アジトである教会への道中、フリードは簡単な説明を受けた。曰くレイナーレは自分を馬鹿にした連中を見返すべく、
フリードをスカウトしたのは所有者の護衛役との事だ。
「……着いたわよ。この廃教会が私達のアジト」
「へえ、堕天使が教会暮らしとはね」
皮肉を言いながらレイナーレに着いていく。実を言うと両人共にあまり期待はしてなかった。彼女は内心で捨て駒として見ているし、フリードも宿と報酬に釣られただけ。打算で繋がっている関係ではあるが雇われた以上は仕事をこなそう。油断の無い歩みで彼は進んだ。
やがて比較的大きな礼拝堂に出た。そこで三人の影が降りた。
「お帰りなさいませ、レイナーレ様。その者が護衛として……?」
「彼はフリード・セルゼン。名前は聞いた事あるでしょう?」
新たに現れた堕天使達と話し込んでいるが、耳に入らなかった。フリードの視線は真っ直ぐ一人に注がれていた。まるで彼女以外を見たくないという風に。相手もまた嬉しそうな表情だ。自然と笑みが溢れた。
やっと再会出来たのだ。愛しい彼女に。
「久し振りだな。――ミッテルト」
ミッテルト。戦友であり、家族であり、そして世界が変わろうと唯一愛する人である。
▼▼▼▼▼
ミッテルトはアジトの案内という名目でフリードを連れ出した。知り合いだと彼女達に知れたら面倒だからだ。一応ある程度施設を回った後に改めて二人は互いを抱き締めた。再び会えた事を祝して。
涙でグシャグシャに濡れた顔でミッテルトは笑った。
「ほ、本当に嬉しいっス! もうフリードとは会えないとばかり……!!」
「俺もさ……」
リアス達と対峙した時に見せた冷酷さは何処にも無い。この時ばかりは感情が抑えきれなくなり、彼は決壊したダムのように泣いた。
暫くそうしていたが、名残惜しそうに彼女を放した。そうした時にはフリードは既に仕事モードへと切り替えていた。ミッテルトもまた気を引き締める。
「さて、堕天使達をどうする?」
「町を縄張りにしている悪魔共も邪魔っス」
最早、彼等は単なる障害物としか見ていなかった。その夜も二人は遅くまで今後について話し合った。
▼▼▼▼▼
翌日、昼間の公園。兵藤一誠は全てに絶望しきった顔でベンチに座っていた。駆け付けたソーナ達のお陰で命は助かったが、リアスと朱乃は重傷を負い絶対安静。小猫は精神を病んで部屋に引きこもってしまった。
怪我こそ完治したが念の為に悪魔稼業を休んだ彼は、こんな目に合わせた男を恨んだ。
と、シスター服の少女が眼に映る。様子を見る限り道に迷っているようだ。一誠は精神的に疲弊しきっていた事もあり、悪魔と教会の対立など頭から抜けていた。故に動いた。
「あの……、道に迷っているなら案内しますよ?」
何処までも彼は不運だった。
拘れば深みに嵌まるらしい