DSフリードの非日常   作:ミスター超合金

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life.24 正義

 ディオドラ・アスタロト。名門アスタロト家の次期当主である彼は悪魔らしかった。聖女の誘惑が趣味な男で眷属も元シスターで構成されている。そんなディオドラだが、冥界を取り巻く状況には敏感だった。二勢力が手を結び、人間界では謎の悪魔殺害事件が連続していると聞く。

 自分と同じ若手悪魔が二人も殺されたと知った時、いよいよ現冥界に見切りをつけた。テロリストと内通したのだ。

 

 

『ディオドラ。貴様に任務を与える。悪魔の繁栄の為にも、失敗は許されんぞ』

 

 

「……解っています」

 

 

 眷属を引き連れて、勇んで任務遂行に出掛けた。貴族たる自分が人間界に出向くのは癪だが、これも後々の為。新たな世界で富貴の極みを尽くす未来を描いて駒王町に降り立つ。

 目的は作戦の障害になるかもしれない悪魔殺害犯の特定だ。脱出用の転移術式を先に展開してからディオドラは辺りを探索した。悪臭が鼻を襲った。

 

 

 臭いの元は思ったより早くに見つかった。悪魔の死体だ。首から上が無かったり、或いは脳天から真っ二つに切断されている残骸が山と積まれている。良く見れば『S級はぐれ悪魔』の顔も幾つか見られた。

 冗談では無い。これをやって見せた下手人はとんでもない実力者だ。並の賞金稼ぎや悪魔祓い(エクソシスト)を越えている。

 

 

「これは、早急に知らせないと……!」

 

 

 連絡用の魔法陣を地に印した。ザザッ、とシャルバの顔が映し出された。今日はやけに映像が乱れているとディオドラは感じた。どうも画面が赤い。それにシャルバも何処と無くずれて映っている。

 痛みが顔を走った。右顔面が特に痛むんだ、と言いながら彼は触れた。瞬間、周囲は完全に闇に閉ざされた。不思議に思う時間すら無くディオドラの身体はブロック状に崩壊していく。数秒後には服に包まれて肉片のみが残っていた。

 

 

『何者だ……?』

 

 

 術者が不在となり、もうすぐ消え去るであろう連絡術式。空中に浮かぶシャルバの眼はもう捨て駒(ディオドラ)に向けられておらず、眷属もろともに彼を切り裂いた男を見据えていた。

 悪魔祓い(エクソシスト)の制服を着た白髪の青年。返り血を浴びたその顔は恐ろしく冷たい。画面越しに伝わる殺意に思わず身体が震えた。純粋に恐怖しているのだ。

 

 

「全悪魔の抹殺を誓う者だ。その対象には貴様ら旧魔王派も入っている」

 

 

『……ッ! 貧弱な人間の分際で!!』

 

 

 不快そうに顔をねじ曲げると、通信は途切れた。残留していた魔力が無くなったのだろう。唾を吐き捨てると男は踵を返そうとした。だが直前に近くの樹に光の剣を投げ掛ける。風音を立てて剣は突き刺さった。

 口笛が樹の後ろから聞こえ、其処から一人の男が姿を現した。三国志を思わせる漢服を着込んだ彼は、余裕綽々の表情で両手を挙げた。

 

 

「待ってくれ、俺は悪魔じゃない。ただのちっぽけな人間さ」

 

 

「……それで、俺に何の用だ?」

 

 

 下手に回りくどい言い方をしても無駄だと悟ったのか、男は単刀直入に告げる。聖なる輝きを放つ槍を片手に構えるその男は、意思の強そうな眼に反して憎悪を宿らせていた。悪魔祓い(フリード)と同じように。

 俺達は悪魔を滅ぼそうとしている。だから協力してくれないだろうか。

 

 

「正義の名において、俺達『英雄派』は悪魔に鉄槌を降す」

 

 

 例え何れだけの犠牲が生まれようと、悪魔を滅ぼす為ならば。

 それは正義だ。

 

 




やり過ぎなければ、正義は名乗らせない


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