんでしたね。

 

「アシュラさん!」

「アシュラァッ!」

 

中央で西連寺と古手川が距離を取り、身構える。

 

だがアッシュは作戦通り、俺の背中に隠れた。

 

「やぁっ!」

 

アッシュが雑兵を蹴散らし、周囲にに円形のフィールドを作る。

 

「俺が相手だ、西連寺、古手川。正気に戻るまで、王女には指一本触れさせねぇっ」

 

「結城君、ついに勝負の時が来たな!」

「テメェ、世話役だからって調子乗んじゃねぇぞ!」

 

西連寺がテニスラケットを引き抜き、

 

一気に後ろに下がった!

 

「受けてみろっ!」

 

パァアン!!

 

「念力集中ッ!」

 

念の込められた豪速球サーブが迫る。

 

俺は素早くフライパンでガードした。

 

バガン!

 

(嘘だろっ!?)

 

オリハルコン製のフライパンが凹みやがったっ!!

 

「オラアァアッ!」

 

左前方から、古手川の蹴りが飛んでくる。

 

ガキィッ

 

膝で受け流し、包丁の峰を振り落とす。

 

ガシッ

 

だが古手川は、俺の腕を掴んだ。

 

「校内に包丁を持ち込むのは……」

 

グルンッ

 

(ったっ!?)

 

肘の関節を回された!

 

「校、則、違反だろうがアッ!!」

 

ドグム

 

「ぐあっ」

 

横っ腹に古手川の後ろ蹴りが炸裂し、思わずよろめく。

 

ゴゥッ

 

再び迫る西連寺のテニスボールッ!

 

俺は素早くフライパンを構え……

 

「念力拡散ッ!!」

 

ズアァッ

 

(何ッ!?)

 

ボールが五つに増えたぁっ!?

 

「ッシャァッ!!」

 

ズバババババッ

 

包丁に持ち替え、全てのボールを真っ二つに斬り裂く。

 

ゴォッ

 

10個のボールが流星の様に俺を横切り、

 

ズァァアン!

 

体育館を破壊した。

 

……あいつ、自分が地球人ってこと忘れてるだろ。

 

「ハアァッ!!」

 

一瞬の隙を突き、古手川がラッシュをかけてきた。

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガ

 

ゼロ距離。突きを撃つ暇もない。肘、膝が幾度となくぶつかり合う。これが古手川龍!(星)人種の違いをものともしない格闘センスと根性は、手負いとはいえこの俺を確実に後退させていく!

 

だが、

 

これで終わりだッ

 

ゴォッ

 

ジェットブーツの力で、右足を跳ね上げる

 

古手川の脳天に

 

ドゴッ

 

かかと落とし!

 

これで気絶しない奴など地球人には

 

 

「……だいたいお前はよぉ……」

 

 

っ……!

 

倒れもしねぇっ!?

 

 

「あんなハレンチな家出娘をかくまってるなんて、

ひじょおおおーーしきだろおがああっ!」

 

ボゴォン

 

古手川のボディブロー!

「ガハァっ!?」

 

今までで一番効いた。

 

防弾調理服の上からなのに、俺は思わず膝をつきかけた。こんなの地球人のパワーじゃねぇっ!

 

 

「フー、フー」

 

 

古手川の頭は真っ赤になって、血管が浮き出ている。

 

何かおかしいぞこいつ。

 

 

「種明かししやがれっ!」

 

俺は古手川の股座に潜り、死なない程度に急所へ二の腕をぶつけた!

 

ゴン!

 

「いっってえッ!?」

 

叫んだのは俺です。

 

古手川のブツが、鋼鉄の如く固まっている!

 

ぶつけた腕がジンジン痛い。もはや武器です。とても風紀委員が持っていていいブツではない。

 

いや、それより

 

今、もっとやばいもんが、古手川のブレザーから地面に落ちた。

 

これは……花?

 

(アドレナの花か!)

