DSフリードの非日常   作:ミスター超合金

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life.29 活劇

「部長、これで旧魔王派の残党は全て倒しました!」

 

 

「予想より早くに終わったわね」

 

 

 この世界の一誠達は残党狩りを終えた直後だった。のんきな声が廃工場内に響いた。こうして戦い振りを見てみると自身の成長が良く解った。最初は禁手(バランスブレイカー)すら使えなかった自分が、今や並みの上級悪魔なら互角以上に戦える。

 他の部員達も集まって戦果を報告し合った。其々が敵を捕縛したと喜びながら告げた。今回の作戦は成功したようだ。リアスが一同を見回して言う。

 

 

「皆、良くやってくれたわ。私達も着実に力を伸ばしている。主として鼻が高いわよ」

 

 

「それならご褒美に部長のお乳を拝見……」

 

 

 彼が何時も通りにふざけた台詞を吐いたその時、メンバーの顔が硬直した。木場とゼノヴィアは咄嗟に剣を構えた。他のオカ研部員も次々に戦闘体勢に切り替えていく。籠手や消滅の魔力が揃うが、それらを操る手先は小刻みに震えた。

 恐ろしいのだ。まだ未熟な自分達ですら強く感じる殺意が。憎悪するかのようなオーラに晒されて、一誠も思わず唾を呑んだ。念の為にアーシアを後ろに移動させた。

 

 

 廃工場の重厚な鋼扉が二つに斬られた。ズズズ、と軋みをあげて床に倒れ伏す扉を踏みつけて二人の影が見えた。白髪に悪魔祓い(エクソシスト)の制服を着た青年。ゴスロリファッションの少女。ロスヴァイセやレイヴェル、ギャスパーなど活動に参加してから日が浅い者は彼等を知らなかった。その為に怪訝な顔をする他無かったが、初期メンバーは違った。全員が驚愕を隠そうとせずに眼を見開いている。

 特に因縁めいた過去を持つ一誠とアーシアは絶句した。掠れたように声を絞り出す。

 

 

「フリード……!? お前、木場に殺された筈……」

 

 

「み、ミッテルト様まで……」

 

 

 だが今挙げた者達は目の前に立っている筈が無い。二人は死亡したのだから。フリードは木場が、ミッテルトはリアスが始末した。前者は自分も見ていた。

 一体何が起きているのだろうか。確認する為にもリアスが前に進み出た。眷属にも直ぐに飛び出せるよう準備を整えさせてから、油断無く口を開いた。

 貴方達は何者なのか、と。

 

 

「悪魔の分際で話し掛けるなよ。穢らわしい」

 

 

「えーー」

 

 

 瞬間、視界を金属が覆った。それが譲渡によって長さを倍に延ばされたエクスカリバーの切っ先だと気付いた時には遅く、彼女の頭を容赦なく貫通した。聖なるオーラを浴びた悪魔は消滅してしまう。以前リアスはそう説明していた。

 その言葉通りに倒れゆく彼女は粒子化し、最後には綺麗に消え去ってしまった。全く予想もしていない呆気ない死である。

 

 

 思考停止とはまさにこの状況を言うのだろう。一誠達の頭はクリアとなった。彼は何をした。リアスを殺した。溢れる疑問に惨劇を焼き付けた眼は答える。

 彼等はリアスを殺害した。ああ、と弱々しく洩らした。初めは小さかった嗚咽は意識が引き戻されるに比例して絶叫となった。

 

 

「あ、アァァァァァァアッ!!」

 

 

「喧しい。騒ぐならあの世でやれ」

 

 

 半狂乱となりながら斬りかかるゼノヴィアだが一蹴される。全力の攻撃を片手で受け止められた上に軽く吹き飛ばされ、コンクリートの壁に全身を打ち付けた。叩かれた蠅や蚊のようにピクピクと動いていたがそれもしなくなった。気絶でもしたのか、それとも死んだのか。

 どうでも良さそうにミッテルトは光槍を振るう。聖と魔が融合した剣を滅茶苦茶に振り回す木場だが、槍に遮られて届かない。逆に聖魔剣が半ばでへし折られる始末だ。

 

 

 小猫と朱乃までも倒される様子を一誠は呆然と見ていた。また守れなかった。殺したのは誰だろうか。フリード・セルゼンだ。自分が弱かったせいで彼女は殺された。

 ドライグが何かを叫んでいるが、それすらも心を蝕んでいく闇に掻き消された。自然と呪文を口にしていた。

 

 

「我、目覚めるはーー」

 

 




遅かれ早かれ


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