life.9 思惑
アーシア・アルジェントは死んだ。
フリードとミッテルトは庭にアーシアの遺体を埋めていた。このまま野晒しにするのも不憫だと考えたミッテルトの提案である。完全に土で見えなくなったところで、フリードは寂しげな息を吐いた。もやもやした感情だった。
「……さて、レイナーレ達の殺害も終わったし。これからどうするっス?」
「取り敢えず暫くはこの町を拠点にする。悪魔共も俺達が逃げたと踏んでいるだろうからな」
堕天使達の死体を処理すべく、地下の儀式場に引き返すミッテルト。彼女の右手には指輪型の
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グレモリー家は混乱に陥った。重傷を負ったリアス達が運び込まれのだから。急いで病院に緊急搬送して命は助かったが、元通りとはならなかった。リアスと朱乃は涙を使用しても醜い傷跡が癒えず、小猫はショックで自室に引きこもってしまった。まだ傷が浅かった一誠は完治したものの、彼もまた立ち直れていないと聞く。
その情報が届いた時、実兄であり魔王のサーゼクスは憤慨した。溺愛する妹とその眷属達が傷付けられたのだ。しかも木場祐斗に至っては死亡である。我慢など出来うる筈が無かった。
「落ち着け、サーゼクス。下手人はもう別の町に逃げているだろう。先ずは居場所を調査するのが先だ」
「アジュカ……」
「……怒りを抑えきれないのは俺達も同じさ」
同じ魔王であるアジュカ達の説得で落ち着きを取り戻した。そして何としてもリアス達の仇を射つと決意し、自身の眷属に情報収集を命じたのであった。
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サーゼクスが躍起になって下手人を探している頃、駒王町を悪魔の一団が歩いていた。リアスの婚約者、ライザー・フェニックスだ。リアス達が襲撃されたと知った彼は先に犯人を捕らえて、グレモリー家に対して恩を売ろうと考えたのだ。故に眷属達と共に乗り込んだのである。
先ずはこの町を縄張りにしているソーナ・シトリーと合流しよう。彼女には事前に連絡がついており、駒王学園で落ち合う手筈となっている。
今後を優位に動く為にも、失敗は出来ない。やる気を燃やすライザーとは正反対に妹のレイヴェルは警戒を強めていた。日本に『灯台もと暗し』という諺がある事を思い出したのだ。敵は逃げておらず、逢えて潜んでいるのだとすれば。今も尚、自分達を監視しているとしたら。
レイヴェルは身震いした。それから眷属の中でも特に仲が良いイザベラに警戒するよう告げた。
まさか飛んで火が入るとはね