「フリードさん。サーゼクスが駒王町に現れたようです。監視役の魔獣が教えてくれました」
パタパタと足音を鳴らして部屋に来たのは金髪の少年だった。名前はレオナルド。曹操達と共に『
そんな彼は有する
「詳しい位置は解るか?」
「ええと……。大きな門の前に立っていますね。これは、学園でしょうか? 眷属等は見当たりません」
魔獣と視界を共有しているレオナルドは暫く眼を瞑っていたが、少しすると光景が見えたようでフリードに伝える。密偵の視界から察するに学園前で調査を行っているようだ。一人で乗り込んできたという事は、今回はあくまで事前調査なのか。業を煮やして感情任せに来た可能性もある。
しかし、これは絶好の機会だ。魔王が人間界にまで出てくる事は滅多に無いのだから。
考えた末に彼はエクスカリバーを用いての奇襲を計画した。コカビエル曰く、サーゼクスは悪魔の中でもイレギュラーな存在で本気を出せば全身が『滅びの魔力』と化すらしい。触れた相手を形振り構わずに消し去ってしまう異形。そんな化物と正面から戦う訳にはいかない。
『相手はサーゼクスか。負けてくれるなよ?』
「……当然だ。塵すら残さない」
予め倍加を限界まで行ってからフリードはエクスカリバーを構えた。譲渡の音声と同時にエネルギーを注ぎ込むと、剣は全盛期以上の輝きを放った。後はタイミングを見計らうのみ。
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サーゼクスはリアスが襲撃された日の足跡を辿っていた。躍起になり監視役には微塵も気付いていない。蝿を模した魔獣が飛び回っても、羽音すら無視して彼は町を進んだ。緑豊かだった都市は荒れ果てており、ゴーストタウンと化していた。
領主不在の隙を突いた『はぐれ悪魔』の仕業だ。まさかここまで事態が悪化するとは、と思わず自分の失策を恨んだ。それでも過去ばかりを見ても仕方が無い。自身を励まして例の廃工場に向かった。
「この場所でリアス達は襲われたのか……」
魔法で光を灯すと大量の腐敗した死体が転がっていた。蛆が生えている肉片を踏まないよう注意深く歩いていると、何かを一心不乱に貪っている音がした。野良犬の類か、腐臭に牽かれた魔獣か。魔力を集めそっと見てみた。予想通り中型の魔獣が二匹、肉を引きちぎっていた。
そのまま離れようとするも運悪く片方が振り返る。眼が合った。
啼きながら獣は突進してきた。続けて残る一匹も牙を剥き出しにして駆ける。新鮮な餌と認識されたのだ。サーゼクスは嘆息すると滅びの魔力を打ち出した。鍛えられた動作に避ける暇も無く、二匹は消滅した。野生の魔獣を屠る程度は造作もない。
時間を消費してしまった、と踵を返す。また調査の再開だ。
「念の為に他も見回ってーー」
刹那、だ。天井を巻き込んでエクスカリバーが振り下ろされたのは。聖なるオーラに倍加した破壊の能力が加算される。バチバチと轟雷に似た衝撃が辺り一帯を崩壊させた。廃工場を中心として、そこから何十キロも離れている駅前までは余裕で瓦礫となった。
原型どころか影すらも残さずにサーゼクスは死んだ。彼が立っていた場所にフリードが降り立つ。もう聖剣は元のサイズに縮んでいた。
「ほら、残らなかっただろう?」