 

そういうことか。

 

あの匂いを嗅げば、アドレナリンが大量に分泌されて正気を失い、痛みも感じなくなる。宇宙規模でもアッシュのチャーム能力の次くらいに効きます。古手川はこいつを嗅いだみたいです。嗅がされたのかもしれない。

 

ケンジャの花を嗅がせれば、坊さんなみに落ち着かせることが出来るのですが……

 

今持ってたかな

 

俺はさっき宇宙船から持ってきたナップサックをいじり始めた。色んなもん運んでるからもしかしたら……

 

「よそ見してんじゃねぇぞオラァッ!」

ドカッ

「ガッ!」

 

思い切り頭蹴飛ばされました。そりゃ格闘中に鞄あさってたらそうなります。

 

残念ながら、ケンジャの花は持ってませんでした。俺はチャームの能力が効かないから高を括ってたんでしょうね。まさかこんな日が来るとは。

 

かといって、アドレナの花で暴走してる奴は、正攻法では倒せない。

 

仕方ねぇ。

 

相手がラリってんなら、こっちもラリろう!

 

俺はナップサックにある空間歪曲ポケットから、デビルークハーブをぶっこ抜き、

 

近くにあったパイロンに詰め込んだ。

 

ボウッ

 

パイロンの穴から発火させ、ハーブを蒸す。

 

 

「外道には、外道だ」

 

ボワッ

 

パイロンの中で、炙られるハーブたち。

 

煙が立ち上ってきた。

 

「お前、まさか……」

 

 

ガボォッ!

 

 

俺はパイロンを

 

 

 

頭から被った。

 

 

 

 

すーーーううううううーーっ

 

 

はあああああー

 

 

 

「っぱぁーーっ!!」

 

余りの気持ち良さに俺は叫んだ。

 

ドグム

 

古手川の蹴りが胴に当たる。

 

だが今の俺は痛覚が麻痺していた。

 

「効かんッ!!」

 

そのまま古手川の胴を持ち上げ、

 

「スープレックスッ!!」

 

ドゴン!!

 

古手川の頭を、グラウンドに叩きつける。

 

古手川はさすがにピクリとも動かなくなった。

 

 

「こっ、古手川さんッ!!」

「畜生、結城、テメェッ」

 

古手川を再起不能にした俺に、避難の目が向けられる。

 

だが、俺は何の躊躇いも感じなかった。

 

ハーブの快楽は薄れ、次第に暴走する自我だけが残り始める。

 

ボゥッ!!

 

俺の周囲に、円形の炎が走り、

 

男子生徒たちは、戦慄して退いた。

 

 

「俺に……近くんじゃねぇよ」

 

 

ふいにこんな言葉が、俺の口から吐かれた。

 

 

……何だ、これは?

 

 

まるで俺の中で、俺じゃない奴が喋ってるみたいだ。

 

「地球人ごときが、……アッシュを何だと思ってやがる。ただの女の子じゃねぇんだぞ!!」

 

「ザック……」

 

遠くの方から、アッシュの怯えた声が聞こえる。

 

 

「どうせてめえらも、手に負えなくなればすぐに手放すんだろう!地球人は。

 

犬も、猫も、子どもさえも!

 

愛すると決めたものを、自分の都合で捨てる……そういう民族だもんなあ、人間はなあ!!

 

 

なぁ……?

 

 

霧崎 玄凰」

 

 

……誰だ。

 

 

「人間はみんなそうだ。お前らなんかに、アッシュを守らせてたまるか」

 

 

俺は人間が大好きなはずなのに……

 

 

「アッシュは……」

 

 

俺は……

 

 

「「俺のものだ!!」」

 

 

だ、れ、だ?

 

 

 

『私の下僕になれ、

 

結城ザク郎』

 

 

『素敵っすねぇ、マスター!』

 

 

 

どす黒い炎が、体から滲み出る。

 

 

「ああああああーーーっ!!!」

 

 

俺の中に、何かがいる。

 

 

「ああああああああーーーーーっ!!!!」

 

 

 

ドオオオオーーンッ!!

 

 

 

「な、何!?ザック」

 

「結城君!」

 

「…………」

 

 

「ザク郎殿!!」

「西連寺、古手川!彼を止めるぞ!」

「あなたは……九条先輩!?」

 

「なんだよおまえら……ザック、どうなっちゃったんだよ!?知ってんのか!?」

 

「申し訳ありませんが、プリンセス。詳しくは……我々が生き延びた後に」

 

「あれはもう結城ザク郎ではない。あれは……」

 

 

 

雑魚共が群がる。

 

 

 

「俺は……まだ諦めない」

 

 

そう言い、西連寺が九条先輩を押しのけた。

 

「西連寺、いつまでそんなことを」

 

「俺が結城君を倒す!結城君を倒して、そして、アシュラさんと結婚するんだ!」

 

西連寺が、両手でラケットを握る。

 

「テメェじゃねぇよ西連寺……アシュラと結婚して、銀河の覇者になるのはこの、俺だ……」

 

古手川がそう言ってボールを握り、身をかがめた。

 

 

「こ、こいつら、完全に王子たちに操られているッ!」

 

 

九条先輩の額から冷や汗が流れた。

 

 

「……ふーーーーっ、

 

オラァッ!!!」

 

 

ビュン!

 

テニスボールが、空高く放たれる。

 

ヒューーン……

 

ボールが落下する中、西連寺は念力を溜め始めた。

 

 

ドンッ!!

 

 

西連寺の念力で、テニスボールが静止する。

 

不気味な静寂。

 

西連寺が、両手でラケットを突き出した。

 

「念力……集中ッ!」

 

 

ギュワアアアアンッ

 

 

テニスボールがさらに収縮し、

 

やがて、どす黒い物質と化す。

 

(……ブラックホールか)

 

 

ラケットが振りかぶられ、

 

 

「念・力・拡散ッ!!」

 

 

振り下ろされた。

 

 

ドゥンン!!

 

 

ブラックホールが、あらゆるものを飲み込みながら、俺に接近してくる。

 

「ザックーーッ!!」

 

柱に掴まったアッシュが、必死で叫んでいる。今にも吸い込まれそうだ。

 

あのブラックホールに飲み込まれれば、一瞬で消滅するだろう。

 

永遠に。

 

ブラックホールの先、西連寺や古手川を操る王子たちの下劣な笑いが、見えた気がした。

 

 

「ふーん。

 

そこまでするんだ」

 

 

俺は覚悟を決めた。

 

もう、学校が潰れてもいい。

 

例え俺が二度と地球にいれなくなったとしても構わない。

 

 

だが俺は、

 

「アッシュを護る」

 

そして、「友達」として、

 

絶対に西連寺と古手川を殺さない。

 

 

「ザッ……ク……」

 

アッシュの両手が、柱から離れ、

 

ブラックホールに、吸い寄せられていく。

 

 

俺は、

 

 

転がっていた、サッカーボールを蹴り上げ、

 

 

「トランス、

 

 

『彗星』」

 

 

ゴォッ

 

 

オーバーヘッドキックを、ブラックホールに撃ち込んだ。

 

 

キィィイッ!!

 

 

サッカーボールが、ブラックホールを貫き、

 

 

フッ

 

 

ブラックホールが消滅する。

 

「なんでもかんでもぉーーーっ、

 

 

 

燃、や、し、て、

 

 

 

解決じゃあああああああああーーーーーッ!!!」

 

 

 

 

ドッッ

 

ガアアアアーーーーーーーン!!!

 

 

サッカーボールはそのまま、校舎をぶち抜いた。

 

 

ガラガラガラガラガラガラガラアッ

 

 

「こ、校舎が!?」

 

「崩れるッ!」

 

 

 

「逃げろ!逃げ続けろっ!!

 

ここからだ!」

 

 

 

粉砕された校舎の瓦礫が、空中で炎を纏い……

 

 

 

ドカン!ドガン!ドガンドガンドガドガドガドガドガドガドガーーーンドガドガドガドガドガドガ…………

 

 

 

絶え間無い爆発。

 

 

 

「聞いたことがある、ザク郎殿、いや、

 

『霧崎玄凰』の能力。

 

 

『撃つもの全て』を『爆発エネルギーに変える』……」

 

 

「それだけじゃない。ぶつけて崩れたり、弾かれたものも全部「霧崎が撃ったもの」と見なされる。

 

破片も、人間も、接触して宙に浮いたものは全て爆弾だ。

 

止める術は一つ」

 

 

「……分かってるよ……」

 

 

ザッ……

 

 

アーサーと九条先輩が武器を構える。

 

アッシュも、万能ツールを柔らかそうなバットに変えて身構えた。

 

3人とも剣士か。

 

 

(クエストみてぇだな)

 

さしずめ俺はモンスター、

 

いや、ラスボスか。

 

 

「みんな、ゲームオーバーになっちゃってくださーい!」

 

そう叫んで、俺の意識は飛んだ。

 

to be continud


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